「年収の壁」見直し政策を日商が提言 3号被保険者や在職老齢年金の廃止、iDeCo支援など
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日本商工会議所(東京都千代田区)は11月21日、東京商工会議所(東京都千代田区)と連名で取りまとめた「年金制度改革に関する提言」を公表した。
提言で日商は、いわゆる「年収の壁」問題の根底に「第3号被保険者制度」があるとして、「10年から20年後などの時期を示し、将来的な解消について早急に国民の合意を得る努力をすべき」と提言した。
従業員の配偶者が入れる「第3号被保険者制度」がなくなれば「130万円の壁」がなくなる?
第3号被保険者制度は、厚生年金に加入する会社員や公務員らの配偶者で、年収130万円未満の人が対象となる。会社員や公務員として働く人の扶養に入ることで、年金保険料を納付しなくても老後の基礎年金を受給できる制度だ。
厚生労働省の「令和4年公的年金加入状況等調査」によれば、第3号被保険者は735万人おり、このうちパートなどの短時間労働者は312万人いると推計される。
年収が一定額を超えた場合に、本人や扶養者に税金や保険料が生じるボーダーラインが「壁」と呼ばれる。働いた本人に所得税が発生する「年収103万円のライン」や扶養から外れて国民年金や国民健康保険の保険料の支払いが発生する「年収130万円のライン」は、パートタイマーで働く人たちが「働き控え」をする要因になっている、とされてきた。
年収の壁を意識する第3号被保険者、147万人に
こうした「年収の壁」を意識して働いている第3号被保険者は、月収7.8万円から10.8万円の約147万人と推計される。こうしたデータを元に、日商は「年収の壁」の問題の根底には第3号被保険者制度存在があり、10年から20年後などの解消について「早急に国民の合意を得る努力をすべきだ」とした。
第3号被保険者制度は約40年前にサラリーマン家庭の被扶養者である専業主婦の老後の「無年金」をなくし、年金受給権を確立するために導入された。
日商は制度の将来的な廃止を求める理由として、「現在は、性別や婚姻の有無にかかわらず、男女とも働いて収入を得ることが一般化されており、制度を継続させる意義・必要性が大きく変化し、制度が、主婦等被扶養者を非就業・低収入就業に固定化させる誘因となっている」とも指摘している。
年金受給世代の「在職老齢年金制度」が縮小・廃止すれば「50万円の壁」がなくなる?
提言の中で日商は、60歳以降も働く年金受給者が、賃金と年金の合計額が一定額を超えると年金の一部が減額されたり、全額が支給停止されたりする「在職老齢年金制度」についても「縮小ないし廃止」を提言した。
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