迫る2030年。世界におけるSDGsの現状 欧米に後れを取る日本だが期待される役割は大きい
SDGsで設定されている17の目標と169のターゲットを、2030年までに達成することは現実的ではない。しかし、SDGパートナーズの田瀬和夫さんは達成することが本質ではないと説く。昨年6月の国連によるSDGs達成度ランキングでは、19位と順位を下げた日本。今、日本が求められていることは何か。そしてそのために、企業や総務部門は何ができるのだろうか。
取材・文◎武田 洋子
次世代に残したいのはどのような世界なのか
国連の研究機関は毎年、国別にSDGs目標の達成度に関するスコアを公表している。2022年における日本の順位は19位で、18位だった2021年より1つランクダウンとなった。日本の重要課題としては、ジェンダー平等や気候変動への具体的な対策などが指摘されている。現行のSDGsは2030年という期限を設けているが、あと7年で達成できる目標があるのだろうか?
サステナビリティ経営の実装を支援するコンサルティング企業、SDGパートナーズのCEO、田瀬和夫さんは、SDGsが描く世界観の本質は、目標達成の可否にないという。
「『持続可能な開発のための2030アジェンダ』および『SDGs(持続可能な開発目標)』は、193の国連加盟国の合意の下、2015年に採択されました。とかく17の目標や169のターゲットが取り上げられがちですが、どのような世界を次世代に残したいのかという人類の強い想いを体現した、とても偉大で高まいな文書です。ゆえに、2030年までにどれだけのターゲットを達成できるかどうかよりも、SDGsが目指す世界観に人類が正しく向かっているかどうかの方が重要だと考えます」
目標達成という観点からすれば、ウクライナ情勢やコロナ禍により、流れは一時的に後退している。しかし、注視すべきはわれわれが循環型社会に向かっているのか、それとも離れているのかという点であり、数値にこだわると本質を見失ってしまう。コロナ禍は弱者へのしわ寄せが顕著で大きな悲劇であることは間違いないが、一方で、防疫体制の強化をはじめとする世界の適応能力は著しく向上した。
働き方の多様性が浸透し、一点集中から分散型へと社会は形を変えつつある。ウクライナ情勢も、偏在するエネルギー資源への危機感を高めた。特定地域への依存から脱却するための水素エネルギーが注目され、投資が盛んになっている。2つの大きなショックにもかかわらず、SDGsへの歩みは加速したと田瀬さんが考えるゆえんだ。特に生物多様性、ジェンダー平等、脱炭素の動きは大きい。
「達成が難しいもの、たとえばAIDS、マラリア、結核の全てを撲滅することはできなくても、その目標に向かって歩み続けることこそが成果なのです」
バリューなき施策では問題の本質を捉えられない
では、日本のSDGsは経済的・社会的にどのくらい進んでいるのだろうか。残念ながら、欧米と比べると立ち遅れが目立つという。田瀬さんはその理由を、目先の数値目標にとらわれているせいだと見ている。
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