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人事制度で組織力が30%アップする【第2回】人事制度は導入後の運用がいちばん重要

2020年01月06日

 せっかく時間と労力をかけて人事制度(社員成長支援制度)を作っても、その後の運用がうまくいかないというケースをしばしば耳にします。今回はその原因と対策について説明したいと思います。

■人事制度を作るだけでは8割の会社が失敗に終わっている

 人事制度を作ったからといって、イメージ通りに制度がうまくいくとは限りません。人事制度の運用で起こりがちな問題点について以下の項目が挙げられます。

(1)時間をかけて作ったが、社員に説明をせずに運用している。
(2)管理職が評価に慣れてないために、いい加減な評価を行ってしまう。
(3)管理職の評価がばらばらで使い物にならない。
(4)チャレンジ目標が、すぐに達成できてしまう目標になっている。
(5)「一生懸命にやります。一層努力します」などという目標で、評価ができない。
(6)目標設定面談が、上司の一方的な話で終わってしまう。
(7)評価面談が、部下の悩み相談だけで何となく終わってしまう。
(8)制度に問題が生じても、そのまま放置している。

 これは今まで100社以上の人事制度の導入にかかわったことで判明したことです。どんなに時間をかけて制度を作ったとしても、多くの問題が生じてしまいます。ですがみなさん、心配はいりません! 今、私がお話しした運用の問題は、一つひとつ先回りして改善していけばいいのです。

■成功する人事制度の運用の5つの勘所

 成功する制度を運用するには次の5つ勘所を押さえましょう。

(1)運用ツールの作成
 「目的」「何を」「いつまでに」「どのようにするのか」を明確にするために、失敗しない「運用ツール3セット」を運用前に作りましょう。そのツールは、「年間の運用スケジュール」「面談準備シート」「面談の手引き書」の3つです。

●年間の運用スケジュール
 人事制度を運用するために、1年間で何を実施するのかをスケジューリングします。多くの会社は年2回の賞与と年1回の定期昇給があるため、夏と冬の賞与支給日とそれに対応する評価期間を決定します。この期間が定まれば「目標設定面談」、そして「評価面談の期間」がおのずと決まります。その間に中間フォロー面談を実施するということになります。

 この際よくあるのが、評価面談ができずに賞与の計算手続きに入らなければならないといった事態に陥ることです。ですから、評価面談の時間が十分に確保できるように評価期間をずらすなどの工夫が必要になってきます。

●面談準備シート
 このシートは、特に評価面談を行う際の準備のために使用します。部下一人ひとりに、面談の中でどのように話を進めていくかという、上司なりのシナリオを作るためのものです。「面談がうまくいくかは、準備で決まる」といっても過言ではありません。

 私が薦めている面談準備シート(下記参照)は、左に「実際の面談で何を伝えるか」を明確にし、右(こちらが重要)で「部下の教育プラン」を作ります。この教育プランがあるかないかで社員の成長度が変わります。上司のOJT もこの教育プランに沿って実施すればよいのです。

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多羅尾美智代『目標管理のための面接マニュアル育成面接メモ』(日総研出版)を基に筆者作成

●面談の手引き書
 成長支援面談の定義は、「自己のチャレンジ目標の設定を通じ、本人に自主的自発的な行動を喚起させ、上司からの支援を受けながら、成長につながる双方向のコミュニケーション手段」であるといえます。この目的に沿って面談を実施していくわけですが、初めて面談をやる方には戸惑いが多いと思います。ですから会社側でこの面談で、どのような質問をして、どのように面談を終わらせるかという、シナリオあるいはマニュアルといった手引書が必要になります。

【記載内容のポイント】
・目標設定面談、中間フォロー面談、評価面談の3つの目的(なぜやらないといけないのか)
・面談での細かな注意点(やってはいけないこと)
・面談の共通原則(会社として重点的に意識してほしいこと、やってほしいこと)
・各面談の具体的な進め方(進め方のステップとそれぞれの質問について)

 これらを盛り込んで、会社としての基本形を作成します。基本を作ったら、あとは運用段階で管理職の勉強会を通じて、加筆修正をし、内容をより良くしていきます。さらには上司と部下役を設定し、動画を制作することで、より理解を深めている会社もあります(詳細は『今いる社員で成果を上げる中小企業の社員成長支援制度』に記載)。

(2)社員説明会を行い、きっちりと社員に伝え切る
 社員説明会のいちばんの目的は、会社の姿勢を示すことです。新しい制度自体の説明はもちろんのこと、この制度を通じて社員にどう変わってほしいのかを伝えます。時折、単に制度の変更点を述べるだけの会社がありますが、非常にもったいないというのが本音です。説明会で話すときは、次の2つの視点で話すことが重要です。

●ソフト面
・人事制度の変更の理由(ここがもっとも重要)
・会社を取り巻く経営環境の変化
・今後の会社に必要な人材像
など

●ハード面
・制度の全体像とその体系
・具体的な制度の変更点について(従来の制度との比較が必要)
・各制度の説明について
など

(3)人事評価表のトライアルとチャレンジ目標の設定のトレーニング
 初めて人事評価を導入する会社の場合、管理職自身が評価することに慣れていません。よって、評価をしたくても、あまり早急にしすぎては運用がうまくいきません。ここは、制度に慣れるためにまずトライアル期間(試行期間)を設けましょう。会社によってもさまざまですが、半年?1年ぐらいの期間が一般的です。トライアルで評価した結果は、ストレートには活用できませんので、従来実施してきた評価結果と比較しながら、その期間は調整を行います。

(4)社員のやる気、能力を最大限に引き出す成長支援面談の継続実施
 人事評価表というのは、単なる紙切れです。そこに上司による評価を書き、昇給、賞与を支給するだけでは社員のモチベーションは上がりません。成長支援面談に心血を注ぎ、心が通うような面談をしてこそ、本当の意味で人事評価がうまくいくと私の個別指導の経験から断言できます。

 成長支援面談では、「目標設定(期首)面談」「中間フォロー面談」「評価(期末)面談」を、図表のように繰り返し実施していきます。上司は、これにより部下のやる気と前向きな行動をドンドン引き出してほしいと思います。

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(5)管理職の役割強化のためのマネジメント教育の実施
 制度を導入したあとに問題が起きるのは、管理職自身の役割が発揮されないことが原因としていちばん多いです。たとえば、面談を準備せずに行う、いい加減に評価をしてしまうことなどです。しかも、そのことに自分では気付いていないので、毎日のマネジメントもいい加減になってきます。そうならないために、私の場合、クライアントには次のようなテーマで管理職と一般社員の教育を実施しています。

a) 管理職研修
 管理者の役割強化、目標の立案と達成管理(PDCA)、問題解決、部下育成、コミュニケーション(報連相)、コーチング、チームビルディングなど

b)一般社員研修
 自己の役割強化、目標の立案と達成管理(PDCA)、チームワーク、コミュニケーション(報連相)、自己開発、チームビルディングなど

 人事制度(社員成長支援制度)は作ってからが本番です。運用の5つ勘所を基に、みなさんの会社の組織力を30%アップさせていきましょう。

今いる社員で成果を上げる中小企業の社員成長支援制度』(合同フォレスト)P.124?160を加筆修正

大竹 英紀
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