人事 / 労務管理 / 介護離職防止
仕事と介護は両立できる【第4回】いたずらに介護休暇を与えれば介護離職を後押しする
2020年09月14日
■これまでの活動での気付き
2020年現在、年間450人以上の介護に相談に応じる中で、相談者の多くが「親の介護は自分や家族が直接するべき」という認識を持ち、多くの人がそれに苦しめられていることに気が付きました。直接介護に携わることができないと罪悪感を抱き、直接介護をしてもいずれ行き詰まり、介護離職や家族に対する虐待につながってしまうケースがあるのです。
そこで当法人は、相談者に「(直接的な)介護は専門職に頼り、自身は家族にしかできないかかわり合いをしてほしい」ということを訴え続けています。企業の人事・労務担当者には、「仕事と介護の両立は、大事な人材を失わない」という企業のメリットだけではなく、「家族が介護に直接かかわり過ぎることによって発生する問題」についても理解を広げ、その対策などを提案してきました。
■介護による離職要因調査の実施
介護相談を行う中で、「親の介護は自分や家族が直接するべき」という認識がある以上、「介護に関する企業制度を充実させ利用促進することは、介護離職を後押ししてしまうのではないか?」という仮説が浮かび上がりました。この仮説に基づいた調査・検証を行い、その結果をまとめたのが、「介護離職白書 ― 介護による離職要因調査 ―」です。
NPO法人となりのかいご「介護離職白書 ― 介護による離職要因調査 ―」
なお調査は、2020年4月28日から5月11日にかけて、介護離職経験あり・なし各800人、計1600人を対象にインターネットにて実施しました。
注目すべきデータとして、調査では約9割が「困ったら外部(家族以外)のサービスに頼るべきである」と回答している一方で、約6割が「介護を自分の手で行うことは親孝行になる」と回答。調査結果からも、介護に対する自負(自分がやらなければならない)を共通して持ち合わせていることがわかりました。
■介護離職防止のためにできること
今回の調査により、企業が介護離職防止のために行うべきことは、従業者の現状を丁寧にヒヤリングして、介護の実態把握をすることです。なぜならば、介護者は親への恩返しとして、「親孝行=直接介護」というマインドセットになっていることが多いからです。ですが、大切な家族が弱りゆく姿を至近距離で直視していくことは、メンタルに強い負担がかかります。
そのため、「親孝行=直接介護」が唯一の方法ではない、という親孝行の捉え直し、的確な情報提供、強い負担がかかっているメンタルのケアが必要になってくるのです。これらの問題を解決するには、ケースワーク力を持つソーシャルワーカーを企業内に配置し、普段から気軽に相談できる体制作りが必要不可欠となります。
さらに、仕事と介護を両立する上で重要となるのは、早期に安心して任せられる支援体制を築くことです。ところが、「親孝行=直接介護」という認識の中では、親がソーシャルサポートを拒んだら、直接介護をする道しか残されていません。それでは、介護タスクが増加するばかりで、最終的には介護離職を選択せざるを得なくなってしまいます。
直接介護をしなくても、域包括支援センター、ケアマネジャーとの面談、施設見学など、効果的な場面で戦略的に介護休暇・休業を利用することも、「介護」なのです。直接介護ではスキル不足に悩んだとしても、ビジネスパーソンとして培ったマネジメント力をスムーズな支援体制の構築のために、介護にも活用するのです。
■コロナウイルス感染拡大に伴ってのビジネスマンの介護状況の実態
同調査では、「コロナウイルス感染拡大に伴ってのビジネスマンの介護状況」に関する設問も実施。そこでは、コロナ禍で介護をするビジネスマンの約2割が「介護時間が増えた」、約3割が「介護サービスの利用頻度を減らした」、約7割が「自己判断で介護サービスの頻度を減らした」と回答しています。
テレワークにより自身での介護が可能となり、介護者の判断で介護サービスの利用頻度を減らし、直接介護する機会が増えたことが推測できます。コロナ前後で家族介護の悩みの本質(親の介護は家族が直接するべき)は変わっていないどころか、コロナ禍により、家族介護の悩みの本質がより浮き彫りになった印象を受けざるを得ません。
■最後に
家族として最期まで愛情深くかかわるためには、距離感が難しい直接的な介護は早い段階から「プロに頼る・任せる」べきです。その結果として得ることができる、「仕事の時間」を家族との距離感を維持するためのツールとして捉えれば、仕事と介護の両立は、家族介護に向き合う有効な手段となります。

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