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総務の知的財産戦略 第4回

2016年12月16日

 こんにちは。ブランシェ国際知的財産事務所の弁理士 高松孝行です。

 今回も前回に引き続き、職務発明について解説いたします。

 前回は、職務発明に対する「相当の対価」について、金銭以外の経済上の利益に関するアイデアの出し方を説明しました。今回は、「相当の対価」の決め方(手続き)について解説いたします。

■ 「相当の対価」の決め方――3つの手続き

 2015年(平成27年)の特許法改正では、金銭以外の経済上の利益の内容とともに、その決め方(手続き)についても適正であることを求めています。
 しかし、法改正からあまり時間が経っていないこともあり、その手続きが適正か否かの判断の基準となるような判例等は存在しません。
 そこで、現時点では、「相当の対価」の決め方に関して考慮すべき事項を記載した改正特許法第35条第6項の指針(ガイドライン)※1が公表されています。

 このガイドラインによると、少なくとも次の3つの手続きが適正に行われることが必要とされています。
(1)相当の利益の内容を決定するための基準の策定に際して使用者等と従業者等との間で行われる協議
(2)策定された基準の開示
(3)相当の利益の内容の決定について行われる従業者等からの意見の聴取

 まず(1)では、「協議」はどのような形式で行われるのかは関係なく、従業者等の代表者を通じて話し合ってもよいとされています。そして、重要なことは、話し合いの結果、合意をすることまでは求められていないということです。
 従業者等全員の合意が得られるのがもっとも望ましいと思います。しかし、従業者等にもいろいろな考えを持つ人もいますし、従業者の数が増えるに連れて全員の合意を得ることは難くなると思います。したがって、合意が得られなくてもよいというのは、手続きを進める総務部としても、少しは気が楽になるのではないでしょうか?

 次に(2)では、「開示」もどのような形式で行われるのかは関係なく、従業者等の見やすい場所に掲示することでもよいとされています。ただし、重要なことは、相当の利益の内容、付与条件等を決定するための事項が具体的に開示されていなければならないということです。
 ここで、前回の開発部への相談が役に立つのではないでしょうか?
 何の相談もなく、これらの事項がいきなり開示されると、開発部から反発があるかもしれません。しかし、事前に「金銭以外の経済上の利益としてどのようなものがよいか」と開発部に相談し、開発部の意見も取り入れたものであるならば、「開示」に関して問題となることはかなり低くなると思います。

 最後に(3)では、「意見の聴取」もどのような形式で行われるのかは関係なく、その時機も相当の利益の内容を決定するときでもよいとされています。そして、重要なことは、相当の利益の内容の決定について合意がなされることまで求められていないということです。
 従業者等全員の意見をすべて聞き入れることは難しいと思います。しかし、開発部の意見も取り入れた相当の利益の内容となっているならば、多くの従業者等からの納得が得られると思います。

 大切なことは、開発部と積極的にコミュニケーションを取りながら、ガイドラインの内容を踏まえた上で、「相当の対価」を決定する手続きを進めていくことです。
 前回説明した特許事務所の活用も含めて、開発部と協力して、ぜひ適切な職務発明規定を作成・改訂してください。


※1 https://www.jpo.go.jp/seido/shokumu/files/shokumu_guideline/guideline_02.pdf

高松 孝行
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