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総務の社内PR大作戦
第7回:御用聞きを徹底する「エコヒイキ大作戦」

2017年06月06日


 今回は、Step3「御用聞きと社内営業の実践」です。題して「エコヒイキ大作戦」です。ここでは、御用聞きに徹して、問題解決の実績を小さく積み上げていくことの大切さをご紹介します。

 第2回に、総務部門の第一優先課題が「業務の明確化・効率化」と「部門の地位向上」の連関図を示しました。ここで重要なのは、業務の明確化ができていないがために、各部門にとって総務部門に対する「ニーズ」が顕在化されないことです。ニーズが顕在化されなければ、問題が存在しないことになります。

 ニーズ発想といえばマーケティングです。もちろん、総務業務は役員・社員を対象にしたサービス業ではなく、彼らが「消費」するわけではありません。ただ、アウトソースが進む管理部門にとって、役員・社員のニーズ起点で業務を戦略的に作り出していかなければ、そう遠くない将来に完全にAIに置き換わってしまうことでしょう。そろそろ、総務・人事・経理・監査・広報など管理部門は最悪のシナリオを想定して、戦略業務に本格的にシフトしなければ、自らの立場も危うくなってきます。

 本題とも関連してきますので、少し、マーケティングのことをお伝えします。
 マーケティングの考え方は、依然として「4P」(Product, Price, Place, Promotion)やこれを買い手視点に置き換えた「4C」(Product → Customer value, Price → Cost, Place → Convenience, Promotion → Communication)が基本となってはいますが、インターネットの登場で、一人ひとりの細かな属性や興味関心、購買実績などの膨大なデータを蓄積できるようになり、データを基に自動化が進んでいます。こうした新しい方法は、「リレーションシップ・マーケティング」の考え方がベースにあります。

 従来型のマーケティングは、属性やターゲットは一定程度絞り込んでいきますが、お客さまを「マス」で「均質的」なものと捉えて、その中から「獲得」するものです。若干、語弊がありますが、端的にいえば「100万人の見込み顧客に1回買ってもらう」ことをイメージしてください。一方のリレーションシップ・マーケティングは、「100人の顧客に1万回買ってもらう」ものです。一人ひとりの顧客を個別的に捉え、見込み顧客をトライアル顧客、リピーター、パートナーに引き上げていくものです。ニーズが多様化・個別化する時代になり、マーケティングの考え方も変わってきています。


図表:リレーションシップ・マーケティングは顧客を「パートナー」(宣伝者)にまで育てる

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■ 総務が活用されないのはなぜ?

 なぜこうした考え方をご紹介したかといえば、従来、管理部門の業務は常に「マス」が意識されてきたためです。マスの受け皿を用意して、社員の側から相談があればそれに対応する、個別ニーズには「運用」として対処する、といったケースが多いでしょう。もちろん、これは現実に則った解決方法だと思います。

 ところが、あまりにもマスに偏ったメッセージが発信されているため、個別のニーズに則した問題解決の「事例」が埋もれてしまっていませんか? 社員の側が仮に潜在的なニーズを持っていたとしても、事例が共有されないために、いつまで経っても、総務が有効に活用されない状態になってしまっています。

 人は、使い方やかかわり方をあまりイメージできないときは、具体的な事例がないと頼ろうとしません。つまり、使い方をイメージできる「社内PRするネタ」そのものを作らないといけないのです。

 このためには、「ブラブラ総務」になることが大切です。ここでいうブラブラ総務とは、同期でも知り合いでも経理・人事など管理部門の他部署の社員でもよいので、総務業務に関連した問題がないかをヒアリング行脚していきます。情報を拾いに行き、潜在的な問題を掘り起こし、社内営業をかけて総務が解決できることをサポートします。

■ リレーションシップ・マーケティングを実践する御用聞き総務

 概念的なご説明になってしまいましたので、私自身の経験談を2つご紹介しましょう。私が社員の立場のときに、総務の方から受けた「社内営業」で、とても印象に残っていることがあります。

(1)契約保養施設利用の社内営業と社内報での事例紹介
 もう10年以上も前のことです。最初の子供が「ハイハイ」の時期、年の瀬で世間が騒がしい12月頃のことでした。徐々に年度末が近づき、会社が福利厚生で契約していたリゾートホテルの利用枠が余っていたのです。総務から公募で利用促進の案内が出ていました。興味はあったものの、1歳になる前のハイハイ時期の子供を連れていくには、リゾートホテルのようなところは落ち着かないかな......と思っていました。

 そのようなとき、総務の方が社内をぐるぐると歩いて、リゾートホテルの利用を各部署に勧めていました。私がいた部署にも来て、総務の方がこう勧めてくれたのです。「私の2人目はちょうど6か月ぐらいでしたが、ここのホテルは安心でしたよ。ホテルの中にキッズスペースがあって遊べますし、まわりの観光地も授乳できる場所がありました。ぜひどうでしょう?」。私に小さな子どもがいることを踏まえた、絶妙な社内営業ですよね。

 さらに、この総務の方はたいへん優秀。私がいた部署で社内報を発行していたこともあり、「できれば、利用していただいて、その感想や申し込みの手順を社内報で紹介してくれませんか? せっかく契約しているのに利用枠が残ってしまっているのは、どうも申し込みの手順が面倒だと感じていらっしゃる社員の方が多いみたいなんです。利用した方の事例として社内報で取り上げてほしいんですよ」。社内報で取り上げてほしいという提案とセットだったので、振り返ると、社内の各部署をまわりつつ、私を「見込み顧客」として狙っていたのでしょう。「子どもとお出かけしたいニーズ」を顕在化し、利用実績のイメージが湧かない社員のために、私で利用実績を作りつつ社内報で社内PRもする。

 その日、家に帰ってから家族で相談し、すぐに施設利用を申し込みました。子どもとの思い出も良いものになりましたし、その後も契約施設を何度も利用するようになりました。見込み顧客だった私がトライアル顧客になり、リピーターになる。さらに、事例として社内報で自ら登場する側面は、総務の「パートナー」でもあります。リレーションシップ・マーケティングの考え方をいつの間にか実践できてしまうような優秀な総務の方だな、と印象に残っています。

(2)足を使う法務担当者
 総務で法務まわりを担当していた方は、外部の業者さんとの契約書のチェックを終えると、「社内便」ではなく必ず部署まで持ってきてくれて、親切にフィードバックしてくれました。不思議なもので、部署まで足を運んでくれて、担当者の顔を見ると、契約以外のことでも相談したいと思っていたことを思い出します。私が担当していた業務について、社内規程化を検討していたことがあったのですが、契約書のチェックを戻してもらう際に、社内規程のことも併せて相談したり、社内報で取材対象者を探していたときにはあわせて社内報での登場してもらえないか相談したり......。顔を見るたび何か生まれる。こうした実績が積み上がると、私も別の部署と打ち合わせをしているとき、総務に相談が必要な事象が発生すると、「ひとまず総務の○○さんに聞いてみたら。ご本人が担当じゃなくてもつないでくれますよ」と"口コミ"をするようになります。

 いかがでしょうか? 社員の側からすると、どうしても「総務ができること」はイメージが湧きにくい。だからこそ、まずは御用聞きに徹して、社内のいろいろな部署をブラブラとして足を運び、「社内営業」をしていくことが不可欠です。

■ エコヒイキで社内アピールの「ネタ」を作る

 小さな問題解決の事例でも、一つひとつを積み上げていくことで、社内アピールの「ネタ」ができます。上記の私の経験談では、リゾートホテルの利用実績を社内報で取り上げました。社員は、総務の方が考えている以上に、「総務をどうやって利用したら良いのかわからない」のです。こうして地道に広げていくことがもっとも近道です。

 こうした進め方は、一気に「マス」で広げることはできません。管理部門が苦手な「エコヒイキ」をして、確実に事例を積み上げて、その事例を題材にしてさらに広げていくことが不可欠です。エコヒイキは、リレーションシップ・マーケティングであり、悪いことではありません。

 次回は、さらに社内アピールを進めていく秘訣をご紹介します。

秋山 和久
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