障がい者の法定雇用率が2.3%に引き上げられたことで、都心部を中心に障がい者の採用市場は激化している。テレワークの普及は、「働きたい障がい者」と「採用したい企業」にとって有効な選択肢だが、留意が必要な点も多い。さまざまな形で障がい者雇用を支援する株式会社スタートラインの吉田瑛史さんに、企業が押さえるべきポイントを取材した。
取材・文◎武田洋子
進まない障がい者雇用原因は定着率の低さ
マーケティングディビジョン
コンテンツチーム リーダー
吉田 瑛史さん
パナホーム株式会社(現パナソニックホームズ株式会社)、株式会社マイナビにて、通算で約10年間営業職に従事したのち、パーソルグループ特例子会社を経て株式会社スタートラインへ入社。これまで300社、2,000人以上の障がい者雇用・採用に携わる。現在はマーケティング部門にてコンテンツ制作やセミナー講師などを担当。
今年3月から、従業員43.5人以上の民間企業に対し、従業員の2.3%の障がい者雇用が義務付けられた。100人なら2人、1,000人なら23人だ。しかし厚生労働省の「令和2年障害者雇用状況の集計結果」によれば、法定雇用率を守っている企業は全体の48.6%にすぎない。半数以上の企業が、法律違反ということになるが、なぜ、障がい者雇用は進まないのだろうか。「関わるすべての人に働く喜びを」を企業理念に掲げ、障がい者雇用に関するさまざまな支援サービスを提供する株式会社スタートラインの吉田瑛史さんは、採用市場は拡大しているという。
「この5年間で企業における精神障がい者の雇用は約2倍に増えていますし、コロナ禍で障がい者雇用に影響があったかといえば、今年3月から6月の3か月を見ても、求人は550件の増加でした。このような短期の数字だけで判断することはできませんが、障がい者雇用の市場が活発であることを示す参考情報の一つだと思います。
障がい者の新規求職申込件数も増えています。障がい別に見ていくと、もっとも伸びているのは精神障がい者であり、こちらは10年前の約3倍です(図表1)。この背景には2018年から精神障がいが雇用率算定の対象に加わったこともあるでしょう。求人数は、新型コロナウイルスの影響で2020年はいったん落ち込みましたが、2021年3月は昨年同月より増加しています。ではなぜ、法定雇用率を守っている企業が半数以下にとどまっているのか。それは定着率の低さにあります」
身体障がい者の4割、精神障がい者の5割が、1年以内に離職してしまうのだという(図表2)。「働きたい人」と「採用したい企業」の両方が増加して市場は拡大しているのに、成果に結び付かないのはもどかしい。かといって、ただ手をこまぬいてはいられないのが現状だ。
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