総務のマニュアル従業員エンゲージメントを高める 第3の給与「ピアボーナス制度」導入のポイント

ピアボーナスは「賃金」と見なされるのか ―― 制度導入時の給与、保険、税務処理のポイント

日本橋人事賃金コンサルタント・社会保険労務士小岩事務所  代表 特定社会保険労務士 小岩 和男
最終更新日:
2023年06月09日
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ピアボーナス制度は社内制度(人事制度)ですので、労働社会保険諸法令・税務諸法令を遵守した取り扱いをしなければなりません。今回は、導入する際の、社内規程(就業規則)の変更、給与計算(割増賃金等)処理、社会保険・労働保険の保険料の計算、税務処理について見ていきましょう。

就業規則(賃金規程)の変更

ピアボーナスのポイントを賃金換算し賃金として支給する場合には、自社の賃金規程を変更しておきましょう。

(1)賃金の定義

賃金は労働基準法で次の通り定義付けされています。

「賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのもの」

ピアボーナスを労働協約、就業規則、労働契約などで、「労働の対償」として支給する場合は賃金に該当することになります。

(2)賃金規程の変更

称賛・感謝ポイントを賃金に反映させる場合は、次のように賃金規程を変更しておくとよいでしょう。賃金規程として独立させるのではなく就業規則の中にこれらの条文を付加してもかまいません。なお規程を変更した場合は周知徹底をはからなければなりません。

賃金規程(例)

(ピアボーナス手当)
第○条 ピアボーナス制度は、日々の職場における社員同士の職務遂行上の助け合いや優れた行動をした仲間・同僚に称賛・感謝の気持ちを伝え相互に相応のポイントを付与するものとする。当該ポイントは手当換算し、毎月ピアボーナス手当として支給する。なお詳細はピアボーナス制度細則に定める。

割増賃金の計算方法

社内制度として毎月、賃金(ピアボーナス手当)を支給する場合、割増賃金の計算基礎の賃金となるのでしょうか。

称賛・感謝の気持ちのポイント換算なので割増賃金の計算には入らないとも考えられそうです。割増賃金の計算基礎にならない賃金は、図表の通り7つに限定されています。ピアボーナスはこれに該当しないため、計算基礎になる賃金となります。

図表:割増賃金の計算基礎にならない賃金

(1)家族手当
(2)通勤手当
(3)別居手当
(4)子女教育手当
(5)住宅手当
(6)臨時に支払われた賃金
(7)1か月を超える期間ごとに支払われる賃金

社会保険料・労働保険料の算定基礎

社内制度として毎月、賃金(ピアボーナス手当)を支給する場合、社会保険料や労働保険料を算定する賃金とされます。「社会保険」「労働保険」では次のように定義されています。

社会保険料の算定基礎

社会保険では賃金ではなく報酬と呼びます。社会保険の対象となる報酬は、賃金、給料、俸給、手当、賞与などの名称を問わず、労働者が「労働の対償」として受ける全てのものを含みます。また、金銭(通貨)に限らず、通勤定期券、食事、住宅など現物で支給されるものも報酬に含まれます。ただし、臨時に受けるものや、年3回以下支給の賞与等は報酬に含みません。

労働保険料の算定基礎

労働保険の対象となる賃金は、事業主がその事業に使用する労働者に対して賃金、手当、賞与、その他名称のいかんを問わず「労働の対償」として支払う全てのものです。

税務処理(課税か非課税か)

最後に税金の処理方法について解説します。社内制度として毎月、賃金(ピアボーナス手当)を支給する場合、課税されます。商品券などで支払う場合でも換金性があるものは課税になるでしょう。

なお、ピアボーナスそのものに言及したものではありませんが、カフェテリアプランによるポイント付与の場合の課税について国税庁から解説が示されています。ピアボーナスも同様の扱いになると思われます。

ピアボーナス制度導入は所轄行政庁に取り扱いを確認する

ピアボーナス制度はアメリカでは浸透していますが、日本企業ではこれから浸透が進んでいく制度です。前述の通り法令の定めがありますが、ピアボーナスそのものに言及したものはありません。

賃金(労働の対償)として導入する場合は前述の通り進めることになりますが、賃金ではなく福利厚生制度として導入するのであれば、所轄行政庁(労働基準監督署・年金事務所・税務署)などに照会して進めてください。

照会しても○か×かの明確な判断がなされないことが予想されますが、判断基準は示されます。それを基に自社制度を構築していきましょう。

最後になりますが、社内制度を形骸化させないために、定期的に利用具合の検証と従業員の意識調査をしていくことがポイントになるでしょう。

※掲載されている情報は記事公開時点のものです。最新の情報と異なる場合があります。

著者プロフィール

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日本橋人事賃金コンサルタント・社会保険労務士小岩事務所  代表 特定社会保険労務士
小岩 和男

中央大学法学部法律学科卒業後、東武不動産株式会社(東武鉄道グループ)に入社。以降、不動産営業を経て人事総務業務に従事。2004年、社会保険労務士試験合格後独立。現在、日本橋人事労務総研代表・特定社会保険労務士として、企業の労務顧問・講演・執筆業務で経営者を支援している。主な著書に『ぜんぶわかる人事・労務』(成美堂出版)、『図解即戦力社会保険・労働保険の届け出と手続きがこれ1冊でしっかりわかる本』(技術評論社)がある。

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