コラム

健康管理 / 健康管理 / においマネジメント

においマネジメント【その11】消毒用エタノールだけが殺菌剤なのか

2020年03月18日

■世界的に消費されるアルコール

 会社の受付で必ず目に入る「消毒用アルコール」。今回のコロナウイルスの件を引き金に、消毒用アルコールの需要が高まりましたが供給が追い付いていません。

 2017年2月、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社より発表された資料によると、日本の発酵アルコール(工業用アルコール)の生産量は年間30万kl。原料となるエタノールの全量を輸入しており、その約8割がブラジル産です。

 世界的に見ると、約8割のエタノールが自動車の燃料用として消費されており、その量は年々増加しています。また、中国における需要は年々増加傾向にあり、今回のコロナウイルスの件でさらに需要が高まりました。今後日本のエタノールの供給確保は一層厳しい状況になるでしょう。

nioi11.png

 ただ、あちらこちらで大量に消費していいのか? という違和感もあります。消毒用アルコールは揮発性が強いため、効果が一時的であるだけでなく、頻繁に使うことで肌の水分を奪い、肌荒れも引き起こすという問題もあるからです。

■アルコールの代替品はあるのか

 では、殺菌目的で使用できる代替品にはどんなものがあるのでしょうか。たとえば、紫外線照射、熱湯・煮沸、次亜塩素酸ナトリウム(塩素系漂白剤)、過酢酸、グルタルアルデヒド、ヨウ素系消毒剤、次亜塩素水などがありますが、企業の受付で紫外線照射や煮沸消毒を行ったり、直接人体に使用するにはリスクが大きい次亜塩素酸ナトリウムや過酢酸を設置する事は現実的ではありません。

 また、グルタルアルデヒド、ヨウ素系消毒剤は薬剤であるため、一般の人は容易に使用できません。次亜塩素酸水は殺菌消毒・消臭効果が非常に強力でありながらも人体やペットに対する安全性が高いということで近年人気が高まっていますが、細菌やウイルスに到達する前に有機物と反応すると効果を失うため、手洗い等の事前の清浄が必須であるという点や、ほかの除菌剤と比較すると分解されやすく、年単位の保存が難しいという点がデメリットです。

■除菌効果を持つ「ヒノキチオール」

 私見ですが、除菌効果を持つ植物の成分としてすぐに頭に浮かぶのは、並外れた殺菌力を持つといわれる「ヒノキチオール」。ティーツリー、ユーカリ、ペパーミント、ラベンサラといったアロマセラピーの精油(エッセンシャルオイル・液体)とは異なり、ヒノキチオールは天然由来の抽出物であり、その形状は結晶です。

 「ヒノキチオール」は、1936年に野副鐵男博士によりタイワンヒノキの精油成分から発見されたためヒノキという冠がついていますが、生産原料となるのはヒバの木です。ヒバのおがくず2tから「ヒノキチオール」はたった200gしか採れない貴重なものですが、間伐材を使用しているため、環境に配慮したサスティナブル(持続可能)な原料ともいえるでしょう。

 さて、どんな効果があるか見てみましょう。

(1)ウイルスに対して有効な消毒効果
 2005年に公開特許公報にコロナウイルスに有効な消毒剤として挙げられたのが、「ヒノキチオール」です※。人体にも使用でき、安全性に優れた物質の中から、コロナウイルスによるウイルス感染の消毒効果を発現する物質を得るべくコロナウイルスに対して有効な消毒効果を見出し、本発明を完成するに至ったと記載されています。

出典:公開特許公報(A)コロナウイルス消毒剤

※新型コロナウイルスに関しては言及していないので、その点その点ご注意ください。

(2)植物由来成分が肺炎球菌を殺菌
 2019年5月に新潟大学において、「ヒノキチオール」が肺炎球菌を殺菌するという論文が発表されています。

出典:「植物由来成分が肺炎球菌を殺菌することを明らかに− 肺炎の予防や治療につながる可能性 −

 一般に「ヒノキチオール」には下記のような効果があるとされています。

・強力な殺菌・抗菌作用
・炎症を鎮める優れた消炎作用
・強い皮膚浸透作用
・代謝を活発・正常化する細胞賦活作用
・コラーゲン産生促進作用
・メラニン生成抑制作用
・サーチュイン(長寿)遺伝子活性化作用

 ほかの芳香植物(薬草)にも殺菌・消毒・防腐効果があるとされています。

・コショウ(胡椒):防腐作用をもつため肉の防腐や防臭に利用され、古来ヨーロッパでは高値で取り引きされた。
・シソ(紫蘇):シソ科の多くの植物は除虫や殺菌作用がある。
・セージ:肉の防腐作用、臭みを取るなどの効果を持つ。ソーセージに用いられている。
・タイム(タチジャコウソウ):蚊やハエ、ダニなどに除虫効果がある。殺菌や防腐作用もあり、古来よりソーセージや肉の保存に利用された。
・クローブ(丁字):抗菌作用、除虫作用がある。
・トウガラシ:防虫、防腐作用がある。乾燥させた赤唐辛子を米びつに入れ、虫よけに使用した。キムチはこの防腐作用を利用している。
・ドクダミ: 殺菌・抗菌作用がある。乾燥させるとにおいも減るが、効果も減る。
・ナンテン(南天): 生の葉は防腐・殺菌作用を持つ成分を含んでいる。
・ホップ :ビールの苦味と防腐に利用されている。
・ラベンダー:ガに除虫効果がある。殺菌効果や消毒作用などもあり、古くから治療などにも用いられていた。

※出典:エーザイ株式会社一部抜粋

 植物の持つ殺菌作用については新たに研究の進められている分野で、これからもヒノキチオール以外にも殺菌作用のある植物性成分が多数出てくると思われます。今後ますます注目される分野といえるでしょう。

青木 恵
​​MENU