コラム

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本に載らない現場のノウハウ 〜中小企業の人事制度〜
【第2回】中小企業に人事制度は必要か?(2)

2013年06月06日

■中小企業こそ自分たち主導での制度作りを!

 中小企業で人事制度を作るとき、できるだけ自力で、自社内で取り組もうとすることがほとんどだと思います。しかし、自分たちでいろいろな情報を調べてみるものの、その情報量が多すぎて、とりあえず目についた他社事例を、そのまま使ってしまうなんてことがよくあります。実際に運用してみても、それが自社に合っているのかどうか、良いのか悪いのか、イマイチ判断できなかったりします。

 また、社外に依頼するとしても、私たちのような人事制度を扱うコンサルタントはたくさんいますし、その経験も考え方もまちまちですから、誰がどんな取り組み方をするのかは、なかなかわかりづらいものです。

 私の立場でいうのも何ですが、実際のところ難解な使いづらい制度を作ったり、自分の考えを押し付けたりするコンサルタントがたくさんいるのも事実で、「せっかくお金をかけて作ったのにうまく使えない」なんてことが多々あります。

 私が中小企業の人事制度作りでお勧めするのは、「自社に合うと思われる制度を、できるだけ自分たち主導で作ること」です。

 私は人事制度作りのご依頼を受けた時、できるだけ多くの社員を対象に詳細なヒアリングをしますが、これは社内の事情をできるだけ細かく知るためです。可能な限り、個々の性格や社内の人間関係までも観察します。そうでないと、その会社に合った制度は作れないからです。

 その点、社員であれば、そんな事情をあえて聞き直す必要もありません。中小企業であれば、社員同士の距離が近いのでなおさらでしょう。社内事情の本当のところは社員にしかわかりません。そのあたりを理解しているということは、人事制度を作る上ではとても重要なことです。

 もうひとつ、実際に制度を運用する際の納得性の問題があります。

 大企業の場合は組織全体が見通しづらいですから、自分の知らないところで決まったことでも、それなりに受け入れて取り組むことに慣れています。多少合わない部分がある制度でも、現場がそれなりに適応して運用できてしまうところがあります。

 これが中小企業となると、会社全体に目が届くこともあり、「自分が関与しないで誰かが決めたこと」には納得しづらい傾向があります。ひとたび「この制度はダメだ」などと思ったならば、それこそ非難ごうごうで運用どころではなくなってしまいます。

 これを防ぐには、"関係者を制度作りのプロセスに参加させること"です。人事制度のように一律の正解がない事柄は、答えを出すまでのプロセスを理解しているか否かで納得感が大きく違います。
このあたりが、中小企業ほど「自分たち主導で作る人事制度」が望ましいという理由です。

 ただ一方で、中小企業の場合、自社で積み重ねた経験やノウハウは、残念ながら大企業に比べると少ないです。
「人事制度」は各社各様で正解がないといいながらも、こうすれば60?70%はうまくいくだろうという原理原則はあります(先人の知恵、経験ともいえます)。このあたりを補うのが、多くの「人事制度」に関する書籍や資料であり、社外の専門家たちが持っているノウハウということになります。

 「自分たちが主導しての制度作り」を基本に、必要に応じて様々な文献や、自社のことをよく理解した社外リソースを活用することが、自社に合った制度を作る上では望ましく、結果的に早道になるでしょう。

 「人事制度」は、会社が持っている人的資源を自己管理するための仕組みです。
仮に一般の人がオリンピック選手と同じトレーニングメニューを組んでも、速く走れるようになるわけではありません。そればかりか、故障して走れなくなってしまうこともあります。これは「人事制度」でも同じです。だからこそ、自分たちのレベルや体力に合わせ、できるだけ自分たちで決めるべきなのです。

 外部のノウハウをうまく取り入れ、活用しながら、「自分たちのことは、できるだけ自分たちでやる」という姿勢が最も重要であろうと思います。

小笠原 隆夫
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