本に載らない現場のノウハウ 〜中小企業の人事制度〜【第30回】人事制度作りに取り組む上で (まとめ1)
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これまで中小企業での人事制度作りについてのポイントを説明してきましたが、本コラムもいよいよ最終章です。これまでのまとめとして、人事制度作りに取り組む上での心構えなどをあらためてお伝えしようと思います。
最適な仕組みは常に変化する
これまで、「自社に合った制度構築を行うこと」と「制度と運用のバランスを考えること」が大切であることを述べてきました。本コラムを通じて最も理解して頂きたかったことですが、合わせてもう一つ知って頂きたいのは、この「自社に合った制度」も「制度と運用のバランス」も、その時々の状況や時間の経過に伴って"常に変化していくもの"だということです。
会社規模の変化、事業内容の変化、業績の変化、組織構成の変化、年齢構成や男女比ほか人員構成の変化などの内部的なものから、業界構造や市場の変化、景気動向の変化といった外部的なものまで、企業の周辺では常に変化が起こっています。
この変化は人事制度と無縁ではなく、その状況によって"自社に合うもの"も"最適なバランス"も変わってきます。
ただ、人事制度作りに関わる方々の中には、このあたりの変化への関心の薄い方がいらっしゃいます。
管理部門、間接部門にいるために現場の事情に疎かったり、顧客に直接接することが少ないために、市場の変化を捉えられていなかったりということがあります。
「人事制度作り」を「頑丈な建物を建てること」と同じような感覚でいて、一度完成すると「これで当分の間は大丈夫」と思っているような様子が見えます。 しかし、昨今の企業を取り巻く環境変化の度合いは、思いのほか激しいものがあります。
企業内の仕組みも、その変化に合わせて様々な改革、改善が求められ、それが必要な頻度は確実に増しています。
「最適な制度は常に変化するものである」ということは、しっかりと頭に置いておく必要があります。
制度作りも運用改善も最終ゴールはない
企業組織をパソコンやコンピューターシステムなどに例えたとすると、人事制度の仕組みが「ハードウェア」、制度運用が「ソフトウェア」というような捉え方をすることができます。
しかし前述のとおり、昨今の企業を取り巻く環境変化は激しくなっています。このような現状を考えたとき、私は「ハードウェア」にあたるのは企業組織の基幹部分のみであり、人事制度はその上で動作する「ソフトウェア」にあたるのではないかと思っています。
さらに制度運用が、「操作、オペレーション」というような位置づけになるのではないでしょうか。
ある目的に応じた結果を得るために、「ソフトウェア(制度)」の「操作、オペレーション(運用)」を行い、想定した結果が得られないならば、「操作、オペレーション(運用)」を工夫するか、「ソフトウェア(制度)」の改修を考え、その時点で必要な結果を得られていたとしても、「ハードウェア(組織)」の進化を考えながら、「ソフトウェア(制度)」の更なるバージョンアップを図っていく、というような関係です。
このように、人事制度のような仕組み作りも、制度運用の改善や見直しも、最終的なゴールはありません。常に環境変化に感度を働かせ、継続した取り組みを心掛けて下さい。
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