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総務の知的財産戦略 第11回

2017年08月01日

 こんにちは。ブランシェ国際知的財産事務所の弁理士 高松孝行です。

 今回は、前回説明したJ-PlatPatから得られた特許出願情報を活用して、より広い特許を取得できるようにする方策を解説いたします。

 競合会社の特許出願書類を読んでいると、そこに記載されている発明(技術)の一部を自社に応用できることに気付くことがあります。

 言葉だけだとよくわからないと思いますので、切り餅を例に挙げて考えてみましょう。

■ 切り餅の事例

 さて、切り餅というと、複数の会社が工夫を凝らした製品を多数販売していますが、それについては知られていない(存在していない)と仮定して話を進めます。

 今般、開発部が今までになかった切り餅を開発しました。具体的には、次の図に記載されているような、切り餅の上下表面にスリットC1、C2が形成された切り餅です。

chizai11_1.jpg

 この切り餅は、スリットに沿って、切り餅を手で簡単に割ることができるという効果があります。

 一方、競合会社Xの特許出願書類Aを読んでいたところ、次の図に記載されている面白い発明を見つけました。この発明の切り餅は、側面の全面亘って周方向にスリットSが形成されています。

chizai11_2.jpg

 この切り餅は、加熱した際にスリットS部分から膨張することになるので、膨張部分が限定され、餅が変な形で焼きあがることを防止することができるという効果があります。

 このような状況において、技術者と弁理士との打ち合わせを行っているときに、特許出願書類Aを提示して、「この技術(発明)も加えることはできませんか?」と提案できると技術者からも弁理士からも感謝されると思います。

 開発部が開発した発明のポイントはスリットなので、同様にスリットがポイントとなる競合会社Xの発明も利用できる可能性があります。

 今回の事例では、まず今回の発明の一態様として、側面の全面にわたって周方向にスリットSを単純に追加するという発明がすぐ思い浮かびます(利用発明※については考慮しないこととします)。

※利用発明とは、自己の特許発明を実施すると、他人の特許発明も実施してしまうことになる発明をいう。許諾を得ないで利用発明を実施すると、他人の特許権を侵害することになります。

 ここで、今回の発明について考えると、スリットC1、C2は切り餅の周方向のすべてに入っているわけではありません。そうすると、側面のスリットについても全面にわたって形成されていなくてもよいのではないか?と発想が広がります。

 その結果、次のような発明が思い付くかもしれません。この発明では、切り餅の側面の一部(側面の全面ではない)にスリットS1、S2が、さらに形成されています。

chizai11_3.jpg

 そして、この切り餅は、当初の発明に加えて、膨張部分が限定され、餅が変な形で焼き上がることを防止することができるという効果もあります。ただし、この効果だけだと特許される可能性が低いと思われるので、たとえば、特許出願書類Aに記載されている発明と比較して、加熱した際にスリットC1、C2からも膨張することになるので、ムラのない焼き上がりとなる等のより顕著な効果や異なった効果を主張できるとより特許の可能性が高まります。

 このように、競合会社の特許出願等の状況を把握しておくと、自社の発明に、その会社の発明(技術)の内容を取り込むこともできるようになります。その結果、特許の権利範囲を広げることもできます。

 もちろん、当初の発明のまま特許になれば、スリットC1、C2があろうがなかろうが権利範囲に含まれることになりますが、公知文献や先願特許との関係では、当初の発明のままでは特許にならないこともあり得ます。

 そこで、上記のような発明を特許請求の範囲に記載しておくことにより、最終的により広い権利範囲の特許を取得できる可能性が高まります。

 また、競合会社の技術を含めた特許出願を行うことにより、その特許出願が先願となるので、競合会社が同様な発明の特許出願を行ったとしても、その権利化を防止することができるかもしれません。

 競合会社の特許出願等の状況を把握することには上述したようなさまざまなメリットがありますが、競合会社の技術を理解する必要があるので、最初はたいへんかもしれません。

 しかし、技術開発は通常継続的に行われるものですので、一度技術を理解することができれば、その改良技術を理解することはそれほど難しくはありません。

 開発部並みに技術を理解する必要はないかもしれませんが、競合会社の技術開発の流れを理解しておくことは、総務部のステータスを高めるのに役立つと思います。ぜひ挑戦してみてください。

 次回も、総務の知的財産戦略について解説いたします。

高松 孝行
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