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総務の知的財産戦略 第13回

2017年10月16日

 こんにちは。ブランシェ国際知的財産事務所の弁理士 高松孝行です。

 前回に予告しました通り、今回は審査請求の判断基準について解説いたします。

■開発部と総務部間の対立

 前回も書きましたが、出願してから3年以内に審査請求を行わないと、その特許出願は取り下げられたものとみなされ、権利化できなくなってしまいます。
 請求項の数によって額が変わりますが、審査請求を行うには10数万円程度の費用がかかってしまいます。
 そのため、出願した特許のすべてについて審査請求を行うのではなく、権利化できる確率が高く、かつ事業に役立つ特許出願に対してのみ審査請求することが多いです。
 そのときに、どのような特許出願に対して審査請求を行うのかが問題になります。
 開発部としては、知恵を絞って出願した特許なので、審査請求をせずにみなし取り下げされるのは避けたいという傾向があり、審査請求を行うという判断になりがちです。
 一方、経理部や総務部としては、無駄な特許出願に対してさらに費用をかけたくないという傾向があり、審査請求を行わないという判断になりがちです。
 その結果、開発部と、経理部や総務部との間で対立が起こってしまうことがあります。
 そこで、双方が納得できるような審査請求の判断基準が必要となります。

■審査請求の判断基準を作る

 審査請求の判断基準の概要としては、たとえば次のようなものが挙げられます。

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 ここで、技術的評価とは、その発明の技術的な側面の評価であり、たとえば、技術の重要性(主事業に使われるのか)、技術の独創性(独創的な技術なのか)、技術の実用性(実際の製品に使われるのか)、技術の代替性(代替技術が存在するのか)等から導き出されるものです。
 この表では、これらの評価項目を数値化し、それらの合計値に基づいて「優」「良」「可」の3段階のランクで評価するようになっています。
 次に、特許的評価とは、その発明の特許的な評価であり、たとえば、特許性の有無(特許になる可能性が高いのか)、権利の広さ(構成要件の数が少ないのか)、権利の強さ(物の発明なのか、方法の発明なのか)、侵害立証性の高さ(見た目や分析でわかるのか、工場に入らないとわからないのか)等から導出されるものです。
 この表では、技術的評価と同様に、これらの評価項目を数値化し、それらの合計値に基づいて「大」「中」「小」「無」の4段階のランクで評価するようになっています。
 そして、技術的評価のランクと特許的評価のランクに基づいて、「S」「A」「B」「C」「D」「×」の6段階のランクで特許出願の総合的価値を評価し、たとえば、「S」?「B」にランク付けられた特許出願については原則として審査請求を行い、「C」にランク付けられたものについては検討を行って審査請求を行うか再度判断し、「D」および「×」にランク付けられたものは原則として審査請求を行わないというような判断基準を作成することができます。
 このような判断基準を用いることによって、各部門の恣意(しい)をある程度排除することができるので、審査請求の要否で争うことは少なくなります。
 なお、技術的評価や特許的評価の具体的な項目については、企業の事業戦略や状況に応じて作成する必要があるのはいうまでもありません。
 このような審査請求の判断基準を、開発部や事業部と協力しながら総務部が作成してみてはいかがでしょうか?
 審査請求の判断基準を主導的に作成する部門としては、会社全体を業務範囲とする総務部が最適だと思います。審査請求の判断基準を持っていないということでしたら、これを契機に作成しましょう。

■審査請求の要否
 ところで、審査請求の要否を判断する時期ですが、発明の技術的特性、製品化の時期、競合会社の状況等を考慮する必要がありますが、一般的には次のような時期に判断することが多いです。

・出願時
・外国出願権等時
・国内優先権出願時
・出願公開直後
・審査請求期限直前

 なお、企業によっては、出願日から一定期間(たとえば出願日から2年半)が経過した後に、まとめて検討するということも行われています。

 次回は、外国特許出願戦略について解説いたします。

高松 孝行
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