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採用ブランディング【第7回】採用を成功させるのは、未来予測より覚悟だ

2018年06月15日

■未来予測をほしがる大手企業

 今年の1月に『採用ブランディング』(幻冬舎)を出版したことで、執筆や講演が増え、多くの場で話をする機会をいただいています。これまでよりも大手企業から声がかかることもあり、じわじわと「採用ブランディング」の世間的な注目度が高まっていることを実感しています。

 しかし、大きな企業ほど、この「採用ブランディング」には慎重です。だいたい、感度のいい担当者レベルではOKがでますが、取締役レベルの決済者になると、慎重になるようです。その原因を探ると、以下の2点に集約されていると感じています。

(1)今までも人がそこそこ集まっており、現に採用できているため、変える必要がない
(2)新たな手法に取り組んでみて、本当にそれだけ効果が出るのか

 企業によっては「採用ブランディングで採用できる人員は何人か」という未来予測まで現場の担当者に提出を求めたため、担当者が私たちに相談がくることもあります。このことから「採用ブランディング」がまだまだ信じられていない、マイナーなものだという未熟さを痛感させられます。得体の知れない方法というイメージがあるからこそ、未来予測という無理難題を出し、それらしい数字が出ればもうけもの、出なければしなければいい、という根拠がほしいのでしょう。

■採用ブランディングの4つの効果

 採用ブランディングの効果は以下の4つになります。

(1)即時性 (2)明確性 (3)ジャイアント・キリング(番狂わせ) (4)予算削減

 (1)はすぐに効果が出るということ。新卒採用であればワンシーズンで、中途採用であれば1か月で、ということもあります。

 (2)はもともと採用にあるものですが、どんな人が、どれだけ採用できたかが明確にわかるということです。私たちは、「自社の理念にどれだけ共感する人材が採用できたか」ということをしっかり把握することをお勧めしています。それは私たちの調査で、理念・価値観を理解している社員の50%以上が、「将来の活躍イメージ」を持っていることがわかっています。ちなみに理念・価値観を理解していない社員はその半分以下です。つまり理念や価値観を理解している社員の2人に1人は、将来の活躍イメージを持っていることになります。

 (3)はサッカーでいう「弱小チームが強いチームを倒すこと」を指します。つまり、自社と大手企業が採用競合になり、バッティングした場合、大手企業を断って自社に入社してくれることです。どんなに無名で、小さな会社でもこれがほぼ例外なく起こります。

 (4)は年々予算が削減できていくことです。初年度こそ、いろんな整備に予算投入が必要ですが、採用人数と採用基準が同じであるならば、ほぼ削減できる可能性あります。

■悲惨な状況の企業ほど、するしかないと思える

 このように書くと、極めて都合のいいものに見えるでしょう。なぜなら今の採用が、なかなか結果が出ず、年によって採用数が変化することもあり、年々予算が増加していく傾向にあるからです。ましてジャイアント・キリングなんて起こりようがない、と思っているからでしょう。これを達成する採用ブランディングの理論や手順、過去の悲惨な状況が劇的に変化した事例をいくつも説明しても「うちでもこれが起こり得るでしょうか」と心配そうに話す方もいます。

 採用ブランディングは、理論であり、業界や企業の大小を選びません。特定の事例にのみ当てはまるものは単なる一手法であり、理論とはいえないからです。『採用ブランディング』を読み込んでもらえれば(あるいはこの連載や『月刊総務』本誌の連載を読み込むことでもいいでしょう)、いかに採用ブランディングが本質的で効率的かをわかっていただけるはずです。

 ただ、採用ブランディングを採用できない企業に総じていえるのは、「変える勇気がない」こと。当たり前かもしれませんが、すでに悲惨な状況にある企業ほど、変えるしか採用が成功できる道がないため、腹が据わり、徹底してこの採用ブランディングを極めようとします。

■伸び盛りの企業ほどチャンス

 たまに「大企業がもしこの採用ブランディングをやったら」と聞かれることがありますが、それに対して私たちは即座に「最強になります」と答えます。しかし先述したように、大企業はそこそこ母集団も集まり、そこそこ採用数も確保できているので、これを変える必要性を感じていません。これまでと大きくに異なる(ように見える)採用ブランディングを実施することで、現状が壊れることが怖いのです。このことから、構造的に大企業が採用ブランディングを実施することは、ほぼ不可能に近いと見ています。

 だとするならば、成長しているけれど、人員が追い付いていない伸び盛りの企業(実際こういう企業の依頼は多いです)にはチャンスです。なにせ知名度も、業種も、企業の大小も関係ありません。採用ブランディングを行うことで、併せて企業の認知度も上がっていきます。採用で出会った人たちがいずれ自社の商品・サービスのファンになってくれる、あるいは他社に行った人が仕事を依頼する。このような事例は枚挙にいとまがありません。

 つまり、採用という場は、企業にとってブランドを向上させていく(=企業を成長させていく)上で、絶好のチャンスであるということです。採用しながら、売り上げアップを見込める場でもある。このことに多くの企業は気付いていません。

深澤 了
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