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採用ブランディング【第9回】数だけで採用担当者を評価する矛盾

2018年07月23日

■ミスマッチが起こる原因

 採用できない、ないしは採用してもほとんど退職になってしまうという企業の本質的な原因は、結局採用担当者が「採用数」のみで評価されているという現状があります。採用担当者が採用数にのみコミットし、それが評価軸になるのであれば、当然数を満たそうとします。

 服部泰宏さんの著書『採用学』(2016・新潮社)では、150社への調査で「入社後の業績や離職率に関して、採用担当者が責任を負っている」という回答は全体の10%にも満たないと指摘し、「日本企業の採用担当者の役割は、採用活動終了時点で終わるというのが実態」と述べています。

 実際に業績や離職に関して、採用担当者が責任を追うかどうかは別にして、これまでも再三指摘してきた通り、採用が企業の業績や離職に関係あるというのは、ほぼ確実にいえることです。企業が採用担当者を採用数のみで評価している以上、いくら本質的な採用を叫んでも、それは有名無実化した努力目標で終わってしまうでしょう。

■ビジョンの浸透が業績を上げる

 私の著書『採用ブランディング』(2017・幻冬舎)やこれまでのコラムではすでに取り上げた内容ですが、「なぜ採用が企業の業績や離職に関係があるといえるのか」ということをデータで端的に示してみましょう。

 リクルートマネジメントソリューションズが2009年に発表した調査結果では、業績指標を上げるのは、「実行力」、「変革力」、「知の創出力」(部門間の深いコミュニケーション)で、それらすべての起点になるのが「ビジョン共有力」であると、統計的な相関関係を用いて発表しています。またそれよりも以前の2005年には、リクルートワークス研究所が理念浸透と業績には相関関係があると発表しています。

 ほかにも、弊社が実施した2017年の調査では「自社に不満がある」と答えた人の約7割のうち、入社1年以内に不満をいだいた人が8割以上、さらにそのうち20%が入社1か月以内に不満を抱き始めています。また、自社の理念や価値観を理解していると答えた入社3年目以内の新人社員で、「自社で将来活躍するイメージがある」と答えた人は、52.3%。自社の理念や価値観を理解していないと答えた人で、「自社で将来活躍するイメージがある」と答えた人は25%と、歴然とした差が生まれています。

■理念・価値観に共感したかはコントロールできる

 採用した人の業績や離職は、働いた部署の職場の人間関係や教育にも左右されるため、採用担当者に全面的な責任がある、ということまではいえないでしょう。ただし、上記の調査を考えると、「理念や価値観に共感している人を入社させているか」は、採用担当者自身が自分でコントロールできることです。また内定出しや入社時点でそれを把握し、評価することもそれほど難しくないでしょう。

 これだけ企業にとって重要なデータがそろっているのに、これを知らないというだけで、採用担当者に数のみコミットさせるのは、中期的に見て企業側にも不利益になることです。とにかく「大量採用する」→「大量離職する」→「ひたすら採用し続ける」、というスパイラルに陥っている企業のなんと多いことか。上記調査に沿って考えれば、採用の大いなる矛盾と指摘することができるでしょう。

 しかし、採用担当者は疲弊しながらも、採用し続けないといけません。なぜなら、採用数で評価されてしまうからです。採用は営業と一緒で、一度コツをつかむと、どんどん採用できるようにもなります。採用担当者のスキルが上がれば、歩留まりも高くなり、内定承諾の数も増えます。しかし、単に数のみコミットすれば、ミスマッチを誘発する危険性を高めてしまうだけなのです。

■経営者が数のみの評価に終止符を

 入社後、数か月で辞めてしまうというのはよくある話です。何か月までが採用の責任か、というのは、企業によって、また人によって見解の相違が出てくるでしょうが、私が前職で採用責任者をやっていた経験を踏まえると、中途のどんな優秀な人も、結果が出るまで半年くらい時間がかかります。新卒であれば、安定的に結果を出せるようになるのは、2〜3年あたりが標準でしょう。人の成長にはその人のスピードがありますから、この時間軸に誰もが必ずしも当てはまるわけではありません。そう考えれば、結果を出す前のたった数か月で辞めてしまう状況は、採用のミスマッチ以外何者でもありません。

 採用ブランディンという考え方は、理念や価値観を土台に、コンセプトを設定し、採用に一貫性をもたせること、と説明することができますが、これを導入するのであれば、同時に「数のみ」の評価ではなく、自社の理念・価値観に合致した人を入社させることも併せて評価軸としないと、一貫性が保ちにくくなります。特に採用担当者が変わってしまったときが一貫性を失う危険性をいちばん孕んでいます。この点を変えられるのは経営者です。経営者が勇気を持って、採用の変革に乗り出すことが、採用できるようになる第一歩なのです。

深澤 了
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