月刊総務プラス

『月刊総務』本誌記事:

【総務の現場から】緊急対策本部立ち上げ訓練など、多彩な施策で防災意識と知識を向上

2019-07-12 15:08

東日本大震災を機に大規模災害対策を強化

 不動産業、総合レジャー業(飲食店・映画館等の運営)を幅広く展開するヒューマックスグループ。国内の店舗数はおよそ70店舗。社員数はアルバイトも含めて約3,000人。その基盤を支える株式会社ヒューマックスでは、総務部11人で、グループ全社の管理業務を一括して担っている。ITグループ、パブリシティグループ、総務グループに分かれており、総務グループでは、備品管理などはBPOしつつ、リスク関係全般を担当。同グループの山本和奈さんは、「当社が防災についての危機意識を強くしたのは、やはり東日本大震災がきっかけ。公助の力には限界がある。そこだけに頼らずに、自分たちで会社や社員を守ろう。自助、共助を強めていこう、と取り組んできました」と話す。

近隣の社員で助け合うHAPという組織を結成

 まず取り組んだことは、安否確認サービスの導入。さらに、HAP(ヒューマックス エリア パートナーシップ)という組織体を、トップ発信によって立ち上げた。これは、社員の住んでいる地域ごとにチームを作り、発災時にはチーム内で協力して復旧活動などを行う仕組み。現在、37チームがあり、チームのリーダーやサブリーダーが、事務局である総務と連携を取りながら対応する。「安否確認サービスで、社員の無事を確認するのが初動。そこでもし、『自宅が倒壊した』というような連絡がきたら、近くで動ける人が助けに行く。そんな協力し合える関係を作りたいと考えています」。それにはチーム内の絆を強くしておくことが大切だと、HAPチームでの懇親会を会社負担で実施できるようにした。今後は、チームごとに地域の避難所に見学に行ったり、都民防災教育センターの研修などに参加することも検討中。社員の防災知識には個人差がある。教育はこれから力を入れていきたいことの1つだ。

備蓄品選びに社員も参加。防災対策を自分ごとに

 同社は、「平成30年度東京都一斉帰宅抑制推進企業認定制度」のモデル企業に選ばれた。その際、高く評価された施策の1つが、社員による食料備蓄品の実食会だ。「いわゆる試食会ではなく、発災時の状況をイメージした中で行ったもの。昼食を軽めにして来てもらい、総務からは口を出さずに、グループごとに協力して、作るところからやってもらいました。味だけでなく、作りやすさの点からも意見をもらい、それを参考に備蓄品を決定しました」。このように社員を巻き込むことで、防災を自分ごとにしてもらう。もしものときには、「自分たちで選んだものをみんなで食べるんだ」ということで、社員の満足度を上げられたら、とのねらいもあった。
 食料備蓄品の保管方法も工夫。3日分を1日分ずつ、さらに1人分ずつに分けたあと、コンテナに保管。それを移動式のカートに積んで倉庫に置いてある。コンテナには、「何日目」「何人分」と書かれたラベルが、カートには配布マニュアルが貼られている。「私たちが目指しているのは、災害時に総務や防災の担当者がいなくても、自分たちで判断して、行動してもらえるようにすること。誰が見てもひと目でわかるよう、工夫をしています」。食料備蓄品の一日目分だけは、ほかの防災用品と一緒に非常持ち出し袋に入れて、入社時に社員に配布。これも各自で判断して食べる、という行動をしてもらうため。また、自衛消防組織の担当については、日常的に目にするオフィスの座席表に記入することで周知をはかっている。

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毎月の安否確認応答訓練も。年1回の大規模訓練も実施

 昨年9月、初めてグループ各社を巻き込んで、「Day-1」訓練という初動対応訓練を実施した。対象は、緊急対策本部要員と、同立ち上げ要員。立ち上げ要員には、緊急対策本部が置かれる本社から徒歩圏内に住んでいる人が任命されている。つまり、本社勤務の人ばかりではない。ビルの構造自体を知らない人もいる。「実際、何をしたらいいのか」まで、イメージできている人は少なかった。「なので、1回動いてもらおう、と。総務としても新鮮な意見が聞きたくて実施しました」。トップも含めて約40人が参加。本社のあるビルの外に集合するところから始まり、ビルの防災センターで入館手続きのレクチャーを受け、オフィスのある22階まで、一部階段で上がる訓練も。さらに停電時にセキュリティカードが使えなくなった場合の入り方を体験し、オフィス内に到着後は、蓄電池でパソコンを立ち上げて安否確認を集計。IP無線で各事業所の確認を行うところまで実践した。訓練後の意見から、備品の取り出しやすさなど、新たな課題を見つけることもできた。「Day-1」訓練は、今年もブラッシュアップをして実施する予定だ。
 ほか、年2回、通常の防災訓練を実施。また、毎月、安否確認サービスの応答訓練も行っている。これも定型文を配信するのではなく、「備蓄品がどこに保管されているか知っていますか?」といった質問を送るなど、毎回内容を変え、少しずつ防災知識を盛り込んでいる。さらに、全社員に配布している防災カードや、ヒューマックスグループガイドブック(経営理念などが書かれた冊子)、月1回発行しているコンプライアンス通信など、ありとあらゆるところで防災情報に触れられるように工夫。これも、「自分で動けるよう、みんなの防災意識や知識をある一定レベルにまで持っていきたい」との思いからだ。
 もちろん、こうした活動を「必要ない」という社員もいる。だが、そうした否定的な意見にも、山本さんは、「よっしゃ!」という気持ちになるという。「それだけ意識はされているということですから。いちばん怖いのは、全く知りません、という状態。私は負けず嫌いなので、防災に無関心な人の気持ちも変えてみせる!との思いが、一番のモチベーションになっています」。

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【会社DATA】
株式会社ヒューマックス
本社:東京都新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティタワー22F
設立:1948年8月
代表者:代表取締役社長 林 祥隆
資本金:1億円
社員数:60人(2019年6月時点)
http://www.humax.co.jp/


株式会社ヒューマックス
総務部 総務グループ
山本和奈さん
やまもとかずな●専門商社での営業事務を経て、2018年3月入社。現場や若手の気持ちがわかる20代総務として、総務部に新風を吹き込んでいる。オフの楽しみは、大好きなドラマやアニメ、映画を見ること。「最近の自分的大ヒットは『キングダム』。初めて映画館に同じ映画を2回見に行きました」。