総務のトピックス

【会計トピックス】:

事業報告等と有価証券報告書の一体的開示のための取り組みについて

2018-04-13 14:00

経緯

 平成29年12月28日に内閣官房、金融庁、法務省、経済産業省から「事業報告等と有価証券報告書の一体的開示のための取組について」(以下、本取組)が公表されました。これは2017年6月9日閣議決定した「未来投資戦略2017」に記載されている「2019年前半を目途とした、国際的に見て最も効果的かつ効率的な開示の実現」に向け、事業報告及び計算書類(以下、事業報告等)と有価証券報告書の一体的開示の取り組みを検討し、本取り組みを公表するに至ったものです。


本取り組みの方向性

 公表された本取り組みは取り組みが実施された場合、下記のような利点が想定されています。また一体的開示の方法は現在のところ2通りの候補が検討されています。

【一体的開示による利点】
作成者: 開示書類の作成業務の軽減が見込める。
監査人: 監査業務の軽減が見込める。
株主・投資家: 株主総会前に詳細な開示書類を容易に入手できることが見込める。

【一体的開示の方法】
下記のいずれかの方法による。
(1) 会社法に基づく事業報告等と金融商品取引法に基づく有価証券報告書のそれぞれを、「二組の開示書類を段階的に開示する方法もしくは同時に開示する方法」
(2) 両法令の開示要請を満たす「一組の開示書類を一時点で開示する方法」


本取り組みで示された共通化の詳細な内容

 本取り組みで示された共通化の内容と、金融庁及び法務省による対応方針は下記のとおりです。

20180413topics01.png
20180413topics02.png

今後の方向性

 上記の内容に加え今後検討を要する事項についても、本取り組みに記載されています。さらなる効率的な開示の実現、新たな株主総会資料の電子提供方法、一体的開示の企業実務への浸透を図るための施策について、それぞれ結論を出す時期とともに触れられています。

 また、あくまで私見ですが、事業報告等と有価証券報告書の一体的開示と同様に、四半期報告書と決算短信の一体的開示も進めることができれば、関係者には利点が大きいと考えられます。四半期報告書の開示内容は簡素化が進み、決算短信の開示内容と似通ってきているため、四半期報告書と決算短信の一体的開示に向けたハードルは下がっていると言えるでしょう。

連載協力:税理士法人AKJパートナーズ
    ( http://www.akj-partners.com/

 

【会計トピックス】:

「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い(案)」の公表

2018-02-09 12:00

 平成28年に公布された「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律」(平成28年法律第62号)により、「資金決済に関する法律」(平成21年法律第59号。以下「資金決済法」という。)が改正され、仮想通貨が定義された上で、仮想通貨交換業者に対して登録制が導入されました。これを受けて、平成29年12月6日に企業会計基準委員会は、「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い(案)」(以下「公開草案」という。)を公表しました。


1. 範囲

 資金決済法に規定するすべての仮想通貨が対象になります。
なお、前払式支払手段発行者が発行するいわゆる「プリペイドカード」や、ポイント・サービス(財・サービスの販売金額の一定割合に応じてポイントを発行するサービスや、来場や利用ごとに一定額のポイントを発行するサービス等)における「ポイント」は、資金決済法上の仮想通貨には該当しません。


2. 仮想通貨交換業者又は仮想通貨利用者が保有する仮想通貨の会計処理

【期末における仮想通貨の評価に関する会計処理】

(1)活発な市場が存在する場合

 市場価格に基づく価額をもって当該仮想通貨の貸借対照表価額とし、帳簿価額との差額は当期の損益として処理します。

20180209topics01.png

(2)活発な市場が存在しない場合

 取得原価をもって貸借対照表価額とします。

 なお、期末における処分見込価額(ゼロ又は備忘価額を含む。)が取得原価を下回る場合、当該処分見込価額をもって貸借対照表価額とし、取得原価と当該処分見込価額との差額は当期の損失として処理します。

20180209topics02.png


【仮想通貨の取引に係る活発な市場の判断の変更時の取扱い】

(1)活発な市場が存在する仮想通貨が、活発な市場が存在しない仮想通貨となった場合

 活発な市場が存在しない仮想通貨となる前に最後に観察された市場価格に基づく価額をもって取得原価とし、評価差額は当期の損益として処理します。その後の期末評価は、活発な市場が存在しない仮想通貨として行います。

20180209topics03.png

(2)活発な市場が存在しない仮想通貨が、活発な市場が存在する仮想通貨となった場合

 その後の期末評価は、活発な市場が存在する仮想通貨として行います。

20180209topics04.png


【仮想通貨の売却損益の認識時点】

 仮想通貨交換業者及び仮想通貨利用者は、仮想通貨の売却損益を当該仮想通貨の売買の合意が成立した時点において認識します。

 売却損益は、仮想通貨の売却取引に係る売却収入から売却原価を控除して算定した純額を損益計算書に表示します。


3. 仮想通貨交換業者が預託者から預かった仮想通貨の会計処理

【仮想通貨交換業者が預託者から預かった仮想通貨に係る資産及び負債の認識】

 仮想通貨交換業者は、預託者との預託の合意に基づいて仮想通貨を預かった時に、預かった仮想通貨を預かった時の時価により資産として認識します。

 また、仮想通貨交換業者は、同時に、預託者に対する返還義務を、負債として認識します。当該負債の当初認識時の帳簿価額は、預かった仮想通貨に係る資産の帳簿価額と同額とします。

20180209topics05.png


【仮想通貨交換業者が預託者から預かった仮想通貨に係る期末の資産の評価及び負債の貸借対照表価額】

 仮想通貨交換業者は、預託者から預かった仮想通貨に係る資産の期末の帳簿価額について、仮想通貨交換業者が保有する同一種類の仮想通貨から簿価分離した上で、活発な市場が存在する仮想通貨と活発な市場が存在しない仮想通貨の分類に応じて、仮想通貨交換業者の保有する仮想通貨と同様の方法により評価を行います。

 また、仮想通貨交換業者は、預託者への返還義務として計上した負債の期末の貸借対照表価額を、対応する預かった仮想通貨に係る資産の期末の貸借対照表価額と同額とします。

20180209topics06.png

連載協力:税理士法人AKJパートナーズ
    ( http://www.akj-partners.com/

 

【会計トピックス】:

有償新株予約権の会計処理をめぐる検討の状況

2017-12-18 11:00

 有償新株予約権の会計処理について、2017年5月に企業会計基準委員会(ASBJ)から、実務対応報告公開草案第52号「従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い(案)」が公表されましたが、これに対して253件ものコメントが寄せられ、その大部分が本公開草案の会計処理案に反対するものとなっています。

 通常であれば今年の秋ごろには実務対応報告が正式に公表されると見られていましたが、コメントの数が極めて多かったことから、ASBJでは寄せられたコメントについて現在も対応を検討しているところです。

 しかし、ASBJは公開草案の内容について大きな変更は行わない方針です。唯一適用時期については、公開草案で「公表日以降」とされていたところを「平成30年4月1日以降」に変更する方針です。

 本稿では、特に注目されるコメントと、それに対するASBJでの対応について解説します。


1. 権利確定条件付き有償新株予約権の付与について、報酬性はないため、本公開草案の提案に同意しないコメント

 本公開草案では、権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引が、ストック・オプション会計基準第2項(4)に定める報酬としての性格を持つと考えられるため(実務対応報告公開草案第17項から第23項)、当該権利確定条件付き有償新株予約権は、企業が従業員等から払い込まれる金銭の対価及び従業員等から受ける労働や業務執行等のサービスの対価として付与するものと整理し、ストック・オプション会計基準第2項(2)に定めるストック・オプションに該当するものと提案しています。

 この提案に対し、当該権利確定条件付き有償新株予約権は「投資制度として発行しており、労働や業務執行等のサービスの対価として給付する意図はないため、報酬性はない。」といった理由等で反対するコメントが多く寄せられています。

 これに対して、ASBJでは、報酬の考え方について本公開草案の内容を変更しない方向性です。


2. 未公開企業における取扱いについて、明確化すべきであるとのコメント

 ストック・オプション会計基準第13項では、未公開企業について、ストック・オプションの公正な評価単価に代え、ストック・オプションの単位当たりの本源的価値( = 株価 - 権利行使価格)の見積もりに基づいて会計処理を行うことができるとしています。これは、未公開企業においては、損益計算に反映させるに足りるだけの信頼性をもって公正な評価単価を見積もることが困難な場合が多いと考えられるとの理由によるものです。

 しかし、未公開企業が権利確定条件付き有償新株予約権を発行する場合には、通常時価評価を行っていることが考えられます。この場合、権利確定条件を反映させた公正な評価単価を算定していることから、ストック・オプション会計基準第13項の特例が認められるのかどうか必ずしも明確ではなく、本公開草案が対象とする取引についても、当該特例が認められる旨を明記すべきとのコメントが寄せられています。

 これに対し、ASBJでは、未公開企業において公正な評価単価を見積もることができる場合であっても当該特例を認めるかどうかに関しては、ストック・オプション会計基準の見直しが必要になるとし、本公開草案ではストック・オプション会計基準等を大幅に見直すことは行わない方向性です。したがって、未公開企業が権利確定条件付き有償新株予約権を発行する場合においても、公正な評価単価に代えて本源的価値の見積りに基づいて会計処理を行うことが容認されることになります。


3. IFRSに関するコメント

 本公開草案では、新株予約権の権利確定条件として勤務条件(一定期間の勤務に基づく条件)がない場合でも、報酬として整理しています。

 他方で、IFRS(国際財務報告基準)では、権利確定条件付き有償新株予約権を報酬として認識し費用計上する場合がありますが、それは、権利確定条件として勤務条件がある場合に限定されています。この結果、日本基準とIFRSの間で差異が生じ、混乱が生じると懸念するコメントが寄せられています。

 これに対し、ASBJでは、本公開草案はストック・オプション会計基準等に照らして権利確定条件付き有償新株予約権の会計処理を整理したものであり、IFRSとの差異について同委員会だけでは対応困難であるとして、本公開草案の取扱いから変更は行わない方向性です。


4. 会社法や税務に関する取扱いを考慮すべきであるとのコメント

 会社法上の「報酬等」とは、報酬、賞与その他職務執行の対価として受ける財産上の利益をいい(会社法第361条)、職務執行の対価であること及び財産上の利益であることが要件となっています。現状では、有償新株予約権を時価発行する場合は職務執行の対価として付与するものではなく、財産上の利益でもないとして、報酬等に該当しないものと解されています。

 また、税務上も、有償新株予約権を時価発行する場合は給与等課税事由が生じないものと整理されています。

 本公開草案で、有償新株予約権を付与する取引について報酬の性格を持つと整理している点は、上記のとおり当該取引について報酬等に該当しないとする会社法上、税務上の取扱いと異なることから、実務が相当混乱すると懸念するコメントもあります。

 これに対し、ASBJでは、法律面や税務面での取扱いには言及せず、会計上の取扱いを定めるという従来からの方向性に変更はありません。


連載協力:税理士法人AKJパートナーズ
    ( http://www.akj-partners.com/

 

【会計トピックス】:

「収益認識に関する会計基準(案)」について

2017-11-06 13:00

 企業会計基準委員会(ASBJ)は、平成29年7月20日に企業会計基準公開草案第61号「収益認識に関する会計基準(案)」及び企業会計基準適用指針公開草案第61号「収益認識に関する会計基準の適用指針(案)」(以下、「本公開草案」という)を公表しました。
 本公開草案における新たな収益認識基準は、上場・非上場を問わず全ての企業に適用されることになります。本稿では、本公開草案が公表された背景や会計処理についての概要を解説します。


概要

1.背景

 我が国においては、企業会計原則の損益計算書原則に、「売上高は、実現主義の原則に従い、商品等の販売又は役務の給付によって実現したものに限る。」とされているものの、収益認識に関する包括的な会計基準はこれまで開発されていませんでした。一方、国際会計基準審議会(IASB)及び米国財務会計基準審議会(FASB)は、共同して収益認識に関する包括的な会計基準の開発を行い、平成26年5月に「顧客との契約から生じる収益」(IASBにおいてはIFRS第15号、FASBにおいてはTopic606)を公表し、IFRS第15号は平成30年1月1日以後開始する事業年度から、Topic606は平成29年12月15日より後に開始する事業年度から適用されます。

 これらの状況を踏まえ、ASBJは平成27年3月に我が国における収益認識に関する包括的な会計基準の開発に向けた検討に着手することを決定し、その後、平成28年2月に適用上の課題等に対する意見を幅広く把握するため、「収益認識に関する包括的な会計基準の開発についての意見の募集」(以下「意見募集文書」という。)を公表しました。ASBJでは、意見募集文書に寄せられた意見を踏まえ検討を重ね、本公開草案を公表するに至りました。


2.適用範囲

 本公開草案においては、次の(1)から(6)を除き、顧客との契約から生じる収益に関する会計処理及び開示に適用することが提案されています。

(1)「金融商品に関する会計基準」の範囲に含まれる金融商品に係る取引
(2)「リース取引に関する会計基準」の範囲に含まれるリース取引
(3)保険契約
(4)顧客又は潜在的な顧客への販売を容易にするために行われる同業他社との商品又は製品の交換取引(例えば、2つの企業の間で、異なる場所における顧客からの需要を適時に満たすために商品又は製品を交換する取引)
(5)金融商品の組成又は取得に際して受け取る手数料
(6)「特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針」の対象となる不動産の譲渡


3.会計処理

 会計処理については、以下の提案がされています。

(1)基本となる原則

 本公開草案の基本となる原則は、約束した財又はサービスの顧客への移転を、当該財又はサービスと交換に企業が権利を得ると見込む対価の額で描写するように、収益の認識を行うことです。また、この基本となる原則に従って収益を認識するために、次の5つのステップを適用することが提案されています。

20171106topics01.png

<ステップ1>
 当事者が、書面、口頭、取引慣行等により契約を承認し、それぞれの義務の履行を約束していること等の要件を満たす顧客との契約を識別します。

<ステップ2>
 別個の財又はサービスや一連の別個の財又はサービスを識別し、それぞれについて履行義務を識別します。

<ステップ3>
 契約等で定められた固定の契約価格の他、変動価格と現金以外の対価を考慮し、顧客に支払われる対価と金利相当分(時間価値)の影響の調整を行い、取引価格を算定します。

<ステップ4>
 契約が複数の履行から構成されている場合、履行義務の基礎となる財又はサービスの独立販売価格の比率に基づき、それぞれの履行義務に取引価格を配分します。

<ステップ5>
 履行義務を充足した時又は充足するにつれて収益を認識します。


【事例】

 システム機器(100)の販売に加え、アフターサービス(2年間で10)が付された契約を締結し、当該システム機器を顧客に納品しました(この時点でシステム機器の支配移転が完了し、履行義務が充足されたものとします)。また、顧客との契約書において、システム機器の販売とアフターサービスの提供は明確に区別されています。

<仕訳例>
20171106topics02.png
* アフターサービスは、サービス提供がされる都度、例えば期間配分によって収益計上されます。

(2)契約資産、契約負債及び債権

 顧客から対価を受け取る前又は対価を受け取る期限が到来する前に、財又はサービスを顧客に移転した場合は、収益を認識し、契約資産又は債権を貸借対照表に計上します。契約資産は、金銭債権として取り扱われ、金融商品会計基準に従って処理されます。また、財又はサービスを顧客に移転する前に顧客から対価を受け取る場合、顧客から対価を受け取った時又は対価を受け取る期限が到来した時のいずれか早い時点で、顧客から受け取る対価について契約負債を貸借対照表に計上します。

(3)特定の状況又は取引における取扱い

 本公開草案では、特定の状況又は取引における取扱いのガイダンスと設例が提供されています。
 ・財又はサービスに対する保証
 ・本人と代理人の区分
 ・追加の財又はサービスを取得するオプションの付与
 ・顧客により行使されない権利(非行使部分)
 ・返金が不要な契約における取引開始日の顧客からの支払
 ・ライセンスの供与
 ・買戻契約
 ・その他


4.開示

 開示については、以下の提案がされています。

(1)表示

 本公開草案では、企業が履行している場合又は企業が履行する前に顧客が対価を支払う場合には、企業の履行と顧客の支払との関係に基づき、契約資産、契約負債又は債権を適切な科目をもって貸借対照表に表示することとしています。なお、経過措置として、契約資産と債権を貸借対照表に区分表示しないことができ、その場合、それぞれの残高を注記する必要はありません。

(2)注記事項

 本公開草案では、顧客との契約から生じる収益については、企業の主要な事業における主な履行義務の内容及び企業が当該履行義務を充足する通常の時点(収益を認識する通常の時点)を注記することとしています。


5.適用時期

 適用時期については、(1)から(3)が提案されています。

(1)平成33年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用します。
(2)早期適用として、平成30年4月以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用できます。
(3)上記(2)に加え、平成30年12月31日に終了する連結会計年度及び事業年度から平成31年3月30日に終了する連結会計年度及び事業年度までにおける年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から適用することができます。


おわりに

 本公開草案は、国際会計基準審議会(IASB)が公表したIFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」をベースに、我が国の実務上の配慮を加えて作成されています。新たな収益認識基準は、上場・非上場を問わず全ての企業に適用されることになるため、企業の業態や業種によっては収益の認識に大きな影響を及ぼす可能性があることに留意が必要です。

連載協力:税理士法人AKJパートナーズ
    ( http://www.akj-partners.com/

 

【会計トピックス】:

クラウド型ソフトウエアの活用可能性と注意点

2017-09-14 09:00

 最近、「クラウド」という単語を頻繁に耳にするようになりましたが、なぜでしょうか。また「クラウド」にはどのようなメリットがあるのでしょうか。これらの疑問が少しでも解決できるように、管理部門で利用できるクラウド型ソフトウエアの紹介とともに、利用の際の注意点や会計業務に与える影響にも触れながら解説していきたいと思います。


クラウドとは

 クラウドとは、「ハードウエアを購入もしくはソフトウエアをインストールしなくても、インターネットを通じてサービスを必要な時に必要な分だけ利用できるようにした手法」と考えて大筋で正しいと思います。

 利用者のメリットとしてデータアクセスの容易さやメンテナンスが不要となること等が挙げられますが、普及に大きく貢献したのは資金繰りの優位性でしょう。サーバーやソフトウエアを購入する場合とは異なり、多額の初期費用は不要で、ほとんどのケースで毎月10万円にも満たないレベルの使用料を支払うことによりソフトウエアを利用できるため、導入に対し資金面のハードルが下がることが大きいのでしょう。このようにクラウドが普及した結果、「クラウド」という言葉も一般に知られるようになったと考えられます。


管理部門業務に関連のあるクラウド型ソフトウエア

 現在では数多くのクラウド型ソフトウエアがありますが、その中から主なものを紹介して行きます。

1.会計系ソフトウエア

(1)会計ソフト
 最近は入出金情報から自動で仕訳を起こしたりするものもあり便利になりましたが、請求書発行や給与計算等の他のクラウド型ソフトウエアと連携させることにより、利便性をさらに上げることが可能です。

(2)請求書発行
 顧客管理システム等の情報を元に請求書を自動作成し、メールにPDFやダウンロード用URLを添付して請求先に送付するとともに、会計ソフトに情報を反映させるクラウド型ソフトウエアで、請求書の封詰め業務や封筒代・切手代を削減することが可能となります。

(3)債権管理
 得意先ごとに債権額を管理するだけであれば会計ソフトで対応できますが、これはネットバンキングの入金情報を読み取り、債権の消し込みを行うことができる点で優れています。会社独自の消込方法を登録することにより、販売先と入金元の名前が違う場合や複数の支払いを合算で入金してくる場合などにも対処できるようになる優れ物もあり、得意先数の多い会社ほど利用価値が増します。


2.人事管理系ソフトウエア

(1)勤怠管理
 IDカードや生態認証等を利用し出勤・退勤の時間を記録することが基本機能となりますが、会社の就業規則や労働形態に合わせて各従業員の勤務時間や残業時間を計算し、また有給休暇の管理等をしてくれる機能を持つものもあります。勤怠管理ソフトには多くの種類があり機能面も多様ですので、導入を検討する際には自社に必要な機能を事前に整理しておくことをお勧めします。

(2)給与計算
 給与計算にあたり労働時間の集計が最も手間のかかる業務かと思いますが、残業時間等を集計する機能を持つ勤怠管理ソフトと連携させることにより、効率的な給与計算が可能となります。

(3)電子給与明細発行
 給与明細を電子化し、従業員へメール添付やURL通知で送付するものですが、給与計算ソフトと連携させることにより、給与計算のデータを利用して給与明細を自動的・効率的に作成することができるため、作業の削減に役立ちます。

(4)採用管理、人事管理
 上記以外では、採用管理のクラウド、従業員情報やスキル等を管理する人事管理のクラウドも増えてきました。しかし管理部門用のソフトウエアにしては解約率が低くないようで、自社の業務における必要性、活用可能性をよく見極めてから導入を検討されるとよいでしょう。


3.会計・人事管理以外

(1)グループウエア
 スケジュール管理、設備予約、連絡先一覧等の情報を社員間で共有するもので、最近は稟議や社内申請等のやり取りを可能にするワークフローの機能が付いているものも多いです。

(2)経費精算
 旅費交通費、接待費等の精算作業を効率化するものですが、前述のグループウエアや会計ソフトと連携させた場合、グループウエアに行き先を入力するとその情報から交通費の経費精算を自動で行い、さらには会計ソフト用に伝票の起票まで行うことも可能となります。

(3)資産管理
 固定資産管理ソフトのように減価償却費や固定資産税を計算する機能のものや、タグをハンディ端末やスマートフォンで読み込むことで実地棚卸や資産移動を管理するようなソフトウエアなどがあります。


クラウド型ソフトウエアの注意点

1.セキュリティ

 管理部門では機密性の高い情報を多く扱うため、最大の懸念点はセキュリティに関することではないでしょうか。セキュリティ対策は主にサービス提供会社で実施されますが、利用者でとり得る対策としては、ソフトウエアにアクセスできるIPアドレスを限定し、それ以外のIPアドレスからはサイト画面にアクセスできないようにする方法があります。


2.ソフトウエア間の機能連携について

 機能連携が進めば自動化の割合も増えるため、機能のつながっているソフトウエアを一気通貫で導入すれば使い勝手は良さそうに思えます。しかし多くの会社は予算の都合や業務の優先度から、個別にソフトウエアを導入し、その都度ソフトウエア間の機能を連携するため、ツギハギ的な構成となります。その結果、クラウドの場合はカスタマイズの自由度が低いことも原因にありますが、うまく機能連携ができないケースもあり、人的操作によりCSVデータを中継する方法による方がスムーズであることもあります。このような状況にならないように、機能連携の視点も含めて、長期的な導入計画を立ててみてはいかがでしょうか。


3.導入作業

 導入および連携作業には基礎データを用意する必要がありますが、この基礎データは利用者側の担当者がそろえることになります。しかし、作業に必要とされる基礎データをそろえる作業は意外と手間がかかりますので、担当者の実務的な負荷に注意する必要があります。


4.サービス提供会社の信用度

 サービス提供会社に万が一のことがあると、その後、サービスの利用ができなくなるため、ある程度普及しているソフトウエアを選択する方がよいかもしれません。クラウド型サービスを提供する会社は、一般的にサービス開始後は資金繰りが苦しく、一定規模の売上を超えてからは資金繰りが安定的になる傾向にあるためです。


会計業務等への影響

 「ソフトウエア等生産性向上IT導入支援事業」の優遇措置等により、政府はITを利用した効率的な経営を促進しており、クラウド型ソフトウエアの利用者は今後さらに増加すると見込まれます。ITの有効活用により単純業務を軽減できるため、付加価値の低い業務のみ行っていた人は活躍の場が減っていく可能性があります。これに対してITリテラシーの高い人や、ソフトウエアからのアウトプットを検証しそこから経営に有用な提言ができる人は、重宝されるかもしれません。

 また、クラウド連携が進めば、アウトプットの検証方法が内部統制上のポイントとしての重要性を増すかもしれません。
クラウド上のデータも差押えできるように国税犯則取締法が改正されるとの話もありますが、会計監査も税務調査もクラウド化による影響はそれほど大きくはないと思われます。なぜならシステムをクラウドへ移行しても、会社が業務を行うにあたりコントロールすべき重要なポイントは、クラウド移行前とほとんど変わらないと考えられるためです。


最後に

 導入したいと思えるようなソフトウエアはありましたでしょうか。利用者にとってクラウド型は資金繰りに優位性があると述べましたが、長期にわたり使用する場合は、結果的にクラウドの方がコスト的に高くなることもあります。したがって、必要な機能だけを慎重に選ぶ姿勢は必要かもしれません。

連載協力:税理士法人AKJパートナーズ
    ( http://www.akj-partners.com/

 

1  2  3  4