総務のトピックス

【会計トピックス】:

TOKYO PRO Marketについて

2018-07-31 09:00

はじめに

 新規株式公開(IPO)の件数は近年高水準で推移していますが、いわゆるプロ投資家を対象としたTOKYO PRO Market(以下、TPM)も絶対数は小さいものの、2017年のIPOは7件と過去最高数になっていることが注目されます。
 本稿では、一般の認知度が低いTPMについて、上場のメリット・デメリットや、東京証券取引所(以下、東証)に代わって上場適格性の調査を行うJ-Adviserの制度など、その概要について解説を行います。


TOKYO PRO Marketとは

 東証が運営する株式市場としては、本則市場(市場第一部、第二部)、マザーズ、JASDAQ、TPMがあります。
 上記のうちTPM以外は一般投資家も参加可能であるのに対し、TPMは特定投資家等(いわゆる「プロ投資家」)を対象とするのが大きな特徴です。参加者をプロ投資家に限定することで上場基準や開示制度の自由度を高め、上場準備・上場後の負担を軽減しています。
 他市場であれば、上場準備には少なくとも3年以上かかると言われることが多いですが(直近2年分の財務諸表等につき監査証明が必要で、その準備期間も必要なため)、TPMであれば短期間での上場も可能です。


メリット・デメリット

 株式上場のメリット・デメリットは様々ありますが、まず他市場への上場と比べた場合のメリット・デメリットを整理し、そのうえでTPM上場のメリット・デメリットを述べます。

(ア)他市場への上場と比べてのメリット・デメリット
 他市場(本則市場、マザーズ、JASDAQ)への上場と比べてのメリットとしては、上述のとおり上場準備・上場後の負担が軽いことが挙げられます。上場準備期間・コストにおいて、他市場への上場と比べると企業の負担は非常に小さくなります。
 他方で、他市場への上場と比べるとハードルが低いことから、他市場への上場と同レベルの信用力・知名度が得られるわけではありません。また、TPMは一般投資家の参加がなく、プロ投資家の参加も現状では限られていることから、株式の流動性が低く、経営者等の保有する株式の売出しや公募増資による資金調達はあまり期待できないという状況にあり、この点は他市場への上場と比べてのデメリットといえます。

(イ)TPM上場のメリット・デメリット
 他市場への上場と比べるとハードルが低いとはいえ、TPM上場に際しては社内管理体制の整備が要求され、監査証明を受けた財務諸表等が公開されること等から、一般的な非上場企業と比較すると信用力は大幅に向上し、この点でのメリットは大きいといえます。
 また、TPM上場に際しては、経営者の個人保証を外すことが求められますが、これにより後継者の負担が軽減されるため、事業承継を円滑に行えるという点もメリットになると考えられます。
 さらに、上記(ア)では株式の売出しや公募増資による資金調達はあまり期待できないというデメリットに触れましたが、資金調達であれば上場による信用力を基に金融機関等からの調達も期待できますので、株式の売出しや公募増資のニーズのない企業にとっては、上場のメリットを享受しつつ株主の増加による様々なコストを負わずに済むという点で、他市場よりも魅力が大きいとも考えられます。
 他方で、デメリットとしては、費用負担が比較的軽いとはいえ、社内管理体制の整備、財務諸表等の開示・監査証明等の必要性から、相応のコストが生じる点が挙げられます。


TPMの上場基準

 東証に上場する場合、TPM以外の市場では株主数、時価総額、流通株式数、利益水準といった数値基準を満たす必要があります。
 これに対し、TPMには数値基準がなく、東証の審査の代わりに後述するJ-Adviserが上場適格性について総合的に評価します。
 また、他市場は財務諸表等の監査証明が2年分必要であるのに対し、TPMは1年分で済みます。四半期開示や内部統制報告書も他市場では必須であるのに対し、TPMでは任意とされています。
 このように、上場基準・開示基準が柔軟であることから、他市場に比べて上場準備期間は短く、費用負担も小さくなります。


J-Adviser制度

 東証の他市場への上場に際しては、東証による審査が必要ですが、TPMでは東証から資格の認証を受けた「J-Adviser」が、上場のプロフェッショナルとして東証に代わって上場適格性の調査・確認を行います。また、上場後は、上場適格性を維持できるよう継続的に助言・指導を行います。
 したがって、TPM上場に際してはJ-Adviserと契約を締結し、上場後もJ-Adviserとの契約を維持する必要があります。


最後に

 マザーズ等の一般市場への上場には、長期にわたる準備期間と多大なコストが必要となり、企業にとっては大きな負担となります。
 上述のとおり、知名度の向上や資金調達面では他市場への上場と同じようなメリットを享受できるとはいえません。しかし、上場時の株式売出しや公募増資による資金調達の必要性は低いものの、上場による信用力向上を図りたい企業などにとっては、TPMへの上場が有力な選択肢になりうるものと考えます。

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事業報告等と有価証券報告書の一体的開示のための取り組みについて

2018-04-13 14:00

経緯

 平成29年12月28日に内閣官房、金融庁、法務省、経済産業省から「事業報告等と有価証券報告書の一体的開示のための取組について」(以下、本取組)が公表されました。これは2017年6月9日閣議決定した「未来投資戦略2017」に記載されている「2019年前半を目途とした、国際的に見て最も効果的かつ効率的な開示の実現」に向け、事業報告及び計算書類(以下、事業報告等)と有価証券報告書の一体的開示の取り組みを検討し、本取り組みを公表するに至ったものです。


本取り組みの方向性

 公表された本取り組みは取り組みが実施された場合、下記のような利点が想定されています。また一体的開示の方法は現在のところ2通りの候補が検討されています。

【一体的開示による利点】
作成者: 開示書類の作成業務の軽減が見込める。
監査人: 監査業務の軽減が見込める。
株主・投資家: 株主総会前に詳細な開示書類を容易に入手できることが見込める。

【一体的開示の方法】
下記のいずれかの方法による。
(1) 会社法に基づく事業報告等と金融商品取引法に基づく有価証券報告書のそれぞれを、「二組の開示書類を段階的に開示する方法もしくは同時に開示する方法」
(2) 両法令の開示要請を満たす「一組の開示書類を一時点で開示する方法」


本取り組みで示された共通化の詳細な内容

 本取り組みで示された共通化の内容と、金融庁及び法務省による対応方針は下記のとおりです。

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今後の方向性

 上記の内容に加え今後検討を要する事項についても、本取り組みに記載されています。さらなる効率的な開示の実現、新たな株主総会資料の電子提供方法、一体的開示の企業実務への浸透を図るための施策について、それぞれ結論を出す時期とともに触れられています。

 また、あくまで私見ですが、事業報告等と有価証券報告書の一体的開示と同様に、四半期報告書と決算短信の一体的開示も進めることができれば、関係者には利点が大きいと考えられます。四半期報告書の開示内容は簡素化が進み、決算短信の開示内容と似通ってきているため、四半期報告書と決算短信の一体的開示に向けたハードルは下がっていると言えるでしょう。

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「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い(案)」の公表

2018-02-09 12:00

 平成28年に公布された「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律」(平成28年法律第62号)により、「資金決済に関する法律」(平成21年法律第59号。以下「資金決済法」という。)が改正され、仮想通貨が定義された上で、仮想通貨交換業者に対して登録制が導入されました。これを受けて、平成29年12月6日に企業会計基準委員会は、「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い(案)」(以下「公開草案」という。)を公表しました。


1. 範囲

 資金決済法に規定するすべての仮想通貨が対象になります。
なお、前払式支払手段発行者が発行するいわゆる「プリペイドカード」や、ポイント・サービス(財・サービスの販売金額の一定割合に応じてポイントを発行するサービスや、来場や利用ごとに一定額のポイントを発行するサービス等)における「ポイント」は、資金決済法上の仮想通貨には該当しません。


2. 仮想通貨交換業者又は仮想通貨利用者が保有する仮想通貨の会計処理

【期末における仮想通貨の評価に関する会計処理】

(1)活発な市場が存在する場合

 市場価格に基づく価額をもって当該仮想通貨の貸借対照表価額とし、帳簿価額との差額は当期の損益として処理します。

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(2)活発な市場が存在しない場合

 取得原価をもって貸借対照表価額とします。

 なお、期末における処分見込価額(ゼロ又は備忘価額を含む。)が取得原価を下回る場合、当該処分見込価額をもって貸借対照表価額とし、取得原価と当該処分見込価額との差額は当期の損失として処理します。

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【仮想通貨の取引に係る活発な市場の判断の変更時の取扱い】

(1)活発な市場が存在する仮想通貨が、活発な市場が存在しない仮想通貨となった場合

 活発な市場が存在しない仮想通貨となる前に最後に観察された市場価格に基づく価額をもって取得原価とし、評価差額は当期の損益として処理します。その後の期末評価は、活発な市場が存在しない仮想通貨として行います。

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(2)活発な市場が存在しない仮想通貨が、活発な市場が存在する仮想通貨となった場合

 その後の期末評価は、活発な市場が存在する仮想通貨として行います。

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【仮想通貨の売却損益の認識時点】

 仮想通貨交換業者及び仮想通貨利用者は、仮想通貨の売却損益を当該仮想通貨の売買の合意が成立した時点において認識します。

 売却損益は、仮想通貨の売却取引に係る売却収入から売却原価を控除して算定した純額を損益計算書に表示します。


3. 仮想通貨交換業者が預託者から預かった仮想通貨の会計処理

【仮想通貨交換業者が預託者から預かった仮想通貨に係る資産及び負債の認識】

 仮想通貨交換業者は、預託者との預託の合意に基づいて仮想通貨を預かった時に、預かった仮想通貨を預かった時の時価により資産として認識します。

 また、仮想通貨交換業者は、同時に、預託者に対する返還義務を、負債として認識します。当該負債の当初認識時の帳簿価額は、預かった仮想通貨に係る資産の帳簿価額と同額とします。

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【仮想通貨交換業者が預託者から預かった仮想通貨に係る期末の資産の評価及び負債の貸借対照表価額】

 仮想通貨交換業者は、預託者から預かった仮想通貨に係る資産の期末の帳簿価額について、仮想通貨交換業者が保有する同一種類の仮想通貨から簿価分離した上で、活発な市場が存在する仮想通貨と活発な市場が存在しない仮想通貨の分類に応じて、仮想通貨交換業者の保有する仮想通貨と同様の方法により評価を行います。

 また、仮想通貨交換業者は、預託者への返還義務として計上した負債の期末の貸借対照表価額を、対応する預かった仮想通貨に係る資産の期末の貸借対照表価額と同額とします。

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有償新株予約権の会計処理をめぐる検討の状況

2017-12-18 11:00

 有償新株予約権の会計処理について、2017年5月に企業会計基準委員会(ASBJ)から、実務対応報告公開草案第52号「従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い(案)」が公表されましたが、これに対して253件ものコメントが寄せられ、その大部分が本公開草案の会計処理案に反対するものとなっています。

 通常であれば今年の秋ごろには実務対応報告が正式に公表されると見られていましたが、コメントの数が極めて多かったことから、ASBJでは寄せられたコメントについて現在も対応を検討しているところです。

 しかし、ASBJは公開草案の内容について大きな変更は行わない方針です。唯一適用時期については、公開草案で「公表日以降」とされていたところを「平成30年4月1日以降」に変更する方針です。

 本稿では、特に注目されるコメントと、それに対するASBJでの対応について解説します。


1. 権利確定条件付き有償新株予約権の付与について、報酬性はないため、本公開草案の提案に同意しないコメント

 本公開草案では、権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引が、ストック・オプション会計基準第2項(4)に定める報酬としての性格を持つと考えられるため(実務対応報告公開草案第17項から第23項)、当該権利確定条件付き有償新株予約権は、企業が従業員等から払い込まれる金銭の対価及び従業員等から受ける労働や業務執行等のサービスの対価として付与するものと整理し、ストック・オプション会計基準第2項(2)に定めるストック・オプションに該当するものと提案しています。

 この提案に対し、当該権利確定条件付き有償新株予約権は「投資制度として発行しており、労働や業務執行等のサービスの対価として給付する意図はないため、報酬性はない。」といった理由等で反対するコメントが多く寄せられています。

 これに対して、ASBJでは、報酬の考え方について本公開草案の内容を変更しない方向性です。


2. 未公開企業における取扱いについて、明確化すべきであるとのコメント

 ストック・オプション会計基準第13項では、未公開企業について、ストック・オプションの公正な評価単価に代え、ストック・オプションの単位当たりの本源的価値( = 株価 - 権利行使価格)の見積もりに基づいて会計処理を行うことができるとしています。これは、未公開企業においては、損益計算に反映させるに足りるだけの信頼性をもって公正な評価単価を見積もることが困難な場合が多いと考えられるとの理由によるものです。

 しかし、未公開企業が権利確定条件付き有償新株予約権を発行する場合には、通常時価評価を行っていることが考えられます。この場合、権利確定条件を反映させた公正な評価単価を算定していることから、ストック・オプション会計基準第13項の特例が認められるのかどうか必ずしも明確ではなく、本公開草案が対象とする取引についても、当該特例が認められる旨を明記すべきとのコメントが寄せられています。

 これに対し、ASBJでは、未公開企業において公正な評価単価を見積もることができる場合であっても当該特例を認めるかどうかに関しては、ストック・オプション会計基準の見直しが必要になるとし、本公開草案ではストック・オプション会計基準等を大幅に見直すことは行わない方向性です。したがって、未公開企業が権利確定条件付き有償新株予約権を発行する場合においても、公正な評価単価に代えて本源的価値の見積りに基づいて会計処理を行うことが容認されることになります。


3. IFRSに関するコメント

 本公開草案では、新株予約権の権利確定条件として勤務条件(一定期間の勤務に基づく条件)がない場合でも、報酬として整理しています。

 他方で、IFRS(国際財務報告基準)では、権利確定条件付き有償新株予約権を報酬として認識し費用計上する場合がありますが、それは、権利確定条件として勤務条件がある場合に限定されています。この結果、日本基準とIFRSの間で差異が生じ、混乱が生じると懸念するコメントが寄せられています。

 これに対し、ASBJでは、本公開草案はストック・オプション会計基準等に照らして権利確定条件付き有償新株予約権の会計処理を整理したものであり、IFRSとの差異について同委員会だけでは対応困難であるとして、本公開草案の取扱いから変更は行わない方向性です。


4. 会社法や税務に関する取扱いを考慮すべきであるとのコメント

 会社法上の「報酬等」とは、報酬、賞与その他職務執行の対価として受ける財産上の利益をいい(会社法第361条)、職務執行の対価であること及び財産上の利益であることが要件となっています。現状では、有償新株予約権を時価発行する場合は職務執行の対価として付与するものではなく、財産上の利益でもないとして、報酬等に該当しないものと解されています。

 また、税務上も、有償新株予約権を時価発行する場合は給与等課税事由が生じないものと整理されています。

 本公開草案で、有償新株予約権を付与する取引について報酬の性格を持つと整理している点は、上記のとおり当該取引について報酬等に該当しないとする会社法上、税務上の取扱いと異なることから、実務が相当混乱すると懸念するコメントもあります。

 これに対し、ASBJでは、法律面や税務面での取扱いには言及せず、会計上の取扱いを定めるという従来からの方向性に変更はありません。


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「収益認識に関する会計基準(案)」について

2017-11-06 13:00

 企業会計基準委員会(ASBJ)は、平成29年7月20日に企業会計基準公開草案第61号「収益認識に関する会計基準(案)」及び企業会計基準適用指針公開草案第61号「収益認識に関する会計基準の適用指針(案)」(以下、「本公開草案」という)を公表しました。
 本公開草案における新たな収益認識基準は、上場・非上場を問わず全ての企業に適用されることになります。本稿では、本公開草案が公表された背景や会計処理についての概要を解説します。


概要

1.背景

 我が国においては、企業会計原則の損益計算書原則に、「売上高は、実現主義の原則に従い、商品等の販売又は役務の給付によって実現したものに限る。」とされているものの、収益認識に関する包括的な会計基準はこれまで開発されていませんでした。一方、国際会計基準審議会(IASB)及び米国財務会計基準審議会(FASB)は、共同して収益認識に関する包括的な会計基準の開発を行い、平成26年5月に「顧客との契約から生じる収益」(IASBにおいてはIFRS第15号、FASBにおいてはTopic606)を公表し、IFRS第15号は平成30年1月1日以後開始する事業年度から、Topic606は平成29年12月15日より後に開始する事業年度から適用されます。

 これらの状況を踏まえ、ASBJは平成27年3月に我が国における収益認識に関する包括的な会計基準の開発に向けた検討に着手することを決定し、その後、平成28年2月に適用上の課題等に対する意見を幅広く把握するため、「収益認識に関する包括的な会計基準の開発についての意見の募集」(以下「意見募集文書」という。)を公表しました。ASBJでは、意見募集文書に寄せられた意見を踏まえ検討を重ね、本公開草案を公表するに至りました。


2.適用範囲

 本公開草案においては、次の(1)から(6)を除き、顧客との契約から生じる収益に関する会計処理及び開示に適用することが提案されています。

(1)「金融商品に関する会計基準」の範囲に含まれる金融商品に係る取引
(2)「リース取引に関する会計基準」の範囲に含まれるリース取引
(3)保険契約
(4)顧客又は潜在的な顧客への販売を容易にするために行われる同業他社との商品又は製品の交換取引(例えば、2つの企業の間で、異なる場所における顧客からの需要を適時に満たすために商品又は製品を交換する取引)
(5)金融商品の組成又は取得に際して受け取る手数料
(6)「特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針」の対象となる不動産の譲渡


3.会計処理

 会計処理については、以下の提案がされています。

(1)基本となる原則

 本公開草案の基本となる原則は、約束した財又はサービスの顧客への移転を、当該財又はサービスと交換に企業が権利を得ると見込む対価の額で描写するように、収益の認識を行うことです。また、この基本となる原則に従って収益を認識するために、次の5つのステップを適用することが提案されています。

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<ステップ1>
 当事者が、書面、口頭、取引慣行等により契約を承認し、それぞれの義務の履行を約束していること等の要件を満たす顧客との契約を識別します。

<ステップ2>
 別個の財又はサービスや一連の別個の財又はサービスを識別し、それぞれについて履行義務を識別します。

<ステップ3>
 契約等で定められた固定の契約価格の他、変動価格と現金以外の対価を考慮し、顧客に支払われる対価と金利相当分(時間価値)の影響の調整を行い、取引価格を算定します。

<ステップ4>
 契約が複数の履行から構成されている場合、履行義務の基礎となる財又はサービスの独立販売価格の比率に基づき、それぞれの履行義務に取引価格を配分します。

<ステップ5>
 履行義務を充足した時又は充足するにつれて収益を認識します。


【事例】

 システム機器(100)の販売に加え、アフターサービス(2年間で10)が付された契約を締結し、当該システム機器を顧客に納品しました(この時点でシステム機器の支配移転が完了し、履行義務が充足されたものとします)。また、顧客との契約書において、システム機器の販売とアフターサービスの提供は明確に区別されています。

<仕訳例>
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* アフターサービスは、サービス提供がされる都度、例えば期間配分によって収益計上されます。

(2)契約資産、契約負債及び債権

 顧客から対価を受け取る前又は対価を受け取る期限が到来する前に、財又はサービスを顧客に移転した場合は、収益を認識し、契約資産又は債権を貸借対照表に計上します。契約資産は、金銭債権として取り扱われ、金融商品会計基準に従って処理されます。また、財又はサービスを顧客に移転する前に顧客から対価を受け取る場合、顧客から対価を受け取った時又は対価を受け取る期限が到来した時のいずれか早い時点で、顧客から受け取る対価について契約負債を貸借対照表に計上します。

(3)特定の状況又は取引における取扱い

 本公開草案では、特定の状況又は取引における取扱いのガイダンスと設例が提供されています。
 ・財又はサービスに対する保証
 ・本人と代理人の区分
 ・追加の財又はサービスを取得するオプションの付与
 ・顧客により行使されない権利(非行使部分)
 ・返金が不要な契約における取引開始日の顧客からの支払
 ・ライセンスの供与
 ・買戻契約
 ・その他


4.開示

 開示については、以下の提案がされています。

(1)表示

 本公開草案では、企業が履行している場合又は企業が履行する前に顧客が対価を支払う場合には、企業の履行と顧客の支払との関係に基づき、契約資産、契約負債又は債権を適切な科目をもって貸借対照表に表示することとしています。なお、経過措置として、契約資産と債権を貸借対照表に区分表示しないことができ、その場合、それぞれの残高を注記する必要はありません。

(2)注記事項

 本公開草案では、顧客との契約から生じる収益については、企業の主要な事業における主な履行義務の内容及び企業が当該履行義務を充足する通常の時点(収益を認識する通常の時点)を注記することとしています。


5.適用時期

 適用時期については、(1)から(3)が提案されています。

(1)平成33年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用します。
(2)早期適用として、平成30年4月以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用できます。
(3)上記(2)に加え、平成30年12月31日に終了する連結会計年度及び事業年度から平成31年3月30日に終了する連結会計年度及び事業年度までにおける年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から適用することができます。


おわりに

 本公開草案は、国際会計基準審議会(IASB)が公表したIFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」をベースに、我が国の実務上の配慮を加えて作成されています。新たな収益認識基準は、上場・非上場を問わず全ての企業に適用されることになるため、企業の業態や業種によっては収益の認識に大きな影響を及ぼす可能性があることに留意が必要です。

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