総務のトピックス

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「監査基準の改訂に関する意見書」の概要

2019-02-25 10:00

 金融庁の企業会計審議会は、2018年7月に、「監査基準の改訂に関する意見書」(以下、「本意見書」)を公表しました。本意見書は、「監査基準の改訂について」と改訂後の監査基準から構成されています。
 監査基準の主な改訂点としては、監査報告書において「監査上の主要な検討事項」の記載を求めている点等が挙げられます。
 本稿では、「監査上の主要な検討事項」の内容を中心に、本意見書の概要を紹介します。

1.経緯

 わが国を含め、国際的に採用されてきた従来の監査報告書は、記載文言を標準化して監査人の意見を簡潔明瞭に記載する、いわゆる短文式の監査報告書でした。これに対しては、かねてより、監査意見に至る監査のプロセスに関する情報が十分に提供されず、監査の内容が見えにくいとの指摘がされてきました。
 このような指摘等を踏まえ、近年の国際的動向として、監査プロセスの透明性を向上させることを目的に、監査人が当年度の財務諸表の監査において特に重要であると判断した事項(以下「監査上の主要な検討事項」)を監査報告書に記載する監査基準の改訂が行われてきました。具体的には、英国では2013年度から、英国を除くEU諸国では2017年度から当該事項の監査報告書への記載が実施されており、米国でも2019年度から実施されることとなっています。
 わが国においても、こうした国際的動向を踏まえつつ、監査プロセスの透明性を向上させる観点から、監査報告書において「監査上の主要な検討事項」の記載を求める監査基準の改訂について検討を重ね、今般の本意見書の公表に至りました。


2.監査報告書における「監査上の主要な検討事項」の意義

 監査報告書における「監査上の主要な検討事項」の記載は、監査人が実施した監査の透明性を向上させ、監査報告書の情報価値を高めることにその意義があります。
 この記載により、以下のような効果が期待されます

・ 財務諸表利用者に対して監査のプロセスに関する情報が、監査の品質を評価する新たな検討材料として提供されることで、監査の信頼性向上に資すること
・ 財務諸表利用者の監査や財務諸表に対する理解が深まるとともに、経営者との対話が促進されること
・ 監査人と監査役、監査役会、監査等委員会又は監査委員会(以下、「監査役等」)の間のコミュニケーションや、監査人と経営者の間の議論を更に充実させることを通じ、コーポレート・ガバナンスの強化や、監査の過程で識別した様々なリスクに関する認識が共有されることによる効果的な監査の実施につながること


3.監査基準の主な改訂点

(1)「監査上の主要な検討事項」について
1. 監査報告書における位置づけ
「監査上の主要な検討事項」の記載は、監査意見とは明確に区別しなければならないことを明確にしています。
 これは、監査報告書における「監査上の主要な検討事項」の記載は、財務諸表利用者に対し、監査人が実施した監査の内容に関する情報を提供するものであり、監査報告書における監査意見の位置付けを変更するものではないとの考えによるものです。
2.「監査上の主要な検討事項」の決定
 監査人は、監査の過程で監査役等と協議した事項の中から、特に注意を払った事項を決定し、当該決定を行った事項の中からさらに、当年度の財務諸表の監査において、職業的専門家として特に重要であると判断した事項を絞り込み、「監査上の主要な検討事項」として決定することとなります。
3.「監査上の主要な検討事項」の記載
 監査人は、「監査上の主要な検討事項」であると決定した事項について、監査報告書に「監査上の主要な検討事項」の区分を設け、関連する財務諸表における開示がある場合には当該開示への参照を付した上で、以下を記載することとなります。
・「監査上の主要な検討事項」の内容
・ 監査人が、当年度の財務諸表の監査における特に重要な事項であると考え、「監査上の主要な検討事項」であると決定した理由
・ 監査における監査人の対応

 以上に加え、ここでは割愛しますが、監査意見が無限定適正意見以外の場合の取扱い、「監査上の主要な検討事項」と企業による開示との関係についても整理されています。


(2)その他の主な改訂点
1. 監査報告書の記載区分等
 監査報告書の記載区分について、以下の改訂が行われています。
・ 監査人の意見を監査報告書の冒頭に記載することとし、記載順序を変更するとともに、新たに意見の根拠の区分を設ける
・ 経営者の責任を経営者及び監査役等の責任に変更し、監査役等の財務報告に関する責任を記載する
2. 継続企業の前提に関する事項
 継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められる場合、監査人が監査報告書に記載する要件は変更することなく、独立した区分を設けて継続企業の前提に関する事項を記載することとしています。これは、継続企業の前提に関する評価と開示に関する経営者及び監査人の対応についてより明確にするという考えによるものです。


4.適用時期

 「監査上の主要な検討事項」については、上場企業等の金融商品取引法に基づく2021年3月決算に係る財務諸表の監査から適用されます。また、早期適用も可能とされ、特に東証一部上場企業については、できるだけ2020年3月決算の監査から適用することが期待されています。


5.「監査上の主要な検討事項」として想定される内容

 以上が本意見書の概要になりますが、「監査上の主要な検討事項」の具体的内容について、欧州企業の開示例をみると、特に収益認識、のれん、引当金といった項目が多くの企業で記載されています。わが国においてもこれらの項目は「監査上の主要な検討事項」として多くの企業の監査報告書に記載されることになるものと想定されます。


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TOKYO PRO Marketについて

2018-07-31 09:00

はじめに

 新規株式公開(IPO)の件数は近年高水準で推移していますが、いわゆるプロ投資家を対象としたTOKYO PRO Market(以下、TPM)も絶対数は小さいものの、2017年のIPOは7件と過去最高数になっていることが注目されます。
 本稿では、一般の認知度が低いTPMについて、上場のメリット・デメリットや、東京証券取引所(以下、東証)に代わって上場適格性の調査を行うJ-Adviserの制度など、その概要について解説を行います。


TOKYO PRO Marketとは

 東証が運営する株式市場としては、本則市場(市場第一部、第二部)、マザーズ、JASDAQ、TPMがあります。
 上記のうちTPM以外は一般投資家も参加可能であるのに対し、TPMは特定投資家等(いわゆる「プロ投資家」)を対象とするのが大きな特徴です。参加者をプロ投資家に限定することで上場基準や開示制度の自由度を高め、上場準備・上場後の負担を軽減しています。
 他市場であれば、上場準備には少なくとも3年以上かかると言われることが多いですが(直近2年分の財務諸表等につき監査証明が必要で、その準備期間も必要なため)、TPMであれば短期間での上場も可能です。


メリット・デメリット

 株式上場のメリット・デメリットは様々ありますが、まず他市場への上場と比べた場合のメリット・デメリットを整理し、そのうえでTPM上場のメリット・デメリットを述べます。

(ア)他市場への上場と比べてのメリット・デメリット
 他市場(本則市場、マザーズ、JASDAQ)への上場と比べてのメリットとしては、上述のとおり上場準備・上場後の負担が軽いことが挙げられます。上場準備期間・コストにおいて、他市場への上場と比べると企業の負担は非常に小さくなります。
 他方で、他市場への上場と比べるとハードルが低いことから、他市場への上場と同レベルの信用力・知名度が得られるわけではありません。また、TPMは一般投資家の参加がなく、プロ投資家の参加も現状では限られていることから、株式の流動性が低く、経営者等の保有する株式の売出しや公募増資による資金調達はあまり期待できないという状況にあり、この点は他市場への上場と比べてのデメリットといえます。

(イ)TPM上場のメリット・デメリット
 他市場への上場と比べるとハードルが低いとはいえ、TPM上場に際しては社内管理体制の整備が要求され、監査証明を受けた財務諸表等が公開されること等から、一般的な非上場企業と比較すると信用力は大幅に向上し、この点でのメリットは大きいといえます。
 また、TPM上場に際しては、経営者の個人保証を外すことが求められますが、これにより後継者の負担が軽減されるため、事業承継を円滑に行えるという点もメリットになると考えられます。
 さらに、上記(ア)では株式の売出しや公募増資による資金調達はあまり期待できないというデメリットに触れましたが、資金調達であれば上場による信用力を基に金融機関等からの調達も期待できますので、株式の売出しや公募増資のニーズのない企業にとっては、上場のメリットを享受しつつ株主の増加による様々なコストを負わずに済むという点で、他市場よりも魅力が大きいとも考えられます。
 他方で、デメリットとしては、費用負担が比較的軽いとはいえ、社内管理体制の整備、財務諸表等の開示・監査証明等の必要性から、相応のコストが生じる点が挙げられます。


TPMの上場基準

 東証に上場する場合、TPM以外の市場では株主数、時価総額、流通株式数、利益水準といった数値基準を満たす必要があります。
 これに対し、TPMには数値基準がなく、東証の審査の代わりに後述するJ-Adviserが上場適格性について総合的に評価します。
 また、他市場は財務諸表等の監査証明が2年分必要であるのに対し、TPMは1年分で済みます。四半期開示や内部統制報告書も他市場では必須であるのに対し、TPMでは任意とされています。
 このように、上場基準・開示基準が柔軟であることから、他市場に比べて上場準備期間は短く、費用負担も小さくなります。


J-Adviser制度

 東証の他市場への上場に際しては、東証による審査が必要ですが、TPMでは東証から資格の認証を受けた「J-Adviser」が、上場のプロフェッショナルとして東証に代わって上場適格性の調査・確認を行います。また、上場後は、上場適格性を維持できるよう継続的に助言・指導を行います。
 したがって、TPM上場に際してはJ-Adviserと契約を締結し、上場後もJ-Adviserとの契約を維持する必要があります。


最後に

 マザーズ等の一般市場への上場には、長期にわたる準備期間と多大なコストが必要となり、企業にとっては大きな負担となります。
 上述のとおり、知名度の向上や資金調達面では他市場への上場と同じようなメリットを享受できるとはいえません。しかし、上場時の株式売出しや公募増資による資金調達の必要性は低いものの、上場による信用力向上を図りたい企業などにとっては、TPMへの上場が有力な選択肢になりうるものと考えます。

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事業報告等と有価証券報告書の一体的開示のための取り組みについて

2018-04-13 14:00

経緯

 平成29年12月28日に内閣官房、金融庁、法務省、経済産業省から「事業報告等と有価証券報告書の一体的開示のための取組について」(以下、本取組)が公表されました。これは2017年6月9日閣議決定した「未来投資戦略2017」に記載されている「2019年前半を目途とした、国際的に見て最も効果的かつ効率的な開示の実現」に向け、事業報告及び計算書類(以下、事業報告等)と有価証券報告書の一体的開示の取り組みを検討し、本取り組みを公表するに至ったものです。


本取り組みの方向性

 公表された本取り組みは取り組みが実施された場合、下記のような利点が想定されています。また一体的開示の方法は現在のところ2通りの候補が検討されています。

【一体的開示による利点】
作成者: 開示書類の作成業務の軽減が見込める。
監査人: 監査業務の軽減が見込める。
株主・投資家: 株主総会前に詳細な開示書類を容易に入手できることが見込める。

【一体的開示の方法】
下記のいずれかの方法による。
(1) 会社法に基づく事業報告等と金融商品取引法に基づく有価証券報告書のそれぞれを、「二組の開示書類を段階的に開示する方法もしくは同時に開示する方法」
(2) 両法令の開示要請を満たす「一組の開示書類を一時点で開示する方法」


本取り組みで示された共通化の詳細な内容

 本取り組みで示された共通化の内容と、金融庁及び法務省による対応方針は下記のとおりです。

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今後の方向性

 上記の内容に加え今後検討を要する事項についても、本取り組みに記載されています。さらなる効率的な開示の実現、新たな株主総会資料の電子提供方法、一体的開示の企業実務への浸透を図るための施策について、それぞれ結論を出す時期とともに触れられています。

 また、あくまで私見ですが、事業報告等と有価証券報告書の一体的開示と同様に、四半期報告書と決算短信の一体的開示も進めることができれば、関係者には利点が大きいと考えられます。四半期報告書の開示内容は簡素化が進み、決算短信の開示内容と似通ってきているため、四半期報告書と決算短信の一体的開示に向けたハードルは下がっていると言えるでしょう。

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「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い(案)」の公表

2018-02-09 12:00

 平成28年に公布された「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律」(平成28年法律第62号)により、「資金決済に関する法律」(平成21年法律第59号。以下「資金決済法」という。)が改正され、仮想通貨が定義された上で、仮想通貨交換業者に対して登録制が導入されました。これを受けて、平成29年12月6日に企業会計基準委員会は、「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い(案)」(以下「公開草案」という。)を公表しました。


1. 範囲

 資金決済法に規定するすべての仮想通貨が対象になります。
なお、前払式支払手段発行者が発行するいわゆる「プリペイドカード」や、ポイント・サービス(財・サービスの販売金額の一定割合に応じてポイントを発行するサービスや、来場や利用ごとに一定額のポイントを発行するサービス等)における「ポイント」は、資金決済法上の仮想通貨には該当しません。


2. 仮想通貨交換業者又は仮想通貨利用者が保有する仮想通貨の会計処理

【期末における仮想通貨の評価に関する会計処理】

(1)活発な市場が存在する場合

 市場価格に基づく価額をもって当該仮想通貨の貸借対照表価額とし、帳簿価額との差額は当期の損益として処理します。

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(2)活発な市場が存在しない場合

 取得原価をもって貸借対照表価額とします。

 なお、期末における処分見込価額(ゼロ又は備忘価額を含む。)が取得原価を下回る場合、当該処分見込価額をもって貸借対照表価額とし、取得原価と当該処分見込価額との差額は当期の損失として処理します。

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【仮想通貨の取引に係る活発な市場の判断の変更時の取扱い】

(1)活発な市場が存在する仮想通貨が、活発な市場が存在しない仮想通貨となった場合

 活発な市場が存在しない仮想通貨となる前に最後に観察された市場価格に基づく価額をもって取得原価とし、評価差額は当期の損益として処理します。その後の期末評価は、活発な市場が存在しない仮想通貨として行います。

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(2)活発な市場が存在しない仮想通貨が、活発な市場が存在する仮想通貨となった場合

 その後の期末評価は、活発な市場が存在する仮想通貨として行います。

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【仮想通貨の売却損益の認識時点】

 仮想通貨交換業者及び仮想通貨利用者は、仮想通貨の売却損益を当該仮想通貨の売買の合意が成立した時点において認識します。

 売却損益は、仮想通貨の売却取引に係る売却収入から売却原価を控除して算定した純額を損益計算書に表示します。


3. 仮想通貨交換業者が預託者から預かった仮想通貨の会計処理

【仮想通貨交換業者が預託者から預かった仮想通貨に係る資産及び負債の認識】

 仮想通貨交換業者は、預託者との預託の合意に基づいて仮想通貨を預かった時に、預かった仮想通貨を預かった時の時価により資産として認識します。

 また、仮想通貨交換業者は、同時に、預託者に対する返還義務を、負債として認識します。当該負債の当初認識時の帳簿価額は、預かった仮想通貨に係る資産の帳簿価額と同額とします。

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【仮想通貨交換業者が預託者から預かった仮想通貨に係る期末の資産の評価及び負債の貸借対照表価額】

 仮想通貨交換業者は、預託者から預かった仮想通貨に係る資産の期末の帳簿価額について、仮想通貨交換業者が保有する同一種類の仮想通貨から簿価分離した上で、活発な市場が存在する仮想通貨と活発な市場が存在しない仮想通貨の分類に応じて、仮想通貨交換業者の保有する仮想通貨と同様の方法により評価を行います。

 また、仮想通貨交換業者は、預託者への返還義務として計上した負債の期末の貸借対照表価額を、対応する預かった仮想通貨に係る資産の期末の貸借対照表価額と同額とします。

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有償新株予約権の会計処理をめぐる検討の状況

2017-12-18 11:00

 有償新株予約権の会計処理について、2017年5月に企業会計基準委員会(ASBJ)から、実務対応報告公開草案第52号「従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い(案)」が公表されましたが、これに対して253件ものコメントが寄せられ、その大部分が本公開草案の会計処理案に反対するものとなっています。

 通常であれば今年の秋ごろには実務対応報告が正式に公表されると見られていましたが、コメントの数が極めて多かったことから、ASBJでは寄せられたコメントについて現在も対応を検討しているところです。

 しかし、ASBJは公開草案の内容について大きな変更は行わない方針です。唯一適用時期については、公開草案で「公表日以降」とされていたところを「平成30年4月1日以降」に変更する方針です。

 本稿では、特に注目されるコメントと、それに対するASBJでの対応について解説します。


1. 権利確定条件付き有償新株予約権の付与について、報酬性はないため、本公開草案の提案に同意しないコメント

 本公開草案では、権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引が、ストック・オプション会計基準第2項(4)に定める報酬としての性格を持つと考えられるため(実務対応報告公開草案第17項から第23項)、当該権利確定条件付き有償新株予約権は、企業が従業員等から払い込まれる金銭の対価及び従業員等から受ける労働や業務執行等のサービスの対価として付与するものと整理し、ストック・オプション会計基準第2項(2)に定めるストック・オプションに該当するものと提案しています。

 この提案に対し、当該権利確定条件付き有償新株予約権は「投資制度として発行しており、労働や業務執行等のサービスの対価として給付する意図はないため、報酬性はない。」といった理由等で反対するコメントが多く寄せられています。

 これに対して、ASBJでは、報酬の考え方について本公開草案の内容を変更しない方向性です。


2. 未公開企業における取扱いについて、明確化すべきであるとのコメント

 ストック・オプション会計基準第13項では、未公開企業について、ストック・オプションの公正な評価単価に代え、ストック・オプションの単位当たりの本源的価値( = 株価 - 権利行使価格)の見積もりに基づいて会計処理を行うことができるとしています。これは、未公開企業においては、損益計算に反映させるに足りるだけの信頼性をもって公正な評価単価を見積もることが困難な場合が多いと考えられるとの理由によるものです。

 しかし、未公開企業が権利確定条件付き有償新株予約権を発行する場合には、通常時価評価を行っていることが考えられます。この場合、権利確定条件を反映させた公正な評価単価を算定していることから、ストック・オプション会計基準第13項の特例が認められるのかどうか必ずしも明確ではなく、本公開草案が対象とする取引についても、当該特例が認められる旨を明記すべきとのコメントが寄せられています。

 これに対し、ASBJでは、未公開企業において公正な評価単価を見積もることができる場合であっても当該特例を認めるかどうかに関しては、ストック・オプション会計基準の見直しが必要になるとし、本公開草案ではストック・オプション会計基準等を大幅に見直すことは行わない方向性です。したがって、未公開企業が権利確定条件付き有償新株予約権を発行する場合においても、公正な評価単価に代えて本源的価値の見積りに基づいて会計処理を行うことが容認されることになります。


3. IFRSに関するコメント

 本公開草案では、新株予約権の権利確定条件として勤務条件(一定期間の勤務に基づく条件)がない場合でも、報酬として整理しています。

 他方で、IFRS(国際財務報告基準)では、権利確定条件付き有償新株予約権を報酬として認識し費用計上する場合がありますが、それは、権利確定条件として勤務条件がある場合に限定されています。この結果、日本基準とIFRSの間で差異が生じ、混乱が生じると懸念するコメントが寄せられています。

 これに対し、ASBJでは、本公開草案はストック・オプション会計基準等に照らして権利確定条件付き有償新株予約権の会計処理を整理したものであり、IFRSとの差異について同委員会だけでは対応困難であるとして、本公開草案の取扱いから変更は行わない方向性です。


4. 会社法や税務に関する取扱いを考慮すべきであるとのコメント

 会社法上の「報酬等」とは、報酬、賞与その他職務執行の対価として受ける財産上の利益をいい(会社法第361条)、職務執行の対価であること及び財産上の利益であることが要件となっています。現状では、有償新株予約権を時価発行する場合は職務執行の対価として付与するものではなく、財産上の利益でもないとして、報酬等に該当しないものと解されています。

 また、税務上も、有償新株予約権を時価発行する場合は給与等課税事由が生じないものと整理されています。

 本公開草案で、有償新株予約権を付与する取引について報酬の性格を持つと整理している点は、上記のとおり当該取引について報酬等に該当しないとする会社法上、税務上の取扱いと異なることから、実務が相当混乱すると懸念するコメントもあります。

 これに対し、ASBJでは、法律面や税務面での取扱いには言及せず、会計上の取扱いを定めるという従来からの方向性に変更はありません。


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