総務のトピックス

【会計トピックス】:

クラウド型ソフトウエアの活用可能性と注意点

2017-09-14 09:00

 最近、「クラウド」という単語を頻繁に耳にするようになりましたが、なぜでしょうか。また「クラウド」にはどのようなメリットがあるのでしょうか。これらの疑問が少しでも解決できるように、管理部門で利用できるクラウド型ソフトウエアの紹介とともに、利用の際の注意点や会計業務に与える影響にも触れながら解説していきたいと思います。


クラウドとは

 クラウドとは、「ハードウエアを購入もしくはソフトウエアをインストールしなくても、インターネットを通じてサービスを必要な時に必要な分だけ利用できるようにした手法」と考えて大筋で正しいと思います。

 利用者のメリットとしてデータアクセスの容易さやメンテナンスが不要となること等が挙げられますが、普及に大きく貢献したのは資金繰りの優位性でしょう。サーバーやソフトウエアを購入する場合とは異なり、多額の初期費用は不要で、ほとんどのケースで毎月10万円にも満たないレベルの使用料を支払うことによりソフトウエアを利用できるため、導入に対し資金面のハードルが下がることが大きいのでしょう。このようにクラウドが普及した結果、「クラウド」という言葉も一般に知られるようになったと考えられます。


管理部門業務に関連のあるクラウド型ソフトウエア

 現在では数多くのクラウド型ソフトウエアがありますが、その中から主なものを紹介して行きます。

1.会計系ソフトウエア

(1)会計ソフト
 最近は入出金情報から自動で仕訳を起こしたりするものもあり便利になりましたが、請求書発行や給与計算等の他のクラウド型ソフトウエアと連携させることにより、利便性をさらに上げることが可能です。

(2)請求書発行
 顧客管理システム等の情報を元に請求書を自動作成し、メールにPDFやダウンロード用URLを添付して請求先に送付するとともに、会計ソフトに情報を反映させるクラウド型ソフトウエアで、請求書の封詰め業務や封筒代・切手代を削減することが可能となります。

(3)債権管理
 得意先ごとに債権額を管理するだけであれば会計ソフトで対応できますが、これはネットバンキングの入金情報を読み取り、債権の消し込みを行うことができる点で優れています。会社独自の消込方法を登録することにより、販売先と入金元の名前が違う場合や複数の支払いを合算で入金してくる場合などにも対処できるようになる優れ物もあり、得意先数の多い会社ほど利用価値が増します。


2.人事管理系ソフトウエア

(1)勤怠管理
 IDカードや生態認証等を利用し出勤・退勤の時間を記録することが基本機能となりますが、会社の就業規則や労働形態に合わせて各従業員の勤務時間や残業時間を計算し、また有給休暇の管理等をしてくれる機能を持つものもあります。勤怠管理ソフトには多くの種類があり機能面も多様ですので、導入を検討する際には自社に必要な機能を事前に整理しておくことをお勧めします。

(2)給与計算
 給与計算にあたり労働時間の集計が最も手間のかかる業務かと思いますが、残業時間等を集計する機能を持つ勤怠管理ソフトと連携させることにより、効率的な給与計算が可能となります。

(3)電子給与明細発行
 給与明細を電子化し、従業員へメール添付やURL通知で送付するものですが、給与計算ソフトと連携させることにより、給与計算のデータを利用して給与明細を自動的・効率的に作成することができるため、作業の削減に役立ちます。

(4)採用管理、人事管理
 上記以外では、採用管理のクラウド、従業員情報やスキル等を管理する人事管理のクラウドも増えてきました。しかし管理部門用のソフトウエアにしては解約率が低くないようで、自社の業務における必要性、活用可能性をよく見極めてから導入を検討されるとよいでしょう。


3.会計・人事管理以外

(1)グループウエア
 スケジュール管理、設備予約、連絡先一覧等の情報を社員間で共有するもので、最近は稟議や社内申請等のやり取りを可能にするワークフローの機能が付いているものも多いです。

(2)経費精算
 旅費交通費、接待費等の精算作業を効率化するものですが、前述のグループウエアや会計ソフトと連携させた場合、グループウエアに行き先を入力するとその情報から交通費の経費精算を自動で行い、さらには会計ソフト用に伝票の起票まで行うことも可能となります。

(3)資産管理
 固定資産管理ソフトのように減価償却費や固定資産税を計算する機能のものや、タグをハンディ端末やスマートフォンで読み込むことで実地棚卸や資産移動を管理するようなソフトウエアなどがあります。


クラウド型ソフトウエアの注意点

1.セキュリティ

 管理部門では機密性の高い情報を多く扱うため、最大の懸念点はセキュリティに関することではないでしょうか。セキュリティ対策は主にサービス提供会社で実施されますが、利用者でとり得る対策としては、ソフトウエアにアクセスできるIPアドレスを限定し、それ以外のIPアドレスからはサイト画面にアクセスできないようにする方法があります。


2.ソフトウエア間の機能連携について

 機能連携が進めば自動化の割合も増えるため、機能のつながっているソフトウエアを一気通貫で導入すれば使い勝手は良さそうに思えます。しかし多くの会社は予算の都合や業務の優先度から、個別にソフトウエアを導入し、その都度ソフトウエア間の機能を連携するため、ツギハギ的な構成となります。その結果、クラウドの場合はカスタマイズの自由度が低いことも原因にありますが、うまく機能連携ができないケースもあり、人的操作によりCSVデータを中継する方法による方がスムーズであることもあります。このような状況にならないように、機能連携の視点も含めて、長期的な導入計画を立ててみてはいかがでしょうか。


3.導入作業

 導入および連携作業には基礎データを用意する必要がありますが、この基礎データは利用者側の担当者がそろえることになります。しかし、作業に必要とされる基礎データをそろえる作業は意外と手間がかかりますので、担当者の実務的な負荷に注意する必要があります。


4.サービス提供会社の信用度

 サービス提供会社に万が一のことがあると、その後、サービスの利用ができなくなるため、ある程度普及しているソフトウエアを選択する方がよいかもしれません。クラウド型サービスを提供する会社は、一般的にサービス開始後は資金繰りが苦しく、一定規模の売上を超えてからは資金繰りが安定的になる傾向にあるためです。


会計業務等への影響

 「ソフトウエア等生産性向上IT導入支援事業」の優遇措置等により、政府はITを利用した効率的な経営を促進しており、クラウド型ソフトウエアの利用者は今後さらに増加すると見込まれます。ITの有効活用により単純業務を軽減できるため、付加価値の低い業務のみ行っていた人は活躍の場が減っていく可能性があります。これに対してITリテラシーの高い人や、ソフトウエアからのアウトプットを検証しそこから経営に有用な提言ができる人は、重宝されるかもしれません。

 また、クラウド連携が進めば、アウトプットの検証方法が内部統制上のポイントとしての重要性を増すかもしれません。
クラウド上のデータも差押えできるように国税犯則取締法が改正されるとの話もありますが、会計監査も税務調査もクラウド化による影響はそれほど大きくはないと思われます。なぜならシステムをクラウドへ移行しても、会社が業務を行うにあたりコントロールすべき重要なポイントは、クラウド移行前とほとんど変わらないと考えられるためです。


最後に

 導入したいと思えるようなソフトウエアはありましたでしょうか。利用者にとってクラウド型は資金繰りに優位性があると述べましたが、長期にわたり使用する場合は、結果的にクラウドの方がコスト的に高くなることもあります。したがって、必要な機能だけを慎重に選ぶ姿勢は必要かもしれません。

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FinTech(フィンテック)について

2017-07-31 12:00

 最近になり新聞記事等でフィンテックに関するサービスが取り上げられるようになってきました。しかし、言葉だけが一人歩きして具体的なイメージを思い浮かべるのはむずかしいのではないでしょうか?このため、本稿では、初歩的な理解のため、フィンテックとは何か?にはじまり、我が国で提供されているサービスを概観した後に、法や会計に及ぼしている影響について解説したいと思います。


フィンテックとは何か?

 もともとフィンテックという言葉は、シリコンバレーにおいて投資促進のためのマーケティング用語に過ぎませんでした。このため、フィンテックについて明確な定義はありませんが、経済産業省は「FinTechは、Finance(金融)とTechnology(技術)を掛け合わせた言葉である。あらゆるものをインターネットでつなげるIoT(Internet of Things)、膨大な情報(ビッグデータ)の処理・分析、AI(人工知能)、ブロックチェーン等といった先端技術を使い、爆発的に普及したスマートフォンやタブレット端末等を通じて、これまでにない革新的な金融サービスが生み出される動きを捉えようとする言葉だ。」と説明しています。

 フィンテックの具体的なイメージを持つため、現在、我が国で提供されているサービスを見てみましょう。


具体的なサービス

 現在、我が国では下記のようなフィンテック関連のサービスが提供されています。
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(注1)ロボアドバイザーとは、コンピュータプログラムが個々の投資家の志向に応じて、最適な運用資産の配分を提案するサービスのことです。

(注2)ビットコインとはインターネット上で用いうる仮想通貨です。仮想通貨は?電子的データの形態をとっていること?特定の主体の債務ではないこと?個別の主体間で価値が移転されることの特徴をもつと言われています。

(注3)テレマティクスとは、自動車などの移動する媒体に通信技術を組み合わせて、リアルタイムで情報とサービスを提供することです。


法や会計に及ぼしている影響

 2014年にビットコインの交換所である株式会社MTGOXが破産手続開始を受けました(破産手続開始時、約48億円の債務超過)。同社代表は2015年、業務上横領(ビットコイン売買のため顧客が預けた資金の着服等)等の容疑で逮捕されました。これを受け、我が国では2016年に資金決済法が改正され、仮想通貨と法定通貨の交換業者について登録制を導入し、利用者の信頼確保のため、利用者が預託した金銭・仮想通貨の分別管理等のルールを整備しました。また、マネーロンダリング・テロ資金供給対策として、口座開設時における本人確認等を義務付けました。利用者が預託した金銭・仮想通貨の分別管理等のルールでは、分別管理及び財務諸表について2017年4月1日の属する事業年度の翌事業年度(3月決算であれば、2019年3月期)から外部監査が義務付けられています。

 しかし、現行の会計基準には仮想通貨の会計処理に関する取扱いが存在していないため、「業者間の比較可能性が確保された財務諸表の作成が困難であること」が想定され、また、「当該財務諸表を対象とする監査を受嘱するにあたって監査人から懸念の声がきかれること」から、企業会計基準委員会は2017年7月から9月を目標に「仮想通貨に係わる会計上の取扱い」の草案の公開を目指しています。

 仮想通貨に係わる会計上の論点としては、次の項目が挙げられています。

(1)仮想通貨の期末評価
  仮想通貨について、その経済的性質を踏まえ、期末評価をどのように行うべきか?

(2)顧客からの預かり資産(仮想通貨)に関する会計処理
  顧客からの預かり資産(仮想通貨)を仮想通貨交換業者の貸借対照表上に計上すべきかどうか?

(3)仮想通貨交換業者の損益計算書上の表示
  仮想通貨交換業者が仮想通貨販売所において仮想通貨を販売する場合に、仮想通貨交換業者の損益計算書上において仮想通貨の取引に係わる損益を「総額で売上高に表示すべきか」あるいは、「純額で売上高に表示すべきか」?


最後に

 我が国は他国に比較して経済規模の割には、フィンテックに対する投資が少ない状況です。しかし、今後さらにフィンテックは個人の家計生活の充実と企業の収益向上につながる可能性があります。

 金融庁の森信親長官は「現在、多くの人々がフィンテックに注目しているのは、現在見通せている事柄が理由というよりも、予め予測できないような不連続な破壊的イノベーションが起こる蓋然性が高まっているのではないか、現時点では想像できない新しいビジネスモデルやサービスモデルが登場して、それが国境を越えて世界を席巻してゲームのルールを根こそぎ変えてしまうこともあり得るのではないか、という予感に基づく面が大きいのではないでしょうか。しかし、現時点ではこの予感が正しいかどうかを見通すことすら容易ではありません。」と述べています。

 本稿が、我が国におけるフィンテックの現状に対する皆様の理解と興味を促すものになれば幸いです。


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「企業における営業秘密管理に関する実態調査」調査報告書について

2017-06-15 12:00

 独立行政法人情報処理推進機構は2017年3月、「企業における営業秘密管理に関する実態調査」調査報告書(以下「本調査報告書」)を公開しました。
 これは、近年の営業秘密漏えいに関する大型訴訟事件が発生している状況等を受け、営業秘密の保護強化に資する有効な対策の促進を図ることを目的としたものです。
 本調査報告書では、企業における営業秘密の漏えいの実態や営業秘密の管理に係る対策状況について調査・分析を行い、その結果をまとめています。
 本稿では、本調査報告書について、調査の概要と調査・分析結果のポイントを紹介します。


調査概要

1.調査期間

  2016年10月から2017年1月

2.主要実施項目

  アンケート調査
  無作為に抽出した12,000社に対しアンケート調査票を郵送、2,175社から有効回答(内訳は下表のとおり)。
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※ 業種または従業員数が無回答の24社については表に含まれていません。


調査結果のポイント

1.漏えい実態・営業秘密管理を取り巻く環境の変化
(1)漏えい実態

1.過去5年間における営業秘密の漏えい状況

・過去5年間に営業秘密の漏えいを経験した企業:8.6%(前回調査では13.5%)

2.営業秘密の漏えい発生ルート

・現職従業員等のミスによるもの:43.8%(前回調査では26.9%)
・中途退職者(正規社員)によるもの:24.8%(前回調査では50.3%)
・取引先や共同研究先を経由したもの:11.4%(前回調査では9.3%)

(2)営業秘密漏えいリスクの高まりを感じる社会動向の変化

1.過去5年間程度で感じる社会動向の変化の上位3項目

・標的型攻撃の増加:51.9%
・スマートフォン・タブレット機器等の急速な普及:51.4%
・データの活用機会の増加:41.8%

2.その他、過去5年間に営業秘密の漏えいを経験した企業が感じる社会動向の変化の主な項目

・人材の流動化:59.3%
・他社との協業・連携機会の活発化:29.1%

 漏えいを経験していない企業でも、日頃からこれらの観点を「社会環境変化に基づくリスク要因」として認識し、転職や他社協業に備えた施策が有用であることが示されています。
  

2.営業秘密漏えい対策への取り組み
(1)予防的な漏えい対策の遅れ

1.中小規模企業

 大規模企業と比較して、全体的に取り組みが遅れています。また、中小規模企業ではシステム的対策が十分に取り組めていない傾向が顕著でした。

(大規模企業と比較して取り組めていない主なシステム的対策)
・社内PCにUSBメモリ等を接続することの制御:製造業3.4%・非製造業7.1%
・情報システムログの記録・保管:製造業7.3%・非製造業12.4%

2.大規模企業

 中小規模企業と比較して、「情報システムログの記録・保管(製造業79.3%・非製造業73.1%)」はすでに取り組めているといえる一方、予防的な対策等はまだ十分に取り組めていない状況でした。

(主な予防的な対策等)
・不自然なアクセスの上司等への通知:製造業20.4%・非製造業18.9%
・不自然なアクセスの本人への警告:製造業19.1%・非製造業20.9%
・外部送信メールのチェック体制が整っている:製造業19.1%・非製造業16.9%

3.有効性を感じている対策

 企業自身が有効性を感じている対策として、以下の項目が多く挙げられました。これらは基本的な対策ですが、取り組みが遅れている企業が今後対策を検討する際には参考にできると考えられます。

(有効性を感じている主な対策)
・PC等の情報端末にアンチウイルスソフトを導入している:21.7%
・営業秘密の保存領域にはアクセス権を設定している:21.0%


(2)管理対象の明確化の重要性

 営業秘密として管理対象とするか否かの情報区分の実施について、調査結果は以下のとおりでした。

・大規模企業:製造業69.9%・非製造業61.4%
・中小規模企業:製造業25.8%・非製造業31.1%

 調査結果から、情報区分がしっかりとできている企業ほど、具体的な漏えい対策に関する取り組みも進んでいることが示されています。


(3)漏えいを検知する活動(漏えい未然防止、漏えい後の対策)

 多様化・高度化した手口による漏えいを完全に防ぐことは困難であっても、漏えいを検知する活動に取り組んでいればその行為に気付くことができます。また、漏えいを未然に防止する効果も期待できます。漏えい検知活動の実施について、調査結果は以下のとおりでした。

・大規模企業:製造業78.8%・非製造業75.0%
・中小規模企業:製造業20.1%・非製造業26.5%

 調査結果から、漏えいを検知する活動を実施している企業の方が、様々な対策への取り組みが進んでいるほか、漏えい行為を行った者への処罰・法的対応ができています。先進的な企業では個別対策と不可分の措置として漏えいを検知する活動に取り組んでおり、その重要性が示唆されています。


3.組織的な取り組み(経営層の関与と組織横断的な検討)

 調査結果から、営業秘密管理を経営の問題として捉えている企業の方が、総じて様々な取り組みが進んでいることが示されています。経営層が積極的に関与し、経営に直結する問題として捉え組織横断的に営業秘密対策の検討等を推進していくことの重要性が示唆されています。


最後に

 情報漏えい対策に関する取り組みは一部の管理部署のみで対応するものではなく、経営層による積極的な関与のもと組織横断的な取り組みが、これを機能させる重要な要因となります。経営層による強力なリーダーシップのもと、本調査報告書を参考に、有用な取り組みが実施されることが期待されます。


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改正「中小企業の会計に関する指針」について

2017-05-08 11:00

 平成29年3月9日に「中小企業の会計に関する指針」(以下、「中小会計指針」という。)が改正されました。この改正により、従来「今後の検討事項」とされていた資産除去債務への対応として、新たに固定資産項目に敷金に関する会計処理が明記されました(同改正指針第39項)。また、税効果会計について、企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」が公表されたことに伴い、それに合わせて関連項目の見直しが行われました。中小会計指針の概要と今回の改正点を解説します。


「中小会計指針」の概要

 「中小会計指針」は、中小企業が会社法上の計算書類(決算書)を作成する際、過度な経理負担とならないように、中小企業に関係する諸団体(日本商工会議所等)が、計算書類等の開示先や会社の経理体制等の観点から実態に則した会計処理のあり方の指針となるよう取りまとめたものです。

 中小企業においては、会計情報の利用者が大企業(上場会社など)に比べて限られることから、会計基準を一律に強制適用することがコスト・ベネフィットの観点から必ずしも適切ではないケースがあります。そのため、中小会計指針は、中小企業の利害調整に期待される点(会社法目的の配当制限や税務目的の課税所得計算など)を考慮して、中小企業の経理の拠りどころとなる役割を持ちます。

 また、中小会計指針の適用対象は、以下を除く株式会社とされています。
 (1) 金融商品取引法の適用を受ける会社並びにその子会社及び関連会社
 (2) 会計監査人を設置する会社及びその子会社

 さらに、特例有限会社、合名会社、合資会社又は合同会社についても、中小会計指針に拠ることが推奨されています。


今回の改正点

(1)資産除去債務

 資産除去債務とは、有形固定資産の取得、建設、開発または通常の使用によって生じ、当該有形固定資産の除去に関して法令または契約で要求される法律上の義務およびそれに準ずるものをいいます。

 今回の中小会計指針の改正においては、資産除去債務への対応として、賃貸借契約における原状回復義務について中小企業に過大な事務負担をかけないことを前提として、以下の項目が追加されました(同改正指針第39項)。
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 上記の会計処理の具体例を以下に示します。

敷金 100(うち、返還されないことが明示されている部分:40)
返還されないことが明示されていない部分 60( = 100 - 40 )のうち、原状回復義務の履行に伴い回収が見込まれない合理的な見積金額:20

(1) 敷金等の計上
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(2) 資産除去費用の計上
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(3) 繰延資産の償却(賃貸借期間5年)
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繰延資産40 ÷ 5年

(2)税効果会計

 中小企業の多くは税務会計をベースとしているため、会計と税務のズレがほとんど発生しません。この場合、税効果会計を適用してもしなくても重要な違いはみられません。しかし、一時差異に重要性がある場合には、中小会計指針に従い積極的に税効果会計を適用することで有利な銀行融資を受けられることもあります。
平成27年12月28日に企業会計基準委員会から企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する指針」が公表されました。これに合わせて、改正中小会計指針において下記のとおり関連項目の見直しは行なわれましたが、税効果会計の記載内容に変更はありません。

【関連項目】
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 なお、繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(企業会計基準適用指針第26号)については、2017年3月31日付投稿の「繰延税金資産の回収可能性について」をご参照ください。


最後に

 従来に比べ改正後は、敷金のうち返還されないことが明示されていない部分の金額について、原状回復義務の履行に伴い回収が見込まれない合理的な見積額を敷金から減額し、資産除去費用として計上することに違いがあります。
 中小企業においては、期待される利害や計算書類の利用目的によって中小会計指針に従って経理処理を行うことが望ましいと考えられます。


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繰延税金資産の回収可能性について

2017-03-31 10:00

 税効果に係わる会計上の実務指針と監査上の実務指針が1998年と1999年に公表されました。その後、2014年にはこれら実務指針の見直しが順次開始され、2015年12月に企業会計基準委員会は「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」(以下、「適用指針」)を公表しました。本稿では税効果会計の基本的な考え方と、適用指針に基づき、繰延税金資産の回収可能性の概要を解説します。


税効果会計の基本的な考え方

 税効果会計は、会計の収益・費用と、課税所得計算の益金・損金の認識時点が異なることから、会計と課税所得計算の資産・負債に差異がある場合に、法人税その他所得を課税標準とする税金を、適切に期間配分することで、税引前当期純利益と税金費用の合理的な対応を目的とする会計手法です。

 会計と課税所得計算の資産・負債の差異を「一時差異」といい、税効果会計の対象とするのに対して、会計の収益・費用になるが、税務上は永久に益金・損金にならないものは、将来の課税所得を加減算させる効果を持たないため、「永久差異」として税効果の対象から除きます。

 一時差異には将来減算一時差異と将来加算一時差異があります。将来減算一時差異は、差異が生じたときに課税所得上加算され、将来、差異が解消するときに減算されるものです。一方、将来加算一時差異は、差異が生じたときに課税所得上減算され、将来、差異が解消するときに加算されるものです。税務上の繰越欠損金は一時差異ではありませんが、課税所得が生じた場合、法人税等を軽減させるため、一時差異に準ずるものとします。

 税効果会計では、将来減算一時差異と繰越欠損金に法定実効税率を乗じた金額を貸借対照表に繰延税金資産として計上し、将来加算一時差異に法定実効税率を乗じた金額を繰延税金負債として計上します。損益計算書では、繰延税金資産と繰延税金負債の差額を、期首と期末で比較した増減額を法人税等調整額として計上します。


繰延税金資産の回収可能性に関する要件

 繰延税金資産は将来の税負担を軽減することが認められることを条件に計上が認められる資産です。従って、将来、税負担の軽減が認められる範囲で計上します。繰延税金資産の計上要件は次の通りです。

(1) 収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性

 要件の1つは収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性です。これは、将来減算一時差異の解消見込年度または税務上の繰越欠損金の繰越期間に、一時差異等加減算前所得が生じる可能性が高いかにより判断されます。ここで、一時差異等加減算前課税所得とは、将来の事業年度における課税所得の見積額から、その事業年度に解消が見込まれる当期末に存在する将来加算(減算)一時差異の金額を除いた額のことです。

(2) タックス・プランニングに基づく一時差異等加減算前課税所得

 次にタックス・プランニングに基づく一時差異等加減算前課税所得であることが要件です。タックス・プランニングとは、将来減算一時差異の解消見込年度や税務上の繰越欠損金の繰越期間に、具体的な一時差異等加減算前課税所得の発生を計画することをいいます。例えば、含み益のある固定資産や有価証券の売却で、将来減算一時差異等の減算が生じる年度の一時差異等加減算前課税所得を確保し、繰延税金資産の回収可能性を確実にすることです。

(3) 将来加算一時差異

 上記(1)と(2)に、将来加算一時差異の解消状況を加味します。具体的には将来減算一時差異の解消見込年度に将来加算一時差異の解消や、繰越期間に税務上の繰越欠損金と相殺される将来加算一時差異の解消が見込まれるかを判断します。


これらに従い、繰延税金資産の回収可能性を判断した結果、将来減算一時差異および税務上の繰越欠損金が、将来の一時差異等加減算前課税所得の見積額および将来加算一時差異の解消見込額と相殺され、税金負担額を軽減できると認められる範囲で繰延税金資産を計上します。


企業分類に応じた取扱い

 企業を次の5つに分類し、回収が見込まれる繰延税金資産の計上額を決定します。

(1) 分類1

 過去3年および当期に、期末の将来減算一時差異を十分に上回る課税所得が生じており、かつ当期末に、近い将来に経営環境に著しい変化が見込まれない場合、繰延税金資産の全額に回収可能性があります。

(2) 分類2

 過去3年および当期に、臨時的な原因により生じたものを除いた課税所得が、期末の将来減算一時差異を下回るものの、安定的に生じており、重要な税務上の欠損金が生じておらず、かつ当期末に、近い将来に経営環境に著しい変化が見込まれず、一時差異等のスケジューリングの結果、繰延税金資産を見積もる場合は、回収可能性があります。
 一方、スケジューリング不能な将来減算一時差異に係わる繰延税金資産は、原則的には回収可能性はありませんが、企業が合理的な根拠により説明する場合、回収可能性があると考えられます。

(3) 分類3

 過去3年および当期に、臨時的な原因で生じたものを除いた課税所得が大きく増減しており、かついずれの事業年度でも重要な税務上の欠損金が生じない場合、将来の合理的な見積期間(概ね5年)以内の一時差異等加減算前課税所得の見積額に基づき、繰延税金資産を見積もる場合は、回収可能性があります。
 ただし、5年を超えるものでも、合理的な根拠により説明する場合、回収可能性があると考えられます。 

(4) 分類4

 次のいずれかの要件を満たし、かつ翌期に一時差異等加減算前課税所得が生じることが見込まれる場合は分類4に該当します。

・過去3年または当期に重要な税務上の欠損金が生じている。
・過去3年に重要な税務上の欠損金の繰越期限切れとなった事実がある。
・当期末に重要な税務上の欠損金の繰越期限切れが見込まれる。

 分類4の場合、一時差異等加減算前課税所得の見積額に基づき、翌期の一時差異等のスケジューリングの結果、繰延税金資産を見積もる場合、回収可能性があります。ただし、重要な税務上の欠損金が生じた原因等を勘案し、将来の一時差異等加減算前課税所得を見積もる場合、将来5年超にわたり一時差異等加減算前課税所得が安定的に生じることを合理的な根拠により説明するときは、分類2に該当します。また、将来おおむね3年から5年程度は一時差異等加減算前課税所得が安定的に生じることを合理的な根拠により説明するときは、分類3に該当します。

(5) 分類5

 過去3年および当期に、重要な税務上の欠損金が生じており、かつ翌期にも重要な税務上の欠損金が生じることが見込まれる場合、原則として繰延税金資産の回収可能性はないものとします。


最後に

 税効果会計は、会計と税務の違いを調整するための会計手法であり、それにより計上する繰延税金資産の回収可能性は慎重に判断する必要があります。

 なお、適用指針は2016年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用されます。


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