総務のトピックス

【会計トピックス】:

有償新株予約権の会計処理をめぐる検討の状況

2017-12-18 11:00

 有償新株予約権の会計処理について、2017年5月に企業会計基準委員会(ASBJ)から、実務対応報告公開草案第52号「従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い(案)」が公表されましたが、これに対して253件ものコメントが寄せられ、その大部分が本公開草案の会計処理案に反対するものとなっています。

 通常であれば今年の秋ごろには実務対応報告が正式に公表されると見られていましたが、コメントの数が極めて多かったことから、ASBJでは寄せられたコメントについて現在も対応を検討しているところです。

 しかし、ASBJは公開草案の内容について大きな変更は行わない方針です。唯一適用時期については、公開草案で「公表日以降」とされていたところを「平成30年4月1日以降」に変更する方針です。

 本稿では、特に注目されるコメントと、それに対するASBJでの対応について解説します。


1. 権利確定条件付き有償新株予約権の付与について、報酬性はないため、本公開草案の提案に同意しないコメント

 本公開草案では、権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引が、ストック・オプション会計基準第2項(4)に定める報酬としての性格を持つと考えられるため(実務対応報告公開草案第17項から第23項)、当該権利確定条件付き有償新株予約権は、企業が従業員等から払い込まれる金銭の対価及び従業員等から受ける労働や業務執行等のサービスの対価として付与するものと整理し、ストック・オプション会計基準第2項(2)に定めるストック・オプションに該当するものと提案しています。

 この提案に対し、当該権利確定条件付き有償新株予約権は「投資制度として発行しており、労働や業務執行等のサービスの対価として給付する意図はないため、報酬性はない。」といった理由等で反対するコメントが多く寄せられています。

 これに対して、ASBJでは、報酬の考え方について本公開草案の内容を変更しない方向性です。


2. 未公開企業における取扱いについて、明確化すべきであるとのコメント

 ストック・オプション会計基準第13項では、未公開企業について、ストック・オプションの公正な評価単価に代え、ストック・オプションの単位当たりの本源的価値( = 株価 - 権利行使価格)の見積もりに基づいて会計処理を行うことができるとしています。これは、未公開企業においては、損益計算に反映させるに足りるだけの信頼性をもって公正な評価単価を見積もることが困難な場合が多いと考えられるとの理由によるものです。

 しかし、未公開企業が権利確定条件付き有償新株予約権を発行する場合には、通常時価評価を行っていることが考えられます。この場合、権利確定条件を反映させた公正な評価単価を算定していることから、ストック・オプション会計基準第13項の特例が認められるのかどうか必ずしも明確ではなく、本公開草案が対象とする取引についても、当該特例が認められる旨を明記すべきとのコメントが寄せられています。

 これに対し、ASBJでは、未公開企業において公正な評価単価を見積もることができる場合であっても当該特例を認めるかどうかに関しては、ストック・オプション会計基準の見直しが必要になるとし、本公開草案ではストック・オプション会計基準等を大幅に見直すことは行わない方向性です。したがって、未公開企業が権利確定条件付き有償新株予約権を発行する場合においても、公正な評価単価に代えて本源的価値の見積りに基づいて会計処理を行うことが容認されることになります。


3. IFRSに関するコメント

 本公開草案では、新株予約権の権利確定条件として勤務条件(一定期間の勤務に基づく条件)がない場合でも、報酬として整理しています。

 他方で、IFRS(国際財務報告基準)では、権利確定条件付き有償新株予約権を報酬として認識し費用計上する場合がありますが、それは、権利確定条件として勤務条件がある場合に限定されています。この結果、日本基準とIFRSの間で差異が生じ、混乱が生じると懸念するコメントが寄せられています。

 これに対し、ASBJでは、本公開草案はストック・オプション会計基準等に照らして権利確定条件付き有償新株予約権の会計処理を整理したものであり、IFRSとの差異について同委員会だけでは対応困難であるとして、本公開草案の取扱いから変更は行わない方向性です。


4. 会社法や税務に関する取扱いを考慮すべきであるとのコメント

 会社法上の「報酬等」とは、報酬、賞与その他職務執行の対価として受ける財産上の利益をいい(会社法第361条)、職務執行の対価であること及び財産上の利益であることが要件となっています。現状では、有償新株予約権を時価発行する場合は職務執行の対価として付与するものではなく、財産上の利益でもないとして、報酬等に該当しないものと解されています。

 また、税務上も、有償新株予約権を時価発行する場合は給与等課税事由が生じないものと整理されています。

 本公開草案で、有償新株予約権を付与する取引について報酬の性格を持つと整理している点は、上記のとおり当該取引について報酬等に該当しないとする会社法上、税務上の取扱いと異なることから、実務が相当混乱すると懸念するコメントもあります。

 これに対し、ASBJでは、法律面や税務面での取扱いには言及せず、会計上の取扱いを定めるという従来からの方向性に変更はありません。


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「収益認識に関する会計基準(案)」について

2017-11-06 13:00

 企業会計基準委員会(ASBJ)は、平成29年7月20日に企業会計基準公開草案第61号「収益認識に関する会計基準(案)」及び企業会計基準適用指針公開草案第61号「収益認識に関する会計基準の適用指針(案)」(以下、「本公開草案」という)を公表しました。
 本公開草案における新たな収益認識基準は、上場・非上場を問わず全ての企業に適用されることになります。本稿では、本公開草案が公表された背景や会計処理についての概要を解説します。


概要

1.背景

 我が国においては、企業会計原則の損益計算書原則に、「売上高は、実現主義の原則に従い、商品等の販売又は役務の給付によって実現したものに限る。」とされているものの、収益認識に関する包括的な会計基準はこれまで開発されていませんでした。一方、国際会計基準審議会(IASB)及び米国財務会計基準審議会(FASB)は、共同して収益認識に関する包括的な会計基準の開発を行い、平成26年5月に「顧客との契約から生じる収益」(IASBにおいてはIFRS第15号、FASBにおいてはTopic606)を公表し、IFRS第15号は平成30年1月1日以後開始する事業年度から、Topic606は平成29年12月15日より後に開始する事業年度から適用されます。

 これらの状況を踏まえ、ASBJは平成27年3月に我が国における収益認識に関する包括的な会計基準の開発に向けた検討に着手することを決定し、その後、平成28年2月に適用上の課題等に対する意見を幅広く把握するため、「収益認識に関する包括的な会計基準の開発についての意見の募集」(以下「意見募集文書」という。)を公表しました。ASBJでは、意見募集文書に寄せられた意見を踏まえ検討を重ね、本公開草案を公表するに至りました。


2.適用範囲

 本公開草案においては、次の(1)から(6)を除き、顧客との契約から生じる収益に関する会計処理及び開示に適用することが提案されています。

(1)「金融商品に関する会計基準」の範囲に含まれる金融商品に係る取引
(2)「リース取引に関する会計基準」の範囲に含まれるリース取引
(3)保険契約
(4)顧客又は潜在的な顧客への販売を容易にするために行われる同業他社との商品又は製品の交換取引(例えば、2つの企業の間で、異なる場所における顧客からの需要を適時に満たすために商品又は製品を交換する取引)
(5)金融商品の組成又は取得に際して受け取る手数料
(6)「特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針」の対象となる不動産の譲渡


3.会計処理

 会計処理については、以下の提案がされています。

(1)基本となる原則

 本公開草案の基本となる原則は、約束した財又はサービスの顧客への移転を、当該財又はサービスと交換に企業が権利を得ると見込む対価の額で描写するように、収益の認識を行うことです。また、この基本となる原則に従って収益を認識するために、次の5つのステップを適用することが提案されています。

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<ステップ1>
 当事者が、書面、口頭、取引慣行等により契約を承認し、それぞれの義務の履行を約束していること等の要件を満たす顧客との契約を識別します。

<ステップ2>
 別個の財又はサービスや一連の別個の財又はサービスを識別し、それぞれについて履行義務を識別します。

<ステップ3>
 契約等で定められた固定の契約価格の他、変動価格と現金以外の対価を考慮し、顧客に支払われる対価と金利相当分(時間価値)の影響の調整を行い、取引価格を算定します。

<ステップ4>
 契約が複数の履行から構成されている場合、履行義務の基礎となる財又はサービスの独立販売価格の比率に基づき、それぞれの履行義務に取引価格を配分します。

<ステップ5>
 履行義務を充足した時又は充足するにつれて収益を認識します。


【事例】

 システム機器(100)の販売に加え、アフターサービス(2年間で10)が付された契約を締結し、当該システム機器を顧客に納品しました(この時点でシステム機器の支配移転が完了し、履行義務が充足されたものとします)。また、顧客との契約書において、システム機器の販売とアフターサービスの提供は明確に区別されています。

<仕訳例>
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* アフターサービスは、サービス提供がされる都度、例えば期間配分によって収益計上されます。

(2)契約資産、契約負債及び債権

 顧客から対価を受け取る前又は対価を受け取る期限が到来する前に、財又はサービスを顧客に移転した場合は、収益を認識し、契約資産又は債権を貸借対照表に計上します。契約資産は、金銭債権として取り扱われ、金融商品会計基準に従って処理されます。また、財又はサービスを顧客に移転する前に顧客から対価を受け取る場合、顧客から対価を受け取った時又は対価を受け取る期限が到来した時のいずれか早い時点で、顧客から受け取る対価について契約負債を貸借対照表に計上します。

(3)特定の状況又は取引における取扱い

 本公開草案では、特定の状況又は取引における取扱いのガイダンスと設例が提供されています。
 ・財又はサービスに対する保証
 ・本人と代理人の区分
 ・追加の財又はサービスを取得するオプションの付与
 ・顧客により行使されない権利(非行使部分)
 ・返金が不要な契約における取引開始日の顧客からの支払
 ・ライセンスの供与
 ・買戻契約
 ・その他


4.開示

 開示については、以下の提案がされています。

(1)表示

 本公開草案では、企業が履行している場合又は企業が履行する前に顧客が対価を支払う場合には、企業の履行と顧客の支払との関係に基づき、契約資産、契約負債又は債権を適切な科目をもって貸借対照表に表示することとしています。なお、経過措置として、契約資産と債権を貸借対照表に区分表示しないことができ、その場合、それぞれの残高を注記する必要はありません。

(2)注記事項

 本公開草案では、顧客との契約から生じる収益については、企業の主要な事業における主な履行義務の内容及び企業が当該履行義務を充足する通常の時点(収益を認識する通常の時点)を注記することとしています。


5.適用時期

 適用時期については、(1)から(3)が提案されています。

(1)平成33年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用します。
(2)早期適用として、平成30年4月以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用できます。
(3)上記(2)に加え、平成30年12月31日に終了する連結会計年度及び事業年度から平成31年3月30日に終了する連結会計年度及び事業年度までにおける年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から適用することができます。


おわりに

 本公開草案は、国際会計基準審議会(IASB)が公表したIFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」をベースに、我が国の実務上の配慮を加えて作成されています。新たな収益認識基準は、上場・非上場を問わず全ての企業に適用されることになるため、企業の業態や業種によっては収益の認識に大きな影響を及ぼす可能性があることに留意が必要です。

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クラウド型ソフトウエアの活用可能性と注意点

2017-09-14 09:00

 最近、「クラウド」という単語を頻繁に耳にするようになりましたが、なぜでしょうか。また「クラウド」にはどのようなメリットがあるのでしょうか。これらの疑問が少しでも解決できるように、管理部門で利用できるクラウド型ソフトウエアの紹介とともに、利用の際の注意点や会計業務に与える影響にも触れながら解説していきたいと思います。


クラウドとは

 クラウドとは、「ハードウエアを購入もしくはソフトウエアをインストールしなくても、インターネットを通じてサービスを必要な時に必要な分だけ利用できるようにした手法」と考えて大筋で正しいと思います。

 利用者のメリットとしてデータアクセスの容易さやメンテナンスが不要となること等が挙げられますが、普及に大きく貢献したのは資金繰りの優位性でしょう。サーバーやソフトウエアを購入する場合とは異なり、多額の初期費用は不要で、ほとんどのケースで毎月10万円にも満たないレベルの使用料を支払うことによりソフトウエアを利用できるため、導入に対し資金面のハードルが下がることが大きいのでしょう。このようにクラウドが普及した結果、「クラウド」という言葉も一般に知られるようになったと考えられます。


管理部門業務に関連のあるクラウド型ソフトウエア

 現在では数多くのクラウド型ソフトウエアがありますが、その中から主なものを紹介して行きます。

1.会計系ソフトウエア

(1)会計ソフト
 最近は入出金情報から自動で仕訳を起こしたりするものもあり便利になりましたが、請求書発行や給与計算等の他のクラウド型ソフトウエアと連携させることにより、利便性をさらに上げることが可能です。

(2)請求書発行
 顧客管理システム等の情報を元に請求書を自動作成し、メールにPDFやダウンロード用URLを添付して請求先に送付するとともに、会計ソフトに情報を反映させるクラウド型ソフトウエアで、請求書の封詰め業務や封筒代・切手代を削減することが可能となります。

(3)債権管理
 得意先ごとに債権額を管理するだけであれば会計ソフトで対応できますが、これはネットバンキングの入金情報を読み取り、債権の消し込みを行うことができる点で優れています。会社独自の消込方法を登録することにより、販売先と入金元の名前が違う場合や複数の支払いを合算で入金してくる場合などにも対処できるようになる優れ物もあり、得意先数の多い会社ほど利用価値が増します。


2.人事管理系ソフトウエア

(1)勤怠管理
 IDカードや生態認証等を利用し出勤・退勤の時間を記録することが基本機能となりますが、会社の就業規則や労働形態に合わせて各従業員の勤務時間や残業時間を計算し、また有給休暇の管理等をしてくれる機能を持つものもあります。勤怠管理ソフトには多くの種類があり機能面も多様ですので、導入を検討する際には自社に必要な機能を事前に整理しておくことをお勧めします。

(2)給与計算
 給与計算にあたり労働時間の集計が最も手間のかかる業務かと思いますが、残業時間等を集計する機能を持つ勤怠管理ソフトと連携させることにより、効率的な給与計算が可能となります。

(3)電子給与明細発行
 給与明細を電子化し、従業員へメール添付やURL通知で送付するものですが、給与計算ソフトと連携させることにより、給与計算のデータを利用して給与明細を自動的・効率的に作成することができるため、作業の削減に役立ちます。

(4)採用管理、人事管理
 上記以外では、採用管理のクラウド、従業員情報やスキル等を管理する人事管理のクラウドも増えてきました。しかし管理部門用のソフトウエアにしては解約率が低くないようで、自社の業務における必要性、活用可能性をよく見極めてから導入を検討されるとよいでしょう。


3.会計・人事管理以外

(1)グループウエア
 スケジュール管理、設備予約、連絡先一覧等の情報を社員間で共有するもので、最近は稟議や社内申請等のやり取りを可能にするワークフローの機能が付いているものも多いです。

(2)経費精算
 旅費交通費、接待費等の精算作業を効率化するものですが、前述のグループウエアや会計ソフトと連携させた場合、グループウエアに行き先を入力するとその情報から交通費の経費精算を自動で行い、さらには会計ソフト用に伝票の起票まで行うことも可能となります。

(3)資産管理
 固定資産管理ソフトのように減価償却費や固定資産税を計算する機能のものや、タグをハンディ端末やスマートフォンで読み込むことで実地棚卸や資産移動を管理するようなソフトウエアなどがあります。


クラウド型ソフトウエアの注意点

1.セキュリティ

 管理部門では機密性の高い情報を多く扱うため、最大の懸念点はセキュリティに関することではないでしょうか。セキュリティ対策は主にサービス提供会社で実施されますが、利用者でとり得る対策としては、ソフトウエアにアクセスできるIPアドレスを限定し、それ以外のIPアドレスからはサイト画面にアクセスできないようにする方法があります。


2.ソフトウエア間の機能連携について

 機能連携が進めば自動化の割合も増えるため、機能のつながっているソフトウエアを一気通貫で導入すれば使い勝手は良さそうに思えます。しかし多くの会社は予算の都合や業務の優先度から、個別にソフトウエアを導入し、その都度ソフトウエア間の機能を連携するため、ツギハギ的な構成となります。その結果、クラウドの場合はカスタマイズの自由度が低いことも原因にありますが、うまく機能連携ができないケースもあり、人的操作によりCSVデータを中継する方法による方がスムーズであることもあります。このような状況にならないように、機能連携の視点も含めて、長期的な導入計画を立ててみてはいかがでしょうか。


3.導入作業

 導入および連携作業には基礎データを用意する必要がありますが、この基礎データは利用者側の担当者がそろえることになります。しかし、作業に必要とされる基礎データをそろえる作業は意外と手間がかかりますので、担当者の実務的な負荷に注意する必要があります。


4.サービス提供会社の信用度

 サービス提供会社に万が一のことがあると、その後、サービスの利用ができなくなるため、ある程度普及しているソフトウエアを選択する方がよいかもしれません。クラウド型サービスを提供する会社は、一般的にサービス開始後は資金繰りが苦しく、一定規模の売上を超えてからは資金繰りが安定的になる傾向にあるためです。


会計業務等への影響

 「ソフトウエア等生産性向上IT導入支援事業」の優遇措置等により、政府はITを利用した効率的な経営を促進しており、クラウド型ソフトウエアの利用者は今後さらに増加すると見込まれます。ITの有効活用により単純業務を軽減できるため、付加価値の低い業務のみ行っていた人は活躍の場が減っていく可能性があります。これに対してITリテラシーの高い人や、ソフトウエアからのアウトプットを検証しそこから経営に有用な提言ができる人は、重宝されるかもしれません。

 また、クラウド連携が進めば、アウトプットの検証方法が内部統制上のポイントとしての重要性を増すかもしれません。
クラウド上のデータも差押えできるように国税犯則取締法が改正されるとの話もありますが、会計監査も税務調査もクラウド化による影響はそれほど大きくはないと思われます。なぜならシステムをクラウドへ移行しても、会社が業務を行うにあたりコントロールすべき重要なポイントは、クラウド移行前とほとんど変わらないと考えられるためです。


最後に

 導入したいと思えるようなソフトウエアはありましたでしょうか。利用者にとってクラウド型は資金繰りに優位性があると述べましたが、長期にわたり使用する場合は、結果的にクラウドの方がコスト的に高くなることもあります。したがって、必要な機能だけを慎重に選ぶ姿勢は必要かもしれません。

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FinTech(フィンテック)について

2017-07-31 12:00

 最近になり新聞記事等でフィンテックに関するサービスが取り上げられるようになってきました。しかし、言葉だけが一人歩きして具体的なイメージを思い浮かべるのはむずかしいのではないでしょうか?このため、本稿では、初歩的な理解のため、フィンテックとは何か?にはじまり、我が国で提供されているサービスを概観した後に、法や会計に及ぼしている影響について解説したいと思います。


フィンテックとは何か?

 もともとフィンテックという言葉は、シリコンバレーにおいて投資促進のためのマーケティング用語に過ぎませんでした。このため、フィンテックについて明確な定義はありませんが、経済産業省は「FinTechは、Finance(金融)とTechnology(技術)を掛け合わせた言葉である。あらゆるものをインターネットでつなげるIoT(Internet of Things)、膨大な情報(ビッグデータ)の処理・分析、AI(人工知能)、ブロックチェーン等といった先端技術を使い、爆発的に普及したスマートフォンやタブレット端末等を通じて、これまでにない革新的な金融サービスが生み出される動きを捉えようとする言葉だ。」と説明しています。

 フィンテックの具体的なイメージを持つため、現在、我が国で提供されているサービスを見てみましょう。


具体的なサービス

 現在、我が国では下記のようなフィンテック関連のサービスが提供されています。
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(注1)ロボアドバイザーとは、コンピュータプログラムが個々の投資家の志向に応じて、最適な運用資産の配分を提案するサービスのことです。

(注2)ビットコインとはインターネット上で用いうる仮想通貨です。仮想通貨は?電子的データの形態をとっていること?特定の主体の債務ではないこと?個別の主体間で価値が移転されることの特徴をもつと言われています。

(注3)テレマティクスとは、自動車などの移動する媒体に通信技術を組み合わせて、リアルタイムで情報とサービスを提供することです。


法や会計に及ぼしている影響

 2014年にビットコインの交換所である株式会社MTGOXが破産手続開始を受けました(破産手続開始時、約48億円の債務超過)。同社代表は2015年、業務上横領(ビットコイン売買のため顧客が預けた資金の着服等)等の容疑で逮捕されました。これを受け、我が国では2016年に資金決済法が改正され、仮想通貨と法定通貨の交換業者について登録制を導入し、利用者の信頼確保のため、利用者が預託した金銭・仮想通貨の分別管理等のルールを整備しました。また、マネーロンダリング・テロ資金供給対策として、口座開設時における本人確認等を義務付けました。利用者が預託した金銭・仮想通貨の分別管理等のルールでは、分別管理及び財務諸表について2017年4月1日の属する事業年度の翌事業年度(3月決算であれば、2019年3月期)から外部監査が義務付けられています。

 しかし、現行の会計基準には仮想通貨の会計処理に関する取扱いが存在していないため、「業者間の比較可能性が確保された財務諸表の作成が困難であること」が想定され、また、「当該財務諸表を対象とする監査を受嘱するにあたって監査人から懸念の声がきかれること」から、企業会計基準委員会は2017年7月から9月を目標に「仮想通貨に係わる会計上の取扱い」の草案の公開を目指しています。

 仮想通貨に係わる会計上の論点としては、次の項目が挙げられています。

(1)仮想通貨の期末評価
  仮想通貨について、その経済的性質を踏まえ、期末評価をどのように行うべきか?

(2)顧客からの預かり資産(仮想通貨)に関する会計処理
  顧客からの預かり資産(仮想通貨)を仮想通貨交換業者の貸借対照表上に計上すべきかどうか?

(3)仮想通貨交換業者の損益計算書上の表示
  仮想通貨交換業者が仮想通貨販売所において仮想通貨を販売する場合に、仮想通貨交換業者の損益計算書上において仮想通貨の取引に係わる損益を「総額で売上高に表示すべきか」あるいは、「純額で売上高に表示すべきか」?


最後に

 我が国は他国に比較して経済規模の割には、フィンテックに対する投資が少ない状況です。しかし、今後さらにフィンテックは個人の家計生活の充実と企業の収益向上につながる可能性があります。

 金融庁の森信親長官は「現在、多くの人々がフィンテックに注目しているのは、現在見通せている事柄が理由というよりも、予め予測できないような不連続な破壊的イノベーションが起こる蓋然性が高まっているのではないか、現時点では想像できない新しいビジネスモデルやサービスモデルが登場して、それが国境を越えて世界を席巻してゲームのルールを根こそぎ変えてしまうこともあり得るのではないか、という予感に基づく面が大きいのではないでしょうか。しかし、現時点ではこの予感が正しいかどうかを見通すことすら容易ではありません。」と述べています。

 本稿が、我が国におけるフィンテックの現状に対する皆様の理解と興味を促すものになれば幸いです。


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「企業における営業秘密管理に関する実態調査」調査報告書について

2017-06-15 12:00

 独立行政法人情報処理推進機構は2017年3月、「企業における営業秘密管理に関する実態調査」調査報告書(以下「本調査報告書」)を公開しました。
 これは、近年の営業秘密漏えいに関する大型訴訟事件が発生している状況等を受け、営業秘密の保護強化に資する有効な対策の促進を図ることを目的としたものです。
 本調査報告書では、企業における営業秘密の漏えいの実態や営業秘密の管理に係る対策状況について調査・分析を行い、その結果をまとめています。
 本稿では、本調査報告書について、調査の概要と調査・分析結果のポイントを紹介します。


調査概要

1.調査期間

  2016年10月から2017年1月

2.主要実施項目

  アンケート調査
  無作為に抽出した12,000社に対しアンケート調査票を郵送、2,175社から有効回答(内訳は下表のとおり)。
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※ 業種または従業員数が無回答の24社については表に含まれていません。


調査結果のポイント

1.漏えい実態・営業秘密管理を取り巻く環境の変化
(1)漏えい実態

1.過去5年間における営業秘密の漏えい状況

・過去5年間に営業秘密の漏えいを経験した企業:8.6%(前回調査では13.5%)

2.営業秘密の漏えい発生ルート

・現職従業員等のミスによるもの:43.8%(前回調査では26.9%)
・中途退職者(正規社員)によるもの:24.8%(前回調査では50.3%)
・取引先や共同研究先を経由したもの:11.4%(前回調査では9.3%)

(2)営業秘密漏えいリスクの高まりを感じる社会動向の変化

1.過去5年間程度で感じる社会動向の変化の上位3項目

・標的型攻撃の増加:51.9%
・スマートフォン・タブレット機器等の急速な普及:51.4%
・データの活用機会の増加:41.8%

2.その他、過去5年間に営業秘密の漏えいを経験した企業が感じる社会動向の変化の主な項目

・人材の流動化:59.3%
・他社との協業・連携機会の活発化:29.1%

 漏えいを経験していない企業でも、日頃からこれらの観点を「社会環境変化に基づくリスク要因」として認識し、転職や他社協業に備えた施策が有用であることが示されています。
  

2.営業秘密漏えい対策への取り組み
(1)予防的な漏えい対策の遅れ

1.中小規模企業

 大規模企業と比較して、全体的に取り組みが遅れています。また、中小規模企業ではシステム的対策が十分に取り組めていない傾向が顕著でした。

(大規模企業と比較して取り組めていない主なシステム的対策)
・社内PCにUSBメモリ等を接続することの制御:製造業3.4%・非製造業7.1%
・情報システムログの記録・保管:製造業7.3%・非製造業12.4%

2.大規模企業

 中小規模企業と比較して、「情報システムログの記録・保管(製造業79.3%・非製造業73.1%)」はすでに取り組めているといえる一方、予防的な対策等はまだ十分に取り組めていない状況でした。

(主な予防的な対策等)
・不自然なアクセスの上司等への通知:製造業20.4%・非製造業18.9%
・不自然なアクセスの本人への警告:製造業19.1%・非製造業20.9%
・外部送信メールのチェック体制が整っている:製造業19.1%・非製造業16.9%

3.有効性を感じている対策

 企業自身が有効性を感じている対策として、以下の項目が多く挙げられました。これらは基本的な対策ですが、取り組みが遅れている企業が今後対策を検討する際には参考にできると考えられます。

(有効性を感じている主な対策)
・PC等の情報端末にアンチウイルスソフトを導入している:21.7%
・営業秘密の保存領域にはアクセス権を設定している:21.0%


(2)管理対象の明確化の重要性

 営業秘密として管理対象とするか否かの情報区分の実施について、調査結果は以下のとおりでした。

・大規模企業:製造業69.9%・非製造業61.4%
・中小規模企業:製造業25.8%・非製造業31.1%

 調査結果から、情報区分がしっかりとできている企業ほど、具体的な漏えい対策に関する取り組みも進んでいることが示されています。


(3)漏えいを検知する活動(漏えい未然防止、漏えい後の対策)

 多様化・高度化した手口による漏えいを完全に防ぐことは困難であっても、漏えいを検知する活動に取り組んでいればその行為に気付くことができます。また、漏えいを未然に防止する効果も期待できます。漏えい検知活動の実施について、調査結果は以下のとおりでした。

・大規模企業:製造業78.8%・非製造業75.0%
・中小規模企業:製造業20.1%・非製造業26.5%

 調査結果から、漏えいを検知する活動を実施している企業の方が、様々な対策への取り組みが進んでいるほか、漏えい行為を行った者への処罰・法的対応ができています。先進的な企業では個別対策と不可分の措置として漏えいを検知する活動に取り組んでおり、その重要性が示唆されています。


3.組織的な取り組み(経営層の関与と組織横断的な検討)

 調査結果から、営業秘密管理を経営の問題として捉えている企業の方が、総じて様々な取り組みが進んでいることが示されています。経営層が積極的に関与し、経営に直結する問題として捉え組織横断的に営業秘密対策の検討等を推進していくことの重要性が示唆されています。


最後に

 情報漏えい対策に関する取り組みは一部の管理部署のみで対応するものではなく、経営層による積極的な関与のもと組織横断的な取り組みが、これを機能させる重要な要因となります。経営層による強力なリーダーシップのもと、本調査報告書を参考に、有用な取り組みが実施されることが期待されます。


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