総務のトピックス

【会計トピックス】:

会計に強い社員を作るための最低限知っておきたい財務分析

2017-01-10 13:00

 企業の決算書には、企業の経営活動の内容やその結果に関する情報が包括的に表現されています。決算書を正しく読み取り財務分析を行うことができれば、企業の経営状態のみならず、今後の経営判断にも大いに役立ちます。
本稿では、財務分析の一般的分類とされる収益性・安全性・生産性・成長性の内容と具体的な指標について、数値例も交えて解説します。

財務分析の内容と指標

 財務分析は、一般的に以下の4つに分類されます。

(1)収益性
企業活動により利益の獲得能力があるのか。
(指標:売上総利益率、営業利益率、経常利益率、株主資本利益率など)

(2)安全性
 企業財務が健全であるのか。
(指標:株主資本比率、流動比率、固定比率など)

(3)生産性
 経営資源をいかに効率的に使用して、付加価値を生み出すのか。
(指標:労働生産性(=付加価値/平均従業員数)など)

(4)成長性
 企業の将来の成長可能性があるのか。
(指標:売上高成長率、経常利益成長率など)


財務分析の例示

 上記の財務分析のうち「(1)収益性」と「(2)安全性」に焦点を当て、以下に例示した同業種を営む3社の財務数値(3期分)を用いて、ここでは売上総利益率と株主資本比率の指標を比較します。

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 売上総利益率は、売上高に対する売上総利益の割合であり、この指標が高ければ高いほどその企業の市場競争力の高さを示します。しかし、少ない利幅で大量販売して売上総利益額を得るという戦略もとり得ることから、一概に売上総利率が高ければよいというわけでもありません。また、株主資本比率は、総資産に対する株主資本(自己資本)の割合であり、企業の長期的な財務安全性を示し、この指標が高ければ高いほど財務安全性が高いとされます。

 A社の売上総利益率と株主資本比率の指標は、B社・C社と比べていずれも低い水準を示しています。しかし、A社は、売上高は最も高い金額を計上していることから、B社・C社と比べて事業拡大に力を入れていることが想定されます。

 そこで、次にA社のみに焦点を当て、2つの指標の年度推移をみることにします。

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 年度推移から読み取れることは、X3期において売上総利益率と株主資本比率はいずれも低下しています。これらの原因としては、例えば売上総利益率の悪化については事業規模の拡大戦略(X3期売上高は、X2期の売上高の1.5倍に拡大)を採った結果と考えられます。また、株主資本比率の悪化は、事業規模に伴う運転資金の増加を借入資金などによって賄った結果、総資産を大幅に増加させたと考えられます。事業規模の拡大戦略によって過大な借入金負担が企業の財務健全性を損なうおそれもあります。


最後に

 財務分析は、客観的に把握できる財務数値を用いて行われます。対象会社の財務数値だけでなく、同業他社の財務数値や同業種の業界標準の数値を用いることができるのであれば、それらの財務指標と対象会社の財務指標を比較することでより有用な分析が可能となります。また、財務分析にあたっては、単年度のみの財務数値を用いるだけでは不十分な場合も多いため、通常は最低3年分の財務数値を用いて分析することが望ましいです。

 なお、財務分析の結果は、今後の経営戦略や経営判断に活用することが目的ですので、財務分析の結果のみにとらわれすぎないよう留意が必要です。


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企業会計基準委員会における「権利確定条件付き有償新株予約権」の検討状況(アップデート)

2016-12-05 10:00

 2016年3月29日付けで本トピックスに『企業会計基準委員会(ASBJ)が「権利確定条件付き有償新株予約権」の会計処理につき検討を開始』を掲載しましたが、その後ASBJでの検討が進んでいますので、前回執筆内容からの進展につき解説いたします。
 ASBJの検討状況として、現段階では、勤務条件が付されていないものも含めて、権利確定条件付き有償新株予約権をストック・オプション会計基準の適用範囲に含める方向性となっています。また、過去に発行されたものについては経過措置を適用し、遡及適用は行わず、従来通りの会計処理とする方向性となっています。


直近の検討における論点

 ASBJは、2016年8月22日開催の第90回実務対応専門委員会で、「権利確定条件付きで従業員等に有償で発行される新株予約権の企業における会計処理」に関する方向性の検討を行いました。
 今回、論点となったのは以下の3点です。

(1) 勤務条件及び業績条件が付された有償新株予約権の会計処理
(2) (1)につき、ストック・オプション会計基準の適用範囲に含めることとした場合、過去に発行したものに対して経過的な取扱いを設けるかどうか
(3) 業績条件のみが付された有償新株予約権の会計処理


(1) 勤務条件及び業績条件が付された有償新株予約権の会計処理

 企業が従業員等へのインセンティブ目的で発行する有償新株予約権には、通常、勤務条件(一定期間の勤務に基づく条件)及び業績条件(一定の業績等の達成に基づく条件)が付されています。このような有償新株予約権の会計処理については、その経済的性質を踏まえ、ストック・オプション会計基準の適用範囲に含め、付与日以降の将来の労働サービスの提供に対する対価として報酬費用を認識するとの案が事務局から示されています。

(2) 経過的な取扱いについて

 有償新株予約権の会計処理について、現状では報酬費用を計上しない処理が一般的となっていることから、(1)について事務局案が採用される場合、過去に発行したものに対する経過的取扱いの有無が問題となります。
 この問題への対応として、以下の3つの案が考えられるとしています。

【案1】当期の財務諸表と併せて表示される過去の財務諸表(比較情報)に遡及適用による影響を反映する。
【案2】適用初年度の期首までに発行した「勤務条件及び業績条件が付された有償新株予約権」について、新たな会計方針を遡及適用した場合の適用初年度の期首時点における累積的影響額を、適用初年度の期首の剰余金等に加減する。
【案3】適用日以降に発行した「勤務条件及び業績条件が付された有償新株予約権」から新たな会計方針を将来に向かって適用する。

 上記の3つの案につき、事務局は【案3】を採用し、以下の注記事項を付すことを提案しています。

1) 適用日より前に発行した「勤務条件及び業績条件が付された有償新株予約権」の概要(有償新株予約権の内容、規模(付与数等)及びその変動状況(行使数や失効数等))
2) 適用日より前に発行した「勤務条件及び業績条件が付された有償新株予約権」について採用している会計処理の概要

 【案1】及び【案2】は実務上の困難を伴う可能性が高いと考えられ、採用することは難しいというのが事務局提案の理由とされています。
 また、経過的取扱いを「適用日以降」とした場合、駆け込み的な発行が増えることを懸念し、委員会ではこれを「公表日以降」とする意見も出ています。

(3) 業績条件のみが付された有償新株予約権の会計処理

 最近増えている「業績条件のみが付された有償新株予約権」は、勤務条件が付されていないことから、付与日以降の将来の労働サービスの提供に対する対価として報酬費用を認識することについて反対意見も聞かれており、この会計処理についても論点とされています。
 事務局では、勤務条件が明示されていなくとも権利確定日までの勤務が期待されていると考えられること等を理由として、ストック・オプション会計基準の適用範囲に含め、原則として付与日以降の将来の労働サービスの提供に対する対価として報酬費用を認識することを提案しています。


最後に

 権利確定条件付き有償新株予約権の会計処理については、勤務条件が付されていないものも含めてストック・オプション会計基準の適用範囲に含められ、報酬費用を認識する方向性となっています。今まで損益への影響がないことをメリットととらえて権利確定条件付き有償新株予約権を導入してきた企業も多いことから、この方向性で取扱いが確定すれば、実務上大きなインパクトがあるといえます。
 また、経過的取扱いを設けることで、過去に発行したものについては遡及適用しない方向性となっており、すでに導入した企業には影響がないように配慮されています。ただし、駆け込み導入を防止するため、経過的取扱いが「適用日以降」ではなく「公表日以降」とされる可能性もあり、これから権利確定条件付き有償新株予約権の導入を検討している企業においてはその取扱いについて留意する必要があります。


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会計に強い社員を作るために最低限知っておきたい決算書の読み方

2016-09-30 17:07

 決算書には、会社の経営活動の内容やその結果に関する情報が包括的に表現されています。決算書を正しく読み取ることができれば、会社の経営状態がおのずと見えてくることのみならず、今後の経営判断にも大いに役立ちます。

 本稿では、決算書の意味と目的、わが国の各法令に基づく決算書それぞれの相違及び決算書の内容についてみていきます。


決算書の意味と目的

 決算書とは、貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書などの財務書類のことをいいます。
決算書は、会社内外で様々な目的で利用されます。例えば、会社内部の利用目的として、経営判断や経営管理のために決算書が利用されます。また、会社外部の利用目的として、税務申告や投資家に対する情報開示、また、金融機関から融資を受けるときにも決算書が利用されます。このような目的に応じて決算書の内容も変わります。

法令に基づく決算書の相違

 わが国の法令によって求められる決算書はそれぞれ異なります(下表)。

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 決算書は、法令によって目的も名称も異なっています。金融商品取引法上の「財務諸表」は、投資家を保護するために作成されます。投資家は財務諸表を投資情報として利用し、株式を購入したり売却するかどうかの判断をします。また、会社法上の「計算書類」は、株主や債権者を保護するために作成され、株主総会で決算承認された後、決算公告として貸借対照表(会社法上の大会社は損益計算書も)が官報や新聞広告、会社のホームページなどに掲載されます。計算書類は、財務諸表と同じような情報がまとめられています。さらに、法人税法上は、法人税の計算のために用いた株主総会の承認済みの計算書類とその勘定科目内訳明細書が確定申告書に添付されます。

決算書の内容

 決算書の主なものには「貸借対照表」、「損益計算書及び包括利益計算書」及び「キャッシュ・フロー計算書」の3つがあります。

(1) 貸借対照表

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 貸借対照表は、決算日における会社の財政状態を示します。バランスシート(B/S)とも呼ばれ、資産・負債・純資産によって構成されます。

 資産の部では会社がどのように資金を運用したのかを示し、流動資産と固定資産に区分されます。流動資産は、売掛金・棚卸資産・前払費用など営業に関わる債権や一年以内に現金化・費用化されるものです。固定資産は、建物や土地・長期前払費用など主に一年超にわたり使用したり費用化されるものです。また、負債の部では会社がどのように資金を調達したのかを示し、流動負債と固定負債に区分されます。流動負債は、買掛金や未払金など営業に関する債務や一年以内に返済期限が到来するものです。固定負債は、長期借入金・社債など主に一年を超えて返済期限が到来するものです。
 
 資産から負債を差し引いた純資産は、返済不要な資本(自己資本)となります。純資産比率(純資産/総資産×100%)が高ければ高いほど財務安全性が高いとされます。

(2) 損益計算書

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 損益計算書は、1事業年度(通常は決算日までの1年間)の収益と原価・費用、その差額としての利益(または損失)を表します。売上高から売上原価、販売費及び一般管理費、その他損益を加減算して当期純利益が計算されます。なお、連結財務諸表作成会社は、連結財務諸表で包括利益を表示することが求められているため、包括利益計算書を作成する必要があります。包括利益は、当期純利益に加えてその他の包括利益(その他有価証券評価差額金、繰延ヘッジ損益、外貨換算調整勘定などの変動額)が含まれます。

 当年度を含め過年度の損益金額や利益率の推移分析を行うことで、過去の会社の損益動向を把握することができ、今後の事業展開の検討にも役立てることができます。さらに、同業他社の財務数値や同業種の業界標準の数値を用いて比較することができればより有用な分析が可能となります。

(3) キャッシュ・フロー計算書

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 キャッシュ・フロー計算書は、1事業年度のお金の流れを表し、営業活動によるキャッシュ・フロー、投資活動によるキャッシュ・フロー及び財務活動によるキャッシュ・フローの3つに区分して表示されます。会社の本業、投資関連の取得や売却、資金の借入や返済・社債の発行や償還などによるお金の増減を示します。

最後に

 上場会社の場合には、決算書の入手は容易です。ほとんどの上場会社では、会社のホームページに「IR(Investor Relation)情報」や「投資家の皆様へ」といったリンクから決算書情報を入手することができます。また、金融庁の「EDINET」によっても決算書類がデータベース化されているため、財務諸表等の開示情報を閲覧することができます。しかし、非上場会社の場合には、決算公告等の開示義務はあるものの実際に閲覧できる情報は限られています。ただし、会社の取引先や金融機関などから決算書の提出を求められることはあります。

 社員が決算書への理解を深め、会社の財政状態や業績動向を把握できるようになることで、会社の経営状況をより身近に感じ、仕事への意識・意欲も向上することが期待できると思われます。


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IFRS「のれん」の減損処理

2016-08-31 14:45

 日本国内でもIFRS(国際財務報告基準)を適用ないし適用を決定している上場企業が100社を超える状況となっていますが、IFRSと日本基準との差異の代表的なものとして「のれん」の会計処理が挙げられます。事業等を買収した際に生じたのれんは、日本基準においては20年以内に毎期償却する必要がありますが、IFRSにおいては償却しない代わりに毎年「減損テスト」を行うため、一時的に多額の減損処理が必要となることもあります。本稿では、のれんの会計処理に関する日本基準とIFRSの主な違いについて解説するとともに、IFRS適用会社におけるのれんの減損処理の事例についても解説いたします。


のれんの会計処理に関する日本基準とIFRSの主な相違点

 事業等を買収した際、会計処理においては買収時の投資額と買収対象事業等の時価純資産の差額が、「のれん」として認識されます。投資額が時価純資産より大きい場合、のれんは貸借対照表に資産として計上され、逆の場合は負ののれんとして一時に利益計上されます。
資産計上されたのれんの会計処理は、日本基準とIFRSで大きく異なっています。主な相違点としては(1)のれんの償却と(2)減損処理が挙げられます。

(1) のれんの償却

 日本基準では、のれんを20年以内で毎期規則的に償却します。資産計上されているのれんの残高は償却により減少し、償却額は損益計算書に費用計上されます。
これに対しIFRSではのれんの償却を行わないため、後述する減損がない限りのれんの残高は変わらず、損益計算書への費用計上もありません。
特にM&Aを積極的に行う企業においては、のれんの償却による費用負担が生じないという点をメリットととらえ、日本基準からIFRSに移行するケースが目立ちます。

(2) のれんの減損処理

 減損とは、資産の収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった状態であり、減損処理とは、そのような場合に一定の条件の下で回収可能性を反映させるように帳簿価額を減額する会計処理をいいます。

 日本基準、IFRSいずれにおいても、一定のルールに基づきのれんの減損の判定(減損テスト)を行い、減損に該当すればその処理が必要となりますが、両基準でそのルールが異なっています。

 まず減損の判定の実施時期ですが、日本基準では、のれんに関連する事業の損益が継続してマイナスになるなど、減損の兆候がある場合にのみ減損の判定を行うのに対し、IFRSでは減損の兆候がある場合だけでなく、毎年一定の時期に減損の判定を行う必要があります。

 次に減損の判定に際し、日本基準では、のれんに関連する事業の割引前将来キャッシュ・フローの総額が事業の簿価を下回る場合にのみ回収可能価額を見積り、減損損失を認識するという2ステップのアプローチが採用されていますが、IFRSでは事業の簿価と回収可能価額を直接比較して減損損失を認識するという1ステップのアプローチが採用されています。

 割引前将来キャッシュ・フローの総額が簿価を上回っていたとしても、回収可能価額が簿価を下回っていることもありえますので、日本基準よりもIFRSの方が、減損損失を認識する基準が厳格であるといえます。

 上記のとおり、日本基準ではのれんの償却が規則的に行われるため、時の経過に伴いのれんの残高は減少し減損リスクも小さくなりますが、IFRSではのれんの償却が行われないため、減損リスクは将来にわたり残り続けることになり、減損処理を行った際の損益インパクトは大きなものとなる可能性があります。


IFRS適用会社におけるのれんの減損処理の事例

 楽天株式会社はIFRSを適用していますが、同社の2015年12月期決算では、過去最高の売上高を計上したにもかかわらず、のれんの減損損失を計上したことによる影響が大きかったため、結果として減益となっています。

 減損損失計上の理由としては、海外子会社のキャッシュ・フロー計画に遅れがあったこと等が挙げられています。

 同社は積極的にM&Aを行っており、2015年12月末時点の貸借対照表には369,428百万円ののれんが計上されているので、今後も大きな減損リスクを抱えているとも考えられます。

 このように、IFRS適用会社においてはのれんの償却による費用負担がない代わりに、減損損失として一時に多額の費用計上が行われるリスクがあることに留意が必要です。

<楽天株式会社の連結損益の状況>
(単位:百万円)
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会社の持続的成長と中長期的な企業価値の向上に向けた取締役会のあり方

2016-06-24 17:12

 2016年2月18日に金融庁及び東京証券取引所より『会社の持続的成長と中長期的な企業価値の向上に向けた取締役会のあり方 「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」意見書(2)』(以下「本意見書」という)が公表されました。本意見書は、コーポレートガバナンス・コード(以下「コード」という)の諸原則のうち、取締役会のあり方に関し、コーポレートガバナンスを実現していく上で、現時点で重要と考えられる視点を示したものです。

 今回は、コードの適用状況を確認するとともに、本意見書が示す実効的なコーポレートガバナンスを実現していく上での視点について要約します。


コードの適用状況

 2015年6月よりコードが適用され、2015年12月末時点では全上場会社の約7割にあたる2,485社が適用状況を公表しています。なお、コードは法令とは異なり法的拘束力を有する規範ではないため、その適用に当たっては、「諸原則を"実施"するか、実施しない場合には、その理由を"説明"するか」が求められています。

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 上表のとおり、東証第一部・第二部の会社のうち約8割が、コードの諸原則の90%以上を"実施"している中、取締役会に関係する項目は"実施"の比率が比較的低くなっていることが特徴的です。これは、会社経営の根幹に係わり慎重な対応が必要な諸原則であるため、コード適用直後の2015年12月末時点では"実施"の状況まで至っていないのが実情と考えられます。

 ただし、取締役会の実効性の評価については今後の取組みとして"説明"している会社が多く、今後、本格的に"実施"することが予定されている会社が多くあることがうかがえます。


企業を取り巻く経営環境の変化と取締役会のあり方

 上述の背景のもと本意見書は、上場会社を取り巻く環境が大きく変化し続ける中、取締役会のあり方に関し、形式的な対応ではなく、実効的なコーポレートガバナンスを実現していく上で、次の項目に着目しています。

  ・最高経営責任者(CEO)の選解任のあり方(補充原則4-1(3)、4-3(1)等)
  ・取締役会の構成(原則4-7から9、4-11等)
  ・取締役会の運営(原則4-8、4-10、4-12から14等)
  ・取締役会の実効性の評価(原則4-11)


(1) 最高経営責任者(CEO)の選解任のあり方(補充原則4-1(3)、4-3(1)等)

 CEOの選解任は、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を実現していく上で、上場会社にとって最も重要な戦略的意思決定であり、そのプロセスには、客観性・適時性・透明性が求められます。
 そのため、CEO候補者の人材育成及び選任には、中長期的な観点から、十分な時間と資源を確保することが重要です。また、選任のための後継者計画の策定及び運用にあたっては、不透明なプロセスによらず、客観性・適時性・透明性を確保することが求められます。そして、CEOに問題があると認められる場合には、取締役会が適時・適切にCEOを解任できるよう、取締役会の経営陣からの独立性・客観性が十分に確保されていることが重要です。

(2) 取締役会の構成(原則4-7から9、4-11等)

 経営環境の変化や経営課題の複雑化に対応して求められる役割・責務を果たしていくため、取締役会は、必要とされる資質・多様性を備えるとともに、独立性・客観性を確保していくことが重要です。
そのため、取締役会の構成は、会社の事業・ステージ、経営環境や経営課題に応じて、資質のバランスや多様性を充実させていくことが求められます。また、取締役会の独立性・客観性を確保するとともに、監査委員会・監査等委員会(以下「監査委員会等」という)が業務監査・会計監査等の重要な役割・責務を適切に果たすべく、監査委員会等の独立性・客観性を確保することが必要です。そして、取締役会や監査委員会等の独立性・客観性が確保されるか否かは、CEOが経営判断等を行う上で、取締役会等の「独立した客観的な立場」という特性を活かす意思があるかどうかにかかっています。

(3) 取締役会の運営(原則4-8、4-10、4-12から14等)

 上場会社やその企業集団が経営環境の変化や経営課題の複雑化に対応していくためには、取締役会における戦略的な方向付けや会社の業績の適切な評価等に関する議論を充実させていくことが重要です。
 取締役会においてこのような議論を充実させていくためには、論点の明確化、議案の絞り込み等、運営上の工夫が必要です。また、社内業務執行取締役は、執行役としての役割にとどまらず、取締役として職務執行の監督等を行う役割も担っていることについて、認識を深めることが必要です。そして、会社が取締役会において、独立社外取締役も議論に貢献できるよう環境整備(常勤監査役等との情報交換等)を行うことや、独立社外取締役がステークホルダーの意見を取締役会に適切に反映することが重要です。

(4) 取締役会の実効性の評価(原則4-11)

 取締役会の資質・多様性やその運営を充実させていくための取組みが有効に行われているかなど、取締役会全体としての実効性の評価を行い、次の取組みに継続的につなげていくことが重要です。
 そのため、評価の実施に際しては、取締役会メンバー1人1人による率直な評価がまずもって重要と考えられます。また、取締役会が果たすべき役割・責務を明確にした上で、それに照らして取締役会の構成・運営状況等が実効性あるものになっているかについて、実質的な評価を行うことが必要です。そして、取締役会が、その資質・多様性や運営を充実させていくためのPDCAサイクルを実現していくためには、自らの取組みや実効性の評価の概要について、ステークホルダーにわかりやすく情報開示・説明を行うことが重要です。


おわりに

 本意見書では、資質とリーダーシップを有する取締役を計画的に育成・選任し、独立性・客観性を備えた取締役会を構成すること、取締役会の適確な評価を行うことにより、取締役会の実効性向上に向けたPDCAサイクルを作り上げることが期待されています。従来、黙示的には認識されていた事項ですが、経営環境が変化し経営課題が複雑化した今日においては、これらの示唆を明示的な課題として受け止め、会社を積極的に変化させていくことが取締役に求められている役割であると考えられます。


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