総務のトピックス

【会計トピックス】:

【会計】不正会計と上場廃止

2015-12-18 10:06

昨今話題になることの多い不正会計ですが、過去には不正会計を原因として上場廃止になったケースがみられます。そのような理由で上場廃止になった企業は、ブランド・イメージを大きく毀損することになり、その影響は甚大です。今回は、不正会計の意味と不正会計に関係する上場廃止基準について触れるとともに、その実例を紹介します。


不正会計の意味

不正会計とは、経営者等によって意図的に真実とは異なる会計操作が行われることを意味しています。赤字決算や巨額の損失等を隠ぺいするために、虚偽の業績が表示【虚偽記載】されることがほとんどです。
不正会計による有価証券報告書等の虚偽記載は、証券市場のルールにおいて上場廃止基準に抵触することがあります。


上場廃止基準

虚偽記載を原因とする上場廃止基準として、日本取引所グループは以下のように定めています。

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この基準は、虚偽記載を行っただけでは上場廃止になるわけではなく、虚偽記載に加えて「直ちに上場を廃止しなければ市場の秩序を維持することが困難であることが明らかである」ことを証券取引所が認めることではじめて上場廃止となることがポイントとなります。
なお、「直ちに上場を廃止しなければ市場の秩序を維持することが困難であることが明らかなとき」とは、例えば、上場前から債務超過であったなど虚偽記載により上場基準の著しい潜脱があった場合や、実態として売上高の大半が虚偽であったなど虚偽記載により投資者の投資判断を大きく誤らせていた場合など、そのまま当該銘柄の上場を維持すれば当取引所の金融商品市場に対する投資者の信頼を著しく毀損すると認められる場合が想定されています(「特設注意市場銘柄の積極的な活用等のための上場制度の見直しについて」平成25年6月17日 株式会社東京証券取引所より)。


上場廃止の実例

過去に証券取引所が虚偽記載を原因に上場廃止とした実例として、西武鉄道、カネボウ、ライブドアが挙げられます。それぞれの上場廃止の理由(虚偽記載の内容)やその影響は以下のとおりです。
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最後に

上記を含め過去の事例をみると、虚偽記載を原因に上場廃止となった企業では、経営者層による組織的な不正会計への関与が明らかとなっています。
一時凌ぎのつもりで不正会計に手を染めてしまった結果、不正会計の発覚により、これまで積み上げてきた企業価値が一瞬にして失われることになります。株価の暴落や企業イメージの悪化による売上減少、最悪の場合では存続不可能となり企業解体に至る等、そのコストは甚大なものとなり、株主の他、債権者や従業員等に多大な負担を与えることになります。
これらの実例から、不正会計は企業の信用の失墜はもとより、社会に与える影響が極めて大きいということを強く心に留めておきたいと思います。


連載協力:税理士法人AKJパートナーズ
    ( http://www.akj-partners.com/

 

【会計トピックス】:

【会計】東芝不正会計が示唆すること

2015-11-27 14:38

株式会社東芝による不正会計の全容が、2015年7月に公表された東芝第三者委員会調査報告書の中で明らかになりました。その後、東芝より2015年9月に「過年度決算の修正、2014年度決算の概要及び第176期有価証券報告書の提出並びに再発防止策の骨子等についてのお知らせ」が公表され、2008年度から2014年度第3四半期までの不正会計による追加損失総額が2,248億円に上ることが報告されました。

1.不正会計の大部分は単純な手口

東芝の不正会計は、複数の手口で複合的に実行されていましたが、本稿では工事進行基準を利用した手口に注目します。以下に記載の通り、非常に単純な手口であることが特徴です。

  工事進行基準における見積工事原価総額の過小見積り(影響額479億円)

東芝は大規模工事の売上計上基準に、工事進行基準を採用しています。この基準は、工事完成時に総額を売上計上する工事完成基準と異なり、工事進行度に応じて売上計上する基準のため、業務実態に即した会計処理とされています。工事進行度は下記算式で算定されますが、見積工事原価総額は確定数値ではないため、この金額を合理的に見積もることが重要なポイントとなります。
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【例示】
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上表のとおり、見積工事原価総額を少なく見積ると工事進行度は高くなり、結果として売上は早期に計上されます。東芝はこの仕組みを濫用し、見積工事原価総額を実態よりも過小に設定することで工事進行度を過大に算定し、実態以上の売上を計上していました。

また、受注金額以上に工事原価の発生が見込まれる工事に対して、見積工事原価総額を見直さなかったため、実態は赤字である工事に対して、工事完成前の年度に工事利益を計上していました。


2.負の組織風土

外部からの強いガバナンスが期待される指名委員会等設置会社で、内部統制も適切に整備運用されていると思われた東芝において不正会計が発生した背景には、経営陣が醸成する負の組織風土が関係していると考えられます。これは、東芝第三者委員会調査報告書でも直接的な原因として指摘されています。

経営陣の価値観が組織の行動に強く影響

経営陣は、グループ各社及び事業部に対して「チャレンジ」と呼ばれる厳しい必達目標を課していました。「チャレンジ」の多くは、当年度または当四半期のいわゆる目先の利益獲得を要請するものでした。
目標未達による経営陣からの厳しい叱責を回避するため、グループ各社及び事業部は目標達成を装う不正会計を行わざるを得ない状況にまで心理的に追い込まれ、経営陣はそれを黙認する組織風土が醸成されていたことが推察されます。

内部統制は経営陣によって構築されるため、経営陣自身に対して機能しにくいと言われており、本件でも内部統制は機能しなかったことが伺えます。また、各取締役による経営陣の監視も十分に機能せず、指名委員会等設置会社であっても不正会計を許さない組織風土が醸成されない場合、その機能は大きく減殺されることが伺えます。
利益至上主義のもと不正会計さえも黙認するという経営陣の価値観が、負の組織風土を醸成し、今回の巨額な不正会計の最も大きな原因になったと考えられます。


3.不正会計防止に向けて会社ができること

不正会計の防止には、負の組織風土を発生させないこと、発生した負の組織風土の芽を早期に摘んでいくことが重要です。

【負の組織風土の発生を防止する方策】

負の組織風土は、負の価値観を持つ経営陣によっても醸成されますので、そのような人物を経営に参画させない観点から、株主総会の監視機能を利用する方策として以下が考えられます。
 ・就任期間が長い役員の重任案の否決
 ・金融機関やファンド等「もの言う」株主の参画


経営陣の新陳代謝を促し、仮に負の価値観を持ってしまった経営者がいても、長期的な影響を制度的に排除するため、会社内規を利用する方策として以下が考えられます。
 ・重任回数の制限規定の導入
 ・役員定年制度の導入

経営陣と臆せず意見交換できる人物の登用により取締役相互及び監査役の監視機能を有効に利用する方策として以下が考えられます。
 ・経営陣と同格以上の経験を有する社外取締役及び監査役の参画
 ・法務や経理と言った専門分野に強い監査役の参画

【発生した負の組織風土の芽を早期に摘む方策】

負の組織風土の影響は、何らかの形で財務数値に表れてきますので、財務数値と業務実態を比較し合理的な関連性を分析することは、負の組織風土に気付くための有効な方策です。多くは合理的な原因が存在しますが、一般的に、以下のような事項には留意が必要とされています。
 ・販売現場における販売状況と不整合な売上
 ・異常な利益率(高い・低い、毎期一定)の売上
 ・長期間滞留している棚卸資産や売上債権の存在
 ・異常に高額な無形物(ロイヤリティやソフトウェア等)への支払
 ・事業関連性の薄い取引業者への支払
 ・経営陣からの直接の指示により実施された会計処理
 ・その他

ただし、本稿の主な読者である総務や経理のご担当者様は日常業務対応で多くの時間を割かれているとともに、財務数値の分析自体を得意としている方は少数と思われますので、状況に応じて専門家の利用を検討することが有効です。

その他、不正会計が長期間にわたり発覚しない多くの原因は、不正会計を実行している担当者が長期間異動せず経営陣の指示のもと秘密裡に裏工作を進められる環境があることが挙げられます。定期的な人事異動を厳格に実施していくことで、前任者の不正会計は後任者によって発覚することとなるため、不正会計の芽を早期に摘むことが期待されるほか、後任者からの発覚を恐れ、不正会計の実施自体の牽制効果が期待できます。

一方で、仮に不正会計に気付いても社内の立場上、自ら公言にすることを躊躇し結果として不正会計を黙認する負の組織風土の醸成につながることもよく聞かれるところです。これについては、通報制度の設置が効果的です。社内通報制度のみならず、外部弁護士等が窓口となる外部通報制度を整備することが重要なポイントと考えられます。多くの不正会計は通報制度の利用により通報を受けた外部者によって発覚しています。


最後に

不正会計の手口は複数あるものの実際に利用される手口は単純なものも多く、社員の多くは不正会計であることに気付きつつ、負の組織風土に支配され、改善の機会を失している実態が浮き彫りになりました。しかし、不正会計発覚によって蒙った会社の損害は、あまりにも甚大であり、信用の失墜は会社の存続を含め今後の経営に大きな制約となります。永続する会社であるために不正会計を許容する負の組織風土は即座に排除することが必要であり、本稿が不正会計を防止する取組みのきっかけになれば幸甚です。


連載協力:税理士法人AKJパートナーズ
    ( http://www.akj-partners.com/

 

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