総務のマニュアル
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従業員にとって安心・安全な職場をつくる 労働災害防止ガイド
「カスハラ」による心理的負荷も対象に 過労死、精神障がいなど労災認定基準の近年の改正ポイント
プロアクト法律事務所 弁護士 徳山 佳祐
プロアクト法律事務所 弁護士 田畑 瑠巳
最終更新日:
2025年04月15日

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働き方改革が進められる中、2021年に20年ぶりに労働災害(以下、労災)の脳・心臓疾患の認定基準、いわゆる「過労死ライン」が、2023年には精神障がいの認定基準が見直され、2023年度の過重労働や仕事のストレスを原因とした労災認定の件数が過去最多になりました。そこで本企画では、労災の現状、認定基準の改正点、実際に労災が発生した場合の対応、労災防止対策などについて3回にわたって解説します。
労災の種類と労災に対する補償・支給
労災とは、労働者が労務に従事したことによって被った死亡、負傷、疾病をいいます。
労災の種類としては、
- 労働者の業務としての行為や事業場の施設・設備の管理状況などが原因となって発生する「業務上の負傷」
- 事業主の支配下にある状態において有害因子にさらされたことによって発症した「業務上の疾病」
- 複数事業労働者の二以上の事業の業務を要因とする傷病等の「複数業務要因災害」
- 通勤によって労働者が被った傷病等の「通勤災害」
の4つがあります。
労災が発生した場合、当該事業主は、労働基準法により補償責任を負うことになりますが(労働基準法第75条以下)、労災保険に加入している場合は、労災保険による給付が行われ、事業主は労働基準法上の補償責任を免れます。
ただ、たとえば、事業者において、労働者が長時間の過重労働をしており、健康状態が悪化していることを知りながら業務軽減措置等を取らなかった場合など、事業者に注意義務違反が認められる場合には、労働基準法上の補償責任とは別に、労働者やその遺族から不法行為・債務不履行(安全配慮義務違反)などにより民法上の損害賠償請求がなされることもあります。なお、この場合には、二重補てんという不合理を解消するため、労災保険により補償が行われたときは、その価額分は民法による損害賠償の責任を免れます。
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