成長支援部作りコンサルタントの岩井徹朗です。
「なまじ経験者じゃないほうがいいかも」 クライアントさんと打合せした時のこと。そのクライアントさんはコンビニエンスストアを経営されているのですが、コンビニ経験者と未経験者のアルバイト社員を比較した場合、最初のパフォーマンスはやはり経験者の方がいいのですが、長期的に見た場合はかえって未経験者の方が伸びるケースが多いそうです。
経験者の場合は、指示を出した時に「あっ、それ分かっているので大丈夫です!」とすぐに行動できます。もちろん、優秀な人であれば、その後も経営者が満足する水準の仕事を継続して行います。
けれども、中には中途半端なレベルの経験者がいて、「このやり方はおかしくない?」と質問すると、「いえ、これ他でもやっていましたから!」「こっちの方が効率的ですよ!」と言うことを聞かずに自分流のやり方を押し通す人もいます。
その社員のやり方が会社の経営方針や目指している方向性と一致していれば問題ありません。しかし、ときには会社の方針とずれていても「あくまで自分の方が正しい」と自分の考えややり方に固執して、最後には「あんなやり方をしているようじゃ、この会社はダメだ」と経営者に矛先を向ける場合もあります。
一方で、未経験者の場合。
「この通りにやってね」と指示しても、最初はなかなかコツが呑み込めずに思ったような水準に達しないことがあります。それでも、根気よく「ここはもう一度やり直し」という教育を繰り返していると、だんだんと経営者も満足のいく仕事ができるようになってきます。この点、たとえその業務が未経験であっても、素直で謙虚に学ぶ人であれば、会社の方針ややり方に大きく反することは少ないのが普通です。
しかし、会社の中途採用の募集を実際に見ていると、たいていは採用の条件として、「経理の経験者優遇」、「IPOの実務経験必須」、「製造業での勤務経験5年以上」というように経験者を採用の基準にしています。
もちろん、即戦力としては経験者の方がいいかもしれません。
しかし、特に中小企業においては、社内体制が整備されておらず、マニュアルや規程もない、役割分担が曖昧なので、業務全体を俯瞰する力が必要、経営者の意思で方針がよく変わるので、柔軟な対応が求められる、といった事情があります。
このため、大手企業と比べると、経験者がピタリとその職務に収まるケースが少ないのが普通です。
だから、経営者に社員を育てる覚悟があり、会社としても社員教育にかける時間があるのであれば、中途採用では必ずしも経験者にこだわる必要はありません。
先のコンビニを経営しておられるクライアントさんも、現在店長の次に頼りにしているのは、採用の時、「この人、ちゃんと仕事やっていけるのかなぁ......」とかなり心配だったコンビニ未経験のアルバイトです。 新卒採用であれ、中途採用であれ、会社に入社した時点ではその会社にとっては新人です。よほど特殊な仕事の場合は別ですが、時間をかけ、回数を重ねることで、人は慣れます。安易に経験者に頼るのではなく、未経験者を一人前の経験者にする、そんな会社の姿勢が問われます。
優秀な社員を見つけるのではなく、優秀な社員に育てる。前者は運次第ですが、後者は努力次第。中小企業の人事施策としては育てる方がより確実です。
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