労働安全衛生法とは、労働者の安全と健康を確保し、快適な職場環境を促進することを目的とした法律である。1972年に制定され、労働災害の防止や健康管理を通じて、働く人々の労働環境の改善を図ることを主な役割としている。
具体的には、安全衛生管理体制の構築や危険有害物の管理、健康診断の実施、過重労働の防止などを企業に義務づけている。
2019年4月に施行された労働安全衛生法の改正では、働き方改革の一環として、特に長時間労働の是正と、職場におけるメンタルヘルス対策が強化された。背景には、長時間労働による過労死やメンタルヘルス不調の増加が社会問題となり、働き方改革の一環として対応が急務であったことが挙げられる
改正点の主な内容と、企業が対応すべき項目は以下の通り。
産業医への情報提供義務:企業は、労働時間や職場のストレス要因など、産業医が必要とする情報を提供しなければならない。これにより産業医が職場環境に対する十分な把握が可能となり、適切な健康管理が期待できる。
産業医による意見具申:産業医が労働者の健康管理のために必要と判断した場合、企業は産業医の意見を事業者がすぐに受け入れられるよう意見具申の制度化が求められる。
長時間労働者への対応強化:従来の健康診断に加えて、月80時間を超える時間外労働をした従業員には、産業医や医師による面接指導が義務づけられた。企業はこれに基づき、労働時間の改善や配置転換などの対応を行う必要がある。
医師による面接指導:健康診断の結果を受けた医師の意見をもとに、労働時間や配置について改善策を検討することが企業に求められる。
労働時間の把握義務:企業は、労働者の労働時間を客観的な方法で把握する義務が課されている。これは、タイムカードやICカードの活用、パソコンのログ記録などによって実現することができる。
健康リスクへの配慮:過労による健康リスクを回避するため、企業は長時間労働の是正や従業員の休暇取得の促進を徹底する必要がある。