健康保険および厚生年金保険では、被保険者が事業主から受け取る毎月の給与などの報酬額を、区切りのよい幅で区分した「標準報酬月額」として設定している。これにより、保険料や保険給付の額を、一定の基準に基づいて公平に算出することが可能となる。
賞与については、税引前の総額から千円未満を切り捨てた「標準賞与額」を用いる。標準賞与額には上限が設けられており、健康保険では年度の累計額が573万円、厚生年金保険では1か月あたり150万円が限度である。
健康保険制度における標準報酬月額は、第1級の5万8千円から第50級の139万円までの50等級に区分されている。厚生年金保険では、これよりも広い範囲で等級が設定されている。
標準報酬月額における「報酬」とは、基本給のほか、残業手当、通勤手当、住宅手当などを含む広範な支給項目を指す。一方で、出張旅費や慶弔見舞金、結婚祝い金など、労務の対価とみなされない一時的な支給は含まれない。
標準報酬月額は、通常、毎年7月に提出する「算定基礎届」に基づいて決定される。4月から6月に支払われた報酬の平均額をもとに、該当する等級が定められる。また、昇給や降給などにより報酬に大きな変動があった場合は、「月額変更届(随時改定)」を提出し、標準報酬月額の見直しを行う必要がある。
標準報酬月額を正確に設定しなければ、保険料のみならず、傷病手当金や出産手当金などの給付額にも影響を及ぼす。そのため、報酬額の正確な把握と、適切かつタイムリーな届出が求められる。特に、新入社員や育児休業からの復職者など、報酬が変動しやすいケースでは注意が必要である。
参考:
日本年金機構「厚生年金保険の保険料」、全国健康保険協会「標準報酬月額・標準賞与額とは?」