コラム

人事 / 労務管理 / 中小企業の人事制度

本に載らない現場のノウハウ 〜中小企業の人事制度〜
【第1回】中小企業に人事制度は必要か?(1)

2013年05月24日

■はじめに

 私がお手伝いする機会が多いテーマの一つに、「中小企業の人事制度作り」があります。

 「人事制度」は、一言で言えば、"社員の処遇などを制度化、体系化すること"です。どんな会社でも社員の処遇に関する決まりは、就業規則をはじめとして何か必ずあるはずですが、これらを体系的につないで、仕事の効率化、生産性の向上、会社と社員の良好な関係作りなどを図るものが人事制度です。

 中小企業で人事制度を作るにあたっては、社内で取り組むことがほとんどでしょうが、参考にした事例が自社に合わなかったり、運用してみたら予想外の事象が起きたり、社員の反発があったりと、なかなか思い通りに進まないことも多いのではないでしょうか。

 このコラムは、中小企業での人事制度作りにあたって、書籍などにはなかなか載っていない現場での事例、実務上のエピソードなど、中小企業ならではの事情を交えて、みなさんの会社での取り組みの参考にしていただこうというものです。

 「そうか、こんなことも起こるのか」
 「なるほど、こんなやり方もあるのか」

といった、小さな気づきが提供できればと思っています。


■人事制度って必要ですか?

 私が中小企業の経営者のみなさんにお話をうかがう中で、「人事制度」に問題意識や興味をお持ちの方と、そうでない方はほぼ半分ずついらっしゃいます。

 人事制度は必要ないという方がよくおっしゃるのは、

 「俺がちゃんと見て全部わかっている(まだ見通せる規模である)」
 「臨機応変な経営判断ができなくなる(決まりに縛られたくない)」

など、経営者がその時々の状況で、自己裁量で判断できる余地が狭まると考えているからのようです。
「仕組み通りに動けるほど安定していない(不満の種になる?)」と心配する方もいます。

 また、制度が必要という方でも、「マネージャーが力量不足なので、細かく仕組みで決めてやらないと動けない」など、ルールを決めることが主眼の方もいらっしゃいます。

 これらは経営者の考え方としてはそれぞれアリだと思いますが、問題は社員の側がこれをどう感じているかです。

 「ちゃんと見てくれているから安心している」
 「まだ力が足りないので、決まっていた方がやりやすい」

と思っていれば良いですが、

 「その時々で言うことが違う(基準が違う)」
 「自分たちの裁量を認めてくれない」
 「きちんと見てくれていない」

と思っているとしたらどうでしょうか。

 程度の差はあれ、経営者と社員の間には、何らかの認識ギャップがあるのが普通だろうと思います。

 ここからいえるのは、やはりどんな規模の企業であっても、この認識ギャップを埋めるためには「人事制度」が必要であり、さらにその中身は各社各様で違うということです。
中小企業で「人事制度」というと、何か大げさなものと捉えて「うちには必要ない」と言われることがありますが、小さい会社だからこそのやり方があります。

 私の経験ですが、社長がご自分の裁量で全社員の給与を決めているような会社で、社長に「どんなところをどんな優先順位で見て給料を決めているのか」を細かくインタビューし、それを整理するだけで評価制度にまとめたことがあります。
要は経営者が感覚的に思っていたことを言語化、資料化しただけなのですが、その会社はそれで十分に機能し、社長が無用な苦情を受けることもなくなりました。

 「人事制度」をあまり難しく考えすぎず、自社なりの活用の仕方を考えることが必要ではないかと思います。

小笠原 隆夫
​​MENU