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採用ブランディング【第4回】社長、営業と採用どちらが大事ですか

2018年05月02日

■採用できないと嘆く前に、社長は採用に協力しているか

 採用できない企業によくあるのが、社長が採用を現場任せにして、コミットしていないというものです。採用できない企業の社長を私は3タイプに分類しています。

(1)社長も採用にコミットしているけど、方法が間違っている
(2)社長は採用の重要性を理解しているけど、採用活動にはコミットしていない
(3)社長が採用を現場任せにしている(自分は営業に集中する)

 (1)は方法を変えればいいだけですので、特段心配はしていません。採用ブランディングの方法を社長も含めて全うできれば、必ず採用力は上っていきます。

 (2)の場合、自分が現場に絡むことを避けている場合が多いように思います。この場合は、採用ブランディングの重要性やその方法を社長がより深く理解することで、社内はさらに一致団結して採用を行える雰囲気になり、採用担当者も採用が楽になっていくという傾向が見られます。採用できない企業の傾向として、採用担当者が孤軍奮闘している、というものがありますが、これを会社全体で採用しにいく、という意識に社長から号令をかけて変えていくことで、格段に採用力は上っていきます。

 いちばん深刻なのが(3)です。特にオーナー系の中小企業だと、バイタリティーあふれる社長が多く、自分で営業開拓もバリバリ行ってきた人だと、さらに売り上げを伸ばしたいという志向になっていきます。つまり、「人さえいれば、売り上げが上がるのに」と考え、採用にはタッチせず、営業ばかり注力してしまうのです。

■社長は他社にはいない唯一無二の存在

 (3)の場合、社長がいなければ受注できない体制にも問題がありますが、本当に社長でなければそれはできないことなのか、と今一度考えてみましょう。多くの場合、そうではないはずです。

 一方、採用では社長が登場することが、大きな差別化要因になります。まず、多くの大手企業はわざわざ社長が採用にタッチすることはありません。説明会に社長が出てくることはまれであり、その後の最終面接で出てくるかどうかでしょう。会社によっては最終面接にも出てこないこともあります。

 つまり、社長が求職者に近いところで直接語りかけるということは、それだけで差別化になり得るということになります。しかも、社長はその企業の理念や戦略について、いちばん熱く、詳しく語ることができる存在です。その思いに共感する人が増えれば、自社にとってミスマッチのない本質的な採用にグッと近づけます。社長は他社にはいません。つまり唯一無二。この点を多くの企業は採用で生かせていないと思います。

 「採用できない」というのは、多くの場合、担当者レベルもしくは人事部レベルでの話であることが多いような気がします。社長が「採用は人事部の仕事」という認識程度だと、採用力を上げていくことはできません。さまざまな採用の成功事例を探す前に、まずは社長が採用にコミットする。これが採用を好転させるのに重要な一歩となります。

■理念の話は、創業社長ほど得意なはず

 「会社の業績は理念浸透から始まる」という重要なデータがあります。これはあらゆる統計的なデータによって相関関係が見出されており、海外ではコリンズの著書「ビジョナリー・カンパニー」や、今日のブランド論を形作ったアーカーも著書で紹介しています。そして注目すべきなのは、日本の調査でもそれが指摘されていることです。

 リクルートマネジメントソリューションズが、日本企業を対象に2009年に行った調査では、業績を上げるには、「変革力」「実行力」「知の創出力(=部門間の深いコミュニケーション)」の相関関係を挙げ、その3つの指標の起点(相関関係)にあるのが、「ビジョン共有力」であると指摘しています。つまり、採用した人に理念教育していくよりも、採用時点から理念共感している人を採用した方が理念浸透は早い、ということになります。

 このデータを基に考えれば、もちろん採用全体において理念を重視していくことは重要ですが、いちばん手っ取り早いのは社長がそれについてしっかり話すことです。しかも創業社長であれば、自分が作った理念ですから、詳しく、情熱を持って話せるはずです。この点、大企業は社長が任期で変わっていくのが通常ですから、伝わり方で考えれば、中小企業かつ、創業社長のほうが圧倒的に有利のはずです。

■社長が協力せず「採用できない」はナンセンス

 私の知る限りになりますが、知名度のない企業でも社長が積極的に採用に協力している会社は、しっかり採用できている傾向にあると考えています。たとえば、今では一部上場している営業企画を得意とする企業があります。業態はBtoBですから、求職者の間での知名度は高くありません。ですが、そこの社長はとても情熱的で、たくさんの経営者や学生からも人気のある方です。今でこそすべての説明会には参加できませんが、数年前までは必ず予定を調整して参加していたそうです。もう何年も前から毎年100人以上採用していますから、説明会の数も相当だったでしょう。

 私の著書『無名×中小企業でもほしい人材を獲得できる。採用ブランディング』でも紹介した、投資不動産の企画、建築、販売、管理までを手掛ける株式会社グローバル・リンク・マネジメントは、昨年マザーズに上場したばかりですが、やはり社長が必ず説明会を行脚し、自社のビジョンや戦略について熱く語ります。

 採用ブランディングとは、採用市場におけるファン作りであり、理念を求職者へ浸透させていくことそのものです。ファンを作るには、求職者の脳内に「強くて、好ましくて、ユニーク」なイメージを作ることが重要で、そのためには、徹底的な差別化が必要です。社長とは、その重要なパーツの1つなのです。社長は自社にしかいない存在。その社長が採用に積極的にコミットせず、「採用できない」というのはナンセンスといえるでしょう。

深澤 了
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