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企業における人権尊重は、いかなる規模・業界であっても留意されるべきだ。自社の人権DDの取り組みは本当に万全だろうか? 気付いていない、潜在的なリスクがないだろうか。中小企業庁主催「ビジネスと人権」セミナーの講師を務めた矢守亜夕美さんに、人権DD実施に関する8つのプロセスを解説していただいた。
取材・文◎武田 洋子
人権リスクを侵す可能性は自社にもあると認識する
人権デュー・ディリジェンス(DD)とは、企業が取引先を含めた人権侵害の可能性を把握し、予防・是正策を講じる仕組みを指す。本誌のアンケートによれば、半数以上の企業が人権リスクに対する取り組みを「している」(図表1)と回答。一方で、人権DDという言葉を「よく理解している」「なんとなく理解している」との回答は、合わせて約3割にとどまった(図表2)。人権リスクに対する関心は高くても、知識が十分に伴っていないとすれば、潜在的なリスクに気付いていない危険性がある。
国連指導原則が3つの柱の1つとして位置付ける「人権を尊重する企業の責任」は、規模・業種・事業状況・所有形態・組織形態にかかわらず、あらゆる企業に適用される。そして、企業が責任を負う対象は、自社で働く全ての人に加え、下請け企業、委託先などの従業員、顧客や消費者、地域住民なども広く含まれるのだ。矢守亜夕美さんに例を挙げてもらった。
「自社施設の中で従業員が危険な労働を強いられるというような直接的な人権問題のみならず、糖分の多い飲食物を販売して子供の肥満を誘発したり、住民の強制立ちのきにつながるような事業に金銭を貸し付けて支援したりなど、間接的に人権への負の影響に関与・助長している場合も対応が求められます。企業が配慮すべき主な人権リスクは、パワハラ、セクハラ、差別、賃金の不足・未払いなど多岐にわたります(図表3)」
人権リスクというと「強制労働」や「児童労働」のようにインパクトが大きいものに目が行きがちだが、ハラスメントや差別的な対応、長時間労働などは日常の中に潜みやすい。矢守さんは、業務を通じて人と人がかかわる以上、どの企業にも人権リスクに抵触する可能性はあると指摘する。
国連指導原則では、企業が果たすべき責任として「方針によるコミットメント」「人権DDプロセス」「是正」の3つを定めているが、中小企業が実際に取り組む場合はどこから始めればいいのだろうか。
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