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採用ブランディング【第6回】内定承諾は、母集団形成から決まっている

2018年05月31日

■協力会社を採用担当が束ねる構造的な課題

 今年も多くの大手企業が5月のゴールデンウイーク前後に内定を出し始め、そろそろ内定辞退が出ている頃だと思います。同時にどの企業の採用担当者も内定フォローに追われ、また、すぐに始まる2020年入社の採用へと視野を移していることでしょう。

 しかし、ここにこそ現在の採用活動における課題が潜んでいるといえます。それは採用が「線」ではなく、多くの場合、「点」になってしまっていること。「母集団形成」「説明会」「面接」「内定出し」「内定フォロー」と大きく5段階に採用が分かれてしまっており、それぞれの領域で部分最適を目指すがゆえに、全体最適にならないという課題が多くの企業に見られます。

 その一因としては、採用業界の構造が、それぞれの段階ごとに外部の協力会社が存在することです。それぞれの会社がそれぞれのサービスを営業するので、受ける企業側もそれらが部分的には十分納得するものであるため、投資を行うわけですが、結果的に満足した採用が行えないという矛盾が生じているのです。

 マーケティングの世界は良くも悪くも、代理店が一括で取り仕切る傾向があるので、情報が一元化しやすく、外部の人間の眼で一貫性をチェックしやすい構造です(あくまで採用の世界よりは、ということですが)。一方、採用はマーケティングの世界よりは予算がはるかに少ないものの、協力会社が別々に存在し、企業内の採用担当がそれを束ねる、という構造になっています。

■部分最適を考える前に、コンセプト=軸を考えよう

 企業内の採用担当が協力会社を束ねることの大きな問題は、採用が人と人のコミュニケーションを無視できないからです。どれだけアウトソースしても、最終的には企業内の人間が求職者をグリップできないと、入社にはつながりません。ここを無視できないので、おのずとコミュニケーションの比重が高まり、外部の協力会社へのディレクション、とりわけ、それぞれの協力会社が担当している領域の横の接点の整合性を取ることに注意が行き届かなくなります。そうなると、ひたすら応募してくれた人に対応しなければならないか、まったく応募もないのでイベントに出て直接説明会に誘導する、説明会への集客をお願いするかのいずれかになってしまいます。

 採用ブランディングの観点でいえば、各領域を「点」とした場合の部分最適を考える前に、採用全体を貫く「軸=コンセプト」を設定し、そこに沿った部分最適を考える方が、遥かに採用が効率的になるということです。ただし、コンセプトという言葉もかなりのビックワードなため、解釈が人によってまちまちになりがちです。どのようにコンセプトを設定すればいいのかわからなかったり、設定してもコンセプトになり得ないものがなっていたりと、ここにもハードルがあることも確かです。しかし、部分最適を進めてしまうと、具体的な方にどうしても人間は思考が引っ張られてしまうので、その前になんとかしてコンセプトを設定する方がやはり採用ははるかに楽になります。

■イメージは作らない。「らしさ」を込める 

 内定承諾とは、採用担当にとって「ゴール」です。採用ブランディングの考え方で逆算すると、内定承諾とは、自社への「強くて、好ましくて、ユニーク」なイメージが脳の中にある状態で、ほかのどの企業よりも"これ"が強いということです。この状態を作ればいい、と考えると、おのずと採用フロー全体を通して、自社へのイメージを良くしていくことが求められます。

 しかし、注意しなければいけないのは、自社の本来の姿よりも良いイメージを作ろう、全く別のイメージを作ってしまうといったことを考えないことです。なぜなら、採用の場合、イメージと現実とのギャップが即離職につながりやすいからです。

 弊社で入社3年目以内の新人社員約330人に調査したところ、自社に不満を抱いている人の80%以上が「入社1年以内に不満をいだいた」という結果になり、約20%の人が入社1か月以内に不満を抱いたという回答になりました。これは採用自体に問題があったとしかいえないと私は考えています。あくまで自社の「らしさ」を基にコンセプトを考え、それを各領域で落とし込んでいくこと。そうすれば自社に共感した、自社らしい人材を採用することにつながりますし、最悪、現場の実務に追われても、各領域では横の整合性も取れている状態を作ることができます。

■採用広報で共感予備軍に届ける

 採用フローに「らしさ」を込めることで、自社への共感を基に人材が残っていくようになります。そして求人原稿や採用ホームページ、説明会、パンフレットなどの「採用広報」で、コピーやデザインにもその自社「らしさ」を徹底的に落とし込むことで、必然的に自社に共感しやすい人が集まるようになってきます。

 そもそも共感しやすい(自社にフィットしやすい)人材(=共感予備軍)を集め、採用フローを通して深い理念共感を促していけば、共感しない人は勝手に離脱し、共感する人はますます共感するというメカニズムを引き起こすことができます。だから「採用→教育」ではなく、「教育しながら採用する」というイメージで採用フロー自体を組み立てることが必要であり、その結果、他社よりも「強くて、好ましくて、ユニーク」なイメージが形成されるので、内定承諾の確度がグッと上がるのです。

 こう考えると、内定承諾への道筋はすでに母集団形成から始まっているといえます。だからこそ逆算で考える必要がありますし、その上で各領域の最適解を「つなげる」発想が必要なのです。今のような各領域での最適解を求める方法ではいつまでたっても採用できるようになりません。

深澤 了
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