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本に載らない現場のノウハウ 〜中小企業の人事制度〜
【第28回】給与制度に関する話(3)

2014年06月19日

「給与制度」について、今回は年俸制の話を取り上げてみます。


■経営者は導入したがることが多いが...

 給与制度の検討をする中では、ほぼ確実に年俸制に関する議論が出てきます。

 "人件費を固定的なので、計画が立てやすい"、"毎月の給与計算がいらず、事務処理が省力化できる"などという捉え方で、特に経営者や役員クラスの方が導入にこだわるケースがあります。中には全社導入ということまでおっしゃる方もいます。

 もちろんここで挙げられた以外にも、メリットと考えられる事柄はいろいろありますが、現在の労働法規との関係や、実際の会社としての裁量余地を考えたとき、年俸制にはそのメリットと同じくらい、多くのデメリットもはらんでいます。


■年俸制のデメリットとして考えられること

 まず、良いか悪いかの議論は別にして、日本の法令では、管理監督者でなければ労働時間をベースにした給与支払いが基本になっています。年俸制であろうとなかろうと、労働時間数の把握とそれに応じた残業代の支払いは必要ということになります。

 また法律では残業単価の算定基礎から除外できる手当(家族手当、通勤手当、住宅手当など)が決められていますが、年俸制で月あたりの金額に内訳がなくなってしまうと除外できる手当もなくなり、残業単価は上がります。

 賞与などとして扱われていた部分も、あらかじめ年俸に組み込まれるので、評価も結果反映も1年単位になり、期中の業績に応じた調整はできません。特に直近の資金の状況に応じて賞与原資を見極めたケースが多い中小企業にとっては、なかなか難しい部分です。
また賞与分まで組み込まれた年俸を、12分割の月割りで支払おうとすると月額としては上昇するので、前述の例と同じように残業代の問題が出てきます。

 こんな中で、「日本的年俸制」と言われる、賞与名目での支払いを想定した方法がとられていますが、これは賞与に該当する部分を評価で調整する運用方法であるなど、年単位で報酬が決められている訳ではないので、本来の年俸制とはいえません。金額の表現が年単位になっているだけで、実態はほとんど変わらないようなケースもあります。

 こうやって考えて行くと、一見良さそうに見える年俸制も、本当の意味での管理監督者でなければ不向きであり、一般社員まで対象に含めて適用することには、何かと無理な部分が出てきます。

 特に中小企業の場合は、その時々の業績や資金状況に応じた裁量余地が減ってしまう恐れがあります。

 もちろん、労働時間の期間変動が少ない、賞与が固定的に支払われている、またはそもそも賞与がないなど、年俸制に近い実態の企業であれば導入しやすい場合もありますが、一方では無理して導入するほどのメリットがない企業も多々あります。いずれにしても、自社の実態に見合った導入を考えていく必要があるでしょう。

小笠原 隆夫
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