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地域活性化に活用できる知的財産〜地理的表示〜第15回

2017年12月04日

こんにちは。ブランシェ国際知的財産事務所の弁理士 鈴木徳子です。
今回から、弊所が申請に関わった愛媛県の高級生糸「伊予生糸(いよいと)」の地理的表示(GI)の登録の効果について説明します。

■日本の生糸産業の現状

 2012年の調査では、市場に出回っている生糸の95.7%が中国やブラジルなど海外から輸入されたものでした。国内で生産される生糸の量は非常に少なく、その原料となる繭生産量は、(少々データが古いのですが)2001年は1,031トンでしたが、2012年には202トンとなっており、11年間で繭生産量は約5分の1に減少しています。

 次に都道府県別の収繭量を見てみましょう。

 下記のグラフをご覧ください。収穫量の割合では、群馬県が断トツで、全体の約41%を占めています。それに対して愛媛県はわずか2.1%です。このグラフは2011年のデータですが、現在も数字としては、あまり変化はないと考えられます。

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(引用元:環境省緑色蛍光タンパク質含有絹糸生産カイコの申請書等の概要)


■GI申請前の「伊予生糸」の状況

 下記のグラフは、県のデータを元に作られた「伊予生糸」のGI申請前の愛媛県の「繭生産量」と「農家戸数」の状況についてのものです。

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 大正初期には1,000戸以上あった繭生産農家は、GI申請前の2014年にはわずか6戸でした。繭の年間生産量は1.4トンに落ち込み、最年少の生産者でも当時73歳という状況で、愛媛の養蚕業は高齢化と後継者不足という深刻な問題を抱えていました。

 「伊予生糸」の最大の特徴は「生繰り(なまぐり)」です。通常は繭を乾燥させて殺蛹(さつよう)したものから糸を繰るのですが、生の状態で冷蔵保存した繭を「多条操糸機(たじょうそうしき)」という繰糸機を用いて低速で(生糸にかかるテンションを抑えて)繰糸するということにあります。国内でこの方法で採用しているのは「伊予生糸」だけです。
 過去には、エリザベス女王の戴冠式のドレスにも採用されたほどの高級生糸ですが、GI申請前は、国内はおろか愛媛県内ですらほとんど知られていないという有様でした。

 伊予生糸のGI申請直前に愛媛県西予市に打ち合わせに行った際に養蚕農家を訪問しました。写真はその時の蚕の飼育小屋の模様です。何万匹もいる蚕が桑の葉を一心不乱に食べているようでした。

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 訪問先の養蚕農家の方が「伊予生糸はとても高級なものです。このような生糸の生産にかかわっているというプライドのために続けています」とお話しされた、その言葉がとても印象に残っています。私たちは、この伝統的な産業を絶対に維持しなければならないという思いを持って、GI申請に挑みました。

鈴木 徳子
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