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地域活性化に活用できる知的財産〜地理的表示〜第16回

2018年01月15日

こんにちは。ブランシェ国際知的財産事務所の弁理士 鈴木徳子です。
引き続き、愛媛県の高級生糸「伊予生糸(いよいと)」の地理的表示(GI)の登録の効果について説明します。

■PRの重要性

 GI登録の効果といっても、実際には「登録後」にどれだけ産品の魅力を人々に伝えることができるかが非常に重要となります。特に、地域産品にストーリー性がある場合は、それをバックにアピールしていくとよいでしょう。

 伊予生糸の場合は、前回ご説明した通り、過去にはエリザベス女王の戴冠式のドレスにも採用された歴史ある高級生糸であるにもかかわらず、GI申請前は県民のほとんどが伊予生糸の存在すら知らないというありさまでした。
 しかし、伊予生糸はブランディングという観点から考えると、ストーリー性や歴史を十分に備えたおもしろい産品でしたので、愛媛県に「伊予生糸のGI申請をしませんか」と打診したときは、GI登録後のPRの重要性を踏まえてご説明した記憶があります。

 また、GI申請受付初日の2015年6月1日には、農水省に生糸の現物を持参して行ったため(申請に産品の現物は必要ありません)、当日同省に待ち構えていた多くのマスコミに伊予生糸を取り上げてもらうことができました。
 特に地元愛媛県では、伊予生糸の魅力に加えて、養蚕業が後継者不足で風前の灯火となっている現状が大きく報じられました。さらに伊予生糸は、NHKを含め、GI登録後もさまざまな観点から特集が組まれ、継続的に報道されるようになりました。

 このような状況下において、GI登録の一番の効果は、50年ぶりに養蚕農家に後継者が現れたことです。その方の就農のきっかけは、GI登録の報道を通じて、行政が伊予生糸に力を入れているとわかったことだったそうです。
 伊予生糸の事例は、後継者問題解決のヒントになるかもしれません。地域産品の存在や魅力を、まずは人々に「知ってもらう」努力が必要だと思います。

 なお、近年、蚕が作る糸のタンパク質が医薬品業界で非常に注目されており、養蚕業にとって追い風になる可能性があります。

■伊予生糸を取り巻く環境の変化
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 GI登録のもう一つの大きな効果は、行政をあげて伊予生糸を県の文化として残していこうという気運が生まれたことです。2017年に開催された「えひめ国体」では、一部の競技の入賞メダルの帯に伊予生糸が使用されました。

 また、伊予生糸の生産過程で生じる副産物(キビソ、ビス、残糸)を有効活用する事業も進められており、今治タオルとのコラボレーションや、シルク成分を活用した化粧品等の製品化が実現しています。

 伊予生糸を取り巻く環境はGI申請・登録を通じて大きく変わりました。西予市の関係者の方々のたゆまぬ努力、マスコミを通じた認知度アップ、行政のバックアップ等がうまく絡み合い、伊予生糸を守っていく素地が築かれたのではないでしょうか。


引用:西予(せいよ)市実行委員会ホームページ

鈴木 徳子
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