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総務の知的財産戦略 第6回

2017年03月01日

 こんにちは。ブランシェ国際知的財産事務所の弁理士 高松孝行です。

 今回は、技術者と弁理士との打ち合わせにおける具体的なやり取りを例に挙げて説明する予定でしたが、三菱電機やトヨタ自動車が職務発明に対する対価(報奨金)を手厚くするとの新聞報道(2017年2月22日付 日本経済新聞)がありましたので、職務発明に対する対価について解説いたします。

 この新聞報道によると、職務発明に対する報奨金の支給額を上げて、発明への意欲を高めるとともに人材流出を防止する狙いもあるようです。

 このような目的にも利用される職務発明に対する対価ですが、各国で取り扱いが異なることをご存じでしょうか?

 たとえば、米国には職務発明制度がありません。権利(特許を受ける権利)の譲渡や対価については、入社時の雇用契約に予め定められていることが多いです。したがって、職務発明に対する対価について、主に特許法に関する問題として取り扱われる日本とは異なり、米国では主に労働法や契約法に関する問題として取り扱われます。

 なお、下図に示すように、米国では、特許出願時や特許登録時に報奨金が支払われることが多く、日本の企業が採用していることが多い実績報奨制度、すなわち特許を実施している商品の売上高(実績)に応じて報奨金が支払われる制度はあまり採用されていません。これは、売上高が大きくなると想定以上に報奨金を支払わなければならなくなり、企業にとってリスクが高くなるためと思われます。このような理由から、世界各国の職務発明制度の中で米国の制度がもっとも支持されているようです(※)。

職務発明に対する対価の支払時期
(横軸:対価の支払い時期、縦軸:その時期に対価を支払っている企業の割合)


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引用:特許庁「我が国、諸外国における職務発明に関する調査研究報告書」90ページ


 一方、中国のように職務発明制度がある国では、日本と同様に、職務発明に対する対価の支払いが特許法等に定められており、さらに対価の算定方法が定められていることもあります。

 たとえば中国では、特許法実施細則に、従業員との間で職務発明に対する対価の取り決めがない場合の算定法が定められています。特許権の場合を例に挙げると、「毎年の営業利益の2%以上」となっています。この額は、売上高によっては高額(法外)な金額となり、経営上のリスクとなりかねません。

 このように、職務発明に対する対価は各国で取り扱いが異なっていますので、各国の事情に合わせてキチンと手当をしておく必要があります。

 また、人材不足が叫ばれている昨今、職務発明に対する対価は優秀な人材獲得の重要な要素にもなり得ます。

 日本企業も、発明への意欲向上、人材流出の防止や経営上のリスク回避だけでなく、人材獲得の国際的な競争を勝ち抜くためにも、職務発明に対する対価を検討していく必要がありそうです。

※ 特許庁「我が国、諸外国における職務発明に関する調査研究報告書」ixページ

高松 孝行
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