総務のトピックス

ダイバーシティ:

マスコミ経験ゼロの女性たちが、女性に優しい企業を取材!

2016-03-31 07:35

女性目線で取材・執筆する「ママライタープロジェクト」スタート!

 取材も記事作成もしたことのない女性たちがライターとなり、女性の活躍を推し進める企業を訪問してインタビューする「ママライタープロジェクト」が3月下旬、発足した。総務コンサルティングや社内報制作を行うウィズワークス株式会社と、女性のための福利厚生サービスを提案する株式会社Megami(京都府)のコラボ事業。まず京阪神を中心に20社を取材し、月刊総務オンラインの特設ページで公開する。ライターたちは「女性目線で企業の取り組みを取材し、世の中に発信したい」と意気込んでいる。

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企業20社を訪問。女性への優しさを徹底取材!

 ライターを務めるのは、小さな子どもを持つママや女性起業家などおよそ10人。いずれもマスコミ経験はゼロで、企業取材に行くのはほぼ初めてだ。Megami の代表、小島雅子さんの呼びかけでプロジェクトを知り、「経験はないけどやってみたい」と応募した。
 取材対象となるのは、女性の活躍に熱心な企業や、女性が働きやすい職場づくりを行う企業。企業側の思いや具体的な取り組みについて、女性の視点で取材する。

 産休や時短など、子育て女性に対応した制度を設ける企業は増えている。しかし実際には、職場復帰後に働きづらさを感じたり、仕事と育児の両立を相談できずに悩む女性は多い。
 そんな中、国は4月1日、女性活躍推進法をスタート。従業員が300人を超える大企業に、女性の活躍推進に向けた行動計画などの策定を義務づけた。
 だが小島さんは「制度や仕組みがあっても、それが女性のためになっているかどうか疑問に思うようなケースも。3年以内に会社を辞めてしまう女性社員が6割もいることを考えると、本当に女性が働きやすい職場を作ることが重要」と話す。

 今回のプロジェクトは、取材や記事作成を通して、ライターたちの情報発信スキルを高めることも狙い。活動を通じてライター業務や編集業務に興味を持ったメンバーには、月刊総務オンラインの記者として正式に仕事を発注することも考えている。小島さんは「女性の活躍を応援する企業を一社でも多く発掘しながら、ママライターたちのスキルアップにつなげていく。そんなプロジェクトにしたい」と意欲的だ。


なぜママライターに? それぞれの思い

 ライターに応募した女性たちは、それぞれ異なる経歴を持つ。一児の母であるアロマセラピスト、筆ペン作家、育児真っ只中のフィットネスインストラクター経験者など多種多様だ。
 それにしても、なぜ彼女たちはママライターに応募したのか。その心中を一言ずつ語ってもらった。

松林 幸枝さん(41歳/エステサロン経営/子ども1人)topicspic20160329_11.jpg

ママライタープロジェクトそのものを「面白そうだな」と感じました。仕事柄、企業の代表とお会いすることも多いので、自分自身の勉強にもなりそうだと思っています。


児島 優美さん(35歳/アロマセラピスト/子ども1人)topicspic20160329_12.jpg

産前産後や育休のママをターゲットに、アロマセラピーを行っています。Facebookやブログでよく情報発信をしていますが、もっと発信力を身につけたいなと。このプロジェクトで情報発信のスキルを成長させたいと思っています。


浜岡 虹帆さん(47歳/筆ペン作家)topicspic20160329_13.jpg

私自身、会社に勤めた経験があるので、女性を大切にする企業にはすごく共感しています。取材では「本当に女性を大切にしているの?」という鋭い目線で、どんな取り組みをして、会社がどう変わったかを聞いてみたいですね。

小山 ちひろさん(37歳/子ども2人)topicspic20160329_14.jpg

フィットネス業界に20年近くいたのですが、もっと運動を身近に感じてもらえるよう、業界を変えたい!と思っています。これまでの経験を生かした新たな活動を計画中なのですが、その前に、さまざまな企業を訪問して見聞を広めたいと思ったのが応募のきっかけです。

国本 真千香さん(43歳/サロン経営/子ども2人)topicspic20160329_15.jpg

自宅サロンを経営していますが、疲れた女性が多いなと感じています。そんな女性たちを癒やしたいし、女性の応援を掲げるMegamiにも共感しています。ただ、文章はちょっと苦手で......。取材や記事作成を通じて、文章力やコミュニケーション力を磨ければと思います。

レクチャー後、ライターとして本格始動

 ママライターたちは、取材・記事作成のレクチャーを受けたあと、数人一組で企業を訪問。インタビュー、写真撮影まですべて担当する。
 また、Megami 内で定期的に「ママライターカフェ」を開催。お互いの取材状況やインタビュー経験を共有し、スキルを高めていく。

 

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川崎市で生活保護受給者102名の雇用を達成
アイエスエフネットグループとの包括連携協定初年度の成果を発表

2014-06-08 17:05

就労困難者の雇用促進に取り組む
自治体と民間企業による初の連携協定

川崎市と株式会社アイエスエフネットおよびそのグループ会社(以下「アイエスエフネットグループ」)は2013年4月、市内の生活保護受給者をはじめ生活困窮者や障がい者など、就労にさまざまな問題を抱える者(以下「就労困難者」)が自立できるように協力し、連携して取り組むとともに、その成果や仕組みなどを全国に発信することを目的として、包括連携協定を締結した。

連携の内容は、(1)就労困難者の雇用の創出と教育、(2)就労に向けたトレーニング、(3)就労困難者支援に関する研究・検討というものである。

川崎市によると、生活保護受給者をはじめとする就労困難者の雇用促進について、このように地方自治体と民間企業が包括連携協定を締結し取り組むことは全国でも初めての試みであったという。

生活保護受給者の就労を実現する
雇用創造の仕組みを実証

川崎市内の福祉事務所が就職を希望する生活保護受給者を紹介し、アイエスエフネットグループが相談・面接を行ったところ、すぐにでも働くことができると判断された者の割合は約5割に達し、就労事前研修を受けることによって就労可能となり得ると判断された者と合わせると、結果的には、就労を希望する生活保護受給者の大部分が実際に就労可能だとわかった。

そこで、アイエスエフネットグループは、2013年12月、川崎市との連携協定に基づき、NPO法人FDA川崎を川崎駅前に開設し、川崎市における就労移行支援事業の体制を強化した。

さらに、川崎市からの紹介による生活保護受給者である研修生、そして就労移行可能な者の増加に伴い、株式会社アイエスエフネットケア川崎を本年3月に設立し、就労困難者それぞれの特性に応じて就労が可能となるよう、パソコンのキッティング業務、スマートフォンの検証作業、倉庫内の管理業務など、さまざまな分野での業務を用意する仕組みを構築した。

このようにして雇用創出に取り組んだ結果、協定締結から一年、実際にプロジェクトが本格スタートしてから半年未満で102名の雇用を実現した。

国や自治体の負担を軽減する
雇用創造モデルの全国への展開

これを受け、4月24日、川崎市の福田紀彦市長にアイエスエフネットグループ代表の渡邉幸義氏が川崎市役所内で報告を行い、平成25年度雇用創出事業の成果を発表するとともに、さらに100名の受け入れ窓口の設置、セミナーの開催などによるアイエスエフネットグループのノウハウの他企業への開示、官民共同の取り組み強化による生活保護受給者の雇用と協力企業群の形成など、今年度の取り組み方針についての説明がなされた。

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川崎市では、本年3月現在、生活保護受給者が約3万2800人(約2万4000世帯)となっており、今年度の保護費の予算は599億円が計上されている。アイエスエフネットグループとの包括連携協定による雇用創出事業により、生活保護受給者、保護費の縮減につながることが期待されている。

一方、アイエスエフネットグループは、2013年5月、新潟県との間で、障がい者の特性や能力に応じた業務の創造や職業訓練の実施による能力向上により、障がい者の一般就労の促進と賃金の向上のモデルとなる事業活動を行うことなどを目的として協定を締結した。さらに、2013年9月、佐賀県との間で「障がい者等就労困難者の雇用促進に関する協定」を、本年5月には広島県呉市との間で「障がい者および就労困難者の支援に関する協定」を締結するなど、川崎市との取り組みを皮切りに日本各地の自治体との協定を結び、行政と企業との協力による雇用創造モデルを全国に広げている。

写真:福田紀彦川崎市長とアイエスエフネットグループ代表の渡邉幸義さん


障がい者雇用の裾野を広げる
「施設外支援」を活用した取り組み

アイエスエフネットグループは、障がい者など就労困難者の雇用促進を社会全体で取り組むべき重要な社会課題であるとして、同社の雇用創造モデルの他企業への展開を促進している。その一つが、アイエスエフネットグループの就労移行支援事業所、就労継続支援事業所による「施設外支援」を活用した、障がい者雇用の経験がない、もしくは少ない企業への普及・啓蒙活動である。

企業が、就労移行・継続支援事業所で訓練を受けている人材を職場実習として受け入れ、障がい者に一般事業所での就労体験の機会を与えるものだ。受け入れる企業にとっては、障がい者にどのような業務を担ってもらえるのか、試行錯誤しながら見極めることができるというメリットがある。実習終了後に利用者を雇用することも想定でき、障がい者の雇用へのハードルを下げる取り組みとして期待されている。

 

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誰もが当たり前に働ける社会へ:「働く」を考えるイベント

2013-07-08 12:08

一般社団法人ソーシャルビジネス・ネットワーク(SBN)主催「働き方メッセ」開催

6月22日、一般社団法人ソーシャルビジネス・ネットワーク(SBN)主催「働き方メッセ」が、東京都港区赤坂のアイエスエフネットグループ「匠ソホラ」セミナールームで開催された。
障がい者、ニート、ひきこもりなど就労困難者も含め、誰もが当たり前に働ける社会を目指すという趣旨で、基調講演、参加者同士の交流の中から気付きを得るワークショップ、就労困難者の雇用促進に先進的に取り組んでいる企業経営者によるトークセッションなど、一日かけて開催された第一回目のイベントで、多くの問題提起がなされ、参加者それぞれがさらに意識を高める機会となった。

「皆働社会」の実現に向けて

基調講演は、ベストセラー『日本でいちばん大切にしたい会社』で紹介され全国的にその名が知られることとなった神奈川県川崎市に本社を置くチョークメーカー、日本理化学工業株式会社会長の大山泰弘さん。粉が飛散しない安全・安心な「ダストレスチョーク」やガラスに書けて粉の出ない「キットパス」などを主力製品とする1937年創業の専門メーカーで、1960年から知的障がい者の雇用促進に取り組んでいる。神奈川県川崎市と北海道美唄市にある国内2か所の工場でJIS認証の高品質なチョークを毎日、合計20万本生産し出荷している。この生産現場を支えるのが知的障がいがある従業員だ。全従業員数74名のうち、知的障がい者は55名。さらにそのうち約半数の26名が重度障がい者であるという。講演で大山さんは、企業が障がい者を雇用する意義、今後のあるべき就業環境について、「皆働社会」の実現という持論に基づきお話しされた。

無言の説法

日本理化学工業が知的障がい者の雇用を始めたきっかけは、大山さんが専務だった1959年のこと。「卒業生を正規雇用で受け入れることが難しいのであれば、せめて短期間の就業実習でもよい。この子たちに『働く喜び』を味わわせてあげてほしい」という養護学校の先生の熱心な訴えに応えて、2人の生徒を二週間の就業実習に受け入れたところ、彼女たちの一生懸命にがんばる姿に現場の従業員たちが感動し、「私たちが必ず面倒を見るので、彼女たちを正社員として雇ってほしい」と実習最終日に大山専務に直訴したのだ。翌1960年春に卒業した彼女たちを正式採用し、この2人がいろいろな仕事をこなせるように成長すると、その後任として次の卒業生を受け入れる、そんな繰り返しでどんどん知的障がい者の採用数が増えていったという。

このように、障がい者雇用を通じて従業員の心が動いたことを、大山さんは「無言の説法」の効果だと指摘する。

これは従業員だけではない。企業見学に来た小学5年の生徒が、文字を読むことができない重度の知的障がいのある従業員が熟練した技能でチョーク生産にあたっている姿に感銘を受け、後日、「神様はどんな人にも才能や活躍できる場を与えるのですね。自分には到底チョークを作ることはできませんが、何か他のことで世の中や人のためになることをしたいと思います」という趣旨の手紙を送ってきたという。

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日本理化学工業株式会社 会長
大山泰弘さん

1932 年東京都生まれ。中央大学法学部卒業後、日本理化学工業株式会社入社。1974 年、社長に就任。2008 年から現職


働く幸せは万人に与えられるべき

大山さんは、そのようにして知的障がい者の雇用を始めて間もない頃に、ある住職から聞いた言葉が忘れられないという。それは、「人間の究極の4つの幸せは、人に愛されること、人にほめられること、人の役に立つこと、人から必要とされることである。福祉施設で大事に面倒を見てもらうことが幸せではなく、働いて役に立つ会社こそが人間を幸せにするのだ」というもの。この言葉で企業こそが人を幸せにすることができると理解した大山さんは、働く幸せを知らない一人でも多くの障がい者に就業の場を与えたいという信念で、知的障がい者の雇用促進に取り組んできた。
日本国憲法第27条に「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負う」と定められているように、働く権利は尊重しなければならない。障がいがあるからといって、企業が相応の配慮をせずに障がい者を福祉制度で支えようとするのではなく、働ける環境を作るべきだと大山さんは指摘する。

相手の理解力に合わせ説明し、
段取りすること

ただし、これは決して障がい者雇用に限られたことではない。上司が部下を指導するにあたって、相手の理解力、能力に合わせて説明し理解させ、部下の能力や経験の度合いに応じて仕事が進められるよう段取りをするということは、企業のビジネスの現場で、どこにでも当たり前のようになされていることである。障がい者雇用は決して特別なことではない。

日本理化学工業の工場では、文字を読むことができず、数字も理解できない知的障がい者が信号機の信号を守って事故に遭わず通勤する姿を見て、色分けされたバケツと分銅、秤はかりのセットを準備して材料の調合プロセスでも知的障がい者が仕事をすることができるようにしたなど、さまざまな工夫が重ねられてきた。このような段取りさえすれば、それまでできなかった仕事でも、率先して集中して仕事に取り組むのだという。

マニュアル文化ではなく職人文化

このような職場環境は、日本がマニュアル文化ではなく、手取り足取り後進を指導するという職人文化に基づいているからこそできるものであり、日本企業がその強みを生かしていくべきだと大山さんは指摘する。障がい者は当たり前に働ける。一歩踏み出しさえすれば障がい者雇用は特別なことではないことがわかるはず、という大山さんのメッセージだ。

障がい者個々人の理解力、能力や経験に応じて適切な段取りをし、毎日繰り返し行うことにより上達し、生産性を上げていく。企業経営者や周りの従業員が支え、働ける環境を与えることで一人の障がい者が当たり前に働くことができるのだ。難しいことでも特別なことでもない。だから、政府は障がい者の生活を福祉施設で保護しようとするのではなく、企業を上手に活用する施策を講じるべきだと大山さんは提案する。大山さんが視察に出かけたベルギーで、まさにこの施策が取られているという。国が、障がい者の賃金支払相当額を企業に対して負担するのだ。日本でも、障がい者一人を40年間福祉施設で面倒を見ようとすると2億円もの資金を要する。年間約500万円で、これは税金で負担されるものである。そうではなく、企業に就労させることとし、賃金相当の助成をするとしても税金負担は大幅に縮減することができる。そればかりか、企業は生産性が高まり、障がい者も働くことを通じて喜びや幸せを感じることができる。

ダイバーシティを体感する
ワークショップ

続くワークショップは、事前予約で定員を超える申し込みがあり、就労を目指す人、企業の人事にかかわる人、就労支援者、ご家族、社会保険労務士など、ざまざまなバックグラウンドを持った参加者が「ともに働くこと」について考え、まさにダイバーシティを体感することのできる場となった。

ファシリテーターは、障がい者のワークショップのファシリテーションを多く手がける株式会社LA MAPPA企画代表取締役の月崎時央さん。アイスブレイクを含め、バックグラウンドの異なる人同士がどのように相互理解を深め、ともに働いたり生活することができるかということを、自然と体感し理解することができるよう、さまざまな工夫が盛り込まれていた。

就労困難者が仕事につくことが難しいのはどうしてなのか? 働きづらさを感じる理由は何か? 障がいや働きづらさを抱えた人と一緒に働くことの課題は何か? というテーマでのワークを通じ、企業側、就労を目指す側の双方が建設的な意見を出し合い、根本的なところでは大きな問題や障壁があるわけではなく、相手を理解しようという気持ちに基づくほんの少しの配慮さえあればともに働けるのではないかという感想が聞かれた。

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ダイバーシティの実地研修ともいえる、さまざまなバックグラウンドを持った人が参加して
「ともに働くこと」について語り合ったワークショップ

企業の総務人事担当者の研修に最適

主催者の「就労困難者もこういった場にどんどん参加し、働くための一歩を踏み出そう」という広報により、この日のワークショップには多くの就労困難者といわれる人が参加していた。
そういった人たちにとっては、このワークショップが、初対面のさまざまな立場の人たちとの交わりの中で、自分も話し合いの場に参加できる、一つの目標に向かって他人と共同作業をすることができるという大きな自信をつかむ場となった。

同時に、企業の総務人事担当者にとっても、就労困難者と直に接し生の声を聞くことのできる貴重な機会となった。なかなかこのような機会はないため、この点でも「働き方メッセ」の開催意義が強く感じられた。聴覚障がいのある参加者にはノートテイクのボランティアが付き、障がいのある人がいても会議の進行に全く支障がないことを体感することができるなど、企業の現場におけるダイバーシティの推進とそのための具体的な環境整備、施策を理解することができる。次回以降、より多くの企業の総務人事担当者の参加が期待される。

就労困難者が誰でも働ける社会作り

そして最後に、特定非営利活動法人ぱれっと理事/SBN副代表理事の谷口奈保子さん、アイエスエフネットグループ代表/SBN理事の渡邉幸義さん、株式会社スワン代表取締役社長/SBN常務理事の海津歩さんによるトークセッションが行われた。

そもそも今回の「働き方メッセ」は、SBNが2011年11月から開催している、就労困難者の現状や雇用促進に取り組む企業等の先進事例を紹介することを通じて具体的なアクションに結びつけていくための検討を重ねる「障がい者雇用(20大雇用)研究会」の活動から派生して開催が決まったものである。同研究会の運営に参画する3氏が、それぞれの組織における就労困難者の雇用促進の取り組みを紹介し、就労困難者の雇用促進にあたって具体的にどのような課題があり、どのようにそれを解決することができるかということについてそれぞれの見解を示し、これからの働き方について、また、就労困難者が誰でも働ける社会作りについて語り合った。

企業と企業、NPOなどの協業がカギ

全社員の40%が就労困難者であるというアイエスエフネットグループ代表の渡邉さんは、「就労に関してほんの少しの配慮さえすれば、就労困難者は誰でも働くことができます。川崎市と共同で取り組んでいる生活保護受給者の就労という課題でも、面接した13名のうち8名はすぐに就労、残りの5名も就労トレーニングを経て採用する予定です。すなわち、全員が働けるということなのです」と話し、就労困難者でもできる仕事を見つけてから採用するのではなく、まず雇用ありきでその後にそれぞれができる仕事をどんどん与えていけばよいと提案する。

海津さんは、「すべて自社だけで完結させようとするのではなく、企業や業種の枠を超えて協業し、目的を達成すればよいと思います。できるところ、得意なことを手がければよいのです。
当社も『スワンベーカリー』全27店舗で合計344名の障がい者(うち70%が知的障がい者)を雇用していますが、当社だけで日本全国の障がい者雇用の問題を解決することなどできっこありません。私たちが日々汗をかいて奮闘していることを、まずはまね
して、もっともっと上手にできる企業がどんどん出てくればよいと考えています。」と、業種・業態を超えたアライアンスを進めることのねらいについて説明した。

1983年に「ぱれっと」(現特定非営利活動法人ぱれっと)を創設し、東京・恵比寿で障がい者が地域で当たり前に働き、暮らし、楽しむための拠点を創り出してきた谷口奈保子さんも、障がい者を特別扱いしない、特別な存在にしないという理念に基づき、障がい者の方々がごく当たり前の生活をすることができるような、施設型福祉とは一線を画して30年にわたり手がけてきたソーシャル・イノベーションについて解説し、さらにスリランカにおける10年間にわたる知的障がい者の就労支援の取り組みの末、現地の大手製菓会社に引き継いだ事例を紹介しながら、企業にヒントを与え、助言をして取り組んでもらうという、NPOと企業の協業の意義、必要性について説明した。

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海津 歩(かいつ あゆむ)さん(株式会社スワン 代表取締役社長)
谷口奈保子さん(NPO法人ぱれっと 理事)
渡邉幸義さん(アイエスエフネットグループ 代表)

就労問題はさらに大きな課題へ

さらに谷口さんは、さまざまなかたちで健全ではない生活状態、精神状態にある人が急速に増えていることを指摘し、障がい者の問題だけではなく、今後ますます就労の問題が大きくなっていくだろうという見解を示した。そこで、一人でも多くの人がこの問題に気付き、企業や専門家を巻き込み、どんな人でも働ける社会を作っていくことが重要であると、障がい者雇用(20
大雇用)研究会を続けていく決意を語った。
利益を上げることを追求し、人と人との健全な関係を分断してしまった成長経済。今こそ、このような世界を修復し、すべての人に居場所と出番が与えられる社会にすることが求められる。企業が果たすべき役割は決して小さくないが、同時に難しいことでもない。アクションを起こすこと、一歩踏み出すこと。そのようなことを考えさせられる一日となった。

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「匠ソホラ」オープニングセレモニー(6月12日)

会場となったのは、本年6月にオープンしたアイエスエフネットグループの総合ビジネス・サポート施設「匠ソホラ」セミナールーム。6月12日のオープニングセレモニーには、法政大学大学院の坂本光司教授が記念講演を行った。「匠ソホラ」は、障がいを持つ方の就労環境創造、起業家や働く女性の支援と育成、BCP対策(帰宅不能時の安心スペース確保)をスペースコンセプトとしており、会員向けオフィススペースやレンタル会議スペース、コワーキングスペースを提供するとともに、営業サポート、バックオフィス業務のサポートサービスが提供される。

坂本光司さん

法政大学大学院政策創造研究科教授
法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科兼担教授
法政大学大学院静岡サテライトキャンパス長

 

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