総務の引き出し(人事教育研修)
ジョブ型雇用は導入すべき? 自社に合った人事戦略と職務設計で変化する日本の採用に対応する
大阪大谷大学 人間社会学部 教授 藤原 崇
最終更新日:
2025年06月19日

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今回は、初任給引き上げの流れを踏まえて、企業が考えられる人事戦略の2つの方向性と、今後ますます重要となる「職務設計」について解説します。
初任給引き上げに対して考えられる企業対応
前回は、初任給の引き上げが続く中、その将来の方向性について検討しました。まず、企業は自らのニーズ、たとえば転勤可否や事業に必要なスキルに合わせて、賃金水準や採用方法を変えてくるという方向性を指摘しました。一括採用の見直しや職種別の賃金など、採用形態や賃金水準の多様化が進むという見解です。また社会全体では、(1)初任給と採用形態の多様化や転職など雇用の流動化が進み、その中で(2)賃金水準決定要素として職務による影響が大きくなる。その場合、(3)日本は外部労働市場における企業横断の賃金相場がないため、需給関係が影響してくる結果として、(4)賃金上昇により継続不可能な事業は縮小され、(5)社会政策や労使慣行の変化が起きる、と指摘しました。
その中で、個々の企業の対応方法は、大きく2つの方向が考えられます。1つ目は、そういった人材流動化や需給関係に柔軟に対応するため、企業としての雇用も柔軟性を高めていく方向です。すなわち、事業戦略に必要な職務に必要な人材(即戦力)を都度採用する方法です。新卒一括採用は極小化し、中途採用やスカウト、ヘッドハントが中心になり、社内の異動も社内公募が基本になります。職務に対しマッチする人材を当てはめますので、賃金は「人」ではなく「職務」や「ポスト」に対して支払うことになります。結果、濱口桂一郎氏が提唱されている「ジョブ型雇用」(『ジョブ型雇用社会とは何か』、2021、岩波新書)に移行することになります。
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