ジョブ型が広まらない理由は「日本特有の雇用システム」 メンバーシップ型からの転換に必要なこと
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「ジョブ型人事制度」「ジョブ型雇用」については、近年関心が高まり、一部の企業で導入が始まっているとの報道も散見されます。しかし、「ジョブ=職務」を軸として給与・処遇を決定する人事制度について、「過去の蓄積や培った能力に左右されることなく、現時点で担当する職務に基づいて給与や処遇を決定することができる」また、「その職務を担当することができなければ、別の職務に異動させ処遇も変えることができる」、こうした「ジョブ=成果主義」といったイメージを持つ人も多いのではないでしょうか。今回は、正しいジョブ型雇用の認識と、メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用の人事管理の特質の違いを踏まえた、これからの働き方について解説します。
ジョブ型雇用とは
ジョブ型雇用について、「ジョブ=職務を軸とした評価・給与体系」という理解だけでは有効な活用は難しいといわれています。ジョブ型とそれに対峙するメンバーシップ型という概念整理を行い、日本にわかりやすく紹介した、濱口桂一郎氏の『ジョブ型雇用社会とは何か』(岩波書店 ,2021)をひもといてみると、そう単純なものではないということがわかります。
本書によれば、ジョブ型は職務を特定して雇用しますが、日本型雇用の特徴を表すメンバーシップ型は雇用契約に職務が明記されません。日本型雇用の本質は「(終身雇用・年功序列・企業別組合)の三種の神器」ではなく、雇用契約上、職務が特定されていないのが普通であり、どんな仕事をするか、職務に就くかというのは、使用者の命令によって決まります。これが、「日本の雇用システム」の最大の特徴とされています。
この結果、ジョブ型では、欠員が生じた都度、個別に採用することになり、日本企業でいう「中途採用」が基本となります。また、賃金も契約で定める職務によって決まっており、それが遂行できる前提で雇われますので、一部の例外を除いて人事査定も行われません。職務を特定して採用するので、職務の変更・配置転換を会社が命ずることはできず、本人と同意の上、別の職務の契約を再締結することになります。したがって、雇用契約が終わるのは、契約したその職務がなくなるとき、すなわち整理解雇が最も合理的な解雇となります。
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