人事戦略として存廃をどう決める? 「年収の壁」問題で注目される配偶者手当の必要性と見直し方

1ヶ月のアクセスランキング
政府による「年収の壁・支援強化パッケージ」がこの秋より展開されています。政府資料「『年収の壁』への当面の対応策」によれば「会社員・公務員の配偶者で扶養され、保険料負担がない『第3号被保険者』のうち約4割が就労」「その中には、一定以上の収入となった場合の社会保険料負担等による手取り収入の減少を理由として、就業調整をしている者が一定程度存在する」と指摘されており、労働力不足が深刻になる中、女性活躍推進を進める意味でも、こういった層が就業調整を行わずに働き、収入を得るようにできる整備が必要という前提です。このパッケージには、「103万円の壁」への対応策として「キャリアアップ助成金」や「社会保険適用促進手当」が、「130万円の壁」への対応策として「事業主の証明による被扶養者認定の円滑化」が講じられていますが、加えて「企業の配偶者手当の見直しの促進」も掲げられています。「年収の壁」で問題となる「手取りの減少」には第3号被保険者の配偶者である会社員や公務員に支払われる配偶者手当の支給が停止され、世帯として収入減になることが大きく影響するからです。本稿ではこの「配偶者手当の見直し」について考察したいと思います。
人事戦略として考える配偶者手当の必要性
まず、大前提として押さえるべきは、配偶者手当を支給するか否かは、企業の人事戦略の一環である点です。たとえ、政府が見直しを促進しても、あくまでも自社の人事戦略として見直しが必要か否かという観点で検討すべきです。
では、企業の人事戦略において配偶者手当はどう位置付けられるのでしょうか。賃金制度において手当は、職務や役割、能力によって決定される従業員の貢献に応じた「基本給」とは別途付加的に支払われる賃金になります。
手当は、(1)役職手当や資格手当、技能手当などに応じた職務関連手当、(2)時間外や休日、深夜勤務、また宿日直など就業に応じた就業関連手当、(3)住居手当、家族手当、地域手当、別居手当など生計費を補助する生活関連手当、(4)通勤手当、営業手当などの必要となる経費を支給する経費補てん手当、などに分類されます。配偶者手当は(3)の生活関連手当であり、扶養する子女などへの手当とあわせて家族手当として多くの企業で支給されています。
※掲載されている情報は記事公開時点のものです。最新の情報と異なる場合があります。