業績が向上する「人的資本経営」の導入ステップ。人事部門による「実践」の繰り返しがカギに
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「人的資本経営」という考え方に近年注目が集まっています。SEC(米国証券取引委員会)が人的資本開示を2020年に上場会社に義務付け、「ISO30414」(人的資本に関する情報開示のガイドライン)が示されました。その動きを受けて、日本でも「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会 報告書 ~ 人材版伊藤レポート ~」が発表され、2023年3月期決算から、一部の上場企業を対象に人的資本の情報開示が義務化されたことなどがその背景にあります。
人的資本経営の「実践」は人事部門に委ねられる
「人的資本」という考え方は、人材はコストではなく資本であり、適切な投資を行い最大限のパフォーマンスを生み出すべきだという考え方です。これは、1960年代にゲーリー・ベッカーが経済学分野で提唱した考え方に由来しています。
日本では少子高齢化が進む中、人材が貴重な経営資源となっています。また、技術革新が進んだ結果、人が生み出すアイデアや創造性がイノベーションの源としてより重要性が増しているという傾向もあり、資本として捉えて活用すべき状況にきているといえます。したがって、人的資本については「開示」という規制の問題にとどまらず、人的資本に基づく経営戦略・人事施策を取ることで企業としての組織力を高め、競争優位を確保する「実践」という意味でも注目が集まっているといえます。
これらの関心の高まりを受けて、上述の「人材版伊藤レポート」に続く、「人材版伊藤レポート2.0」が経済産業省より示され、「実践事例集」などにより、具体的な取り組み方法も示されるようになりました。中でも「経営戦略と人事戦略の連動」は優先度が高い取り組みとして推奨されており、人的資本経営を「実践」する上では、最も重要になる要素です。しかしながら、投資して成長させる人材の対象や成長させたい方向は、企業の目指すビジョンや取る戦略によって変わってきます。経営者やCHRO(最高人事責任者)が主体的に取り組むべきですが、経営層やCHROには方向性は示せても、具体的な施策内容の立案・遂行は人事部門などに委ねられると思われます。
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