「企業の目的」ファーストの組織づくりはもう通用しない デジタル時代の今こそ必要な考え方とは
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新年早々、NHKで「欲望の資本主義2024 ニッポンのカイシャと生産性の謎」と題して「進むインフレ、円安、上がらない賃金。AI時代に日本の生産性を上げる鍵は? デジタル経済の時代に静かに忍び寄る『新しい封建制』とは? 『富を生むルール』激変の時代、かつて称賛された『日本的経営』の功罪を見極め、今あるべき組織の形を探り、企業の生産性の本質を問う」という特集が放送されていました。確かに、「日本的経営」は停滞の30年から抜け出せない足かせとなっているようにも思えます。番組では労働市場や多様性の問題、ホワイトカラーを時間管理する是非などさまざまな視点から論じられていましたが、本稿では「組織形態」から日本社会の抱える停滞について考えたいと思います。
今、組織の在り方に2つの変化が起きている
一般的に「組織」というと「ある目的があって、そのために複数の人材がピラミッド型の階層に配置され、協働する」、堅固なイメージを持つのではないでしょうか。しかしながら、デジタル時代に入り、企業組織を取り巻く環境が大きく変化する中で、組織は「柔軟化」しているといえます。20世紀は組織が機能を取り込んで拡大し、社会の中で影響度を高めていった時代でした。特に戦後の日本社会では高度経済成長に合わせ、企業組織が、社員親睦など社会的なコミュニティー機能を含むいろいろな機能を取り込んで順調に拡大したため、組織は堅固かつ永続的なイメージを確立することとなりました。
それに対し現在では、アウトソーシングや分社化、M&Aといった組織自体の離合集散や機能のやり取りが当たり前になっています。このため、組織は永続的なものではなく、柔軟に変形するという考え方がスタンダードになりました。また、デジタル技術やネットワークの発展により、消費者が製品やサービスの開発を担う「ユーザー・イノベーション」や消費者の情報発信を軸とする「インフルエンサー」を使ったマーケティング、デジタル上で「場」を提供するだけのプラットフォームビジネスなども発展しました。これにより、組織と組織、組織と組織外の個人との境界線はより曖昧かつ不透明になってきています。
もう一つもたらされた変化は組織の「多元化」です。組織の存立には必ず「目的」があり、それを達成するために協働するのは、従来、正社員など組織内のメンバーが中心でした。しかしながら、企業におけるアウトソーシングやアライアンス、人材派遣や請負、副業や兼業もあり、組織に関係する当事者が多様化しています。
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