「総合職は転勤を受け入れる」前提の処遇は限界か 労使紛争になる前に個人と組織の関係の見直しを
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大学教員となった現在でも、コンサルタントの経験を生かし、いろいろな企業と人事管理について議論したり、アドバイスをする機会が多々あります。最近は「人的資本」「ジョブ型」「HR Tech」といったテーマが注目されていますが、個人的には、個人と組織の関係性が大きく変化しようとしていることを感じます。今回は、その変化と行く先にどういったことが待ち受けているかを少し考えてみたいと思います。
就社から就職への変換が現実に
まずは、最近変化を感じる特徴的な事例をオムニバス形式で挙げてみたいと思います。特に傾向として顕著なのは、「勤務地へのこだわり」です。育児や介護との両立、自ら育った地域へのこだわり、ワーク・ライフ・バランス志向、自分がやりたい仕事ができる部署へのこだわりなど、個人によって理由はさまざまですが、自分が住みたい地域で働くことを希求します。したがって、企業からの相談も勤務地限定制度やその処遇設定などが急激に増えています。また、一部の会社でテレワークを活用し、転勤自体を廃止しようとする動きがあるのも理解できます。
次に、「職種へのこだわり」も出てきています。ある企業は部署間異動を前提とする総合職主体で運営してきましたが、中途採用を拡大していった際に、総合職ではなかなか採用できず、高度専門職という位置付けで、職種間異動なしの採用を拡大されました。働き方という点では、テレワークを希望する人たちはコロナ禍が明けたあとでも相当数存在しますし、ワーク・ライフ・バランスのため短時間勤務などの柔軟な働き方へのニーズも強くなっています。たとえば、小売業や外食産業は、土日休みではない、休みにくいといった制約もあります。結果、少子化で人材獲得に苦労しており、従来型の店長などマネジャー層への就任を忌避する動きが高まっています。そのため、店長であっても閉店まで在店してなくてもよい、昼間だけ勤務でよいなど、シフトや人材の組み合わせの工夫で店長にも柔軟な働き方を導入しようとする動きもあります。
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