労働時間の上限規制緩和が実現するとどうなる? これからの「働かせ改革」と長時間労働の設計法
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今秋発足した新政権では「働き方改革」の見直し指示が厚生労働大臣に出され、「労働時間の上限規制の緩和」の検討が行われる方向です。厚生労働省HPの「上野大臣会見概要」には「大臣就任に当たっては、総理から、心身の健康維持と従業者の選択を前提にした労働時間規制の緩和の検討を行い、働き方改革を推進するとともに、安心して働くことができる環境を整備するという指示があったところだ」という回答が掲載されています。
労働時間規制は、GDPへの影響といった経済的な視点や過労死、ワーク・ライフ・バランス(以下、WLB)、人材の多様性などの社会的な視点、そして企業の競争力への貢献など経営的な視点など多岐にわたって議論される問題です。
今回は、労働時間や人事管理に関する経済学や経営学の知見も活用しつつ、今回の「見直し」に関する企業としての捉え方と対応方法について検討していきます。「働き方改革」ではなく「働かせ改革」の視点で、企業の成長と従業員の福利を実現する人事管理について論じてみたいと思います。
これからの企業に求められる重要な視点
まず前提として、企業の人事管理の目指す目標の前提を置きたいと思います。これは『人材マネジメント入門』(守島基博、日本経済新聞出版、2004)より、下記の図表のように表現できると考えます。短期的には公平な評価・処遇を通じて人材を活性化し、企業業績や戦略実現に貢献しつつ、長期的には将来の変化に備えて、個人の成長と組織全体の能力向上をはかることが、人材マネジメント、人事管理の目的であることに大きな異論はないでしょう。
図表 これからの人材マネジメントにとって重要な4つのデリバラブル
| 短期的目標 | 長期的目標 | |
|---|---|---|
| 経営の視点 | 成果による戦略達成への貢献を高める | 戦略を構築する能力を獲得し、その能力を向上させる |
| 人の視点 | 公平で、情報開示に基づいた評価と処遇を実現する | キャリアを通じた人材としての成長を支援する |
では、これらの目的を実現するに当たって、現在の企業を取り巻く環境はどうなっているでしょうか? まず、少子高齢化の進む日本社会では、人材獲得・維持が難しくなっています。そのため、高年齢者や女性、外国人等多様な人材活用が求められています。
また環境変化が激しく、AIやDXの進展もあり、従業員の持つ知識・スキルの陳腐化の速度も速くなっており、中途採用での即戦力採用やリスキリングなど教育訓練投資の必要性も高まっています。それらに合わせて、労働条件の引き上げも必至であり、人件費が経営に与える影響についても留意が必要です。
長時間労働の影響と原因
以上で述べた目的と環境を前提として、労働時間管理の在り方や現政権が示唆する「健康確保と本人同意を前提とした労働時間規制緩和」が実現された場合の対応について考えていきます。
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