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採用ブランディング【第8回】採用にマス広告は必要か?

2018年06月27日

■どの企業でもいえてしまうメッセージに意味はあるのか

 3月を中心に、8月ころまで、BtoB企業を中心にマス広告が展開されることがあります。TVCMや新聞、交通広告などでよく見かけていると思います。もちろんこれは採用を見越して行われ、少しでも学生の目に触れる場所に広告展開することで知名度を上げ、自社にエントリーしてもらおうという狙いがあるのでしょう。

 しかし、残念ながらその多くは「自社の何を訴求したいのかわからないもの」や、「どの企業でもいえてしまうような訴求」です。普段、広告展開をすることがないので、「何をいうべきか」「どう表現すべきか」という判断がつかないのかもしれませんが、これでは出稿しても効果はほとんど出ないでしょう。

 採用における広告の役割は、知名度を上げ、興味を持ってもらうことです。具体的にはホームページや出稿しているナビページに誘導できなければ、エントリーや説明会への動員にはつながりません。知名度が上がっただけでは意味がないのです。実際の行動を促さなければいけないのです。しかし現状、多くの採用を意図としたBtoB企業の広告は、残念ながら広告に「慣れていない」雰囲気がよく出た広告になってしまいがちです。

■広告の完成度が低いと、マイナスの意味で目立つ

 マス広告は、メッセージの表現の良しあしはさておき、デザインの完成度は総じて高いものですが、有名企業のものばかりです。また、BtoB企業でも、大手企業はよくできたメッセージであるものが多く、中小企業との「広告慣れ」の差が如実に現れてしまいます。そのため、デザイン完成度の低い知名度の低いBtoB企業の広告が出稿されていると、マイナスの意味で目立ってしまうということもあります。つまり、良いイメージを与えない広告なら、出稿しても無駄金になってしまうのです。

 BtoB企業がなぜマス広告にこだわるのかについては、先述した知名度の向上により、採用を有利に進めようとしたいからです。少しでも社名を求職者の脳裏に残し、エントリーにつなげたい、そういう思いがあるのでしょう。たとえば、BtoB広告の走りであるIHIや村田製作所などの企業広告を、以前はよく目にした方も多いのではないでしょうか。広告としてのクオリティーも高く、過去には名だたる広告賞で受賞もしています。上記2社は出稿量も多かったため、広告をきっかけに知った人も多かったはずです。そこから採用にも寄与したことは大いに推察できます。これらの広告にはコンセプトやアイデアの感じられるものが多かったです。そのため、採用「だけ」を目的したと思われる「ありきたりなメッセージ」と「説明会開催中」と書かれた電車内広告に、どれほどの効果があるのかといえば、皆無なのだろうと思ってしまうのです。

■単に作っても、効果は出ない

 もし知名度が本当の課題であるのなら、その解決策としてマス広告を選ぶことはまっとうな判断といえます。しかし、採用課題が知名度であると判断するには、いくつものチェックが必要でしょう。たとえば、採用人数が10人程度であるならば、内定辞退率が仮に100%だったとしても、マス広告という判断は間違いです。マス広告にお金を投入するより前に、もっと別の方法で採用は改善できます。

 マス広告が必要な段階というのは、たとえば急に採用数を増やすことになり、100人採用したいけど、社内のマンパワー的にどうしても求職者に接触する数が限られ、母集団形成に手が回らない。だからマス広告を打とう、などという状況などです。しかしそうであったとしても、ありきたりのメッセージで、単に「説明会開催中」「◯月◯日」と日程が書いてあるだけなら、母集団は形成されないでしょう。しっかりとコンセプトを決め、それに沿って、自社の何を、どんな人に向かってメッセージを投げかけるかを考え、コピーやデザインに落としていかなくてはなりません。もちろん自社で作るところは少ないでしょうから、外部へお願いするときも、自社の強みやターゲット像くらいは伝えられるようにしておかないと、制作する会社の「思い込み」で作られてしまうことになりかねません。

■やり尽くしてから、マス広告へ行け

 日本の採用活動全般にいえることですが、それぞれの採用活動パートではきっと最適なのでしょうが、あまりに外部協力会社の数が多いので、全体最適になり得ない、ということが起こっています。採用は予算規模がマーケティングほど大きくはないけれど、外部協力会社との連携は多く、それを採用担当が実務を行いながら、コントロールするという構造になっているのです。たとえばホームページ、パンフレット、説明会で訴求していることがバラバラ、デザイントーンもバラバラというのはよくあることです。

 このような事態に陥らないためには、採用全体を貫く軸=コンセプトを作り、それに沿って、各パートの内容を詰めていくことで、部分最適をつなげ、全体最適に近づけるしかありません。大きな流れの中で、マス広告に役割を持たせ、企画していく必要があるのです。

 基本的に私は、採用におけるマス広告の優先順位は低いと思っています。それよりもほかのものへの取り組みによって、改善できることがたくさんあるからです。マス広告は、多くの人にメッセージを届けるべき状況のときに活用するものです。一方、採用ブランディングという考え方は、知名度がなくても、小さな会社でも、BtoB企業でも効果を発揮できます。その考え方の下採用を行うことで、驚くほど効率的、本質的な採用を行うことができるのです。

深澤 了
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