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採用ブランディング【第16回】採用から始まる売り上げアップの6段階仮説

2018年11月01日

■理念共感は業績アップになると統計的に導かれている

 経営の教科書にはよく「理念・戦略・現場」の三角形を掲載し、この三角形の一貫性がある会社が強い会社であるということが書かれています。つまり、理念共感を現場にまで落とし込むということですが、そうであるとすれば採用段階から理念や戦略に共感した人を採用しましょう、というのが採用ブランディングのシンプルな考え方です。

 また、国内外の調査において、理念共感が売り上げにつながるというのは統計的に優位が出ています。以前にも紹介したかもしれませんが、リクルートマネジメントソリューションズが2010年に国内企業に調査したところ、「業績指標は実行力、変革力、知の創出力に相関があり、その3つの要素はビジョン共有力に相関がある」という結論を導き出しました。ここでの「知の創出力」とは部門間の深いコミュニケーションのことをいいます。

 では、具体的にどのようにして業績は上がるのか、実はそのステップについてはまだ詳しく解明されていません。もちろん上記結果だけでも、何となくわかるのですが、それを明示したものはこれまでありませんでした。

 しかし最近、日本ブランド経営学会の発表で「インナーブランディングが業績を上げる6ステップ仮説」を明示しましたので、ここで詳しく解説したいと思います。

■業績アップの流れは採用から始まる6ステップ

 「インナーブランディングが業績を上げる6ステップ(仮説)」とは、次のような流れです。

(1)理念共感する人が入社する
(2)社内の理念浸透が進む
(3)活躍人材が増える
(4)実行力・変革力・知の創出力が上がる
(5)知覚品質・認知・ロイヤルティー・連想の数値が上がる(良くなる)
(6)業績が上がる

 (1)→(2)の流れはなんとなく感覚でつかみやすいと思います。既存社員への理念浸透策を行っていることが前提ですが、そういう人が増えることで、理念浸透が進む、ということです。これを証明するのは簡単で、入社時の理念共感が以前と比べてどれだけ数値アップしているか、また既存社員への理念共感がどれだけ進んでいるか、KPIを設定して追いかけていけば、どんな企業でもできるはずです。

 (2)→(3)の流れは多少解説が必要でしょう。当社の調査で、自社の理念を理解している社員で「活躍するイメージがある」と答えた人は50%強、逆に自社の理念を理解していない社員ではその半分以下にまで数値が落ちることがわかりました。つまり、理念共感した人が増えるということは、自社での「活躍イメージ」にまで影響するということです。自身にイメージがなければ、とうてい活躍はできません。ですから(2)→(3)の流れが導き出されるのです。

■仮説の核心、ブランド・エクイティの向上

 (3)→(4)→(5)の流れはまさに「仮説」の段階です。活躍社員が増えることで、「実行力・変革力・知の創出力」が上がるというのは、今後精緻に実証していかなければならないことですが、ここも感覚的にはそれほど理解に苦しむというものではないように思います。

 また「実行力・変革力・知の創出力」が上がることで、いわゆるブランド・エクイティ(=企業のブランド資産)の4要素である「知覚品質・認知・ロイヤルティー・連想」がアップするというのも、同様の説明ができると思います。このあたりはもしかしたら、順番が変わるかもしれません。まさに実証が必要なところだと思っています。

 ちなみに、「知覚品質」とは「商品・サービス自体の品質の問題」。「認知」とは「知名度」。「ロイヤルティー」とは「リピーター=ファンの獲得」です。「連想」とは「ブランド自体にある豊かな連想」を指し、たとえば「プリウス」といわれたときに「トヨタ、エコカー、ナンバーワン......」というようにイメージがたくさん膨らむことをいいます。これが「強くて、好ましくて、ユニーク」であるほど、ユーザーの中でブランドが形成されていると説明することができるのです。

■1を生みだす本質的、効率的な方法が採用ブランディング

 (3)→(4)→(5)の流れが実証できれば、(6)は自ずと立証できるのではないかと思っています。売り上げなのか、利益なのか、株価なのか。何を指標にするかは要検討ですが、そのような業績指標のすべて、もしくは何かしらを上げていくというのが私の仮説です。この調査にはおそらく数年の経緯を見なければならないと考えており、その意味で壮大な調査になるので、容易には統計的に証明はできないでしょう。

 しかし、それを待たずとも感覚的に「そうだよね」とわかるのがこのステップではないかと考えています。そしてその始まりは(1)理念共感する人が入社する、です。ここが起点になるということは、これを生み出すために確率の高い方法を取らなければなりません。それこそまさに、自社の理念や価値観に基づいた強みを起点に採用を行う「採用ブランディング」そのものだと思っています。

 そう考えれば、今行っている採用がいかに数を満たすためだけの、本質的でなく、経営にとって非効率的な採用になっているかがわかっていただけると思います。もう母集団を追いかける必要はありませんし、理念共感しない人を無理やり入社させる必要はないのです。そのために「採用ブランディング」を行う勇気が、多くの経営者に求められているのです。

深澤 了
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