月刊総務プラス

『月刊総務』本誌記事:

【総務の現場から】
会社と従業員を結び、成長につなぐコミュニケーションコーディネーター

2017-08-17 10:37

優秀な個の力を生かすにもつながりの持てる組織へ

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 現在、日本市場において、ペットケア、スナックフード、ドリンクの3事業を展開している同社。人事部のコミュニケーションコーディネーターとして活躍する栄 夕香さんは、「弊社のカルチャーが体現されたオフィスや環境を整えていくことに取り組んでいます」と自身の役割を説明する。そのカルチャーの根幹ともなっているのが、同社独自の価値観をまとめた「マースの五原則」。昨年、オフィスを移転した際も、五原則やカルチャーが感じられるオフィス作りを軸にプロジェクトを進めた。そのほか、さまざまな施策に取り組んでいるが、そうした活動が加速したのは、2010年、現トップの就任がきっかけだった。
 
 当時、業績が低迷していた同社の雰囲気に、トップは、「優秀な人が集まっているのに、その力を発揮し切れていない。チームワークを大切に、つながりを持ってビジネスをやっていけば、より強くなれる。一つのチームとなってがんばっていこう」と、"ダントツナンバーワン”というモットーを掲げた。そのベースにも五原則の一つ、責任の原則があった。「個人の責任も全うするが、お互いが責任を全うできるようにサポートする責任もある。マースの働き方のコアのところには、支え合う文化があります。役割などの壁を取っ払って、いいおせっかいをしていこう、つながりを持てる組織にしていこう、と。シニアリーダーを集めての“ダントツチーム”を結成し、どんな取り組みをすればいいか、考えるところからスタートしました」。
 

従業員を発起人に、企画が自主的に回る仕掛けも

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 現在は、栄さんを含む有志8人による“チームコネクションズ”がその活動を引き継ぎ、つながりを高めるための施策に取り組んでいる。その一つが、夏の恒例イベントとなった「補助金をもらってコネクトしようキャンペーン」だ。これは、アソシエイト(従業員)が業務でかかわりがない人ともつながりを持てる企画を自由に考え、社内のメールマガジンやポスターなどで参加者を募って実行するもの。会社は一人当たりに一定の補助金を出す。野球観戦、ボルダリング、バーベキュー、県人会など、ほとんどが業務外のものだが、家族を会社に招いてのファミリーデーなど、フォーマルになっていった企画もある。ポイントは、アソシエイト自身が企画を考えるところだ。「やりたいことがある人を発起人に、自主的に企画が回っていく仕組みにしました。弊社には、役割を越えてでも、アイデアを出すことを推奨する文化があります。働き方だけでなく、コミュニケーションの施策でも、待っているのではなく自ら動いた方が実現しやすいとの文化を感じてもらえたら、と。もちろん、単に楽しい時間を提供しているだけでなく、目指すは、つながりを持つことの大切さを感じてもらうこと。そのメッセージを伝えていくにも大事なのは継続です」。
 

面倒だった表彰イベントが参加したいイベントに!

 グローバルでの取り組みもある。2年に1回、アソシエイトの仕事ぶりをたたえ合うイベント「メイクザディファレンスアワード」だ。アソシエイトは自身が取り組んできた仕事について、自薦、他薦問わずにプレゼンする。日本ローカルの大会からスタートし、日本代表はアジア大会へ、さらに勝ち進めばグローバル大会で発表をする。ベストプラクティスをシェアするという機会でもあるが、「何よりアソシエイトがどれだけがんばっているのかを知って、お礼をいいたい」との会社の思いがコンセプトになっている。しかし、日本では当初、「面倒なイベント」と捉えられる風潮があった。それを「参加したいイベント」に変えていこうと、2007年からかかわるようになった栄さんは試行錯誤を重ねた。大きく変わったのは、現トップが就任してから。一体感を醸成するにも「まずは人に興味を持つことから始めよう」とのトップの考えを受けて、周りの人がしていることを知ってもらえる、ストーリーテリング方式に変えた。書類選考をなくし、経営陣を前に「どのような気持ちで取り組んだのか」という思いを、10分ほどで語ってもらう形にした。その熱い思いに触れ、「いかに思いを持って働いているかがわかって感動した」と涙する経営陣も少なくなかった。そこから少しずつ、アソシエイトの反応も変わった。「話を聞いてもらって、お礼までいわれた」「以前とは違う。参加して良かった」との声が増え、次第に「自分も参加したい」となっていった。
 

つながり作りは継続が大切。時間をかけてこれからも

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 とはいえ参加は任意。強制はしない。ただ、ちょっとした工夫で後押しもする。たとえば、アソシエイト同士が感謝を伝えるサンキューメモを掲示板に貼る仕組みがある。事務局が「メモが貼られていましたよ」と本人に伝えつつ、「このお礼をいわれたプロジェクトで参加してみませんか?」と声を掛ける。より参加しやすいよう、相当な時間をかけて改良をし続けている。ある年からは、「発表を聞きたい」との声に応えて、オーディエンス席を設けるようにした。日本代表を選ぶ決戦のステージは、アソシエイト全員が見ている中で行われ、アソシエイトも投票をする。「今では、このステージに立てて良かったという参加者が多く、大きく変わってきたなと実感しているところです。コミュニケーションの仕事は、アソシエイトに『これはいい』といってもらえたときが、少し結果が見えたとき。さらに良くしていくために、これからも取り組みを継続していきます」。チームコネクションズも4年目を迎えた。有志による活動だが、卒業するメンバーは次のメンバーにつないでいく。そこでもまた新たな人とのかかわりができる。一人でする仕事ではなく、いろいろな人を巻き込みながら、人と人のつながりのきっかけを作っていく。それがコミュニケーションコーディネーターなのだ。
 

【会社DATA】

マース ジャパン リミテッド
本社:東京都港区港南1-2-70 品川シーズンテラス7F
設立:1975年12月
代表者:社長 森澤 篤
従業員数:約320人
 

 

『月刊総務』本誌記事:

【総務の現場から】
技術開発と総務が一緒になって「スクラム」で業務を改善

2017-07-18 10:18

ソフトウエア開発の手法で業務を見える化し、改善

 「人と人をつなぐ」をミッションに、インターネット領域で次々と新たな事業を生み出してきた同社。自分の仕事は自分で作り出す社風で、プロジェクトなども、やりたい人が手を挙げて行う。そうした中、総務発信でイントラネットのリニューアルに取り組むことになったという。
 「元々、イントラネットはあったのですが、そういった社風ゆえに、ほかにもたくさんの情報ツールや窓口ができてしまった。それを集約し、ここに行けば、こんなツールがあるとわかる住所録のようなものが作りたい。これが、イントラネットリニューアルプロジェクトのきっかけでした」と管理本部 総務部マネージャーの梅津祐里さんは話す。
 ちょうどその頃、同社ではソフトウエア開発のアジャイル開発手法の一つである、「スクラム」が普及し始めていた。その手法を総務でも取り入れてみたいと、認定スクラムマスター(CSM)の認定を受けた、技術開発部の長南理恵さんに参加してもらうことになった。
 「スクラムというのは、チームのコミュニケーションを重視した手法です。また、少しずつ進めて、振り返り、改善点があれば、それを反映させて、と、小さいサイクルを回していくのも特徴です。エンジニアでなくても使えるのではないかと、非開発チームでもやってみることになりました」と長南さんは説明する。
 今回のスクラムでは、イントラネットのリニューアルはたいへんな業務となるため、まずは総務の通常業務を見える化し、改善、効率化をはかってから、リニューアルと同時進行できるようにしよう、との方向で進めていった。
 

タスクの管理には「かんばん」を導入

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 最初に行ったのは、スクラム開発で用いられる「かんばん」を導入すること。かんばんとは、タスクを書いた付箋を張り出して、チームみんなで進捗を共有するタスク管理の方法。「やることに対して、今、どのフェーズまで進んでいるのか。チームで仕事の進行を見える化する進行表のようなものです」(長南さん)。総務のかんばんは、当初、担当者ごとに付箋の色を分けて、「今日やること」「保留中」「完了」の進捗状況に応じて張っていく形にした。総務チームのスクラムは、2週間に1回の確認ミーティングでそれを振り返り、課題があれば改善しながら進めていった。「かんばんによって工数管理ができるようになりました。特に問い合わせの付箋を付けてみて、こんなにも件数が多いことを認識。この件数も、イントラネットを充実させることで少なくできるのではないかと一つの目標になりました」(梅津さん)。
 一見、アナログ的にも思えるかんばんだが、付箋に書くことで、「そういえばこういうこともあったな」とひも付くタスクに気付くことも多いという。また、ウェブのツールだと見なくなってしまうこともあるが、かんばんなら常に目に見える。ただ、課題となったのは、担当によっては短いスパンの仕事が多く、付箋の数が膨大となってしまうこと。そこは、細かいタスクは付箋にしないなど、個々に合わせた記載方法に変えていった。さらに、他社のかんばんなども見学に行き、より使いやすいようにアップデート。現在は、メンバーの予定、タスク、連絡事項など、知りたい情報が全部集約された、総務チームオリジナルのかんばんになっている。
 

共通認識が持てる言葉で他部門との協働も円滑に

 イントラネットのリニューアル自体は長期スパンで考えており、2年目に突入。現在、総務関連のものから移行中だ。技術開発と総務という部門を超えたチームで進めているわけだが、気を付けているのは、プロジェクトのために本質の仕事が遅れないようにすること。「そのために、次回の確認ミーティングまでのタスクの計画で無理をしない。低めに設定をして成果を味わうようにしています」(梅津さん)。「開発としては、専門用語は使わずに共通認識をそろえるようにしています。たとえば、イントラネット完全リニューアルは、チョモランマ。その前段階、総務のイントラネット完全移行は、富士山を登り切るイメージだね、と」(長南さん)。これはプロジェクトのゴールの認識が、全員バラバラにあった状況を合わせるためでもあった。「まずは富士山。今、何合目くらいまで来たよね、と共通認識が持てるようになりました」(梅津さん)。 
 

今後はリモートワークでのスクラムの取り組みも

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 今後、取り組んでいきたいこととしては、リモートワークへの対応がある。リモートワークは会社として推奨しているが、部署ごとの裁量に任されている。「総務は会社にいないと仕事ができないと思われているのを覆したい。週に1回、1人ずつ交代でやってみようと考えています。
 そうすると、かんばんを見ることができない。それをどうするかが課題です」(梅津さん)。方法としては電子化や、かんばんを写真に撮って、それを見ながらスカイプでリモートの朝会をするといったアイデアも出ている。
 最後にあらためて、スクラムやかんばんを実践してよかったことをうかがった。「以前は、お互い何をやっているのかがあまりよくわかっておらず、忙しいのに仕事をお願いしてしまうこともありました。頼んだ方はレスポンスが遅いと思うし、頼まれた方は今日忙しいのにと、お互いにストレスになっていました。それがかんばんによって改善された。今日のタスク量はもちろん、昨日こんなにがんばってくれたんだ、ということも見える化できたのはすごくよかったです」(梅津さん)。「総務とのスクラムがきっかけとなり、やっていなかった開発チームも取り組むようになったり、ほかの非開発チームからも相談を受けるようになりました。他社から情報交換を持ちかけられることも増えています」(長南さん)。同社としても知見の共有には積極的で、ブログなどで取り組みについて公開している。ぜひ参考にしたい。
 
※『月刊総務』2017年8月号P40-41より
 

【会社DATA】

株式会社ガイアックス
本社:東京都千代田区平河町2-5-3Nagatacho GRID
設立:1999年3月5日
代表者:代表執行役社長 上田祐司
資本金:1億円
従業員数:174人(2016年12月現在)

 

『月刊総務』本誌記事:

総務パーソンが押さえておきたい8月のトピックス

2017-07-11 09:45

■法務

執筆/小沢・秋山法律事務所 弁護士 香月裕爾

●フェア・ディスクロージャー・ルールにかかわる金融商品取引法の改正
 本年5月17日、金融商品取引法の一部を改正する法律案が成立しました(以下「改正法」といいます)。改正法の主要な事項は、(1)取り引きの高速化への対応、(2)取引所グループの業務範囲の柔軟化、(3)上場会社による公平な情報開示の3つです。(3)は、いわゆる「フェア・ディスクロージャー・ルール」を具体化するため、新たな情報開示制度を創設するものです。その背景には、(1)上場会社が証券会社のアナリストに未発表の業績に関する情報を提供し、当該証券会社が顧客にその情報をもって株式売買の勧誘をしていた事例が発覚したこと、(2)欧米やアジアの市場では同ルールが導入されていることから金融庁が金融商品取引法を改正したのです。
 改正法による具体的な規制の概要は次の通りです。上場会社が未公表の重要な情報を、証券会社や投資者に伝える場合には、(1)意図的な伝達は同時に、(2)意図的ではない伝達については、速やかに当該情報をホームページ等で公表しなければなりません。ただし例外があり、情報受領者が上場会社に対し、守秘義務および投資判断に利用しない義務を負う場合は、当該情報を公表する必要はありません。さらに、国民の知る権利を担う報道機関による取材は対象外です。上場会社に公表義務があるにもかかわらず公表されない場合には、当局が指示や命令を発令します。
 

■労務

執筆/斉藤社労士事務所 特定社労士 斉藤貴久

●法令違反企業をホームページで公開
 本年5月10日、厚生労働省は「労働基準関係法令違反に係る公表事案」に関して、対象企業334社に関する情報をホームページで公開しました。以前より労基法等の違反により書類送検をされた場合には企業名が公表されてきましたが、今後は書類送検に至らずとも労働局長の指導を受けた場合を含め、公表日からおおむね1年間をめどに厚生労働省のホームページに掲載されます。ただし、毎月更新される予定であり、1年以内であっても是正や改善が確認された場合には、ホームページから削除されることになっていますので、是正勧告等への早急な対応が求められます。
 
●労基署の臨検に民間活用
 政府の規制改革推進会議は、労働基準監督署の臨検を民間に委託するプランを盛り込んだ「規制改革推進に関する第一次答申」を5月23日に公表しました。労働基準監督署による定期監督は全事業場の約3%にとどまっており、働き方改革の中で労使が合意した時間外労働の絶対上限時間数を遵守させるための監督体制が問題視されていました。具体的には社会保険労務士の活用を検討しているようですが、厚生労働省は難色を示しているようです。仮に、民間活用が進むことになれば、臨検の対象企業数が飛躍的に増加することが予想されますので今後が注目されます。
 
 

■税務

執筆/税理士法人AKJパートナーズ

●届出書等の手続き簡素化について
 納税地を異動した場合、従前は異動前および異動後両方の納税地の所轄税務署に対し、その旨を知らせる届出書を提出する必要がありましたが、2017年4月1日以後の異動については、異動後の納税地の所轄税務署に対する届出書の提出が不要となりました。給与支払事務所等の移転についても同様で、移転後の納税地の所轄税務署に対しては、届出書の提出が必要ありません。また、法人設立届出書等において添付が必要とされていた登記事項証明書について、2017年4月1日以後はその添付が不要となっています。
 
●従業員に支給する記念品等の給与課税
 会社が創業30周年などの記念行事に際し、従業員に記念品を支給する場合、(1)その支給する記念品が社会通念上記念品としてふさわしいものであり、かつ、そのものの価額(処分見込価格)が1万円以下のものであること、(2)創業記念のように一定期間ごとに到来する記念に際し支給する記念品については、創業後相当な期間(おおむね5年以上の期間)ごとに支給するものであること、その2つの条件に該当するものについては、強いて給与課税しなくても差し支えないとされています。ただし、商品券を支給した場合には、現金の支給と異ならないものとして給与課税対象となりますので、留意が必要です。
 
『月刊総務』2017年8月号P7より転載

 

『月刊総務』本誌記事:

【総務部門】8月の業務ポイントと行事

2017-07-10 12:09

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◆8月の業務ポイント

▼中元贈答品のお礼状発送
▼夏季休暇申請の受け付けおよび実施
▼夏季休暇時の諸設備点検
▼夏季の健康管理指導
▼夏季の防犯対策
▼省エネ、クールビズの奨励
▼防災訓練の準備
▼採用内定者の管理(研修の実施)
▼入社前教育用資料の検討
▼来年度のカレンダーや手帳の発注
▼固定資産の管理点検
▼各種文書やデータの整理
▼社内報の編集と発行
 

◆8月の月間&週間行事

▼8月1日-31日
・電気使用安全月間(経済産業省)
・食品衛生月間(厚生労働省)
▼8月1日-7日
・世界母乳育児週間(世界母乳連盟)
・水の週間(国土交通省)
▼8月30日-9月5日
・防災週間(国、関係公共機関ほか)
 

◆世界旅行気分!

▼アイスランド共和国(Republic of Iceland)

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 北ヨーロッパの北大西洋上に位置する島国。国名にアイスが付くだけあって、イメージは「寒い北極圏の氷の島国」?
 ところが驚き。アイスランドは火山国であり、至るところに温泉が吹き出している。確かに冬は長く、12月や1月は太陽は数時間しか昇らないが、アイスランドの海域には暖流が流れているため、緯度のわりには冬の気温はそれほど低くない。冬の最低気温はマイナス10度台、実は北海道より温暖だ。そしてなんといっても国中が「オーロラベルト」の直下。幻想的なオーロラを見ることができる。また、短い夏には五5,000種以上の小さな植物たちがいっせいに花を咲かせ、美しい草原が広く続く。もちろん白夜も神秘的だ。治安も良く、水産物が豊富で食べ物もうまい。夏休み、行きたくなった?
 

【DATA】(外務省HPより)
●人口:33万7,610人(2016年)
●面積:10.3万km2(北海道よりやや大きい)
●首都:レイキャビク
●言語:アイスランド語

『月刊総務』2017年8月号P6より転載

 

『月刊総務』本誌記事:

【総務の現場から】
全学体制で女性活躍推進に取り組み 5年間で女性教員比率を2.5倍に

2017-06-16 13:24

工学系女子を増やすためまずは女性教員を増やす

 現在、「世界に学び、世界に貢献する理工学人材の育成」との人材育成目標を掲げる同大学。2013年、創立100周年に向けた大学の中長期行動計画の中で、ダイバーシティ推進先進校を目指し、女性活躍推進に取り組むことを発表。その背景について、同大学学長補佐 男女共同参画推進室長 大学院 工学マネジメント研究科 教授の國井秀子さんは、「日本は女性教員や研究者が非常に少なく、産業界のニーズからしても、技術系の女性があまりにも少ない。エコシステムを回すには、理工系分野の女子学生から増やさなくてはなりません」と説明する。やはり女性教員が少ないと、女子学生は入りにくいし、相談する相手にも困るという状況になる。そのためにはまず女性教員を増やすことで女子学生を増やし、社会に女性技術者を輩出していく。それが同大学のミッションだ。
 
 「もちろんスーパーグローバル大学としては、女性教員比率30パーセントの長期目標を掲げていますし、それ以前から、女性研究者を増やして、グローバルに通用する国際的にランクの高い大学にしていこうとの流れはありました。それがここにきて加速している理由の一つに、深刻な人材不足の中、やらなくてはいけない重要なことだと、産業界側のニーズを認識する人が増えてきたこともあります」
 

育休中でも研究が回るよう研究支援員がサポート

 実際に取り組むにあたっては、男女共同参画推進室を開設。KPIを設定し、学長がリーダーシップを取り、強く推し進めていった。また、文部科学省科学技術人材育成費補助事業「女性研究者研究活動支援事業(一般型)」に採択され、3年間実施したのも大きかった。「この事業をきっかけに、女性教員の学科ごとの数なども把握し、共有できるようになりました。意識改革を進めるにも、まずはデータで実態を示すことは大切です」。事業としては、(1)女性研究者の活躍、増員を促す環境整備、(2)出産、育児、介護などの事情を抱える女性研究者への具体的支援、(3)理工系分野を志向する女性研究者増員のための活動などに取り組んだ。「たとえば、育児などで時間が制約される女性研究者に対して、大学院生を研究支援員として配置。本人が休んでいる間も研究は回っていくようにしました。とても好評です」。
 
 こうした活動の結果、本務教員の女性比率は、取り組み前の2012年度の6.2パーセントから、2015年度は12.3パーセント、2017年4月には15.7パーセントとなり、5年間で2.5倍となった。
 

ポジティブ・アクションに対する理解促進がカギ

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 成果を上げるために大切だったのは、全員がこの問題が重要であると認識することだったという。「女性教員を増やすには各学科の採用を実質的に決める人たちに動いてもらわなければなりません。現場がやらなくてはいけないという雰囲気になるよう、啓発活動に力を入れました」。まずはシンポジウムやパネルディスカッションで意識の啓発をはかり、大学としての数値目標を各学科に落とし込んでいった。「データで実態を見せれば、みなさん納得はされます。そこから各学科を一つひとつ回って、『いつまでにどうしましょうか』と話をし、各論での施策を考えてもらいました」。
 
 一番のカギとなったのは、ポジティブ・アクションへの理解だ。「ポジティブ・アクションをしない限り、これだけのことはできません。元々、大きなハンディがある中で、『はい、平等です』といっても変わらない。そこは是正措置を取る必要があります。しかし、このことを理解されていない人が、男性だけでなく女性教員にも多いのです」。ある程度のポジションにある女性ほど、「自分の力でここまできたのに、特別措置を取られたと思われたくない」と考えるケースが多いという。そうした相手に対しては、データを示し、これだけのギャップがあるということは環境的に問題があるということ、特別措置を取らないとフェアな環境にはならないと理解を促した。「あなたはできたかもしれないけれど、みんなに同じチャンスがあったわけではない、と。あなたにはロールモデルになってほしいというような話をしていく。すると『実はこんなことをいわれた』などの相談も出てくる。そこに対してきめ細かく対応をしていく。起きた事象をご説明いただければ、『こうすればいいですよ』との話もできますから」。
 

女性教員同士も結びつけて持続的な取り組みに

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 今後も、女性教員比率30パーセントを目指して取り組んでいくが、簡単なことではない。時代や環境によって、大学の方針も変わるかもしれない。そうなっても変わらず取り組みを持続できるよう、女性教員のネットワーク作りにも力を入れていく。「女性教員を集めて、研究内容を紹介し合う交流会も行っています。異分野同士のイノベーションが期待される今、そうした交流会の中で新たな研究テーマを見つけられたら、とのねらいがあるのですが、ネットワーク作りの一端にもなっています」。
 
 ちなみに、同大学では、まだロールモデルが少ない工学系女子を育成する目的で、女性教員と女子学生による「工学女子を育てよう!プロジェクト」も実施している。その一環として、女子学生が近隣の女子中学生にロボット作りを指導する講座を、港区立男女平等参画センターと共催し、好評を得た。こうしたアプローチも通じて工学系女子を増やし、社会で活躍する女性技術者を増やす。エコシステムが回るようにしていきたいと考えている。「私たちの最終目標は、女子学生を増やすことですが、それにはもう少し女性教員を増やさなければ。これからもデータをしっかり取り、個別に対策を考えながら取り組みを続けていきます。娘さんがいらっしゃるエンジニアのみなさんには、ぜひ工学系に進むよう、その楽しさを伝えてほしいですね」
 
※『月刊総務』2017年7月号P42-43より
 

【法人DATA】

学校法人芝浦工業大学
本部:東京都港区芝浦3-9-14
設立:1927年
理事長:五十嵐久也
教員数:322人(2017年5月1日現在)

 

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