月刊総務プラス

『月刊総務』本誌記事:

【総務の現場から】ゲーム感覚の残業時間予測制度で、楽しみながら働き方改革を推進!

2019-09-12 10:12

人生を豊かにする働き方を目指し、改革をスタート

gdo01.jpg 同社の働き方改革への取り組みは早く、2013年には始まっていた。「ベンチャー企業からスタートした当社も、会社のステージが上がるにつれ、生産性の向上が経営の課題になっていました。ゴルフというレジャーをビジネスにしているからには、自分たちからオン・オフのメリハリのる働き方に変えていこう、と。『ワークファスト(Work Fast)』をキーワードに、全社にメッセージを発信したのが始まりです」と、人事・総務本部 人事企画室室長の菊池一恵さんは振り返る。
 ワークファストとは、ゴルフ用語の「プレーファスト(Play Fast)」(ゴルフをするときには、早く速やかにプレーすることがかっこいいという考え方。マナー)になぞらえたもの。プレーファストのように、「早く仕事が終わって成果が出せている人はかっこいい」というイメージだ。トップや担当役員自らが、「ワークファストチーフオフィサー」などと書かれたTシャツを着用し、思いの強さを示した。ゴルフ用語は社内の共通言語。社内の理解は進みやすかった。
 まずは、NO残業デーの実施や、会議の内容や時間の見直しなどからスタートし、2016年にはオフィス移転。同時期に、フレックスのコアタイムの短縮や、所定労働時間の削減など制度面も改革した。また朝方勤務を推奨し、8時30分までに出社すると、朝食とコーヒーを提供したり、7時から13時まで休憩なしで勤務して退社できる制度も導入した。「執務フロアの空調は18時半になると止まります。もちろん延長申請はできますが、残るくらいなら翌朝に」と、人事・総務本部 総務マネジメント室室長の宮内宏和さんは話す。

「早く帰る方がかっこいい」との意識が浸透

 そうした中、より時間管理の意識を高め、働き方の意識改善を促すために、2017年、人事メンバーで話し合って作ったのが「オネストジョン」制度だ。オネストジョンとは、ゴルフコンペの形式の一つで、プレー前に自分の予想スコアを決めて、どれだけ近かったかを競うゲーム。この形式になぞらえ、月の残業時間をチーム単位で予測し、その時間に近かったチームに懇親会などの費用補助を出す仕組みとした。参加は任意だが、ほとんどのチームが参加。結果、残業時間の全社平均値は下がり、チームのコミュニケーション活性化にもプラスに作用した。意識改革が進んできたため、現在は、月の残業時間が45時間を超えるメンバーがいたら、予測との誤差が少なくても賞金は出さない、と内容を改善しながら継続実施している。
 「予測表や実績は全社で見られるので、他チームの数値を見て、『自分たちも負けていられない』となる。みんな、早く帰る方がかっこいい、というような意識に変わってきたと思います。今、一九時を過ぎたら執務フロアにほとんど人はいません」(宮内さん)

自律した人材をテーマに、リモートワークも導入

 2018年には、「自律した人材」をコンセプトに、リモートワークを導入。これは自律したプロだけが利用できる制度で、利用には上長の承認がいる。人事の方で最低限のルールは定めているが、運用方法も、リモートワークをするかどうかも部署ごとに任せている。もし、「うちのチームはマネジャーの独断でリモートワークをやらない」といった相談が上がってきた場合は、メンバーの方からマネジャーに、なぜやらないのかを聞くように勧める。聞いて納得できないのであれば、「できるように働きかけましょう」とアドバイスする。基本的に、人事や総務からは細かいことはいわず、現場で議論して考えてもらう。これも自律した社員であってほしいとの思いゆえだ。
 リモートワーク導入前には、週1回、社内で完全フリーアドレスを試し、リモートワークを疑似体験。近くにメンバーや上司がいない環境で仕事をすると、どんな問題が起きるのか検証した。出てきた課題に対しては、「だからできない」ではなく、仕事のやり方を改善するきっかけにした。
 「現在、集中したいときはリモートワークにするなど、業務に応じて使い分けているようです。労務管理や成果面での問題は上がっていません」(菊池さん)。中には、「狭い自宅ではリモートワークはしづらい」との声もあるが、そういう人には会社に来てもらえばいい。それぞれがより効率のいい場所で仕事をする。あくまでもリモートワークは選択肢の1つだ。課題といえば、総務がリモートワークをできていないこと。FAQのAIチャットボットも導入しているが、相談は対面でしたいという社員も多い。そこをいかにできるようにするか。今後の課題だ。

リモートオフィスは同社らしくゴルフ施設内に

 2019年3月には、リモートオフィスを杉田ゴルフ場内のレストランの一角に設置。15人ほど収容可能で、個人でもチームでも利用できる。リモートオフィスは増やしていく方針だが、「GDOらしく、ゴルフが身近にあって、刺激を受けながら仕事ができるような場所に、ゴルフ関係の施設に作りたい。そこは譲れないところです」(宮内さん)。ちなみにリモートオフィスの名前「Tee House Sugita」は、社内公募で決めた。「また、リモートオフィスの利用レポを社内掲示板にアップしてくれた社員にはランチ補助を出すなど、利用促進の仕掛けもしています」(菊池さん)。

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 このように、「オネストジョン」だけでなく、さまざまな施策を継続してきたことが、第4回ホワイト企業アワード最優秀賞の受賞につながった。社員からは、「柔軟性の高い働き方ができ、働きやすい」との声が多く、特にパパママ社員から好評だ。
 今後はさらに、非連続ワーク(中抜けできる働き方)の導入や、リモートワークの活性化(できる場所の拡大)などを検討中。これからもGDOらしく、楽しみながら、人生を豊かにする、新しい働き方の創出を目指していく。


【会社DATA】
株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)
本社:東京都品川区東五反田2-10-2 東五反田スクエア8階
設立:2000年5月1日
代表者:代表取締役社長 石坂信也
資本金:14億5,800万円(2017年12月末現在)
従業員数:1,046人(連結/2018年12月末現在) ※臨時従業員数含む
https://company.golfdigest.co.jp/


 

『月刊総務』本誌記事:

総務パーソンが押さえておきたい9月のトピックス

2019-08-26 10:52

■法務

執筆/小沢・秋山法律事務所 弁護士 香月裕爾


●企業における法務部門の機能と役割

 従来、法務部門は法的リスクの未然防止や紛争発生時等有事の危機対応といった「守り」の機能が強調されていたように思えます。ところが、経済産業省が2018年4月に公表した「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会報告書」において、法務部門には「ガーディアン機能(守り)」と「パートナー機能(攻め)」があり、わが国の企業が国際競争力を上げるためには、この2つの機能が十分に発揮されることが重要であるとされました。
 ガーディアン機能は「最後の砦とりでとして企業の良心となること」「コンプライアンス・ルールの策定と業務プロセスの構築徹底」「契約による自社リスクのコントロール」「損害を最小限に抑えるための行動」から構成されるものです。
 パートナー機能も四要素から構成され、第一が「戦略法務」と呼ばれる「ビジネスの視点に基づいたアドバイスと提案」。法令の観点のみならずビジネスジャッジに対する提案等が想定できます。第二に「ファシリテーターとしての行動」。新規プロジェクト等の必要な場面でスケジュールを把握し、社内外のリソースを確保・差配する役割などです。第三に「ビジョンとロジックを携えた行動」。「グレーゾーン」でのチャレンジに向けた行政機関が設ける各種制度の活用等が想定できます。第四に「法令、契約に基づいた正当な主張」。カルテルの被害者としての損害賠償請求訴訟の提起などが想定できます。

■労務

執筆/斉藤社労士事務所 特定社労士 斉藤貴久


●賃金と年休の時効見直し

 2019年7月1日、厚生労働省は「賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する検討会」が取りまとめた「論点の整理」を公表しました。
 報告書では、賃金等請求権の消滅時効の期間を「将来にわたり消滅時効期間を2年のまま維持する合理性は乏しく、労働者の権利を拡充する方向で一定の見直しが必要ではないか」とする一方、労使の意見の溝が大きく、引き続き検討が必要と述べられています。消滅時効の期間が長くなれば、現行3年の賃金台帳の保存義務についても労働基準法が改正されることでしょう。
 また、年次有給休暇について取得率の向上という現行の政策からすると「必ずしも賃金等請求権と同様の取扱いを行う必要性がない」とされ、現行2年の消滅時効の期間が維持される可能性が高くなっています。


●個別労働紛争解決制度の施行状況

 厚生労働省は、2018年度の「個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表しました。これによると、相談件数は11年連続で100万件を超え、高止まりの状況です。民事上の個別労働紛争の相談件数、助言・指導の申し出件数、あっせんの申請件数のすべてで、「いじめ・嫌がらせ」が過去最高件数になっています。
 また、法改正で新たに定義されたパワーハラスメントも、個別労働紛争解決制度の枠組みで取り扱われることになるため注意が必要です。

■税務

執筆/税理士法人AKJパートナーズ


●決算賞与の損金算入時期

 従業員に決算賞与を支給する場合において、その決算の事業年度で未払いの賞与をその事業年度の損金とするためには、以下の要件のすべてを満たす必要があります。
(1)その事業年度中に賞与の金額を各人別に、かつ同時期に支給を受ける全従業員に通知する。
(2)通知をした金額を、通知した全従業員に対して、通知をした日の属する事業年度終了の日の翌日から一か月以内に支払う。
(3)その通知をした事業年度に損金経理する。
 ただし、給与規程などに「支給日に在職する者のみに賞与を支給する」旨の定めがある場合は、(1)の要件を満たすことができず、未払いの賞与はその事業年度の損金とならないため、事前に給与規程などの確認をすることが必要です。

●役員退職金の損金算入時期

 役員退職金の損金算入時期は、原則、株主総会の決議等で退職金の額が具体的に確定した日の属する事業年度です。ただし、退職金を実際に支払った事業年度に経費計上した場合、支払った事業年度の損金とすることも認められます。
 なお、退職金の額が具体的に確定する事業年度より前の事業年度において取締役会で内定した金額を未払金計上した場合であっても、未払金計上した事業年度の損金とはならず、原則通り退職金の額が具体的に確定した日の属する事業年度の損金となりますので注意が必要です。

『月刊総務』2019年9月号P7より転載

 

『月刊総務』本誌記事:

【総務部門】9月の業務ポイントと行事

2019-08-23 10:23

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◆9月の業務ポイント

▼秋の防火・防災訓練の実施
▼秋の交通安全指導
▼安全運転研修の実施
▼秋の慰安行事の計画・実施
▼秋季健康診断の実施
▼制服の衣替えの準備
▼内定者教育資料の準備
▼定期人事異動の発表
▼異動に伴うあいさつ状や名刺などの発注
▼中堅社員教育の実施
▼新任管理者研修の実施
▼各種資格取得の奨励
▼項目別経費の見直し
▼社内報の編集と発行


◆9月の月間&週間行事

▼9月1日-30日
・オゾン層保護対策推進月間(環境省)
・全国労働衛生週間準備期間(中央労働災害防止協会)
・食生活改善普及運動(厚生労働省)
▼9月10日-9月16日
・自殺予防週間(厚生労働省)
▼9月21日-9月30日
・秋の全国交通安全運動(内閣府・国土交通省)
▼9月24日-9月30日
・結核予防週間 (厚生労働省・結核予防会)
 

◆世界旅行気分

▼キルギス共和国(Kyrgyz Republic)
kyrgyz.jpg 中央アジアに位置する旧ソビエト連邦の共和制国家。内陸国でカザフスタン、中国、タジキスタン、ウズベキスタンと国境を接している。元々は遊牧民族であり、山岳地帯が多く、自然がとても美しいことから「中央アジアのスイス」と呼ばれる国だ。日本ではあまりなじみのない国かもしれないが、実はキルギス人は、顔がとても日本人に似ている。そのためキルギスでは「大昔、キルギス人と日本人は兄弟で、肉が好きな者はキルギス人になり、魚を好きな者は東に渡って日本人になった」という伝説があるのだ。第二次世界大戦後、多くの抑留者がソ連からキルギスに連れられ働かされたのだが、そこで日本人は「誠実で働き者」という好印象もあったらしい。そんなワケでキルギスはなかなかの親日国なのだ。


【DATA】(外務省HPより)
●人口:610万人(2018年)
●面積:19万8,500 km2(日本の約半分)
●首都:ビシュケク
●言語:キルギス語が国語 (ロシア語は公用語)


『月刊総務』2019年9月号P6より転載

 

『月刊総務』本誌記事:

【総務の現場から】若手社員の早期離職を未然に防ぐ、中立的な「キャリア相談室」を設置

2019-08-15 15:15

キャリアパスを描けない若手の離職問題がきっかけ

 常駐技術支援事業を中心に、エンジニアのためのオリジナルプロダクト開発も手掛けている同社。社員の9割がエンジニアで、8割が顧客先に常駐。「エンジニアとお客様を笑顔にする」とのビジョンを掲げているが、これは、最前線にいるエンジニアがハッピーにならない限り、お客さまをハッピーにすることもできないとの思いから。また、人材不足が深刻なIT業界。同社も例外ではなく、新卒も含めた、20代の未経験者採用も積極的に進める中で、社員の教育、キャリア開発支援にはとても力を入れていた。「しかし、若手社員に話を聞くと、明確なキャリアパスを描けない人が多く、それが早期離職につながっていた。それを未然に防ぎたいというのが、キャリア相談室立ち上げのきっかけでした」と、組織能力開発部 キャリア相談室 セクションリーダー 国家資格キャリアコンサルタントの池田幸恵さんは話す。一方、管理職は自身もエンジニアの仕事をしながら部下の管理をしなければならず、キャリアなどの深いところまで話せるような信頼関係を築くには時間が足りなかった。そのサポートのためにも、2018年、「キャリア相談室」を設置することとなった。
 立ち上げに当たっては、キャリア開発の先進的企業にヒアリング。そこで得た学びから、安心して相談してもらうには人事部門から切り離した方がいい。査定も評価もしない、あくまでも中立的な組織にすることとした。また、設置しても面談者が来ず、なかなか機能しないと聞き、20代社員のキャリア面談を必須に。入社1年未満の社員は、入社3か月、6か月、1年後の年3回の面談を受けることを必須とした。今年からは、対象年齢を35歳まで拡大している。

査定も評価もしないから、本音で話せるキャリア面談

 キャリア面談は、1人約1時間。国家資格キャリアコンサルタントを持つカウンセラーが話を聞く。現在、キャリア相談室は、前任者から引き継いだ池田さん1人。常駐先との面談はスカイプや現場に出向いても行っているが、「面談のために」と、本社に戻ってきてもらう、いいきっかけにもなっている。「面談で大切なのは、中立的立場を貫くこと。『そうなんだね』と伝え返すことで本人の言葉を引き出し、答えの誘導は極力しない。初対面の人には、まずは自分がどういう人間なのかを話をして、信頼関係を作っていく。「『本当に聞いてくれている』と思うと、少しずつ話してくれるようになります。それと、言葉に愛がないと伝わらないのでそこは大切にしています」。面談の内容は絶対に他者には話さない。ただし、状況によっては、「この内容だけは会社側に伝えてもいいですか?」と、一語一句、本人に了承を得てから伝えている。また、面談内容は文字に起こして、本人にフィードバック。「この言語化がとても大事。なんとなくモヤモヤしていたことが文字を読むことで、『ああ、自分はこう考えていたんだな』とわかってきます」。

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9割以上が面談に満足。離職リスクを未然に防止

 初年度は、20代81人の面談を実施。26人の離職リスクを防ぐことができた。ある若手社員は、このままではキャリアが頭打ちなので転職をしたいと話していたが、本人の了承の下で事業部とも話をし、「この会社でもやっていける」という考え方に変えることができた。また、ある人はジョブローテーションを実行することで離職せずに済んだ。面談後のアンケートでは、95パーセントの人が、面談に満足し、気持ちが前向きに変化したとコメントしている。一度、利用価値を感じてもらえれば次につながる。最近では、自発的に面談に来る人も増えた。「1年やってきて定着してきたのかな、と感じています」。こうした成果が評価され、第4回ホワイト企業アワードの人材育成部門を受賞している。
 ほか、キャリア相談室の取り組みとしては、20代社員を対象にしたキャリアデザイン研修を実施。強み診断ツール(ストレングスファインダー(R))を使って、グループワークでそれぞれの強み、弱みを整理。その強みを、いかに仕事に、キャリアに生かすか。行動計画を立てられる場になっている。これも今年からは、対象年齢を35歳までに引き上げた。

管理職と部下の対人関係の質を向上させる研修も好評

 一方、管理職向けの部下育成支援施策としては、部下との対人関係の質を向上させるための研修を実施。研修に当たっては、全社員に管理職の日頃の振る舞いについてのアンケートを取った。そのリアルな声を示すことで、コミュニケーションの課題に気付いていなかった管理職の意識改革を促した。研修後は、部下との関係性構築における行動が改善。約80パーセントの社員が、上司に相談しやすい環境に変わってきたと実感している。今後は、さらにコーチングなどの研修を取り入れて、一層部下が安心して相談できる関係性構築を目指していく。
 キャリア相談で得られた社員の声は経営にとっても貴重なもの。守秘義務は担保しながらも、それをいかに全社施策に反映していくかが今後の課題。「私自身の課題としては、コーチングなどを学んで、相談者の満足度が向上するような引き出しを、強みを増やしていきたい。面談後のアンケートでは、正直、グサッとくる意見もあります。でも、それがあるから私も成長できる。また、中立の立場にいることで経営の視点も現場の視点も持てる。考え方が広がる。そこがまたおもしろいところです」。
 今後、管理職のスキルが上がり、1on1でキャリアの相談もできるようになっていけば、相談室の利用は減っていくだろう。「とはいえ、いつでも駆け込める場があるという安心感は大事。キャリア相談室は、みんなの駆け込み寺であり続けたいと思います」。

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【会社DATA】
株式会社エーピーコミュニケーションズ
本社:東京都千代田区鍛冶町2-9-12 神田徳力ビル3F
設立:1995年11月16日
代表者:代表取締役社長 内田武志
資本金:9,250万円
従業員数:376人(2019年4月現在)
https://www.ap-com.co.jp/


 

『月刊総務』本誌記事:

総務パーソンが押さえておきたい8月のトピックス

2019-07-26 10:12

■法務

執筆/小沢・秋山法律事務所 弁護士 香月裕爾


●特許法の改正

 2019年5月10日、特許法等の一部を改正する法律が国会で可決・成立し、5月17日公布されました。特許法においては、特許権の侵害を受けた側の立証や侵害の抑止が困難である現状を受け、査証制度の導入、損害賠償額算定方法が見直されました。
 査証とは、特許権の侵害の可能性がある場合、中立な技術専門家が被疑侵害者の工場等に立ち入り調査を行い、裁判所に報告書を提出する制度です。これにより、被侵害者が裁判所を利用して容易に証拠の収集ができるようになります。
 損害賠償額算定方法の見直しは、(1)侵害者が得た利益のうち、特許権者の生産能力等を超えるとして賠償が否定されていた部分を、侵害者にライセンスしたとみなし、損害賠償を請求できること、(2)ライセンス料相当額による損害賠償額の算定に当たり、特許権侵害を前提として交渉した場合に決まるであろう額を考慮できる旨が規定されました。なお、改正は実用新案法、意匠法・商標法にも及び、損害賠償額算定方法の見直しは、これらも同様の改正となります。
 また、意匠法は、保護対象が拡大され、物品に記録・表示されていない画像や建築物の外観・内装のデザインが新たに意匠法の保護対象とされました。関連意匠制度の見直しがなされ、意匠権の存続期間が出願日から20年から25年に伸長された上、登録出願手続きが簡化され、間接侵害規定が拡充されています。


■労務

執筆/斉藤社労士事務所 特定社労士 斉藤貴久


●法改正(1)女性活躍推進法

 2019年5月29日、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律案」が成立し、5つの関連法が改正されました。まず注意すべきは、女性活躍推進法における「一般事業主行動計画」の策定義務の対象が拡大されたことです。従業員数300人超の会社は、「自社の女性の活躍に関する現状分析」「課題解決のための行動計画の策定・届出」「情報の公表」の義務がありますが、法改正により、従業員数100人超に引き下げられました。
 なお、施行日は公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日とされています。

●法改正(2)パワハラ防止法

 労働施策総合推進法が改正され、パワーハラスメント防止に関する会社の義務が定められました。パワハラについては、グレーな部分が多くその定義が注目されていました。改正法は「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されること」と規定し、会社に相談体制の整備等を求めています。悪質な場合には、企業名を公表することも規定されています。
 なお、施行日は公布の日から起算して1年(中小企業は3年)を超えない範囲内において政令で定める日とされています。

■税務

執筆/税理士法人AKJパートナーズ


●消費税の軽減税率の対象とならない外食

 消費税の軽減税率制度において、外食は標準税率が適用されます。ここでいう外食とは「テーブル・椅子・カウンターなどの飲食設備がある場所で、飲食料品を飲食させる役務の提供」であり、レストランやフードコートでの飲食を指します。飲食設備があるコンビニエンスストアなどは、利用者に飲食設備利用の意思確認を行い、利用する場合には標準税率が適用されます。
 なお飲食設備とは、「飲食に用いられる設備」と定義され、飲食のための専用設備である必要はなく、店舗の外に設置してあるベンチも、飲食に用いられていれば飲食設備に該当します。

●役員退職金の計算方法

 役員退職金は、一般的に功績倍率法による計算方法「最終報酬月額×役員在任年数×功績倍率」が広く用いられています。不相当に高額でなければ、法人税法上、損金算入が認められます。功績倍率は、役員の会社に対する貢献度等を反映した倍率であり、役職により2倍から3倍が一般的な水準とされています。役員退職金を支払う際は、事前に役員退職金規程を整備し、適正な功績倍率を決めておくことも重要です。
 ただし、役員就任期間が著しく短いケースなどにおいては、功績倍率法を適用しても税務上否認されるケースもあります。役員退職金は多額となるケースも多く、判断に迷った場合には税理士などの専門家に相談することが大切です。

『月刊総務』2019年8月号P7より転載

 

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