月刊総務プラス

『月刊総務』本誌記事:

【総務の現場から】
社員が安心して長く働けるよう育休や妊活支援など人事制度を拡充

2017-03-13 10:18

働けなくなるリスクを会社がサポートする制度

 「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」をミッションに、日本から、アメリカ、イギリスに進出し、急成長を遂げている同社。2016年の2月、創業3周年を迎えるにあたって、新人事制度「merci box(メルシーボックス)」を発表。産休・育休中の給与を保障するなど、その充実ぶりに注目が集まった。そもそも、こうした制度を策定したきっかけは何だったのだろう。「社員がよりGo Boldに働ける環境を作っていこうとの考えから生まれました。『Go Bold(大胆にやろう)』とは、メルカリのバリューの一つ。何かあるたびに、『それって本当にGo Bold?』といった会話がなされるほど、社内で重視され、浸透しているバリューです。では、社員数もどんどん増えてくる中、社員に一層大胆に、思いっきり働いてもらうためには会社は何ができるだろう、と。社員が働けなくなるリスクをリストアップし、それを会社ができるだけ支援できる体制を作っていこう、と考えたのがこのメルシーボックスです」と話すのはコーポレートプランニンググループの山下真智子さん。社員の平均年齢が30歳前後。結婚や出産といったライフイベントを迎えるメンバーが増えてきた時期だった。
 

妊活や病児保育費支援など必要に応じて制度を追加

 もともと同社の福利厚生には、何かを上乗せするより、働く上でのリスクをサポートしたいとの考えがある。たとえば、メルシーボックスの制度でいえば、育児や介護休暇の有償化。また、病気やけがで仕事ができない期間、経済面でも安心して治療に専念できるような支援を整えている。「働けないリスクは会社がサポートする。その分、メルカリという会社で安心して、長く働いてほしいとの思いがあります」。制度策定にかけた期間は1か月ほど。決裁用の資料などは必要がなく、何事もスピード感をもって進んでいくところが同社らしい。「時間をかけたのはネーミングでした。メルシーは、メルカリとつづりが近く、感謝を表す言葉。また、弊社のロゴは箱の形。これから先、その時その時に必要な制度を追加し、箱に詰め込んでいきたいとの思いを込めて、メルシーボックスとしました」。メルシーボックスは、2016年7月に早くも第2弾を発表。病児保育費の支援、妊活の支援などが追加された。「第3弾も検討中です。今後、ますます社員数も、ライフイベントを迎える社員も増えていく。今はまだ少ない、親の介護などの部分も検討しています」。
 

男性の育休取得率が向上 中途入社者の安心材料にも

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 導入から1年。特に男性の育休取得が進み、執行役員2人をはじめ、該当社員のほとんどが取得した。また社外からの反応も大きかった。「入社にあたって家族の不安を拭う材料になった、といっていただくことは多いですね」。メルシーボックスは、その名とともに確実に浸透している。
 
 現在、コーポレートプランニンググループは14人体制。総務、経理、労務、税務とチームは分かれているが、担当にかかわらず、制度や施策は、興味のあるメンバーが案を出して作っていく。「大切にしているのは、会社のフェーズに合った制度を取り入れること。そして、考えたらまずやってみる。効果がなければやめます」。
 
 たとえば、メルシーボックスの制度を検討する中で、保育園を作る案も挙がったが、まだそこまで子供の数はいない、それより病児保育費の支援がいいだろうとの話になった。また以前、朝の勤務を推奨するために、フルーツを出す施策があった。アメリカとのコミュニケーションを増やすため、日本が朝早く来る方が時間を合わせやすいとの考えだった。「しかし、フルーツのために来るという人はあまり増えず、その後、イギリスにも進出。必ずしもアメリカの時間帯に合わせればいいというものではなくなり、廃止にしました」。
 

長く働いてもらうため、プロであるための副業推奨

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 副業推奨も、同社では創業当時からやってきたこと。「もともと副業で入社してきた人もいますし、優秀な社員に、長く働いてもらうための制度の一つです」。書籍執筆、イベント登壇、サイト運営など、内容は問わず、管理もしない。講演料なども会社ではなく個人に入る。ただ、人事なら人事のプロとして講演をすることでスキルが上がる。自社の仕事に生かせる。副業推奨は、同社のバリューの一つ、「Be Professional(プロフェッショナルであれ)」を体現しているものでもあるのだ。
 
 「攻める総務としては、働きやすい環境作りをハードとソフトの両面から推進していくことがミッション。ハードでは、東京オフィスの増床の準備をしているところ。人数が増えてもよりコミュニケーションが生まれるオフィス作りを進めています」。現在も、東京オフィスには仕切りがなく、多様なフリースペースが設けられ、他部署のメンバーとも偶発的なコミュニケーションが生まれる作りになっている。立ち話から新しい機能のアイデアや施策が生まれることも多くある。「ソフトでいえば、既存の制度や仕組みが本当に必要なのかを常に考えています。たとえば、パソコンは2年ごとに交換できるルールでした。しかし、なぜ2年なのか。実際には1年で壊れる人もいれば、一年後に新しい製品が出る場合もある。それなのにルールに縛られていた。いつでも交換できるように変えました」。また、備品管理のために、ケーブルなどにも一つひとつラベルを貼っていたが、その作業時間を減らしたいと、そもそも備品管理が必要かを見直し。パソコンとスマートフォン以外は基本的に管理しないことにした。そうした新しい制度は、社内コミュニケーションのチャットツールですぐに発表する。話が早い。「これからも、これって本当に必要?と、本質的なところから業務の中で考え、どんどん改善していきます」。
 
※『月刊総務』2017年4月号P44-45より
 

【会社DATA】

株式会社メルカリ
本社:東京都港区六本木6-10-1六本木ヒルズ森タワー18F
設立:2013年2月1日
代表者:代表取締役社長 山田進太郎
資本金:125億5,020万円(資本準備金含む)
従業員数:約400人(グローバル合計・2017年1月現在)

 

『月刊総務』本誌記事:

総務パーソンが押さえておきたい4月のトピックス

2017-03-10 10:42

■法務

執筆/小沢・秋山法律事務所 弁護士 香月裕爾

●銀行法改正によるフィンテック環境の整備

 最近急速に普及しつつあるフィンテックサービスに、金融機関の口座情報やクレジットカードの利用履歴をまとめて管理できる家計簿アプリがあります。実はこのサービス、フィンテック企業は金融機関と契約を締結しておらず、企業が顧客からIDとパスワードを預かり、顧客の代理で口座情報を照会しています。そのため、悪質な業者が顧客に成り済まして不正を働く恐れがあるといわれています。
 そこで金融庁は、銀行法改正で金融機関とフィンテック企業が契約を締結する登録制の導入をもくろみました。新制度の概要は、顧客の利便性と安全を確保しつつ、幅広いフィンテック企業が金融機関のシステムに接続できるようにプログラムを提供することと、同庁が金融機関とフィンテック企業の接続にかかわる基準を作成・公表し、金融機関と同企業の契約締結を促すものです。金融機関は次の義務を負います。
(1)オープン・イノベーションの取り組みに参加予定の金融機関は、一定期間内にオープンAPIに対応できる体制の整備に努める必要がある。
(2)金融機関は、小規模事業者等の接続を合理的理由なく拒否しないよう、契約締結の可否にかかわる判断の基準を策定・公表し、当該基準を満たす業者とは、原則として契約を締結する。
(3)金融機関は、オープンAPIの導入に関する方針、および業者との間で締結する契約において顧客に生じた損失の分担を定め公表する。
 

■労務

執筆/斉藤社労士事務所 特定社労士 斉藤貴久

●労働時間の適正把握に関するガイドライン

 厚生労働省は、昨年の「過労死等ゼロ」緊急対策に基づき、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」を公表しました。従来の「労働時間の適正把握基準」を拡充する形で再構成されたものです。この中で、始業終業時刻を確認・記録する方法の例として、これまでのタイムカード、ICカードに加えて「パソコンの使用時間の記録」が追加されています。また、「休憩や自主的な研修、教育訓練、学習等」の理由により、従業員が労働時間に該当しない旨を自己申告した場合でも、これらが会社の指示による場合には、労働時間として扱うことが確認されています。
 

●違法な長時間労働等に関する企業名公表

 厚生労働省は1月20日、違法な長時間労働等が認められる企業の経営トップに対する直接指導や企業名を公表する際の基準を見直す通達を出しました(基発0120第1号)。これにより、2015年5月に出された基発0518第1号は廃止されました。新たな基準では、「(1)労働基準監督署長による企業の経営幹部に対する指導、(2)労働局長による企業の経営トップに対する指導および企業名の公表」という二階層の直接指導が予定されています。したがって、書類送検まで至らないケースであっても企業名が公表される可能性が高まったと見ることもできますので、注意が必要です。
 

■税務

執筆/税理士法人AKJパートナーズ

●改正された法人税率の適用

 2016年度に法人税率が改正され、2016年4月1日以後に開始する事業年度より、法人税率は23.9%から23.4%への改正が決定しています。
 これにより外形標準課税適用法人に係る実効税率(標準税率ベース)は32.11%から29.97%となり20%台に引き下がります。2018年度には、法人税率はさらに23.2%に引き下げられる予定ですので、実効税率は29.74%となります。
 法人税率は、2015年度の改正で25.5%から23.9%に改正されたばかりです。2016年度改正当時の閣議決定では「成長志向の法人税改革」を掲げており、設備投資や賃上げなどによる「経済の好循環」が期待されています。

 

●マイナポータルとe-Taxの連携

 国税庁はマイナポータルの「もっとつながる」の機能を利用して、マイナポータルとe-Taxをつなげることができるようにしました。
 マイナポータルでは、子育てに関する行政手続きのワンストップ化や、公金決済サービスが可能となるなど、さまざまなサービスの提供を予定しています。マイナポータルとe-Taxの連携により、利用者識別番号と暗証番号を入力することなくメッセージボックスの情報確認や、納税証明書・源泉所得税・法定調書等に関する手続きが可能になります。
 
『月刊総務』2017年4月号P7より転載

 

『月刊総務』本誌記事:

【総務部門】4月の業務ポイントと行事

2017-03-09 10:54

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◆4月の業務ポイント

▼ 入社式
▼ 新入社員の社内研修および配属の実施
▼ 新入社員オリエンテーションの実施
▼ 新入社員歓迎会の実施
▼ 社会保険、労働保険の資格取得・喪失の手続き
▼ 新年度経営方針の発表
▼ 組織の改正と発表
▼ 役職者の任命式
▼ 次年度新卒者への会社説明会の準備と実施
▼ 定時株主総会、決算役員会の準備
▼ 創立記念日・永年勤続者表彰式の準備と実施
▼ メーデーの準備と対策の検討
▼ 各種レク活動費の割り当て
▼ 春季社員旅行の準備と実施
▼ 春季健康診断の実施
▼ 春季防火対策の検討・実施
▼ 社内報の編集と発行


◆4月の月間&週刊行事

▼ 4月6日-15日
・春の全国交通安全運動(警察庁)
▼ 4月6日-12日
・春の新聞週間(日本新聞協会販売委員会)
▼ 4月16日-5月5日
・全国海難防止強調運動(海上保安庁)
▼ 4月21日-27日
・民放週間(民放連)
 

◆世界旅気分!

▼インドネシア共和国(Republic of Indonesia)
indonesia.png  東南アジア南部に位置する共和制国家。国土は東西に非常に長く、世界最多の島しょを抱える国だ。赤道にまたがるので、通年で25-35度くらいの蒸し暑い気候。多民族国家のため、言語が500以上存在するという。また、世界最大のイスラム教国であり、そして世界でもトップクラスの親日国。最近では訪日するインドネシア人が急増中、日本でもハラルフードが注目度急上昇! 逆に日本人からすると、インドネシアはバリ島をはじめリゾート地として超おなじみ。食べ物でも、ナシゴレンなどはエスニック料理の代表格だ。国家間の関係としても、輸出入ともに依存し合っている両国。日本から進出している企業も多い。リゾート地とデヴィ夫人だけじゃない、実は深ーい関係のインドネシアと日本なのだ。
 

【DATA】(外務省HPより)
●人口:2億5,500万人(2015年)
●面積:189万km2(日本の約5倍)
●首都:ジャカルタ
●言語:インドネシア

 
『月刊総務』2017年4月号P6より転載

 

『月刊総務』本誌記事:

【総務の現場から】
多様な価値観の社員の声に応えた 選べる勤務制度と進化系オフィス

2017-02-10 10:32

4つの勤務形態から選べる「フルサポート勤務制度」

 同社が2016年10月に導入した「フルサポート勤務制度」は、妊娠中、育児中、介護者といった対象社員が、(1)週4日勤務、(2)週6日勤務、(3)Fワーク勤務(在宅勤務)、(4)フレックスタイム制の4つの勤務形態から自由に選択できるもの。(1)と(2)は、一週間の労働時間は通常と同じまま。勤務日数によって、一日の勤務時間が少し長くなったり短くなったりするのが特徴的だ。こうした制度の導入は時代の要請もあったが、身近な社員の声がきっかけだったという。
 
 「新卒採用担当の若い女性社員が、子育て中の先輩社員が、毎日慌てて帰るようすを見ていて、自分も含めて、新卒社員が、5年後、10年後、ここで長く働き続けたいと思うだろうか、と。いや、思わないよね、というのが発想の原点でした」と同社コーポレート管理本部 総務部 部長代理の枝松茂幸さんは説明する。さっそく法定を超えて、育休期間を最大2年まで延長し、看護休暇と介護休暇を有給化。さらにわずか6か月間でこの「フルサポート勤務制度」を作り上げた。その際、他社の事例も聞いてみたが、もっとも参考になったのはやはり社員の声だった。「私も子育て中なのでわかるのですが、育児中の社員といっても多種多様。生活パターンも、キャリア形成の考え方も違います。であれば会社はいろいろな選択肢を提供して、本人がベストなものを選択できるようにしよう、とこの制度を作りました。これが最終形ではなく、随時、社員の声に合わせて変えていく制度を目標としています」。
 

週4日勤務にして生産性が上がる効果も

 現在、対象者40パーセント以上が利用中。多いのはフレックスタイム、週4日勤務だ。「通常、週休3日となれば給与は減るものですが、この制度では変わりません。そこが画期的なところです」と話すのは同社取締役の土屋麻美さん。育児や介護といった事情を抱えているときに給与が変わらないのはうれしい。また、以前はよく残業をしていた人が週4日勤務に変えたところ、帰る時間は変わらなかった。つまり残業がほとんどなくなった。「それでもアウトプットは変わっていません。結果的に生産性は上がっています」(土屋さん)。「そうしたことがわかったのもよかった。今後、データが取れて、経営の理解が得られれば、労働時間を減らす、一日八時間、週四日勤務で成果を出す、というのを目指していけたらとも考えています」(枝松さん)。
 

社員を巻き込みながら進化し続ける新オフィス

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 2016年11月に移転した新オフィスも、人事制度と同じく、多様性がコンセプトだ。「どういうオフィスがいいの?と聞くと、みんないうことがバラバラ。ですから、多種多様な働き方に合わせて選べるよう、集中できる作業デスク、プロジェクトごとに自在に変更可能なブース、社員の交流が生まれるようなコラボレーションゾーンなどのコンセプトエリアを作りました。これも作ったら終わりではなく、社員の声に合わせて進化し続けるオフィスをテーマにしています」(土屋さん)。
 
 社員の椅子は、三つの候補から各自に選んでもらい、名刺を付けてセッティング。自分の椅子となれば大事に使う。そうやって愛されるオフィスにしていきたい。それがもう一つのテーマだ。「コラボレーションゾーンは、総務が管理をしているのですが、総務だけで社員が求めているものを考えていてもアイデアは尽きてしまう。そこで、管理職も職種も関係なしに無作為に選出したメンバーによる“コラボ隊”を結成。彼らにアイデアを出してもらっています」(土屋さん)。メンバーには、みんなで話し合う機会を増やしてもらえたらと、カフェのチケットをプレゼント。第一期コラボ隊からは、アプリと照明を組み合わせて、会話が盛り上がったときにはライトが暖色系に、逆に気分が下がると寒色系の色になるといった遊び心のある演出が考えられた。「基本、『こうしたい』と申請すれば予算は出ます。やらされ感が起きるのを心配していましたが、おもしろがってくれているようです」(土屋さん)。自分たちがかかわったオフィスとなれば愛するようになる。コラボ隊は、四半期ごとにメンバーを一新。移転前、参考のために訪れた企業の総務担当者が「愛されるオフィス作りは社員を巻き込むこと」と口をそろえていっていた。それをまさに実践している。
 

「社員が主役」との思いで喜ばれる制度をこれからも

 新しい勤務制度を導入して約3か月。心配したような混乱は起こらなかった。「スケジュール管理ソフトで、予定表はみんなに見える形になっていますし、何より周りの人が協力的です」(土屋さん)。そもそも育児中の社員に理解のある社風。「男性が育休なんて」という時代から、1年間の育休を取った男性社員や、年度初めに3か月間休んだ管理職もいた。フルサポート制度も「ついにここまできたか!」と歓迎するような形で受け入れられたという。勤務時間でいえば、全社員が対象の、最大朝7時までの「繰り上げ出勤制度」もある。このように、さまざまな時間帯に働く社員が増えているが、「元々、営業は外に出ていたり、運用はデータセンターにいたりと、みんながずっとオフィスにいるわけではない。コミュニケーションエラーは発生していません」(枝松さん)。
 
 ややもすると制度は人事の独り善がりなものとなってしまいがちだが、同社が事業拡大に向けて人を増やしていくためには、より企業の魅力を打ち出していく必要があった。そうした中で生まれた「社員が主役」との考え方が浸透。「社員目線で考えて、使える制度を作る。だからうまくいっているのだと思います」(土屋さん)。「制度作りは10出して1つ通ればいいくらいの気持ちで、新しいことを仕掛けているのだ、との思いでやっています。たいへんでも苦ではありません」(枝松さん)。
 
※『月刊総務』2017年3月号P44-45より転載
 

【会社DATA】

株式会社IDCフロンティア
本社:東京都千代田区紀尾井町1-3東京ガーデンテラス紀尾井町 紀尾井タワー
設立:2009年2月
代表者:代表取締役社長 石田誠司
株主資本:75億1200万円(2016年3月末時点)

 

『月刊総務』本誌記事:

総務パーソンが押さえておきたい3月のトピックス

2017-02-09 11:20

■法務

執筆/小沢・秋山法律事務所 弁護士 香月裕爾

●事業実体のない会社への信用保証の有効性

 昨年12月19日、最高裁より、銀行の中小企業に対する融資後、その企業が事業実体のない会社であると判明したX県信用保証協会による信用保証契約が有効との判決が出されました。
 本件は2009年1月、Y銀行がA社に対し、5,000万円の融資を実行し、当該融資を主債務としてX県信用保証協会が保証。A社は翌年に破産手続き開始の申し立てをしたため、Y銀行がX県信用保証協会から4,900万円余りの代位弁済を受けました。ところが、A社は融資前に他社に事業譲渡をしており、融資時に事業実体がなかったと判明したのです。そこでX県信用保証協会が原告となり、Y銀行を被告として、前記代位弁済に係る金額につき、不当利得返還請求訴訟を提起しました。
 争点は、保証協会と銀行との間の保証契約が錯誤によって無効か否かです。第一審と控訴審では、保証協会の錯誤を認め、不当利得返還請求を認容しましたが、最高裁はこの判断を覆し、保証協会の請求を棄却しました。その理由は、法的には係る錯誤は動機の錯誤であり、動機が表示され契約内容となった場合に無効とされるところ、本件では実体なき会社の保証をしないとの契約内容ではないとしました。このような場合、一律に保証契約を無効とすれば、金融機関が中小企業への融資を躊躇(ちゅうちょ)することになり、中小企業の信用力補完という信用保証協会の目的に反する事態になりかねない点が問題です。
 

■労務

執筆/斉藤社労士事務所 特定社労士 斉藤貴久

●2歳までの育児休業延長

 労働政策審議会が、育児・介護休業法の改正に関する建議を行いました。現行法では、原則として子が1歳に達するまでの育児休業期間について、保育所に入れない場合などの理由があるときに、1歳6か月まで延長することができます。建議では、この育児休業期間の延長を2歳までに改めるとしています。
 保育園の増設で解決すべき待機児童の問題が、育児休業期間の延長という形で現れたことには批判もあり、改正育児・介護休業法が本年1月1日から施行されたことも考えると、この混乱の影響は小さくはないといえそうです。厚生労働省では、この建議を踏まえて国会への法案提出に向け準備を進めていくようです。
 

●同一労働同一賃金ガイドライン案

 昨年12月20日の働き方改革実現会議の第5回会合で、「同一労働同一賃金ガイドライン案」が提示されました。
 正社員と非正規労働者の不合理な待遇格差の解消を目的として策定されたもので、どのような格差が不合理で、または不合理でないかという事例を示しています。すでに、労働契約法やパートタイム労働法では、非正規労働者に対する不合理な差別を禁止しており、本ガイドライン案はこれらを進める一歩というべきものですが、会議の参加者の意見が完全に一致してはおらず、今後紆余曲折することが予想されます。
 

■税務

執筆/税理士法人AKJパートナーズ

●消費税に係る特定仕入の内外判定基準の見直し

 国外事業者から受けた「事業者向け電気通信利用役務の提供( 特定仕入)」に係る消費税の内外判定基準について、国内事業者が国外事務所等で受ける特定仕入のうち、国外で行う資産の譲渡等にのみ要するものは「国外取引」、国外事業者が日本国内に有する恒久的施設で受ける特定仕入のうち、国内で行う資産の譲渡等に要するものは、「国内取引」とされました。本改正は2017年1月1日以後行う特定仕入から適用されます。
 

●加算税制度の見直し

 調査の事前通知以後、その調査による更正、決定を予知する前に行った修正申告について、過少申告加算税が5%(期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は10%)とされ、期限後申告(その修正申告を含む)に基づく無申告加算税については10%(納付税額が50万円超の部分は15%)とされます。また更正予知による期限後申告等を行った場合の無申告加算税・重加算税について、その日の前日から起算して5年前の日までの間に、その期限後申告等に係る税目について更正予知による無申告加算税・重加算税を課されていたときは、それぞれの10%が加算されます。
 上記は法定申告期限が2017年1月1日以後の国税につき適用されます。
 
 
『月刊総務』2017年3月号P7より転載
 
 

 

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