月刊総務プラス

『月刊総務』本誌記事:

【総務の現場から】時間に制約ある働き方を疑似体験!「なりキリンママ・パパ」研修

2019-05-13 11:56

疑似体験で、時間に制約のある働き方への理解を促進

 キリンホールディングス株式会社、キリンビール株式会社、メルシャン株式会社、キリンビバレッジ株式会社では、独自の働き方改革を実践している。同社の人事総務部多様性推進室室長の岩間勇気さんは、「キリンでは、新しい価値の創造に向けて常に新しいチャレンジをし、そこで得た学びを次のチャレンジに生かすという風土を大事にしています。働き方改革もその中の重要な要素として、さまざまな施策に取り組んできました」と話す。そうした中、取り組んだ施策の一つが、キリン独自の「なりキリンママ・パパ」研修だった。
 「なりキリンママ・パパ」は、育児や介護など、時間に制約がある働き方を1か月間体験するシミュレーション研修。本人はもちろん、組織全体で疑似体験することで、多様な働き方や立場への理解が進み、多様な人が活躍できる組織風土を醸成することを目的としている。

研修誕生のきっかけは、営業女性5人チームの提言

kirin01.jpg そもそも、この施策は、2016年、「新世代エンジョイカレッジ」(営業女性活躍推進のための異業種合同プロジェクト)で大賞を受賞した、キリングループの営業女性5人チームの提言から誕生したもの。その背景には、彼女らが抱える問題意識があった。男性は仕事優先で育児は手伝うものという文化や、ワークライフバランスを知らずに過去の成功体験だけで組織運営をしている上司、何より、営業ママのロールモデルが極めて少ないという現実に、「子供を産んだあとも営業部門で活躍し続けられるだろうか」との不安があった。「ならば、自分たちでできるかどうかやってみよう」と、時間に制約のある働き方を体験し、労働生産性をはかる1か月間の実証実験を実施。結果、残業時間51パーセント削減に成功。業績は前年を維持。「ママ営業も活躍できる!」との自信を得た。
 同時に周囲の意識にも変化が表れた。ある組織長は、「なりきりママ」が成長をしていくようすを目の当たりにし、「営業女性の活躍には、リーダーの意識改革がキーとなる。この取り組みは全社でやるべきだ」と人事に訴えた。「実際に営業部門で子育てと両立しながら働いている人はまだ少ない。ですからこうした取り組みでマネジメントする側も事前に準備をしていくことが大切だ、と実感されたのだと思います」。
 このメッセージも踏まえて人事で検討し、トライアル導入がスタート。労働生産性が高まるとともに、相互理解や、チーム対応、連携力といった組織力の向上が見られたことから、有効な施策だと経営側も判断。2018年2月、営業部門やコーポレート部門の約100人を対象に先行実施することになった。

「突発的なお休み」も発生予行演習で組織を強く

kirin02.jpg 研修内容は、育児、親の介護、パートナーの病気、の3つのシチュエーションから選べる形にブラッシュアップ。選んだ状況で起こるだろう制約のある働き方を1か月徹底する。基本NO残業。ただし、パートナーがサポートしてくれる(育児や介護をしてくれる)という設定の「配偶者サポート制度」を利用すれば、時間外労働は可能だ。
 「利用は週に1回というルールでしたが、現実の世界でもパートナーの意識は変わってきている。部署ごとに利用回数は変更可能としました」
 また、外部のベビーシッターを利用したと仮定し、代金を支払って時間外労働をする『ベビーシッター制度』も用意。利用代金は記録するだけでもいいが、実際に部門に預けて研修後に返金してもらう、合意の上で部門の懇親会経費に充てるなど、運用は部門に任せている。
 注目は、「突発的なお休み」も発生すること。システムがランダムに選んだ研修中の社員に対して、突然、「保育園に預けている子供が発熱した」というような電話が入る。社員は指示に従って、お迎えのために即時退社したり、看病で翌日は休むことになる。どうしても休めない日は、事前に配偶者サポート制度を申請しておく。ちなみに研修なので休んでも給与は発生する仕組みだ。また、休みや退社後の時間をどう使うかは自由。自分磨きをしたり、部門ごとに決めたカリキュラムを行ってもいい。ただし、仕事をするのはNG。「私の場合は、平日昼間の百貨店に行って、通常、行くことのできない時間帯にどんなお客さまがいらっしゃるのかを体感してきました」。
 これまでに研修を途中で棄権した人はいない。ただ研修後、働き方がリバウンドしてしまった人は少なからずいる。そこは意識改革ができるよう、労働生産性を評価制度に組み込むなど、人事としても考えていく。

多様な人材を生かすにはリーダーの意識改革が必須

 2018年2月から6月の先行実施では、所定労働時間約6割削減の生産性向上を実現。今年からは全国全部門で拡大展開していく。ちなみに、研修は全社員対象だが、優先順位は、(1)現在の管理職、(2)次世代の管理職候補、(3)育児や介護などの未体験社員、としている。
 「今後、一層両立事情を抱える人は多くなる。過去の成功体験や意識のままで組織運営をしていくわけにはいきません。管理する側もプレーヤーも、先にトレーニングをしておきましょう、というのがこの施策のコンセプトです」
 ただし、研修をやるかどうかは強制ではない。今後はまず、部門長が、この課題にしっかりと向き合い、自らの判断によって進めると準備をした部門だけに導入してもらう。「やるためにはどうするか。業務の分担や情報共有の仕方を考えたり、ITや在宅勤務などの仕組みをフル活用していくようになる。必要があれば上司自ら、お客さま先まで赴いて説明もするといったサポート体制も取りながら、部門主導で取り組んでいきます」。


【会社DATA】
キリンホールディングス株式会社
本社:東京都中野区中野4-10-2 中野セントラルパークサウス
設立:1907年2月23日(2007年7月1日持株会社化に伴い「麒麟麦酒株式会社」より商号変更)
代表者:代表取締役社長 磯崎功典
資本金:1兆20億4,579万3,357円
従業員数:30,464人(2018年12月31日時点)
https://www.kirin.co.jp/


 

『月刊総務』本誌記事:

総務パーソンが押さえておきたい5月のトピックス

2019-04-26 14:43

■法務

執筆/小沢・秋山法律事務所 弁護士 香月裕爾


●弁護士秘匿特権

 「弁護士秘匿特権」とは、依頼者が弁護士に対して法的助言を求めた場合、双方のやり取りを捜査や証拠開示の対象としないとする制度であり、欧米の司法制度では認められています。
 2018年、東京地検特捜部と公正取引委員会が合同で捜査を進めていたリニア中央新幹線談合事件の捜査過程において、会社に依頼された弁護士が、役職員から聴取した書面や弁護士のパソコンを、特捜部が証拠として押収したことに抗議し、検察側は対決姿勢を取りました。
 弁護士側の主張は、弁護士と依頼者には秘匿特権があり、それが認められなければ被疑者の正当な防御活動ができないというもの。相談を受けた弁護士の書面等が刑事事件の証拠とされると、被疑者が弁護士に対して真実を述べる機会が失われるからです。米国では、依頼者と弁護士との相談メール等も刑事事件の証拠として押収されることはなく、民事事件における証拠開示(ディスカバリー)の対象にもなりません。
 わが国でも昨年から司法取引が認められ、本年の通常国会にて審議される独占禁止法の改正法案には、弁護士秘匿特権を直接認める規定は置かれないものの、規則や指針で整備し、独占禁止法違反事案について弁護士に相談しやすい環境を作ることとされているようです。カルロス・ゴーン元会長の刑事事件で、わが国の刑事司法の異常性が欧米から批判されている今日、弁護士秘匿特権の運用が注目されています。

■労務

執筆/斉藤社労士事務所 特定社労士 斉藤貴久


●残業平均時間の算出と前年度の三六協定

 4月1日から施行された改正労働基準法は、特別条項付きの36協定に3つの上限時間を設けました。会社は原則としてこれを守らなければなりません。3つの上限時間は、(1)年間720時間以内(休日労働を含まない)、(2)単月100時間未満(休日労働を含む)、(3)2-6か月を平均して80時間以内(休日労働を含む)です。ここでは、平均時間の考え方に注意が必要です。
 たとえば、2021年4月から2022年3月までの1年間を36協定の対象期間と考えます。そのとき、2021年4月について6か月の平均を計算するためには、直前の5か月分の実績も対象になります。つまり、平均を算出するためには、前年度の36協定の対象期間を含めるケースが出てくるのです。なお、経過措置の期間については上限規制が適用されないため、平均の算定に含める必要はありません。

●一般事業主行動計画の策定義務の対象拡大へ

 女性活躍推進法は、常用労働者301人以上の会社に対して一般事業主行動計画の策定を義務付けています。2月14日に開催された労働政策審議会は、この策定義務を101人以上の会社に拡大すること等を定めた法律案の要綱について、「おおむね妥当」と答申しました。
 この法案が成立した場合には、現在、計画の策定を努力義務とされている中小企業も、遵守義務の対象になることになります。


■税務

執筆/税理士法人AKJパートナーズ


●自由に選択できる永年勤続者表彰記念品

 永年勤続(おおむね10年以上)した役員や使用人の表彰にあたり、記念品の支給により、その役員や使用人が受ける利益(記念品)が一定の要件を満たす場合には、給与所得として課税の対象としなくて差し支えありません。
 ただし、カタログなど、自由に記念品とする品物を選択できる場合には、会社から支給された金銭でその品物を購入した場合と同様の効果をもたらすものと認められるため、記念品の金額の大小にかかわらず、その品物の価額を給与等として課税することとなります。

●建設仮勘定の仕入税額控除の時期

 消費税法における仕入税額の控除は、課税仕入れを行った日の属する課税期間において行うこととされています。
 したがって、工事の発注から完成引き渡しまでの期間が一般的に長期に及ぶ建設工事に関しては、建設仮勘定として計上される場合であっても、原則として、その役務の提供や資材等の課税仕入れを行った日の属する課税期間において、仕入税額控除を行うこととなります。
 ただし、例外として、前記のようにその役務の提供や資材等の仕入れに関して、その都度課税仕入れとして処理せずに、工事の目的物すべての引き渡しを受けた日の属する課税期間において、課税仕入れとして処理する方法も認められています。

『月刊総務』2019年5月号P7より転載

 

『月刊総務』本誌記事:

【総務部門】5月の業務ポイントと行事

2019-04-25 14:42

koyomi1905.jpgクリックで拡大

◆5月の業務ポイント

▼定時株主総会の準備
▼役員の就任手続きと就任承諾書の作成準備
▼新聞などへの決算公告の準備
▼社員持株会総会の準備
▼新入社員教育の反省と次年度の対策
▼新任管理者および中堅管理者研修の実施
▼労働保険の更新
▼社内清掃と設備点検
▼職場内外の安全総点検
▼職場懇談会の実施
▼社員のメンタルヘルスケア対策
▼春季レクリエーション大会の実施
▼春季社員旅行の実施
▼春季健康診断の実施
▼夏の事務服・作業服の支給準備
▼夏季保養施設の確保と受け付け準備
▼社内報の編集と発行

◆5月の月間&週間行事

▼5月1日-6月30日
・不正大麻・けし撲滅運動(厚生労働省)
▼5月1日-5月31日
・さわやか行政サービス推進月間(各府省)
▼5月5日-11日
・児童福祉週間(厚生労働省)
▼5月30日-6月5日
・ごみ減量・リサイクル推進週間(環境省)

◆世界旅気分

venezuela.jpg▼ベネズエラ・ボリバル共和国(Bolivarian Republic of Venezuela)
 南アメリカ北部に位置する連邦共和制国家。地上の楽園といわれるベネズエラは、世界屈指の自然を誇る。ユネスコ世界自然遺産にも登録されている「カナイマ国立公園」には大小100余りのテーブル・マウンテンが浮かぶジャングルの一帯「ギアナ高地」、世界最長の落差を誇る滝「エンジェルフォール」、コナン・ドイルの『ザ・ロスト・ワールド』のモデルとなった「ロライマ山」など、とにかくスケールが違う。また、美人大国としても名をはせており、世界のミスコンで多くの優勝者を輩出している。しかし残念なことに、治安は南米の中でも最悪レベル。特に首都カラカスは、世界五大危険都市といわれている。うーん、それでも大自然や美女が、それを上回るすばらしさであることはいうまでもないだろう。


【DATA】(外務省HPより)
●人口:3,102万人(2018年)
●面積:91万2,050km2(日本の約2.4倍)
●首都:カラカス
●言語:スペイン語


『月刊総務』2019年5月号P6より転載

 

『月刊総務』本誌記事:

平成終了まであと少し 改元対応のポイント

2019-04-22 11:38

法務の視点から見る改元とは

「元号」と「改元」

 元号とは、「年に付ける呼び名」(大辞林参照)を意味します。特に、中国において漢の武帝の時代に「建元」と称したものを最古として、わが国では645年の「大化」が初めての元号とされました。30年前に昭和から平成に改元されたことを覚えている方も多いと思います。

 現代日本の元号は、「元号法」を根拠としています。この法律はとても短い法律で、「元号は、政令で定める」「元号は、皇位の継承があった場合に限り改める」という2つの項から構成されています。

 改元は、元号を改めることを意味しますが、元号法の2項によれば、皇位の継承に伴って改元されます。つまり、皇位継承に際して、内閣が新しい元号を定めた政令が施行されたときから改元されることとなります。

天皇の退位等に関する皇室典範特例法の概要

 ところで、2017年6月16日に「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」(以下、「皇室典範特例法」)が公布されたことをご存じでしょうか。

 「皇室典範」とは、皇位継承等皇室に関する事項を規定した法律です。皇室典範第四条には、「天皇が崩じたときは、皇嗣が、直ちに即位する」とありますから、原則として天皇崩御に伴って改元されることになります。

 しかし、今上天皇陛下が生前退位について、強いお気持ちをお示しになられたことから、皇室典範特例法が制定されました。皇室典範特例法第一条では、同法の趣旨を次のように述べています。

 「天皇陛下が、昭和64年1月7日の御即位以来28年を超える長期にわたり、国事行為のほか、全国各地への御訪問、被災地のお見舞いをはじめとする象徴としての公的な御活動に精励してこられた中、83歳と御高齢になられ、今後これらの御活動を天皇として自ら続けられることが困難となることを深く案じておられること、これに対し、国民は、御高齢に至るまでこれらの御活動に精励されている天皇陛下を深く敬愛し、この天皇陛下のお気持ちを理解し、これに共感していること、さらに、皇嗣である皇太子殿下は、57歳となられ、これまで国事行為の臨時代行等の御公務に長期にわたり精勤されておられることという現下の状況に鑑み、皇室典範第四条の規定の特例として、天皇陛下の退位及び皇嗣の即位を実現するとともに、天皇陛下の退位後の地位その他の退位に伴い必要となる事項を定めるものとする」

 皇室典範特例法は、「天皇は、この法律の施行の日限り、退位し、皇嗣が、直ちに即位する」と定め、退位した天皇を「上皇」とし、上皇の后を「上皇后」としています。  さらに、皇位継承に伴い、皇嗣となった皇族については、皇室典範に定める事項について皇太子の例によるとしています。

 では、改元は企業法務にどのような影響を与えるのでしょうか。

企業法務への影響は

 改元されると、それ以後、古い元号を使用しなくなります。しかし、国や地方公共団体では、年号を元号で表記することが一般的であり、法律上も記載されているものもあります。

 たとえば、2020年に実施される東京オリンピック・パラリンピックについては、「平成32年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会」と表記されています。しかし、平成の元号は2019年4月末日をもって終了し、改元されることになるので、「平成」を冠したオリンピック等ではなくなるわけです。このような場合、法律を改正する必要があるのかが気になるところでしょう。

 この問題については、「昭和」から「平成」に改元された際にもありましたが、法律改正は不要であるとの結論となりました。なぜなら、たとえば「昭和70年」の場合、西暦何年であるかは自明であり、昭和を平成に置き換えれば事足りるため、法律を改正するまでもないからです。

 このことわりは、法律のみならず、一般の会社の契約などについても同様です。たとえば、平成33年12月末日まで有効な契約について、平成が終わり改元されたからといって、契約書を訂正する必要はありません。平成33年が西暦2021年であることは自明だからです。

 したがって、企業法務面において、改元による負担や影響が出ることはありません。もちろん、伝票等の帳票を元号表記している場合は、新しい元号にする必要がありますが、法的に強制されるわけではありません。

「元号」と「商号」

 元号を「商号」に使用することに制限はありません。会社法六条第一項は、「会社は、その名称を商号とする」と規定し、商号は登記事項とされているため(同法第911条3項2号)、会社である以上、必ず商号を登記する必要があります。その際、「昭和産業株式会社」や「平成商事株式会社」などの商号の会社を設立して登記することは可能です。

 実際、元号を商号に使用している会社は多くありますし、目にしたこともあるでしょう。

「元号」と「商標」

 前記のことから、元号を商号に使用することは可能であるとわかりました。では元号を「商標」として登録することはできるでしょうか。

 商標とは、「人の知覚によって認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの」と定義されています。また、「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識できない商標」は、商標登録ができないとされています。これを商標の「自他商品識別機能」と呼び、識別力のない商標は登録することができません。

 そして一般的に元号は、自他商品識別機能がないとみなされています。たとえば、「平成」は現在の元号として広く国民に認識されていますが、それは単に「現在の元号」として認識されているにすぎません。このことから識別力がないとみなされ、商標登録ができないのです。

 これは、「商標審査基準【改訂第13版】」において、「現元号として認識される場合(「平成」「HEISEI」等)は、本号に該当すると判断する」とされ、現元号に識別力がないため商標登録の対象とならないとされていることからも明白です。新元号の発表はまだですが、この点は留意しておきましょう。なお、これは旧元号についても同様とされる予定です。



小沢・秋山法律事務所弁護士
香月裕爾さん

1987年司法試験合格、1990年4月弁護士登録(東京弁護士会)主要著書:『Q&Aよくわかる高齢者への投資勧誘・販売ルール』『金融機関コンプライアンス・オフィサーQ&A』『アパートローンのリスク管理』共著(金融財政事情研究会)

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改元に伴う労務管理対応

祝日法改正で「休日」日数が増える企業も!

 秋の臨時国会(2018年10月24日〜)において、祝日法改正案が提出されています(注:原稿作成段階では未成立)。その内容は、皇太子殿下が新天皇に即位される2019年5月1日(水)と、即位礼正殿の儀が行われる10月22日(火)を、同年に限り祝日とする法案です。

 国を挙げてお祝いムードが高まることではありますが、留意すべきは成立すると来年の労働日数・休日日数の変更が予想され、企業の労務管理(労働条件)に直接的影響が及ぶことがあるという点です。まずは祝日法第三条の確認をしてみましょう。

■祝日法第3条
(1)「国民の祝日」は休日とする。
(2)「国民の祝日」が日曜日に当たるときは、その日後においてその日に最も近い「国民の祝日」でない日を休日とする。
(3)その前日及び翌日が「国民の祝日」である日(「国民の祝日」でない日に限る)は、休日とする。

 2019年のカレンダー(図表1)を見てください。祝日法第3条の(1)により、5月1日は1年限りの祝日になります。また(3)により、4月30日と5月2日が休日、さらに(2)によって、5月6日は振替休日となることがわかると思います。

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 就業規則(図表2)で祝日法の定め通りの「休日」としている事業場では、来年のゴールデンウイーク期間中は10連休となる事業場も多いことでしょう。もっとも、サービス業を中心とした事業場では10連休は現実的に困難であり、土・日・祝日勤務をしている従業員も多いはずです。

 企業で定める休日ルールは祝日法ルールとは全く別物です。今回の祝日法改正のタイミングは自社就業規則による「休日」ルールを再確認するのに良い機会です。ぜひこの機会に見直してみてください。

企業の「休日」は就業規則で定める

 ここからは、今まで解説してきた祝日法改正というテーマから頭を切り替えてください。民間企業は自社の就業規則の中で休日がどのように定義されているかをまず確認することです。就業規則は労働基準法を守って作成しなければなりません。まずは法令による定義を確認しましょう。

■労働基準法第35条
(1)使用者は、労働者に対して毎週少なくとも1回の休日を与えなければならない。
(2)前項の規定は、4週間を通じ4日以上の休日を与える使用者については適用しない。

 労働基準法では何曜日を休日とするか、あるいは国民の祝日を休日とするかについては、なんら規定はありません。また、1週間の中で何曜日を休日にしても、週によって異なる曜日を休日にしても問題ありません。勤務実態に合わせ、労働者ごと異なる日に交替で休日を与えることも可能です。

 さらに労働基準法第32条により、労働時間は1日8時間まで、週40時間まで(特例事業は除く)とされていることから、法令を遵守するため、就業規則で週休2日制としている事業場が多く存在しているのです。

 なお、実際の就業規則では図表2のように、年末年始、夏季等を追加で休日と規定している事業場も多いことでしょう。

割増賃金の計算基礎となる1時間当たりの時間単価が変わる

 祝日法改正により、自社の就業規則で休日日数が増加することになったら、各社員の時間単価も変動します。割増賃金の計算を正しく行うため忘れずチェックしてください。

(1)1時間当たりの賃金
 月給制社員の割増賃金の計算基礎となる1時間当たりの賃金計算方法は図表3を参照してください。

(2)年間所定休日(毎年変更)
 図表3は、就業規則で年間所定休日を122日と定めている例です。就業規則で祝日を休日と定めている場合には、祝日法改正により休日が増加しますから当然計算結果も変わることになるため要注意です。

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 また、そもそも図表2の例だと祝日が土曜日と重複したり、年末年始が土日に重なったりすることもありますから年間所定休日は毎年変わります。加えて、曜日配列により夏季、年末年始の日数が毎年変わる場合も年間所定休日は毎年変わります。これらを踏まえ、休日のカウントを間違えないようにしておきましょう。

改元対応と同時に働き方改革を進めよう

 さらに、改元の1か月前、2019年4月から、働き方改革法が順次施行されます。そのことにも注視しなければなりません。本稿は、改元に伴う祝日法の改正の留意点、休日に焦点を当てて解説しましたが、労働時間の適正管理、休日・休暇の在り方をワークライフバランスの観点から考えていくことも大切です。そして、2019年はそれを実現していく絶好のタイミングの年でもあるのです。



日本橋人事労務総研・社会保険労務士小岩事務所 代表
特定社会保険労務士
小岩和男さん

1982年中央大学法学部法律学科卒業後、東武不動産株式会社(東武鉄道グループ)に入社。以降、不動産営業マンを経て人事総務業務に従事。2004年、社会保険労務士試験合格後独立。現在、日本橋人事労務総研代表・特定社会保険労務士として、企業の労務顧問・講演・執筆業務で経営者を支援している。主な著書に『社員10人までの小さな会社の総務がよくわかる本』(明日香出版社)がある。

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改元に伴うシステム改修対応

改元によって想定される混乱

 政府は2018年5月17日に2019年5月1日に切り替わる新元号について、同年4月1日の公表を想定して準備を進めると発表しました。

 これにより30年間続いた「平成」が終わり、今上天皇陛下が退位し、新しい天皇が誕生し、新しい元号に切り替わります。

 そこで改元によるシステムの改修等の必要が出てきました。一部では「2000年問題」の再来と叫ばれ、そのときの悪夢を思い出す方も多いのも事実です。

 2000年問題は1999年から2000年になったとき、当時の情報システムがメモリーを節約するために西暦の下2桁しか記録していないケースが多く、2000年になった瞬間にシステムが1900年と認識してしまい、情報システムが誤作動、停止などを起こしてしまうというものでした。

 しかし、2000年対応は当時のエンジニアが総動員されたことと、事前に改修を行ったことでそれほど大きな問題は実際起きませんでした。その後、IT企業、システム開発会社、そしてユーザーはこの2000年問題の教訓を経て、改元によって情報システムに改修が必要なことと、大変な労力が掛かることがわかったため、和暦についても、いつか変更になることを重々理解しています。

 つまり改元がいつ起きても対応できるように仕様・設計・開発を行ってきており、逆に改元に対応できないような情報システムの場合、仕様・設計・開発自体に問題があるといわざるを得ません。

 とはいえ、民間の情報システム以上に非常に複雑になってきている政府や自治体の情報システムでは証明書などに和暦である「昭和」「平成」などがほぼ100%記載されているために、元号対応の情報システムの改修が遅れると住民票の発行ができなかったり、住民税などの納税の際に記録が残らなかったりするなど問題が発生する可能性があるとしています。

 また、2019年は元号が「平成」と新元号の両方を持つ特殊な年となることで何が起こるか予測が付かない可能性もあります。これらの状況でエンジニア不足に悩む昨今において、早急の改修ができるかなどの混乱も予測されています。

改元前に何をすべきか

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 企業と政府や自治体、この2つは改元前に対応すべき情報システムの改修事情が違います。

 企業の場合は、現在利用している情報システムにかかわるIT企業、システム開発会社に対して、改元後の対応方法や改修状況を確認します。

 政府や自治体は、改元決定後から改修計画を立てて対応していると思われるので、そこは政府や自治体へ納入しているIT企業、システム開発会社に任せていくしかありません。

 現状、私たちが確認しなければならないことを「改元前のシステム対応チェックリスト」(図表4)にてまとめています。企業によって、該当しない項目もあるので、自社の情報システムはどれに該当するのかきちんと確認しましょう。

 また、チェックが付かなかった項目は、図表5を参考にしてチェックが付くように対応を検討していくことをお勧めします。

注意しておくべき点

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 今回、改元に伴うシステム対応は図表4のチェックリストの事項を一通り行えば大きな混乱はないと思います。パッケージやクラウド(SaaS※)であれば、その情報システムのバージョンアップを行う、または自動的にバージョンアップすればことが済むので、利用者である企業側は、特に改元の改修対応についてすることはありません。

 ただし、注意が必要なのが企業が独自で開発した情報システムの場合です。この場合、個別のSEやエンジニアが開発をするため、企業側は詳細な仕様・設計などの専門分野までは理解できていないことがほとんどです。つまり、今利用している情報システムが改元の際に元号のデータを一括管理しているかどうかが不明ということになります。

 一括管理とは、元号の情報を一括でデータ参照し、1か所の元号を修正すればすべての元号変更ができるように仕様・設計された情報システムです。Microsoft Windows の日付変換処理がされていれば1か所の元号変更で終了できるケースなどもあります。問題なのは元号表記のあるシステムが、それぞれ個別に元号情報を持っている場合です。

 その場合、見積書、注文書、請求書、領収書など、すべての帳票や情報システム内部の元号を個別で変更する必要があります。同時に、改修後はきちんと情報システムが稼働するかを確認するための単体テスト、総合テスト、運用本番テストも必要です。これを、稼働している本番の情報システムとともに並行で対応するために、バックアップを取り、休日や稼働時間後に対応しなければなりません。

 ですから、企業ごとに独自で開発した情報システムはIT企業、システム開発会社に早急の確認が必要です。その際、図表4でチェックが付かなかった項目は、図表5のアドバイスを参考にしてみてください。

 元号変更や消費税増税などはあくまでも想定できる範囲の改修になります。2000年問題のときのような大きな騒ぎにもならないと思われますが、備えあれば憂いなしです。見直しのきっかけにもなるので、この機会にいろいろと確認してみましょう。

※ Software as a Service:提供者(サーバー)側で稼働しているソフトウエアを、インターネット等のネットワーク経由で、利用者がサービスとして利用できる情報システム


 

『月刊総務』本誌記事:

【総務の現場から】ITを駆使して、スマートに働く。ソフトバンク流働き方改革を実践

2019-04-11 15:30

スーパーフレックスと在宅勤務で働き方を柔軟に

ph_sbcs_01.jpg ソフトバンクグループの原点である個人および法人向けIT関連製品の製造・流通・販売および関連サービスを手掛けている同社。2014年にソフトバンク株式会社から分社したあと、四期連続増収増益を果たしている。働き方改革も以前から推進していたが、2017年、「Smart & Fun!―ITを駆使して、スマートに楽しく働こう―」とのスローガンを掲げて、本格的な取り組みをスタート。「私たちの考える働き方改革は、業務の効率化と、社員がワクワクして働けることの両輪。スローガンはグループ共通ですが、施策自体は個社で行っています」と、コーポレート管理本部本部長の市川隆博さんは話す。
 具体的には、(1)スーパーフレックスタイム制度、(2)在宅勤務制度、(3)Smart & Fun! 支援金の導入の3本セットで進めた。
 (1)は、コアタイムなしで、1日最低1時間の勤務がルール。業務の繁閑に合わせて自由に働き方を変えられるのがいい。
 (2)は、短時間勤務社員対象だったものを全社員に拡大した。原則、週1回出社のルールはあるが、運用は部門ごとに任せている。社員の予定は、社内ポータルサイトの予定管理システムで共有。申請は前日までにすればいい。
 「弊社は、社員の約半数が女性で、短時間勤務のワーキングマザーも多い。これまでは6時間働くために通勤と準備などで2、3三時間かけていたわけですが、在宅ならそれが不要。経営からしても、その通勤時間を仕事に充てる選択肢が用意できるわけですから納得感がある。今、500人近くが利用しています」

社員の意見2,000件を効率的な働き方に反映

 こうした施策を進めると同時に、スマートな働き方を実現するために廃止や改善すべきことを社員にアンケートを取った。「2,000件の意見が上がりました。想像と違ったのは、『長い会議をどうにかしたい』など、日々の切実な悩みや希望が多かったこと。でも、会議の在り方を見直すきっかけにはなった。すべての意見に対して、やめる、続ける、変える、の結論を出して実行していきます」。
 ほかにも、現場レベルでおよそ100の仕事をRPAで自動化。約70人分/月の工数軽減につなげている。
 このように効率化によって捻出できた時間を、自分のスキルアップや趣味の充実に使ってもらおうと考えたのが、(3)のSmart & Fun!支援金だ。用途不問の援助金で、1人に1か月1万円を2年間支給することにした。「社員からは、以前よりも気兼ねなく書籍を購入したり、同僚と飲みに行ったりできるようになった。また健康のためにボクシングや、ダンスを習い始めたなどの声が上がっており、好評です」。

副業を奨励することは定年後の生き方支援にも

ph_sbcs02.jpg さらに空いた時間を生かしてもらえるよう、2017年、副業を解禁。元々、申請のプロセスはあったのだが、Smart & Fun!の取り組みの1つとすることで、より広く認めていくと大々的に発信した。1年間で多数の申請があった。趣味の作曲を副業にした人、キャンプ好きが高じて製品開発のアドバイザーになった人、MBAの学校で講師になった人もいる。興味深いのは、コンサルタント業など、仕事で得た知識や経験を生かしている人も多いこと。「副業を推奨する背景には、定年後の多様な生き方を支援したいとのねらいもあります。早くから副業としてやることで、将来、それを生かしてもらえたらいいですよね」。

社内アワードともひも付け業務改革の意識を浸透

 Smart & Fun!の取り組みは、この2年をもって第1フェーズは終了。成功のポイントには、大きく次の3つがあったと考えている。
●プロジェクトのトップや経営層の意識改革
●意見を現場から吸い上げるためのキーパーソンを巻き込む
●本部長や統括部長など、判断権限を持った人をプロジェクトに入れる
 何よりも大事なことは、全員が本気で覚悟を持ってやっていくこと。
そのために、たとえば、役員の評価に、Smart & Fun!の項目を加えた。年2回の全社キックオフや、四半期に1回の全社朝礼には、必ずSmart & Fun!に関するプログラムを入れた。また、社内アワードの表彰カテゴリーに「業務改革」を加えて、Smart & Fun!の効率化で取り組んだことをエントリーできるようにした。
 従業員満足度調査を見ると、「有給休暇が取得しやすくなった」「組織として業務効率化・改善に取り組んでいる」など、Smart & Fun!にひも付く項目のポイントが上がっている。一方で、在宅勤務者からは「人と話したい」との声も上がってきている。いかにコミュニケーションの量と質を担保するかは課題の1つだ。ただ今後、5Gが本格稼働すれば、コミュニケーションの次元が変わるだろう。全国の拠点と5Gでつなぎっ放しの部屋を作るなど、同社らしくICTを活用した、新しい働き方を考えていく。
 一方、まだ在宅勤務やテレワークに抵抗がある人もいるという課題もある。スーパーフレックスも、業務の特性や管理の方針上、導入できていない部門がある。「それを全社で統一していきたい。いつでも、どこでも仕事はできるのだと、今後も語り続けていきます」。
 さらに、2020年に向けて、今までとは全く違う働き方、オフィスを形にしたいとの思いもある。現在、次なるSmart & Fun!のコンセプトを構想中だ。「形から入るのも大事。たとえば、本社をコミュニケーションスペースとして再定義してみる、など。社長からは、『思い切りやってみようよ』と、いっていただいているので、一度、振り切ったチャレンジをしてみたいですね」。


【会社DATA】
SB C&S株式会社
本社:東京都港区東新橋1-9-2 汐留住友ビル 2014年4月
設立:2014年4月
代表者:代表取締役社長 兼 CEO 溝口泰雄
資本金:5億円
従業員数:1,770人( 2018年4月1日現在)
https://cas.softbank.jp/


 

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