人事:
高年齢者層の「改善につながる気づき」「コミュニケーション力」を評価する
2012-11-06 23:00
『月刊総務』12月号
特集 長期的視点で考える 高年齢者雇用対策 連動企画
人材の質が事業価値を大きく左右する介護業界で、高年齢者の活用を積極的に進めている株式会社関東サンガ。その実際について聞いた。
若手を高年齢者がフォローするバランスいい従業員構成
東京都・千葉県で高齢者介護事業を展開する株式会社関東サンガは、高年齢者の活用を積極的に進めている。現在、全従業員88名のうち、60歳以上の従業員は14名を占めている。
代表取締役社長の浅香誠一郎氏は(写真右)、その理由、背景をこう語る。
「介護事業では、利用者を囲む家族のような関係をつくることが理想。そう考えるとき、若年層、壮年層、高年齢層と、年齢的にバランスのとれたスタッフが揃っていることは、自然で望ましいことなんです。
若いスタッフには、はつらつとしたエネルギー、情熱があります。しかしときに、利用者様との間でそれが空回りしてしまうこともあります。そこで利用者様と年齢が近く、人生経験豊かな高年齢者がうまくフォローをする。そんなチームワークがあって、はじめて良いケアが実現できるんです。だからこそ高年齢者をどんどん戦力化しています」
高年齢者の経歴は、同社で定年退職を迎え引き続き再雇用契約を結んだ、他法人で介護に関わる仕事をしてきた、介護とはまったく縁がない他業種からセカンドキャリアを求めてきた、などさまざまだ。
長年接客・サービス業に携わってきた高年齢者の利用者に対するすぐれた接遇は、周囲のスタッフに刺激を与えているという。
介護職未経験者に対しては、ホームヘルパー2級取得のための助成金制度がある。雇用形態は、一年ごとの契約更改を基本に、嘱託社員、パートなど、多様な道が用意されている。
どんどん仕事を任せることで意欲を引き出すマネジメント
関東サンガで働くベテランスタッフに話を聞いてみた。
東京都あきる野市の介護付有料老人ホーム・デイサービス「あきる野翔裕館」で利用者の健康管理、リハビリなどを担当する遠塚美和子さんは(写真左)、総合病院などで看護師としてのキャリアを重ねてきた。「定年退職後、以前から関心があった高齢者施設に職を得ました。専門知識を活かして働き続け、少しでも社会に貢献できるのがうれしいです」という。
同じ施設で清掃をはじめ環境整備を担当する伊澤美津江さんは(写真右)、ビル管理の職務経験を持つ。「介護施設の仕事は、利用者と楽しく会話しながら働ける。自分が健康でいる限り働き続けたい」と語る。
浅香氏は、高年齢者を上手に活用する秘訣として、「どんどん仕事を任せること」「改善への意欲と働きをきちんと評価すること」を強調する。
「高年齢者は、若手とは一味違う視点で日々の業務を見ているものです。だからこそ、他のスタッフが気づかない改善ポイントによく気がつく。そんな声が上がってきたら、後押しして解決の先頭に立ってもらう。成果が出たら感謝の声をかけ、報酬にも反映させてきちんと評価する。当たり前のマネジメントですが、その繰り返しでモチベーションを上げることが重要だと考えます」
介護の仕事を希望する高年齢者の中には、自分の親を十分に介護できなかった悔恨から、お年寄りの役に立ちたいという強い思いを持つ人もいる。経営者には、そんな「誰かのためになること」が生きがいになっている高年齢者ならではの心理への目配りが欠かせない。
「高年齢者が持つ、その場の空気に柔軟に合わせたコミュニケーション能力は、事業の付加価値の源泉です。こうした点も、十分に評価をするよう心がけています」(浅香氏)