企業はいよいよ国際標準である「社会的責任の手引」(ISO26000)を使いこなして、慈善活動的CSRから本業CSRへ転換し、ポーター教授らによる社会課題と経済価値の同時実現を狙う競争戦略としての「共有価値の創造」(CSV)も織り込んでいく必要があります。
また、最新の国際的な共通言語であるSDGs(持続可能な開発目標)を使いこなさなければなりません。
さらに、企業は、投資家に対してもESGを重視してどのように持続的に価値を創造していくかという「ストーリー」を語り、メディアをはじめ関係者と良い関係(リレーションズ)を築く本来的な意味の「パブリックリレーションズ」が重要です。わかりやすくするため「三方よし」の考えも使い、「隠徳善事」では伝わらないので「発信型三方よし」として理解していきます。
筆者の31年の行政経験と9年の企業経験を活かし、「これならわかる共有価値創造とサステナビリティ経営の理論と実践」という実践的な角度で皆様と考えていくサイトです。地方創生もCSR/CSVの実践として紹介していきます。
CSR、IR、広報、ブランディング、経営企画など幅広い業務の責任者・実務家、そして経営層の関心にも答えていきます。


(※)CSR企業の社会的責任: corporate social responsibility   CSV共有価値の創造:creating shared value
ISO国際標準化機構: International Organization for Standardization   SDGs持続可能な開発目標:Sustainable Development Goals

笹谷オリジナルコラム:

笹谷秀光の「協創力が稼ぐ時代」<第4回>
ジャパンSDGsアワード

2018-02-03 07:00

ジャパンSDGsアワード:SDGs「実装元年」を迎えて

 第1回「ジャパンSDGsアワード」の発表(昨年暮れ)で、各セクターのトップランナーが選ばれ、SDGs推進の政府としての方向性が示されました。いよいよSDGs「実装元年」を迎えたと思います。

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「ジャパンSDGsアワード」(平成29年度)は、持続可能な開発目標(SDGs)推進本部が公募し、SDGsで優れた取組を行う企業・団体等を表彰する制度で、2017年度が第1回目です。おかげさまで筆者が勤務する伊藤園も特別賞を受賞しましたので、受賞内容を振り返っておきます。

 第一回の受賞者は、内閣総理大臣賞1団体、内閣官房長官賞3団体、外務大臣賞2団体、SDGsパートナーシップ賞6団体の計12団体です。

(12団体の取り組み紹介はこちら: http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sdgs/ )

 全受賞団体の代表が勢ぞろいしてプレゼンテーションする政策分析ネットワーク主催のシンポジウムが1月20日に開催されました。外務省国際協力局 地球規模課題総括課長 甲木浩太郎氏、国連広報センター所長根本かおる氏、朝日新聞社報道局デスク北郷美由紀氏がコメンテーターとして参加しました。

 私は伊藤園の枠でプレゼンし、現下の企業のSDGsへの対応での基本的方向を述べましたので、概要を以下に採録しておきます。

 

笹谷のプレゼン:なぜ今SDGsか

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 はじめに、SDGsをめぐり、企業の現在おかれている状況を確認しておきます。

 日本再興戦略で日本企業の競争力を高める、このために、もともとあったトリプルボトムライン、つまり、企業は経済だけでなく環境(E)・社会(S)と接点を持ちながら活動すべきあるという考えが基本です。最近ではこれにガバナンスの規律を強化していくESGという動きになっているのです。

 EとSはもともとありましたが、経済主体の統治構造のところをガバナンスとして強化するという流れです。このESGのうねりがきていると思います。

 そこで、SDGsのタイムラインを考えてみますと、ESGすべてについて重要な決定があったのが2015年でした。まもなく2020年の東京五輪・パラリンピックも来て、大阪の万博招致が2025年、そして2030年のSDGs目標に向かう。こういうタイムラインの中で2018年はまさにSDGsの実装元年と言ってはいいのではないかと思うわけです。

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本業で社会対応力:CSR 再考:本業CSRへ

 ここでCSRについてもう一度捉えなおしておく必要があります。これまでの「フィランソロピー型」のCSRでは継続性がないので、今は本業CSRになっているわけです。

 一方、CSRの訳語の「社会的責任」。この「責任」という訳語のニュアンスは若干狭い。本来的な意味である「レスポンス+アビリティ」。すなわち「社会対応力」と捉え直す必要があります。

 もともと2010年に、CSR関連で網羅的なガイダンスとしてISO26000ができています。これは、国際標準化機構が作った「社会的責任に関する手引き」ということで、今日お集まりの関係者の皆様に適用される。いろんな組織に適用されるわけです。もちろん企業にとってもこれはCSRの羅針盤です。

 この規格は読んでみると、大変網羅性が高く、CSRを進める上で国際合意がありJIS規格にもなっている。これを今日改めて見直していく価値があります。 

 ISO26000では本業でCSRをこなしていくべきであるという点を明確化し、7つの中核主題(やるべきことリスト)を示しました。「組織統治」をきちっと真ん中でやり、「人権」「労働慣行」「環境」「公正な事業慣行」「消費者課題」「コミュニティへの参画およびコミュニティの発展」。この7つのテーマをこなすということになったのです。

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 このようにCSRを社会対応力と捉えますと、別途提唱されている「共有価値の創造」(CSV)につながります。社会価値と経済価値を同時実現する魅力的な概念です。この概念の実践にも持続可能性の共通言語であるSDGsが役立ちます。

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既存の体系を生かす:SDGsとISO26000

 こういう流れの中で今回SDGsが発効されたわけであります。現在、一部上場企業では、7つのテーマで課題の洗い出しが既に終わっている企業が多いわけです。

 そこでISO26000の図にSDGsの各目標を「主として」関係ある項目にマッピングしてみます。例えば、ジェンダーは人権、労働慣行に関係がある。8番は働きがいのある職場づくり。6、7、13、14,15番は環境の関連です。公正な事業慣行は16番。消費者課題のところは「つくる責任、つかう責任」(目標12)や3番の健康。コミュニティ系でいけば11番が代表なわけです。全体に関係あるものとして1番、2番、10番、17番です。

 このように主に関係あるところに位置づけながら、今までの体系をうまく使って2030年の目標を念頭に置きながら活動する。これによってCSRが最新課題に対応できるものになります。

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共有価値創造戦略:SDGsとCSV

 そして、今回のSDGsは企業の役割も強化しました。このためSDGコンパス、企業の導入指針がありますが、非常に良くできています。

 まず、チャンスは何か、次にリスクは何かの両方を見直すことによって経済価値の実現・競争優位とリスク回避と社会課題の解決につながります。これは経済価値と社会価値を同時実現しようというCSVをさらに最新の世界的な社会課題と絡めることでバージョンアップできる構造になっているわけです。SDGsを使うことによって競争戦略に役立てることができます。

 

投資家にも訴える:ISO26000とESG

 もう一点、7つの中核主題のISO26000体系を整えておけば、真ん中にGがありますし、Eもあります。そして残りの5項目がSであると理解すればいのです。このようにISO26000体系はESGの対処にも十分に役立てることができる優れた国際標準です。

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SDGs先進国を目指す:政府のSDGsアクションプラン2018 

 政府はSDGsアワードの発表とともに「SDGsアクションプラン2018」を発表しました。その中でSDGs先進国を目指し世界に発信していくことを掲げました。

 主要実行項目の中に、「環境・社会・ガバナンス(ESG)投資の推進等」という項目も盛り込まれました。

 伊藤園では以上の考えを応用してSDGs体系を作っていますのでそれに即して伊藤園の取り組みも紹介し、私のプレゼンとしました(約9分半でした)。

 

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