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採用ブランディング【第12回】採用はジャイアント・キリングを起こせる(事例編)

2018年09月03日

■個別接点を抜きに採用はできない

 採用ブランディングを行うと、自分たちよりも知名度のある大手企業と競合することが増えていきます。そして求職者が大手企業ではなく、自社に内定承諾する「ジャイアント・キリング(以下「ジャイキリ」)」が起こります。なぜそれが起こるのかのメカニズムについては前回解説しました。

 簡単におさらいしておきましょう。「B=(b×c)v」という公式でブランド構築を考えたとき、採用は、面接などの個別接点を抜きに行うことはできません。なぜなら、b(behavior=従業員の行動)にかかる比重が大きく、元のイメージを覆したり、新たなイメージが作られるほどの影響力を出しやすいからです。広告宣伝やプロモーションのようにc(communication)にかける予算差が出にくい、というのもこの公式で説明できました。プロモーションに100億円かける企業はあっても、採用に1億円かける企業はかなり少ないでしょう。

 さて、では実際にジャイキリはどのように起きるのでしょうか。著書『採用ブランディング』(幻冬舎)にも出した事例を用いつつ、どのようなことが起きたのか解説していきます。

■大手証券会社を蹴って、家系ラーメン

 今や全国に直営店40店舗、プロデュース店350店舗にまで拡大した家系ラーメンを提供する株式会社ギフト。採用ブランディングを行うことで、劇的に効果を出すことができるようになりました。どんなジャイキリがあったのかというと、立命館大学の男子学生が大手証券会社を断っていたのです。私は彼になぜ大手企業を断って、ギフトに入社したのかを直接聞いたことがありますが、そのとき彼はこんなことをいっていました。

 「もともと大手企業に行く気はなく、むしろベンチャーに行きたいと思っていた。だから腕試しのつもりで受けていたが、ギフトのビジョンに共感したこと、そしてアメリカへの店舗展開が本格的に始まったときに、この会社の仕組みを作りたいと思えた」

 こんなふうにしっかりと考えられるのはもちろん彼の性格ゆえですが、最終的に彼に決断させたギフトが、魅力をしっかりと伝えられたということでしょう。そしてギフトも、もともとは数千万円かけても1人も採用できなかった企業。それでもこんなしっかりとした学生に内定承諾されるまでになるのです。

■平均年収1000万円超えの会社を蹴って、不動産投資

 不動産投資のグローバル・リンク・マネジメントも、以前は新卒紹介でやっと5人そろえられる程度の会社でした。しかし採用ブランディングを行うことで、これまでどうがんばっても接点を持てなかった優秀な学生たちから軒並み内定承諾をもらえる企業になりました。著書では細かい大学名まで挙げて過去3年の成果を公表しています。

 2018年度採用の競合は、街づくりなどを行う大手不動産会社やテレビ局、採用媒体を展開する大手企業など。もちろんそれらを「蹴って」今年入社してきています。今年行われた2019年度採用の最新結果では、内定承諾者が持っていた内定先は、平均年収1000万円超えの企業や超大手証券会社、外資系銀行などへ変化しました。2018年もとてつもない成果を挙げましたが、2019年はさらにパワーアップした採用活動を行うことができました。しかも2019年度採用は、採用数をほぼ倍に増やし、20人の内定承諾を得ることができました。採用数が増えるということは、当然採用難易度は上がります。しかしそれまでの3年で培った知見を生かし、劇的な効果を出すことができました。

■都市銀行を蹴って、飲食

 飲食事業を中心に10年で売り上げ100億円を突破し、今や200億円企業に近づいている株式会社TBI。ここも内定者研修中に辞退が続出するなど、採用にとても苦戦する企業でしたが、今では劇的な変化を遂げるまでになりました。

 採用ブランディングを実践して3年目となった昨年。内定承諾者の競合先は、新規事業を次々と生み出し、経営者を毎年続々と輩出する有名企業。採用という市場自体を作り出した、日本一といってもいい採用上手な会社です。内定者から断られてはしまいましたがマッキンゼー・アンド・カンパニーと競合したそうです。実は採用ブランディング実施の1年目からマッキンゼーとは競合していました。2019年度採用の最新の情報ですと、内定承諾者が持っていた内定先は大手アパレル、誰もが知っている飲食チェーンをいくつも展開する大手企業、都市銀行など、TBIの知名度からすると「普通そっち行くよね?」という企業ばかりです。

 このような「ジャイキリ」が起こせるのが採用ブランディング。ここに挙げた企業だからできたのではなく、どこの企業にも起こせることです。今の自分たちの「身の丈」に合わない、優秀な人材を採用することで、会社を変えていく。そういう戦略的な採用が、どの企業にも必ずできます。

深澤 了
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