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業績に効果が出る新しい組織風土改革の進め方
第27回:企業変革の現場よりー(4)組織風土改革に失敗する企業(後編)

2020年01月08日

 みなさま、明けましておめでとうございます。年末年始はいかがお過ごしだったでしょうか?2020年は東京オリンピックの年であり、中小企業にとっては4月から働き方改革が義務付けられる年でもあります。みなさまにとって、良い1年となることを願っています。本年もよろしくお願いいたします。

 組織風土改革に取り組んだ企業の失敗事例として、製造業A社を取り上げた前回の後編です。何から始めて、どう進めればよいのか......取り組みが難しい組織風土改革ですが、A社の事例を「反面教師」として参考にしながら、一緒に考えていきましょう。

■失敗理由4(続き):ゴールイメージを描けなかったメンバー

 これまで、本コラムでは繰り返し、組織風土改革はハード改革(経営改革、業務改革、システム刷新、生産革新、人事改革等)ではなく、ソフト改革に位置付けられると伝えています。ハード改革、ソフト改革―それぞれメリット・デメリットがあり、得手不得手もあります。

 ソフト改革の一環で、意識改革やコミュニケーション促進を掲げて取り組んでも、企業の業績に寄与するまでの具体的成果にはつながりにくいでしょうし、時間もかかります。その一方で、ハード改革ばかりを推し進めても、一時的に効果は得られますが、現場の不納得感、やらされ感が残ります。指示待ち社員が増え、主体的に動く社員が減り、余計なことはいわなくなると、現場のマイナス情報が伝わらなくなり、結果、重大なトラブルやクレームにつながることも少なくありません。

 今さらですが、本コラムではハードとソフトを一緒に変え、「業績に効果が出る組織風土改革」についてみなさんにお話ししています。前回コラムの失敗理由4「ゴールイメージを描けなかったメンバー」のアプローチとして、ハード・アプローチ(=ギャップ・アプローチ、"あるべき姿")とソフト・アプローチ(=ステート・アプローチ、"ありたい姿")の2つを示し、風土改革には後者の「ソフト・アプローチ」で考えないといけないと述べました。これらを、ハード改革とソフト改革と対比し図示したものを図1に示します。

図1 「ハードとソフト」と「アプローチと改革」の対比

sosikihudo27_1.png

 A社は"あるべき姿"を描くことはできました。現状、できていない、達していない問題を山ほど挙げて、これらの「問題がない理想世界=あるべき姿」としていたのです。あるべき姿を議論している社員の中には、「絵に描いた餅」と思った人が少なくなかったようです。「そんな決め方でいいのかよ?」と思われる方も多いのではないでしょうか?

 "ありたい姿"を描くためには、未来への希望(会社の将来性、自分自身の成長など)に近づくために「自ら」が動かなければなりません。他人からいわれるのではなく、自分として「こうしたい」という強い意志や信念の元、一人称(I think、......I do.)で語れる人になるのです。どうやらA社の組織風土改革のコアメンバーには、一人称で語る人がいなかったようです。

■失敗理由5:風土改革のギアチェンジミス

 最近、販売される乗用車の9割以上はAT(オートマティック)車であることはみなさんご存じだと思います。MT(マニュアル)車の運転を経験した人ならば、ギアをニュートラルからロー(1速)に入れて、そろーりとクラッチペダルを離した途端、エンストしたり、ガクンと急発進をしたという経験もお持ちの方もいることでしょう。大型バスやトラックでは、2速や3速発進は珍しいことではありませんが、乗用車で2速発進をしようとすると、いつもよりもそっとクラッチをつなぐか、アクセルを踏み込んでエンジン回転数を高めにしないと、エンストしますよね。組織風土改革の話から自動車の話になりましたが、組織風土改革の失敗ケースとして、いきなり2速発進をしようとする企業は少なくありません。A社もまさにそうであり、エンストをしたのです。図2のイメージをご覧ください。

図2 風土改革のためのギアチェンジ    

sosikihudo27_2.png

・N(ニュートラル):(現状)特に問題はない、
 困っていない
・Low(1速):現状に不満を感じる
・Second(2速):何とかしないといけない


と、このように各シフトの位置を、問題意識のレベルと対比しています。

 まずは、N(ニュートラル)の位置です。「問題はない」という人の根底に無関心があるとすれば、これはなかなかやっかいです。無関心の人間を変えることは相当のエネルギーを必要とするだけでなく、打てども響かずの人も存在するからです。そもそも、A社では、現状、困っていない人が多いため、この人たちに対して「問題意識を持て!」といったところで、危機感もないでしょうから、ピンとこないでしょう。ピンとこないということは、その人への動機付けにはなっていないということです。

 次に「現状に不満を感じる」がLow(1速)に位置付けられていますが、あれこれと文句をいう、不満を感じる人の方が理由はどうであれ、問題意識があるという裏付けです。

 多くの組織では、N(特に問題はない)の人とLow(不満を感じる)の人が混在しています。Nの人は、問題意識も低く積極的に改革には取り組まないものの、不平不満などはいわずに無関心の方が高いため、一見すると"良い子ちゃん"のように組織の中では見られます。カムフラージュも上手な人が一定数存在します。一方で、Lowの人は、周囲からは「あいつはいつも文句をいっている」「うるさいやつだ」とレッテルを張られる傾向が強いです。

 では、みんながみんな、Second(2速)のように、「何とかしなくちゃ!」という危機感を持てるかというと、それは個人の考え方や立場によって変わります。一般的には現場よりも管理職、経営層の方が危機感は高くなければなりません。若手社員の危機感をあおったところで、それは恐怖でしかないので、「そんな危ない会社はサッサと辞める」ということも招く危険があります。したがって、危機感をあおる際には、立場に応じて、というのが基本ですが、若手社員に対しては、「危機感は少し、希望はたくさん」が原則です。この希望を描くのが「ありたい姿」でもあります。

 組織風土改革に取り組む企業が陥る落とし穴が、「NやLow(1速)をすっ飛ばす」ことです。早く結果を出したいがために、Nの人とLowの人をスルーしてしまうのです。「どうしたいのか(ありたい姿)」の議論を省略し、「何をすべきか(あるべき姿)」という危機感をあおりながら行う、これが2速発進です。

 企業組織の中に一定数存在するNとLowの人たちが、Secondになるには時間がかかることもありますし、ずっとN(走り出さない、動かない)、Low(文句、不満をいうだけ)では何も会社は変わりません。このNとLowの人たちがどうすれば、ギアチェンジできるのかを考えなければなりません。そのためには、まずは、あまり問題意識が高くないNの人たちの一部を、文句や不満でもいいので、自分の意見をきちんといえるLowの人たちにギアを入れなければなりません。Lowを飛ばして、2速から発進しようとしても、そもそも問題意識が高く、危機感も持っている人の層は厚くないので、エンジンもパワー不足。これで2速発進などできるわけないですよね。

■失敗理由6:ネガティブ意見に耳を貸さない

 みんながみんな、変革意識を持ち、自ら変えようという動きは一気にはなし得るものではありません。「特に問題はない」と日常業務に疑問を持つ・持たないは別にして、それを総称して問題はないといい切ってしまうこと自体が問題です。最初のポイントは、この問題はないという層が「現状に不満を感じる」層に変えること(シフトアップすること)です。

 とかく、組織の中では、「ネガティブな意見はいうな」「建設的な意見を述べよ」という大義名分で、現状の不満はその人個人の問題としてねじ伏せられがちです。結果、きれいだけど薄っぺらい問題しか顕在化しない組織になってしまいます。文句をいう、不満をいう人は、いうだけのエネルギーを持っています。先のNの人よりもLowの人は前進するだけのエネルギーを蓄えているのです。そのエネルギーの出し方が上手でないだけです。

 "ガス抜き"という言葉があるように、現状の不満をすべて出し切ってしまうと、不満をいい続けていた自分自身を冷静に見つめ直す状態となり、「いつまでも不満をいい続けていても仕方ないよな......」という状態に変容します。これがその次に位置する「何とかしないといけない」層の最初のキッカケとなります。少なくとも不満が出ることは、問題意識の表れであることと認識すべきでしょう。

 残念ながら、A社は現場の社員から文句や不満をいわれることを恐れたのか、臭いものにふたをするかのごとく、N、特にLowの人を封印することをしてしまい、問題意識が高いが表現やいい方がまずいエネルギーを持つ人材層を殺してしまったのです。残った人では組織風土改革という車を前に進ませることはできませんでした。

 2回続けて失敗事例をお話しましたが、次回は成功事例をお話します。

世古 雅人
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