総務のトピックス

【労務トピックス】:

長期治療者のための職業生活両立支援

2016-05-30 09:48

 少子高齢化や労働人口の減少が進む中、長期治療のために離職せざるを得なかった労働者の就業促進に向け、「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」が厚生労働省より平成28年2月に公表されました。
 がん、肝炎、糖尿病等の疾病により、長期的な治療を受けながらでも、雇用が継続できる環境の整備、就職支援を推進することが社会的課題とされています。
 意識啓発の研修や治療と職業生活を両立しやすい休暇・勤務制度の導入による環境の整備や、両立支援の進め方に加え、特に「がん」について留意すべき事項が取りまとめられています。


治療と職業生活の両立支援を行うための環境整備と両立支援の進め方

 両立支援の事業内ルールの作成、周知と研修などによる意識啓発、労働者が安心して相談・申し出を行える相談窓口の明確化が挙げられます。時間単位休暇制度の新設や休職制度の拡充、時差出勤制度・短時間勤務制度・在宅勤務制度等の作成を検討していきましょう。労働者から支援を求める申し出があった場合の対応手順、役割分担も決めておきます。就業継続の可否や就業上の必要な措置、治療に対する配慮については、医師の意見を求めることがあります。主治医に対し業務内容などをわかりやすく説明する様式(フォーマット)や、主治医が就業上の措置などに関する意見を記入するための様式をあらかじめ整備しておくことで、人事労務担当者、上司・同僚、医師等との情報共有、連携が迅速に行われ、支援を求める労働者の負担が軽減されます。実際の支援申し出の際は、上記のほかにもガイドラインに添付されている様式をもとに、具体的な措置や配慮の内容、スケジュール等が盛り込まれた「両立支援プラン」も策定できます。


特にがんに関する留意事項

 治療や経過観察の長期化、予期せぬ副作用等の出現等が考えられ、経過によって就業上の措置や治療への配慮の内容を変更する必要があるため、労働者は事業者に対して必要な情報を提供することが望ましいとしています。事業主も報告される以下の点について留意する必要があります。(1)手術後の経過や合併症などに個人差があること。(2)抗がん剤治療では、周期的に体調変化があること。(3)放射線治療の場合、連続照射のために通院による疲労に加え、治療による倦怠感等が現れ症状の程度は個人差が大きいこと。
 また、がんの告知・診断によりメンタルヘルス不調に陥る場合や、早まって退職を選択する場合があることに留意が必要です。

 ハローワークには就職支援ナビゲーターが配置され、がん診療連携拠点病院などとの連携のもと、個々の患者の希望や治療状況を踏まえた職業相談・職業紹介、患者の希望する労働条件に応じた求人の開拓、患者の就職後の職場定着の支援などの就職支援が全国的に実施されています。また、「長期療養者就職支援事業」としてがん診療連携拠点病院などへの出張相談による職業相談や労働市場、求人情報などの雇用関係情報の提供も行われています。


連載協力:税理士法人AKJパートナーズ
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【労務トピックス】:

裁量労働制について

2016-04-26 07:12

 政府は、先日、長時間労働の抑制として、残業が100時間/月に達した場合に行なわれる労働基準監督署の立ち入り調査の対象となる基準を80時間/月まで引き下げる方針を表明しました。これは、子育て中の女性や高齢者に対して労働環境を整え、長時間労働を抑制し、短時間労働も可能な体制を作ることで一億総活躍社会を実現するための具体策の一つといえます。また、残業時間80時間といえば、国が過労死ラインとして労働災害認定の判定としても用いる基準です。会社を経営する事業主にとっては、残業時間を減らすための取組みや今まで以上に厳しい労働時間管理が求められるようになります。

 こうした状況から、業務の効率化を図り、生産性を上げて長時間に及ぶ残業を減らすという試みが重要になりますが、その一つの策として、働き方の多様化について検討します。

 「裁量労働制」という制度をご存知でしょうか。これは、実際の労働時間数とはかかわりなく、あらかじめ定めた労働時間数働いたとみなす制度です。これにより、一定の専門的な職種、企画的な職種に就く労働者については、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねることで労働時間の法規制を大幅に緩和し、かつ、労働量(労働時間数)に対してではなく労働の質に対して賃金を支払うことを可能にさせます。すなわち、実際の労働時間が6時間であっても10時間であっても、あらかじめ定められた時間(仮に8時間とする)を働いた時間とみなすこととし、労働時間の拘束が労働者の能力発揮の妨げとなることがないよう、労働者の自律性を保障することを目的とした制度設計です。

 裁量労働制は、(1)「専門業務型裁量労働制」と(2)「企画業務型裁量労働制」の2種類があります。


(1) 専門業務型裁量労働制

<導入手順>

 労使協定を締結し、所轄労働基準監督署に届け出なければなりません。労使協定では次の事項を定めます。なお、対象業務は下記に挙げる厚生労働省令で定める業務に限られます。

   ・制度の対象となる業務
   ・労働時間としてみなす時間
   ・対象となる労働者の労働時間の状況に応じて実施する健康・福祉を確保するための措置の具体的内容
   ・対象となる労働者からの苦情の処理のため実施する措置の具体的内容
   ・協定の有効期間


<主な対象業務一覧>
(実際は実態に即して対象業務か否かを判断することになります)
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(2)「企画業務型裁量労働制」

 事業運営上の重要な決定が行われる企業の本社などにおいて企画、立案、調査及び分析を行う労働者を対象とした制度です。

<導入手順>

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 裁量労働制は、知識・技術や創造的な能力を活かし労働者が主体的に働くことが可能になりますが、企業にとっては労働者の労働時間の把握義務や健康確保義務も課されています。制度導入のメリットやリスクをきちんと踏まえた上で、該当する業務のある企業では、一度、検討してみる価値のある制度でしょう。


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【労務】ストレスチェック義務化、スタート

2015-12-24 07:03

労働安全衛生法の改正により、平成27年12月1日より、すべての会社において「ストレスチェック」を実施(1年以内ごとに1回実施)することが義務となった。(労働者数50人未満の事業場は当分の間努力義務となる)
この制度の趣旨は、労働者が自分のストレス状態を知り、医師等から助言を受けることで、メンタルヘルスの不調を未然に防ぐことにある。

法制化の背景には、まず、日本の自殺率(人口10万人当たりの自殺者の数)の多さが挙げられる。日本の若年層(15-34歳)の死因の第一位は「自殺」となっており、10万人あたり20人と世界規模で見ても、先進7カ国の中で最も高い数字となっている。昨年の日本における自殺者の総数は25,427人、このうち、「勤務問題」を理由とする自殺者は2,323人に上る。
次に、精神疾患での労災請求・労災認定の増加である。昨年、労災請求された件数は1,456件、労災認定された件数は497件と過去最多となっている。また、国が5年に一回行っている労働者健康状況調査では、働く人の約6割がストレスを感じているという結果が出ている。これらの問題を受けて国は、以前から事業主に呼び掛けていたメンタルヘルス対策を「義務化」することで、労働者に対してストレスの気付きを促し、職場環境の改善へつなげ、メンタルヘルスの不調を未然に防ぐことを重要課題とした。

ストレスチェック制度の手順は下記の通りとなる。

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(厚生労働省「ストレスチェック導入マニュアル」より)

1 導入前の準備

会社はストレスチェック制度を実施するという基本方針を表明し、衛生委員会において実施体制、実施方法等を審議・決定する。そこで決定した事項を文書化し、社内規程を定め、労働者へ周知する。


2 質問票の配布・記入

ストレスチェックの実施にあたって、実施方法は紙に限らず、ウェブやスマートフォンでも行なうことができる。実施者は医師・保健師等で、産業医が実施することが望ましい。


3 ストレス状況の評価・医師の面接指導の要否の判定

評価は実施者が行い、結果は数値で示すだけでなく、ストレス状況をレダーチャート等の図表でわかりやすく示す方法が望ましい。また実施者はその結果に基づき、労働者が面接指導を受ける必要があるか否かを判定し、面接指導の対象者には申出を勧奨する。


4 本人に結果を通知

結果は従業員本人と実施者のみが知ることができる。ただし、本人の同意を得れば、会社もその結果を入手できる(結果についての保存義務は5年となる)。


5 本人から面接指導の申出・医師による面接指導の実施

申出があった労働者には産業医等がストレス対処法・セルフケアについて指導を行う。会社は面接指導をする産業医等に労働状況(労働時間、深夜回数・時間数等)の情報提供を行わなければならない。


6 就業上の措置の要否・内容について医師から意見聴取

会社は医師から時間外労働の制限・作業転換等について意見を聞き、さらに労働者の意見を聞き、話し合いを通じて、労働時間の短縮、作業の転換等の措置を行う。この際、労働者の不利益となる取扱いにつながらないようにしなければならない。


7 労働基準監督署への報告

会社は面接指導の実施後に、ストレスチェックと面接指導の実施状況を労働基準監督署に報告しなければならない。


なお、50人未満の会社では、ストレスチェックは努力義務となるが、ぜひ、この機会に導入されることをお勧めする。目には見えない心の問題は日常の社会生活では見過ごされることが多い。どの職場でも起こり得る人間関係の問題や過重労働の問題を、今一度考えるきっかけとしてこの制度を利用してはいかがだろうか。
労務管理の「質」が問われる時代が来ている。


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【労務】女性活躍推進法の成立に伴う企業の対応

2015-11-16 10:18

「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」の成立

女性が、職業生活において、その希望に応じて十分に能力を発揮し、活躍できる環境を整備するため、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(以下、「女性活躍推進法」という)」が制定され、平成28年4月1日から施行される。
女性活躍推進法は10年の時限立法であり、女性に対する採用、昇進等の機会の積極的な提供及びその活用と性別による固定的役割分担等を反映した職場慣行が及ぼす影響への配慮が行われること、職業生活と家庭生活との両立を図るために必要な環境の整備により、職業生活と家庭生活との円滑かつ継続的な両立を可能にすること、女性の職業生活と家庭生活との両立に関し、本人の意思が尊重されるべきことを目的としている。


立法に伴う事業主の義務

女性活躍推進法の成立に伴い、301人以上の労働者を雇用する事業主に対して、平成28年4月1日までに、以下のことを行わなければならない。なお、労働者が300人以下の事業主については努力義務の対象となっている。

(1)自社の女性の活躍状況の把握・課題分析
 (女性採用比率、勤続年数男女差、労働時間の状況、女性管理職比率等)
(2)活躍状況の把握・課題分析を踏まえた行動計画の策定・届出
 (数値目標、取組内容、実施時期、計画期間等を盛り込む)
(3)女性の活躍に関する情報公表

さらに、行動計画の届出を行い、女性の活躍推進に関する取り組みの実施状況が優良な企業については、都道府県労働局への申請により、厚生労働大臣の認定を受けることができるようになる。認定を受けた企業は、厚生労働大臣が定める認定マーク(マーク詳細は11月中に公表予定)を商品等に付し、付加価値をつけられるようになる。

また、女性活躍推進法の施行にさきがけて、女性の活躍推進に取り組む事業主を支援する助成金制度(女性活躍加速化助成金)が設立された。助成金には、300人以下の労働者を雇用する努力義務の対象である事業主が、先に述べた(2)、(3)に取り組んだ場合に受給できる助成金(加速化Aコース)と、数値目標を達成し、達成状況を公表した全ての事業主に対して支給される助成金(加速化Nコース)の2種類がある。支給額はいずれも30万円(1事業主1回限り)となっている。


女性活躍推進法の活用

とりわけ、301人以上の労働者を雇用する事業主にとっては、障害者雇用、高年齢者雇用に加えて取り組むべき課題が増え、求められる責務の増大が見込まれる。それを負担と捉えるのではなく、助成金制度や自社の情報公開の義務をうまく活用することで、優秀な人材の獲得や企業の差別化・イメージアップにつなげたいものである。


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【労務】マタニティハラスメントの実態及び最新判例・通達を踏まえた対策

2015-10-28 17:57

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【労務トピックス】は税理士法人AKJパートナーズ(東京都港区。代表パートナー 公認会計士・税理士 山本成男)の協力により配信しています。
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近年、マタニティハラスメントという言葉を耳にする機会も増えてきている中、9月に茨城県牛久市にあるクリニックが妊娠を理由に女性職員を解雇し、労働局からの複数回にわたる是正勧告に従わなかったとして、厚生労働省が、初めて実名を公表したことは記憶に新しいだろう。また昨年には、最高裁でマタハラに関する訴訟で初めての判決がでた。
マタニティハラスメントに関する意識が社会に広まってきた今、実態及び最新判例、通達を含め今後、企業がどのような点に留意し、対応が必要なのかを検討する。


マタニティハラスメントの実態

マタニティハラスメント(以下「マタハラ」という)とは、働く女性が、妊娠出産を理由に解雇や雇い止めといった不利益取り扱いを受けること、妊娠出産にあたって、職場で受ける精神的、肉体的ハラスメントのことである。

2015年8月に連合が過去5年以内で在職時に妊娠経験のある20代から40代の女性を対象として実施した「第3回マタニティハラスメント(マタハラ)に関する意識調査」の結果を発表しており、当該調査結果によると、マタハラという言葉を知っている割合は93.6%に上り、昨年の調査時より30%も増加していることになる。また実際にマタハラの経験があると回答したのが28.6%で、昨年より、3%増加している。そしてマタハラ被害の内容をみると、一番多いのは、「妊娠出産がきっかけで解雇、雇い止め、自主退職への誘導をされた 11.5%」となっており、次いで、「妊娠を相談できる職場文化がなかった8.6%」「妊娠中や産休明けなどに心無いことを言われた8.0%」となっている。


マタニティハラスメントに関する最新判例

2014年10月23日広島中央保健生活協同組合事件にて最高裁判決がでた。当該事件は、組合が運営する病院に勤務する従業員(副主任)が妊娠により軽易な業務への転換を希望し、組合は、これを認め、配置転換を行うとともに、副主任を解任したことが発端となっている。その従業員は育児休業を経て、職場復帰を果たしたものの、復帰した職場にはすでに別の副主任がいたため、副主任として復帰することはできなかった。その従業員は当該取扱いに対して、男女雇用機会均等法に違反するとし、副主任手当の支払いと不法行為による損害賠償を求めた。広島地裁及び高裁では、役職の解任については、使用者側に広く裁量が認められるとされ、使用者側の勝訴となっていた。しかし、最高裁は、「妊娠を理由にした軽易業務への転換を契機としての降格措置は、均等法9条3項の不利益取り扱いに該当する」と判示し、高裁の判決を破棄し、差し戻し(再度審理をやりなおさせる)とした。また最高裁では、降格といった措置が以下に該当する場合、例外として、均等法9条3項の不利益取り扱いには該当しないとも判示している。

(1) 労働者が自由な意思に基づいて承諾をしたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在する場合

(2) 労働者に対する不利益措置をとることなく軽易業務への転換をさせることが円滑な運営や人員の適正配置の確保の業務上の必要性から支障がある場合、その業務上の必要性の内容や程度及び措置の有利または不利な影響の内容や程度に照らして、均等法の趣旨目的に反しないと認める特段の事情がある場合


広島の最高裁判決では、上記(1)について、自由な意思に基づいて、降格を承諾したものと認めるに足る合理的な理由が客観的に存在するとは言えない。さらに(2)についても、業務上の必要性や程度、業務上の負担の軽減内容を基礎づける事情の有無が明らかにされない限り特段の事情があるとは認めることができないとして、再審理を命じたのである。

以上を踏まえ、マタハラに関するトラブルを防ぐ策として、休業取得前に復帰後の条件について、職場や役職、賃金が変わる(下がることも含めて)可能性があること、どのような不利益が発生する可能性があるのか、不利益の程度、また他の点での利益、その程度及び内容について具体的に説明をし、書面で当該従業員の承諾をとっておくことが大切と考える。


連載協力: 税理士法人AKJパートナーズ
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