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総務の社内PR大作戦
第9回:問題創造型総務への進化

2017年08月31日

 今回は、いよいよ最終段階、Step5「社内コンサル・社内カウンセリングへ(問題創造型総務)」です。経営に貢献する「戦略総務」「経営総務」として役員・社員から認められるためには、より一層の活動の強化が欠かせません。

 地位向上を現実のものとするためには「率先垂範」が早道です。これまで、総務の業務分掌の範囲内で、業務の重要性を評価したり、役員・社員から現状に対する第三者評価を得たり、彼らに情報提供をしたり、彼らの問題解決をしたり、社内・社外にPRをしたりしてきていますが、あくまでも総務部門の枠組み内です。「戦略総務」「経営総務」となるためには、総務部門の枠組みを脱し、管理部門全体として新たな問題を作り出していくことが必要です。

■ 戦略の3つのレベル

 そもそも「戦略」とは、中長期的かつ包括的・統合的な視点・視座・視野から、現状の課題と注力する取り組み、やらないことの明確化など、基本的方向性を定めていくものです。包括的・統合的な観点でまとめられた経営戦略・経営計画を確実に遂行するためには、必然的に部門間での業務分掌だけでは拾いきれないものが出てきます。このため、プロジェクト形式で課題解決に取り組むこととなったり、経営戦略の下に位置付けられる事業戦略が構築されたりします。これを概念的に整理すると、民間企業の戦略は、一般的に大きく3つのレベルに分けて整理されています。

図表:戦略の3つのレベル
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 ここで何をお伝えしたいかといえば、「戦略総務」は、機能戦略(部署の視座)にとどまるものなのか?ということです。「戦略総務」というキーワードの登場と時を同じくして、人事の世界では「戦略人事」、IRの世界では「IRを通じた経営戦略の高度化」、CSRの世界では「戦略的CSR(CSV)」や「サステナビリティ戦略」などのキーワードが出てきています。私は、こうした管理部門の各部署で戦略が乱立する現象を、「管理部門としての事業戦略」が求められる状況になっているため、と考えています。機能分化された管理部門は自部署の専門性こそが経営に寄与できるものだと信じ切ってしまいがちです。機能戦略の高度化によって経営戦略との橋渡しをしていくことも大切ですが、なぜ「事業戦略」が存在し、「戦略ビジネスユニット」のような事業部制の弊害を乗り越えようとする組織構成の考え方が生まれたのかを、管理部門こそが見直していく時期にあるでしょう。事業部の方が経営戦略との適合が進み、いつのまにか本社機能の方が遅れている状況になっていませんか?

 経営企画部門は、一般的に、経営戦略および事業戦略の策定と進捗管理を行います。経営戦略・事業戦略の実現性を高めるものとして、各機能のあり方を見直していくこともありますが、必ずしも「管理部門の事業戦略」を考える余力はありません。

 私は、以前、別の連載(リアルなコミュニケーションの場づくり)の第2回で、総務を「会社の生みの親」だと表現しました。

 また、人事も経理も広報も、一般的に総務から機能分化していきます。総務は会社の「母」であり、管理部門の「母」なのです。本社機能のほとんどは広義の総務ですし、会社の規模によっては総務がすべてを担当していることもあるはずです。つまり、管理部門の各部署の専門性を生かしながら、経営に貢献するために各部署間を包括・統合した戦略を作ったり、取り組みを進めたりするのは、総務部門以外には成し遂げられないはずです。総務部門は、管理部門全体の視座から、経営戦略に則って各部署の施策を体系的に捉え直し、効果を最大化したり重複コストを削減したりできるはずです。

■ 具体的に何から着手するか

 かといって、急に総務部門が、管理部門の他部署をリードしようとすると、他部署は必ず抵抗します。自分たちこそが経営に役立つ機能だと信じ切っているからです。そこで、まずは、進めやすいこと、反対されにくいことから着手していきましょう。管理部門全体の視座から、経営の重要課題であり、かつ重複しがちな業務の効率を上げるプロジェクトを立案してみましょう。具体的には「コーポレート・ブランド」の社内外への浸透・共有をお勧めします。

 今、多くの会社でコーポレート・ブランドの主管部署があいまいになっています。表向きは広報が主管部署になっていることが多いですが、実際には人事部門が採用広報や社内への理念浸透を通じてブランディングを行っていたり、CSR部門がCSR活動の実践や活動報告を通じてブランディングを行っていたり、IR部門や経営企画部門がIR活動を通じてブランディングを行っていたりします。明らかに各部署でコーポレート・ブランドを訴求・共有する活動が乱立しています。各部署の縦割りが強い場合は、各部署で媒体制作やHPの管理運用で重複業務が発生していたり、各部署で発信内容がバラバラで訴求力が落ちていたり、コスト・効果の両方で非効率になっています。あるいは、縦割りの影響で主管部署があいまいなために、各部署が強化したいと考えていても検討・強化を躊躇してしまい、十分なブランディングができないケースも見られます。

 まずは、管理部門が社内外に発行している媒体をすべて洗い出し、そこで誰を対象に何を発信し、何が伝わっているのか、本当に自社の魅力や強みを表現できているのかを再確認していきましょう。メッセージのバラツキ、表現のバラツキ、内容の重複、内容の不足、多くのムダが見えてくるはずです。こうしたブランディングができていない企業の場合は、競合他社がどのようなことをしているのか、きっちりと調べてみてください。

 経験則では、この作業をすると、多くの企業が「自社の魅力や強みを発信・表現できていない」という結論になります。この結論から一歩踏み込んで、「そもそも自社の魅力や強みはいったい何なのか?」を検討しましょう。仮に、明日、会社がなくなったら誰が何に困るのか?を考え抜く必要があります。機能的には競合の製品・サービスで代替可能かもしれませんが、必ず自社ならではの強みや魅力が存在しているはずです。

 コーポレート・ブランドの磨き上げは、普遍的な経営課題です。この連載の主テーマである総務部門の地位向上・社内PRのためにも、管理部門の連携強化のためにも、ぜひチャレンジしていただきたい。強みや魅力の探索をどうしたらよいのかわからない場合は、まずはご相談ください。

■ 社内コンサルタント・社内カウンセリングへの進化

 コーポレート・ブランドの確立はどの企業にとっても経営の重要課題です。「管理部門の事業戦略」として旗印にしやすいものです。総務部門は比較的中立の立場にあり、部門間調整をしやすい。総務が立案し、総務がプロジェクトの事務局(プロジェクトのリーダーではなく)になりやすいテーマです。

 事務局の立場であれば、各部署とのコミュニケーション機会も増えます。各部署から、コーポレート・ブランド以外のことも相談されやすくなり、「社内カウンセリング」のような立場になっていきます。

 また、管理部門全体の視座から、こうしたプロジェクトを立案したり、「管理部門としての事業戦略」を検討したりしていくことは、企業経営の質を上げる新たな問題を作り出すことになります。こうした新たな問題を作り出し、部門間での業務統合やコスト削減、効率化を実現できれば、コンサルタントのようなノウハウが蓄積されます。「社内コンサルタント」として、調達から販売に至るまでのバリューチェーンの「すき間」をなくし、経営効率を高めていくプロジェクトにも参画できるようになっていきます。施設管理や福利厚生の相談窓口に加えて、各部署から部門間調整などの「社内カウンセリング」、「社内コンサルタント」として経営・社員から頼られる存在に進化できます。

 ここまでStep1-Step5をご紹介してきました。いよいよ次回は最終回です。これまでの連載をまとめていきます。

秋山 和久
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