総務の引き出し(人事教育研修)

ジョブ型雇用の本質に似た対応に 「ビジネスと人権」の高まりで迫られる人事管理の変革

大阪大谷大学 人間社会学部 教授 藤原 崇
最終更新日:
2023年04月11日

SDGsESG投資への意識が高まるとともに、「ビジネスと人権」に注目が集まっています。今回は、企業もその経営としての権利を行使しつつ、従業員の人権尊重をどう調整していくべきなのかについて考えていきます。

企業の権利と人権の尊重のぶつかり合い

近年「ビジネスと人権」に注目が集まりつつあります。2011年に、「ビジネスと人権に関する指導原則」が国連人権委員会で承認されたことを受け、SDGs(持続可能な開発目標)やESG投資などへの認識が広まる中で、「人権を尊重する企業」が市場や投資家の評価を高め、企業価値を拡大するという認識も高まってきたと考えられます。

人事管理において、従来の企業内の人権問題は「差別をしない」等最低限のことを行うコンプライアンス(法令遵守)的な発想で行われてきたようなところがあります。今後はより踏み込んで、従業員一人ひとりの権利を尊重し、自分らしく働くことを支えるべき局面を迎えつつあるといえます。

一方で、企業活動を維持・継続するためには、企業もその経営としての権利、たとえば人事異動や考課査定を行う権利の行使が必要です。従来は、企業の経営権の行使のため個人は一定の「我慢」をするという認識も強かったのですが、ビジネスにおける「人権」意識が高まってくるとその認識を少しずつ改めていかざるを得ません。今後は企業の権利行使と従業員の人権尊重という権利と権利のぶつかり合いを「調整」することが重要になります。

※掲載されている情報は記事公開時点のものです。最新の情報と異なる場合があります。

続きは「月刊総務プレミアム」をご契約の会員様のみお読みいただけます。

  • ・さらに有益な付加価値の高い有料記事が読み放題
  • ・ノウハウ習得・スキルアップが可能なeラーニングコンテンツも割引価格でご利用可能に
  • ・「月刊総務デジタルマガジン」で本誌「月刊総務」も読み放題
  • ・本誌「月刊総務」も毎月1冊、ご登録いただいたご住所にお届け

著者プロフィール

大阪大谷大学 人間社会学部 教授
藤原 崇

メーカー人事や組織・人事コンサルタントを経験。人事戦略から、制度構築、人材育成まで幅広く多業種・数十社の支援を行う。コーネル大学MBA 取得。2022 年4 月より現職、博士(経営学)。

総務の引き出し(人事教育研修)」の記事

2024年04月26日
ベースアップをすると人件費にどう影響する? その仕組みと人件費を管理するための2つの注意点
2024年03月27日
「生成AIは思考力を奪う」は本当? 上手に活用すれば「自分で考える」人材を生み出せる!
2024年02月29日
ジョブ型が広まらない理由は「日本特有の雇用システム」 メンバーシップ型からの転換に必要なこと
2024年01月31日
「企業の目的」ファーストの組織づくりはもう通用しない デジタル時代の今こそ必要な考え方とは
2023年12月27日
人事戦略として存廃をどう決める? 「年収の壁」問題で注目される配偶者手当の必要性と見直し方
2023年11月24日
コスパ・タイパ重視ですぐ辞める……若い社員のキャリアアップに必要なのは「転機」と「4つのS」
2023年10月26日
質・量、2つの側面から考える 今、人事にとって最も重要なミッション「人材確保」の見直し方
2023年09月28日
「総合職は転勤を受け入れる」前提の処遇は限界か 労使紛争になる前に個人と組織の関係の見直しを
2023年08月31日
ポイントは「自覚」と「待つ姿勢」 ―― 人材育成において重要なことはビジネスも教育現場も同じ
2023年07月12日
業績が向上する「人的資本経営」の導入ステップ。人事部門による「実践」の繰り返しがカギに
2023年06月15日
「103万円を超えてはいけない」は思い込み 「年収の壁」問題における人材マネジメントの再考
2023年05月09日
世界の「オオタニ」を生んだ育成方法から学ぶ 企業のキャリア形成支援強化策
2023年04月11日
ジョブ型雇用の本質に似た対応に 「ビジネスと人権」の高まりで迫られる人事管理の変革

特別企画、サービス