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総務の知的財産戦略 第22回

2018年10月18日

 こんにちは。ブランシェ国際知的財産事務所の弁理士 高松孝行です。
 前回前々回と独特の意匠制度を活用した知的財産戦略について解説しましたが、今回は特許の代わりに活用できる意匠の知的財産戦略について解説します。

■意匠権を取得する意義

 特許の保護対象は「技術的なアイデア」なので、保護対象が「物の外観のデザイン」である意匠よりも、一般的にはその権利範囲は広いと考えられています。

 しかし、第7回のコラムに記載したように、特許権を取得するには、「対象技術が進歩性を有すること」が必要となりますので、進歩性が低いと思われる形状に関するアイデアの場合には、特許権を取得できないケースがあります。

 このような場合に、その形状についての意匠権を取得するのです。意匠権を取得するには、主に新規性と非創作容易性(※)が必要とされますが、特許とは異なり、進歩性は必要とされません。したがって、特許を取得できない場合であっても、意匠権を取得することができることがあるのです。

※創作非容易性とは、その意匠の属する分野における通常の知識を持つ者が、すでに知られているデザイン等を利用して簡単に思いつく意匠ではないことをいう。

■意匠権を活用したビジネス例

 この特性をうまく活用している例として、消耗品ビジネスを行っている企業が挙げられます。消耗品ビジネスとは、製品本体の価格は抑え、その製品に関連する消耗品で利益をあげるビジネスモデルです。

 このビジネスモデルでは、消耗品の販売で利益を上げることになるため、その消耗品のコピー商品が出回ると、ビジネスモデル全体が崩壊してしまう可能性があります。そのために、意匠権を含めた知的財産権を活用して、消耗品のコピー品が出回るのを防ぐ必要があるのです。

 たとえば、プリンター・複合機を製造・販売しているブラザー工業は、下図に示すように、トナーカートリッジ全体の意匠に加えて、トナーカートリッジの部分意匠やトナーカートリッジのカバー部材の意匠についても意匠権を取得しています。

chizai22_01.jpg
トナーカートリッジの全体意匠(意匠登録第1569064号)

chizai22_02.jpgトナーカートリッジの部分意匠(意匠登録第1569065号)

chizai22_03.jpg

トナーカートリッジのカバー部材の意匠(意匠登録第1569066号)

 このように、ブラザー工業は、消耗品であるトナーカートリッジに関する意匠権をいくつも取得することで、コピー商品が出回るのを防いでいるのです。

 知的財産権の活用が前提となるビジネスの場合には、特許の取得だけでなく、意匠権の活用も考慮する必要があります。その際には、全社的な視点を有する総務部が主体的にかかわって、知的財産戦略を構築する必要があるのではないでしょうか?

高松 孝行
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